汽船でGo! 北斗丸の蒸気タービン機関の動かし方


 もはやレアな存在である舶用蒸気タービン機関の動かし方について、乗船実習生向けの教科参考資料などを基に機関科系の仕事の一部分を紹介します。何せずいぶん昔に学んだことなので、細かい作業手順は忘れてしまいましたし、実習生向けダイジェスト版の説明書でもここに掲載するには長すぎます。そこでここでは、蒸気タービンプラントのアウトラインと、その起動手順・終了手順の概略についてのみ記載します。

1.蒸気タービンプラントとは

 北斗丸の主機は、蒸気タービンですが、タービン本体だけでは動きません。動力として成り立つためには、ボイラや様々な補機類が必要です。これらが水と蒸気の縁(さらには、潤滑油や電気などの結びつきもありますが)でもって有機的に結びついていることから、ひっくるめてタービンプラントと呼ばれています。以下にごくあっさりと概略図を示します(大成丸も基本的には同じです)。

蒸気タービンプラントの概念図


蒸気サイクルの流れの概略です。

  1. ボイラで燃料油(粘っこいC重油を使用。FO (= Fuel Oil)と呼びます)を燃焼させ、燃焼ガスの熱エネルギをボイラ水に伝達することにより蒸気が発生します。この蒸気は更にボイラ内の過熱器で加熱され40Kgf/cm2(SI単位(kPa)でなくてごめんなさい)、450℃の過熱蒸気になります。
  2. 過熱蒸気は、プロペラ回転の原動力を得る主機タービンや発電機を駆動するタービンに流入し、タービンを回転させます。
  3. タービン内で終圧722mHgまで膨張して仕事をし終わった蒸気は、復水器において海水に冷却され水に戻ります(復水)。
  4. 復水器内の復水は、復水ポンプによって吸入、加圧され、低圧給水加熱器で加熱された後、脱気給水加熱器に送られます。
  5. 脱気給水加熱器で復水を更に加熱。水に溶け込んでいる空気(腐食などの悪さをする)を追い出します。
  6. 脱気給水加熱器内の給水は、主給水ポンプで吸入加圧され、高圧給水加熱器を経由して更に高温になり、節炭器(排ガスで給水を予熱するもの。ボイラの図の上にある紫色のギザギザで示した部分)を通り、ボイラ蒸気ドラム(ボイラの図の上側の丸)に送り込まれます。
 この蒸気サイクルでは、タービンの段落の途中数カ所から蒸気の一部を抽出(抽気)して、給水加熱器の加熱用に回すことで、サイクル全体としての熱効率の向上を図っています。これを再生サイクルと呼びます。


機関区域のレイアウト

機関区域のレイアウト(側面概要図)

 機関区域は、最下層の4th Deckから上の方のTraining Bridge Deckまでの6層を占めます。

機関室配置図 その1(平面見取り図)

[機関室配置図 (Training Bridge Deck)] --- 煙突基部には、潤滑油重力供給タンクなどが設置されています。
[機関室配置図 (Boat Deck)] --- 脱気給水加熱器、廃油焼却炉などが設置されています。
[機関室配置図 (Upper Deck)] --- 空気予熱器、強圧送風機などが設置されています。
[機関室配置図 (2nd Deck)] --- 太い(断熱材に覆われている)蒸気配管が這い回る2nd Deck。機関室には、Change Roomで安全靴に履き替えてから入ります。

 機関室配置図 (3rd Deck) --- 機関室内で、そこにいる時間のもっとも多い(涼しい制御室があるし)3rd Deckの平面図を下記に示します。

機関室配置図(3rd Deck)

[機関室配置図 (4th Deck)] --- 水面下に位置する4th Deckは、ポンプだらけ。


 機関室配置図 その2(側面透視図)

機関室配置図(船体中心線上から左舷側面へ向き透視)
機関室配置図(船体中心線上から右舷側面へ向き透視)


 機関室配置図 その3(フレーム断面(船体輪切り方向)透視図)

機関室配置図(56番Frame前方より透視) --- 主発電機の辺り。
機関室配置図(63番Frameより前方に向け透視) --- 主機の辺り。
機関室配置図(73番Frameより前方に向け透視) ---- ボイラの辺り。
(フレーム[肋骨、Frame]は、船体内側から外板を支持し、横方向の強度を受け持つ船体構造部材です。各フレームには、舵の取り付け基部を基点に船首に向け0,1,2,3...の順にフレーム番号が付されています。本船の場合、機関室及びその前後の辺りでは750mm間隔でフレームが設けられています。)


機関のスペック

主機

[主機タービン全体構造(上面外観)] --- クロスコンパウンド(cross compound)式と呼ばれる車室配置です。高圧タービンと低圧タービンの軸を分離して並列に配置して、それぞれのタービンで蒸気から仕事を取り出し、減速装置の歯車を介して連結された主軸を駆動します。
 [高圧タービンの断面図]   [低圧タービン及び後進タービンの断面図]
[高圧タービン車室据付の図]  [低圧タービン車室及び後進タービン車室据付の図] --- タービン車室は熱膨張を前後・左右・軸方向に逃がし軸の中心を保ちつつ熱応力を低減させる構造となっています。高圧タービン車室は、CrMo鋳鋼製で上下2分割されています。低圧タービン車室は、鋳鋼製の前進車室と鋼板製の排気室との溶接構造で、上下2分割されています。後進タービン車室は、CrMo鋳鋼製の上下2分割構造で、後進運転時の熱応力低減のため低圧タービン車室とは別構造とし、排気車室内側のフランジに間隔片を介してとボルト結合されています。
[回転羽根及び羽根植込みの図] --- 蒸気の流れを受け入れて回転力をタービンロータに伝えるのが回転羽根の仕事です。羽根の植え込み部の形状は、全てT字形で、羽根はロータ外周の逆T字型の溝にはめ込んで取り付けられています。羽根をこの溝に挿入するための開口部がロータの外周に各1か所設けられており、この開口部に位置する羽根の植え込み部は、T字形とすることができないので形状を変えています。なお、羽根の材質は、CrMo鋼(低圧8段のみCrMoV鋼)です。
 [高圧タービン内部の図]   [低圧タービン及び後進タービン内部の図] --- タービン内部には、軸が仕切を貫通する部分の隙間から次の段落へ蒸気が漏洩するのを防止する目的で、仕切板内周部にラビリンスパッキン(蒸気の絞り作用を利用して、気密作用を行う)(内部パッキン)が設けられています。また、ロータ軸が車室を貫通する部分の隙間から蒸気が漏洩するのを防止する目的のため、車室の軸貫通部パッキン箱内部にもラビリンスパッキン(外部パッキン)を設けています。また、蒸気が羽根外に飛散するのを防ぐため、低圧8段を除く各段の羽根の外周には、シュラウド(囲い板)を設けています。
[ジャーナル軸受及びスラスト軸受の断面図] --- 高圧、低圧タービンのロータ軸を支えるジャーナル軸受は、炭素鋼裏金にホワイトメタルを埋め込んだ水平2分割構造になっています。一方、スラスト軸受けは、各ロータの軸方向に働く力を支えると同時に、回転部と静止部の軸方向の相対位置を規定する重要な役割も果たすもので、構造は傾斜パッド型、青銅製裏金にホワイトメタルが埋め込まれ、各々の傾斜パッドはピボットで支えられています。
[減速装置の概略図] --- 減速装置は、タービンの回転をプロペラの推進に適した回転数にまで落とす装置。小歯車4個、大歯車3個計7個のやまば歯車による2段歯車減速型。軸のずれを吸収して歯車のかみ合いを正確に保つため、たわみ継ぎ手により歯車を連結しています。
[減速装置たわみ継手の断面図] --- 1段たわみ継手は、継手軸の両端に設けられた歯車継手(歯切りされた継手軸とそれにかみ合う内歯車の組み合わせ)により、2段たわみ継手は1本のたわみ軸と1組の歯車継手により軸のずれを吸収します。なお、軸方向のずれ(タービンロータの熱膨張などに伴う)を吸収するために1段たわみ継手の継手軸の一端にはバネを装備し、これにより継手軸をタービンロータ軸に押しつけています。
[減速装置各軸受の図] --- 減速装置の軸を支えるジャーナル軸受は、炭素鋼裏金にホワイトメタルが鋳込まれており、1段小歯車軸受を除く軸受は、水平面で上下2分割し、1段小歯車軸受は、荷重方向がほぼ水平方向に近いため、傾斜面で分割されています。潤滑油は、給油主管から軸受に設けられた2か所の油穴を通って軸受面に供給され、軸受の両面から排油されます。
[主スラスト軸受の図] --- 船が前進または後進する際に軸方向に生じる力(スラスト)を受け持つ主スラスト軸受は、2段大歯車船首側に減速装置と一体で装備されています。構造は、ミッチェル型(ピポッドシュー型)で、スラストカラー(鍔(つば)状の部分)は、軸にはめ込まれ、ねじ込み締め付け金具により固定されています。スラストパッドは、傾斜型であり、前進用、後進用それぞれ10個のパッドは、炭素鋼製裏金にホワイトメタルを鋳込んだ構造になっています。各々の傾斜パッドは、裏金背部に設けられた放射状の突起を介してパッド受けに支えられて、スラストカラーとの間にくさび状の強固な油膜を形成しています。パッドとパッドの間にはコロを挿入してパッド間の間隔を確保し、パッドがスムースに傾斜するようにしています。


軸系

 軸系は、中間軸(5本)、中間軸受(8台)、プロペラ軸(1本)、船尾管及び船尾管軸封装置(1式)、並びにプロペラ(1基)によって構成されています。主機の回転力は、中間軸を介してプロペラ軸に伝達されます。船尾管は、プロペラ軸が船体を貫通して船外に出る部分で、軸を支持し、海水が船内に侵入するのを防ぐ役割をします。本船の船尾管は油潤滑式で、船尾管の船首部及び船尾部に、鋳鋼製ブッシュにホワイトメタルを内張した軸受け部を設け、LO重力タンクから自然循環給油をしています。船尾管の船首部及び船尾端には、ゴムのシールリングを用いた軸封装置を装備しています。プロペラは、マンガンブロンズ合金製の5翼1体型で、プロペラ軸にキー付きで取り付けています。
[軸系後部及び船尾管軸封装置の図]  [船尾管軸封装置(船首側シールと船尾側シール)の図]


主ボイラ(2缶搭載)

[ボイラ装置の概略図] --- ボイラは、燃料油(Fuel Oil)を燃やして蒸気を発生させる装置です。ボイラのの関連機器には、燃焼装置、空気予熱器(Gas Air Heater)、強圧送風機(Forced Draft Fan)、スートブロア(煤吹き器)、ボイラ自動制御装置などがあります。
[ボイラ内部構造図] --- 2号缶(左舷側に搭載)を斜め後ろから見た図になります。ボイラ本体は、蒸気ドラム及び水ドラムとその間に配列された蒸発管群、前面焚きバーナを有する燃焼室、水冷管壁、水壁管寄、降水管、過熱器及びボイラ一体型節炭器(エコノマイザ)で構成され、これを更に保温材とケーシングで囲った構造になっています。
[ボイラ構造概略図その1] --- 後方視点及び平面断面で内部構造を示した図です。
[ボイラ構造概略図その2] --- 側面視点で内部構造を示した図です。
[ボイラ炉壁構造断面図] --- 燃焼室からスクリーン管、過熱器、主蒸発管そしてエコノマイザに至る燃焼ガス通路は、過熱器下部を除き、全てメンブレン水冷管壁群(水管にフィンを直接溶接し、これを並びつなぎ合わせて水冷管壁としたもの)によって燃焼ガスの気密を保つように囲われています。水冷管壁は、燃焼ガスからの放射熱を受け、ボイラ水循環回路の一部を形成するとともに、炉壁を保護しています。
[蒸気発生線図] --- ボイラの水は、蒸気ドラムと水ドラムをつなぐ管群を流路として、自然循環して沸騰します。蒸気は蒸気ドラムに集まり、気水分離され、高圧の飽和蒸気としてドラムを出た後、過熱器に入り燃焼ガスで過熱され、過熱蒸気となります。また、加熱器を出た蒸気の一部は、蒸気ドラム内の補助緩熱器に送られ、ドラム内の水と熱交換して、温度を下げた緩熱蒸気となります。
[ボイラ水循環回路の概略図] --- ボイラ水の自然循環を円滑に行わせるため、降水管(図の青系統の色で示した縦方向の管)がボイラ燃焼室の外を通って蒸気ドラムから水ドラム及び下部水壁管寄せに連結しています。一方、暖色系統の色で示した管は加熱された水/蒸気が蒸気ドラムに向かって上昇する管です。
[蒸気ドラム内部装置の構造図] --- 蒸気ドラムの内部には、コイル式補助緩熱器、気水分離器などが設けられています。
[節炭器管構造図] - - 節炭器(Economizer)は、ボイラの排ガスの廃熱により給水を予熱する装置です。伝熱面積を増すために外側に鋼製フィンを螺旋状に溶接したボイラ鋼管をUベント(U字型曲管)で接続した構造になっています。
 バーナはFOを霧化噴射し燃焼させる装置です。本船の場合は、1缶に2本(機側にて手動操作を行う「ベースバーナ」と、バーナ自動化装置によりボイラ負荷により自動本数制御を行う「オートバーナ」)装備され、FO圧力制御と併せ、FO噴射量の広範囲な調整ができるようになっています。オートバーナのエアレジスタダンパ(燃焼用空気を流したり止めたりする仕切)は、エアシリンダにより自動開閉します。なお、バーナには、FOの噴霧を良好にするためのアシスト蒸気(蒸気と一緒に噴霧することで燃料油滴を細かくし、燃焼状態を良くする)がFOと共に供給されます。
[ベースバーナ構造図]   [オートバーナ構造図]   [バーナ先端部断面図]
ボイラ付属装置(主なものは上記ボイラ装置概略図を参照)のうち、空気予熱器、FOヒータ(ボイラ用重油加熱器)、スートブロワ装置を図に示します。
[空気予熱器(Gas Air Heater)の構造図]  --- 回転する蓄熱体(伝熱エレメント)が、ボイラ排ガス側区画で加熱された後、空気側区画に回ってくることでボイラに供給する空気を暖める仕組み(蓄熱再生式)になっています。
[FOヒータの構造図]  --- FOの粘度を下げるために加熱する装置です。加熱器外殻の内部には、外面にアルミニウムピンを多数溶接したピンチューブが挿入されており、更にピンチューブの内側には内部に加熱蒸気を供給する蒸気管が奥まで達しています。
[スートブロワ配管図] --- スートブロアとは、燃焼ガス通路内の蒸発管、空気予熱器の伝熱エレメント等に付着した煤を高圧の蒸気を吹きつけることにより吹き飛ばして、清浄にするための装置です。本ボイラ1缶あたり計4台、空気予熱器に1台のスートブロアを装備しており、制御室の操作盤と機側のリレーボックスにより、一定の順番で自動シーケンス運転を行います。
 主機タービンやターボ発電機の負荷変動に起因する消費蒸気量の変動に対して、蒸気圧力を一定にするための燃焼量(FOと空気)の調整、蒸気温度の調整及び蒸気消費量に比例した給水量の調整を自動的に行うためにボイラ自動制御装置を装備しています。
 ボイラ自動制御装置は、以下の制御装置により構成されています。
[ボイラ自動制御装置及び配線図]
a. 自動燃焼制御 (Automatic Combustion Control: ACC)
 過熱蒸気圧力が一定になるように、FO量と燃焼用空気量を調整するもので、蒸気圧力、蒸気流量及びFO流量の3要素を検出し、FO量はFO流量制御弁の開度、空気量は、FDF入口ベーン(強圧送風機空気取り入れ口の案内羽根)の開度で制御する。
b. 蒸気温度制御 (Steam Temperature Control: STC)
 過熱蒸気出口蒸気温度を設定した温度範囲に制御するもので、蒸気温度と空気流量の2要素を検出し、温調緩熱器(蒸気温度を低下させるために水ドラム内に設けられた熱交換器)への分流蒸気流量をSTC弁の開度で制御する。
c. 給水制御 (Feed Water Control: FWC)
 蒸気ドラム内の水位を一定に保持するため、給水流量を制御するもので、水位と蒸気流量の2要素を検出し、FWC弁の開度を制御する。
[ACCコントロールパネル]  [FWC・STCコントロールパネル] --- 操作や監視を行いやすくするように、検出信号、操作信号及びコントローラ出力信号などの表示ランプ、指示メータ及び操作ダイヤルなどを信号の流れに沿って配置し、線や矢印で表示したグラフィックパネルになっています。


2.蒸気タービンプラントを構成する各系統

(1) プラントの主蒸気サイクル

1)主蒸気系統

 主ボイラからは、過熱蒸気緩熱蒸気の二系統がプラントに供給されます。過熱蒸気は主機タービンと発電機タービンの駆動源であり、通常の航海中でボイラの全発熱量の9割を占めることから、主蒸気と呼んでいます。

 過熱蒸気は通常の航海中は両ボイラから供給され、主蒸気塞止弁主蒸気中間弁を経て操縦弁へ進みます。この塞止弁並びに中間弁には、弁の前後を均圧させる目的でバイパス弁が設けられています。パイパス弁は両缶共通前に主蒸気管を暖管する役目も果たします。
 過熱蒸気は、前進時は前進側操縦弁を、また後進時には後進操縦弁を通って前進タービン、後進タービンにそれぞれ送り込まれます。操縦弁は、前進側と後進側が同時には開かない構造となっています。

[主蒸気系統図]      [操縦弁の断面図]
 主機タービンの発停、前後進切替及び増減速(回転数調整あるいは出力調整)は操縦装置によって行われます。操縦装置は、操縦弁、レバーリンク機構、油圧サーボ、カム装置などから構成されており、これに遠隔操縦装置、自動制御装置及び保安装置などが組み合わされています。
 操縦弁の操作は、通常、制御室または船橋から操縦レバーによる遠隔操縦を用いて行われますが、バックアップとして、直接電気・油圧制御で操縦弁を動かすモード、更に、非常の場合に機械的に操作できる機側手動ハンドルも備えています。
 主機自動制御装置は、主機タービンの安全確実な操作と省力化を兼ねたもので、主に次のような機能を備えています。
a.レバーコントロール
 操縦弁の開度を制御する操縦弁リフト制御系統と主機の回転数を制御する回転数制御系統からなり、これらを予め設定した操縦プログラムでコントロールします。
i)操縦弁リフト制御系統
 操縦レバーを操作すると、操縦弁が操縦レバー位置に相当する開度(%)に制御されるものです。
 操縦レバーには、ポテンショメータが連動しており、操縦レバーを動かすと、このポテンショメータと、カム軸の回転角を発信するフィードバックポテンショメータの間に回転角の偏差に比例した電圧を生じ、その偏差をなくす方向にカム駆動モータを運転し、カム装置内のカムを回転させ、カムの回転により油圧サーボを経て操縦弁開度を制御します。
[主機遠隔操縦システムブロック線図] 
ii)回転数制御系統
 港内速力の範囲で主機の増減速を行う場合、主軸回転数が操縦レバーの設定位置に対応した回転数となるように操縦弁開度を制御するもので、操縦レバーの位置が次の範囲内で有効です。
 ◇前進 ・・・・ 36~117rpm (20~65% rpm)
 ◇後進 ・・・・ 30~126rpm (20%rpm~後進全力)
 増速の場合、操縦レバーを操作し、上記範囲のある回転数に設定すると、設定回転数とフィードバック回転数の差及び設定回転数と操縦弁リフト(開度)フィードバック信号との和を増幅してサーボモータに信号を与え、操縦弁を開けます。弁リフトフィードバック信号は、操縦弁リフトが設定回転数相当の弁開度を超えると逆にサーボモータを逆転して弁開度を絞り、最終的に設定回転数と一致するように弁開度を制御します。
[主機回転数制御ブロック図]
b.プログラムコントロール
 予め定めたプログラムによる速度又は時間により操縦弁を開閉するもので、負荷増加時の熱応力、あるいは、クラッシュアスターン(前進全速から後進全速への緊急切替)時のような急激な負荷変動から機関を保護するためのものです。原則として、低負荷時には操縦弁開度を素早く変化させる高速プログラム、高負荷時にはゆっくり変化させる低速プログラムで開閉します。 
[プログラムコントロール図]
c.回転数コントロール
 出入港時の主機使用回転数領域において、操縦レバーの設定位置に対応した所定の回転数が得られるよう操縦弁開度を制御します。
                   発停増減速標準
AHEAD (前進) ASTERN (後進)
FULL HALF SLOW DEAD SLOW ORDER DEAD SLOW SLOW HALF FULL
110 85 60 45 R.P.M. 35 45 60 80
d.オートスピニング
 一旦暖まった主機タービンの局部冷却によるロータの曲がり防止のため、機関停止状態で待機する時等、自動的に一定間隔で前後進交互にタービンを微速回転させるよう操縦弁を制御します。
e.弁制御
 操縦弁の開度に応じて、主機関係諸弁のうち、抽気弁、後進中間弁及びドレン弁を自動的にあるいは、スイッチによる遠隔操作で一括開閉操作します。
e.警報装置、自動減速装置、危急遮断装置
 上記の自動制御機能とは別に、運転中は主機タービン等の安全を確保するために、機器の異常や重要なプロセス量の異常(タービン過速度、タービン振動過大、軸受潤滑油圧力低下、主復水器真空度低下など)に対して、異常警報を発したり、主機タービンを自動減速あるいは危急遮断停止するよう、操縦弁を制御する各種の保安装置が設けられています。
[主タービン保安系統図]


 操縦弁で制御された過熱蒸気は、前進タービンへは高圧タービン入口蒸気室に設けられたノズル弁を通って送り込まれ、また後進運転時には、配管途中に設けられた後進中間弁を通って後進タービンに導かれます。後進中間弁は、通常航海中は常時閉鎖されており、万一後進側操縦弁が漏洩しても、前進回転中の後進タービンに蒸気が送り込まれることのないよう、安全確保のために設けられています。

 主機タービンの出力調整には、蒸気量を調整するノズル加減調速と、タービン内の熱落差を調整する絞り調速の二通りがあります。北斗丸、大成丸の主機タービンでは、前進時の高負荷領域では操縦弁の開度を100%全開として、全18個のノズル数を4群(No.1~No.4)に分けて、それぞれに設けられたノズル弁(No.2は除く)のいくつかを全開又は全閉とすることにより、ノズル加減調速を行っています。また、前後進時の低負荷領域並びに後進運転時には、操縦弁の開度を加減することにより熱落差を変化させる絞り調速を採用しています。但し、この場合、ノズル数は原則として15ノズル全開とします。

 以上の諸弁を通して、はじめて過熱蒸気は主機タービンに送り込まれます。


2) 復水系統

 主機タービンでの仕事を終えた排気は、低圧タービン下部に懸垂された主復水器(Main Condenser)の冷却管群で冷却され復水となり、復水器下部のホットウェル(復水だまり)に集められます。復水器には内部真空を高めタービン内での熱落差を大きくして熱効率を向上させるため、内部の不凝縮ガス(主に空気)を連続排出する空気抽出装置(北斗丸では蒸気作動式エゼクタ、大成丸では真空ポンプ)を備えています。
 ホットウェルに回収された復水は、主復水ポンプによって引き出され、補助復水器(主発電機駆動タービンの排気を冷却する)からの復水と合流して、一段給水加熱器を経由して脱気給水加熱器に送り込まれます。

[復水系統図] --- 一段給水加熱器の他、グランドコンデンサも設けて、タービングランド部などからのグランド部からの漏洩蒸気(グランド排気)の熱回収と水回収を図っています(主エゼクタの冷却管部でも熱回収が行われます。)。なお、復水器ホットウェルの水準を一定に保つために、レベルコントローラによって復水リサークル弁の開度を調整し、ドレンクーラを出た後の復水の一部を復水器に戻す配管も設けています。
[主復水器の断面図] --- 排気室より流入してくる主タービン排気は、主復水器の冷却管群を下降しつつ凝縮されて復水となり、胴体最下部に設けられたホットウェルに集められます。冷却管は、直管式(冷却管の材質は、熱伝導度が高く腐食に強いアルミ黄銅製)で、1995本設けられています、この内部を主循環ポンプにより送られた冷却海水が右舷から左舷に流れています。
[空気抽出装置:蒸気作動式エゼクタ] -- エゼクタ(Ejector)とは、ベンチェリ管の絞り作用でもって流体を吸い込む装置です。噴射した蒸気の高速な流れによって、復水器の復水しない空気等を器外に引き出し、復水器内の真空度を高めます。高度の真空を維持することにより、タービン内の熱落差を大きくして蒸気のエンタルピの利用度を高めタービンの出力を増すと同時に、復水の脱気作用という重要な役割も果たしています。
[一段給水加熱器の断面図] --- 三段抽気を加熱源とするU字管形熱交換器です。給水はU字管内を通り、U字管の周りに流れる蒸気により加熱されます。入口部にグランドコンデンサを内蔵し、グランド排気からも熱を回収しています。


3) 給水系統

 脱気給水加熱器(Deaerating Feed Heater:通称デアレータ(Deaerator))に送り込まれた復水は、蒸気中に噴霧され、溶け込んでいた酸素及び非凝縮性ガスが取り除かれると同時に加熱されます。脱気給水加熱器(第二段給水加熱器としての役割も担っています。)の下部は貯水槽となっており、ボイラへの給水供給の安定を図っています。また、厳密に区別されているわけではありませんが、この貯水槽以後の水を給水と呼んでいます。
 給水はこの後、主給水ポンプ(Main Feed Water Pump)でボイラ内に送水するのに必要な圧力(ボイラ圧力より高い、通常57kgf/cm2)に加圧され、三段給水加熱器に入って更に高温に加熱されます。その後、ボイラ水位を調整する給水制御弁(Feed Water Controle)を通って、ボイラ本体の節炭器を経由して蒸気ドラムに送水されます。

[給水系統図]
[脱気給水加熱器の断面図] --- 器内は、脱気室及び貯水槽の2つの部分に分かれており、脱気室には、スプレー室、スプレーノズル、トレイ(じゃま板)、加熱蒸気室等が装備され、ここで給水の加熱と脱気が行われ、脱気した給水は貯水槽に蓄えられます。
[主給水ポンプの断面図] --- 単段両吸込みインペラを使用したタービンポンプで、原動機は、単段衝動2翼速度複式軸流タービンです。
[主給水ポンプガバナ機構概略図] --- 主給水ポンプのスピードコントロールは、片バランス式ガバナ蒸気弁による機械-油圧式制御により行われます。所要吐出圧力を維持するのに必要なガバナ蒸気弁の開度は、圧力調整器(吐出圧力とバランスする)の上下動により、リンク機構及びパイロット弁を介し、オイルリレーピストンを上下方向に動かすことにより決定されます。また、過速度、LO圧力低下、背圧上昇といった異常時に、ガバナ蒸気弁を閉じる保護機構を備えています。
[三段給水加熱器の断面図] --- 一段抽気を加熱源とするU字管形熱交換器です。給水はU字管内を通り、U字管の周りに流れる蒸気により加熱されます。


(2) 緩熱蒸気、ドレン等の系統

1)緩熱蒸気系統

 緩熱蒸気は、過熱蒸気の一部を分岐してボイラ蒸気ドラム内の内部緩熱器で温度を下げた蒸気で、用途によって適当な圧力に減圧して次のところに使用されます。

a. 40kgf/cm2
b. 20kgf/cm2

 緩熱蒸気系統においても、その排気、復水等は可能な限り回収して、水の損失を極力抑えています。

2)グランド蒸気系統

 主機タービンのロータ軸が車室を貫通する4か所のグランド部には、タービン内からの蒸気の漏洩、又はタービン内への空気の侵入を防止するための気密装置(2~3列のラビリンスパッキン)が設けられていますが、そのラビリンスパッキンを機能させるためのグランド蒸気を供給するグランド蒸気系統が設けられています。ラビリンスパッキンから漏洩した蒸気は、グランド漏洩蒸気溜りに集められ、グランド復水器にて熱回収されます。なお、グランド蒸気溜まりには、操縦弁及び後進中間弁のグランド漏洩蒸気も集められています。

[グランド蒸気系統図]

3)ドレン系統

 蒸気タービンは、主として始動時や低負荷運転時において、運転蒸気の一部がタービン内部で冷やされてドレン(凝縮水)となる可能性があり、ドレンが発生した場合はタービン各部の損傷を来す危険があります。そこで、蒸気管各系統あるいはタービンケーシング各部の適当箇所からドレンを排除できるよう、装置と配管が施されています。
 この系統の装置としては、ドレンを集めるドレン溜り、ドレンと共に漏洩してくる蒸気量を制限する目的で設けられるオリフィス、必要のない時はドレンラインを閉鎖しておくためのドレン弁及び自動的にドレンのみを通過させ蒸気の通過を制限するスチームトラップなどがあります。

[ドレン系統図]

4)蒸留水、補給水の系統

 スートブロー蒸気や缶水ブロー(ボイラの水面の浮遊物と底に沈んだ沈殿物の排除と、濃縮ボイラ水を排除する)などで失われた水を補給する系統です。脱気給水加熱器の水準を監視して、蒸留水タンクからの補給弁、逃がし弁を制御することでサイクル中の水の量を一定に保ちます。蒸留水は、造水装置により海水を蒸留して造られます。

[補給水系統図]
[造水装置構成図] --- フラッシュ蒸発現象(高温の液体を急激に圧力降下させると蒸気が発生する現象)を利用した蒸留装置です。給水(原水:通常は海水。港内停泊中など海水が汚いときは雑用清水。)を補助排気主管の蒸気を加熱原とした給水加熱器で加熱の後、高真空の蒸発室内へ噴出して急激に給水の圧力を降下させると、給水の一部が蒸発するので、この蒸気を蒸留器で冷却させて蒸留水を得ます。1段蒸発室で蒸発しきれなかった給水は、2段蒸発室内に導かれ、それでも蒸発しきれなかったブラインは、ブラインポンプにより船外に排出されます。

(3) その他の系統

1)主潤滑系統

 潤滑油(Lubrication Oil :LO)は、主機タービン及び減速装置の各軸受け、減速歯車並びにたわみ継手の歯面等に潤滑及び冷却油として供給されると共に、主機の制御油としても使用されています。
 供給方法は、圧力重力給油式(セミグラビティ方式)と呼ばれ、通常はLOサンプサンクからの潤滑油が主LOポンプで加圧され、主LO冷却器部分で機関入口温度を制御されて各部に供給されていますが、主LOポンプ停止等の非常時には、機関室上部のLO重力タンクから軸受けや歯面に重力により供給され、焼損の防止にあたる方法が採られています。重力タンクには、主LOポンプ運転中少量の潤滑油が送り込まれ、常に重力タンクを満たした状態でオーバーフローさせています。

[主潤滑油系統図]  [主潤滑油系統(供給系)図]
[潤滑油冷却器(LOクーラ)の構造図]

2)主循環系統

 主循環ラインは、大量の冷却海水を主循環ポンプを用いて主復水器に送り込むものです。船底弁、主循環ポンプ吐出弁及び船外吐出弁は大型ですのでモータ駆動弁としています。このうち、船外吐出弁は制御室から遠隔開度調整が可能で、主復水器真空調整のための主循環水量調整を容易にしています。

[主循環系統図]

3)二次低圧蒸気系統

 油タンクや油加熱器の加熱用、あるいはその他雑用(調理、暖房等)に使用される蒸気のドレンは油や不純物が混入する恐れがあり、そのドレンを主蒸気サイクルの復水・給水系統に入れることは、厳しい水質管理を要求される高温高圧のボイラにとっては好ましいことではありません。このため、主ボイラからの緩熱蒸気を加熱源として、間接的に低圧蒸気(4kgf/cm2)を発生する低圧蒸気発生器(Low Pressure Steam Generator: LPSG)を設けることで、雑用サービス等に用いる二次低圧蒸気系統を主蒸気サイクルの系統から完全に分離しています。

[二次蒸気系統図] -- 図中点線で示したのは、バックアップ系統で、外部緩熱器(主蒸気サイクルの蒸気に直接給水を混入させて温度を下げた蒸気にする。)も設置されています。

4) 発電装置

 本船では、蒸気タービン駆動の主発電機2台と、ディーゼルエンジン駆動の補助発電機1台を備えています。通常は、主発電機1台で船内の電力負荷をまかない、原則として半月交代で連続運転しています。補助発電機は主発電機のバックアップ及び出入港時のバウスラスタ給電用に使用されます。

・主発電機原動機

 原動機は一段減速装置付きラトー5段落タービンで、主機関同様、それぞれ復水器(補助復水器)、復水ポンプ(補助復水ポンプ)等を備えており、使用蒸気は40kgf/cm2、450℃の過熱蒸気です。
 ボイラから送り出された過熱蒸気は、ターボ発電機原動機の蒸気中間弁、入口弁を経て主塞止弁より操縦弁に入り、調速弁(ガバナ)により、発電機の軸の回転数1800rpm(タービン定格回転数:9341rpm)を維持するよう蒸気流量を加減されます。発電機タービンを回して仕事を終えた蒸気(排気)は、タービン車室下部に懸垂された補助復水器に排出されます。排気は、補助循環ポンプによって送られた冷却海水で冷却されて復水となり、補助復水器下部に溜まり、復水は、補助復水ポンプにより引き出され、主機からの主復水ラインに合流し、給水加熱器等を経てボイラに送られます。

[ターボ発電機蒸気・復水系統図]    [ターボ発電機原動機断面図]
[主ターボ発電機関作動線図] --- 潤滑油系統、始動・速度調整及び危急遮断装置の図です。LOの一部は、高圧調速油として調速弁用油筒あるいは、オリフィスを介して主塞止弁危急遮断用電磁弁及び主塞止弁危急遮断用油筒に導かれます。また、回転数が過速になった場合や、LO圧力が低下した場合などの異常時に対処するための危急遮断装置を備えています。

・補助発電機原動機

 原動機は4サイクル6気筒型過給機及び空気冷却器付きディーゼル機関(840PS)で、主発電機のバックアップ用として常時スタンバイ状態にあり、母線の異常時には即時自動始動されるとともに、制御室コンソール及び機側制御盤より遠隔発停も可能です。

・発電機

 主発電機の容量は1,050KVA、補助発電機は700KVAで、いずれも電圧450V、周波数60Hzの交流を発生します。形式は、解放防滴ブラケット型で、励磁方式は、ブラシレス方式(発電機回転軸上に交流励磁機及び整流器をもち、負荷電流に応じた直流励磁電流をこの交流励磁機の界磁に供給し、回転電気子上に発生した三相交流を整流器によって全波整流し、これによって得られた直流出力を発電機の回転界磁に供給する)を採用しています。

[主発電機断面図]   [ブラシレス発電機ブロック線図]

・配電盤

 発電機の運転状況の監視、制御保護及び各負荷への電力の供給等、電力設備の中枢をなすもので、機関室第三甲板左舷側に装備されています。配電盤内には、発電機運転中の母線の監視、母線異常時の補助発電機関の自動始動及びバックアップ給電、主発電機間の自動同期投入並びに自動負荷分担等の発電装置の総合的な自動制御のための諸装置を備えています。

5) 潤滑油清浄機

 長期間繰り返し使用するLOは、ゴミ、軸受メタルの摩耗粉、水分等の混入により汚染されますが、汚損されたまま使用を続けると、油の劣化を早めてスラッジ(滓)を生成し、機関の円滑な運転が阻害されてしまいます。油の劣化による害を防止するため、船内では、沈殿分離法、濾過法及び遠心分離法を用いて物理的に油を清浄し、不純物を取り除いています。
 沈殿法は、セットリングタンクにLOを入れて比重差により下部に沈殿させて清浄油と分離する方法。濾過法は、油中の大きな固形不純物を配管の途中に設けた油こし(ストレーナ)で取り除く方法。遠心分離法は、高速度で回転する回転体を内蔵した油清浄機(Purifier)を使用して、遠心力によって不純物を分離・除去する方法で、不純物と油との比重差が小さくても清浄能力が高いのが長所です。

[潤滑油清浄機配管図] --- 本船では、2台の分離板型清浄機を装備し、主機LOサンプタンクからの側流清浄、あるいはターボ発電機LO等の清浄を行っています。
[潤滑油清浄機回転体断面図] --- 分離板型清浄機は、電動機により駆動される回転体内に多数の円錐形分離板を有し遠心分離を行います。清浄されるLOは、加熱されて粘度を下げ、本体上部から注入され、中央部を通って回転体の底部から流入し、分離板にあけられた穴を通って全分離板間に分布され、分布されたLOは、薄い膜の状態で遠心力を受け、LOより比重の高いスラッジ及び水は分離板の下面に沿って、外周に移動して回転体の内壁に溜まり、水は内壁に沿って上部に出ます。
[潤滑油清浄機作動状態図] --- 運転中に分離堆積した固形物の排出は、高圧作動水を注入して上部水圧室に充水し、弁シリンダを押し下げ排出口を開くことにより行われます。排出後は、高圧作動水を遮断し、下部水圧室の圧力により弁シリンダを押し上げ、上部水圧室の作動水を水抜きノズルより排除することにより排出口は閉鎖されます。


3.運転準備

 蒸気タービンは、エンジンキー一発始動というわけにはいきません。主機タービンを始動するには、予め機関を十分に暖めておく必要があります。冷えた機内に高温の蒸気を急に流入させると、タービンにとって危険なドレンを発生しやすく、また、特に高圧タービン車室は肉厚が厚いため、その内外に大きな温度差が生じ、過大な熱応力を発生したり、変形を生じることがあります。また、ロータと車室内の不均一な膨張により回転部と静止部が接触し、思わぬ事故につながることもあります。このようなことを防止するために、予め機内を暖めておく暖機作業が必要です。

暖機作業の流れ

(1)  暖機準備作業

a.休止中のボイラの点火昇圧
b.点検準備・電源投入
c.主潤滑油系の確立
d.主循環系統(復水器の冷却)の確立
e.主復水系統の確立
f.主機関係制御機器の作動テスト
g.主機ターニング(電気モータでタービンをゆっくり回す)開始

(2)  暖機作業

a.グランド蒸気の供給
b.主空気抽出装置(復水器の圧力を下げる)の始動
c.暖機蒸気の供給
d.主蒸気管の暖管

(3) 試運転準備作業

a.ボイラ共通作業(1号缶と2号缶の運転条件を揃えて2缶運転状態にする)及び補機類の試運転
b.主復水器の真空上昇
c.主蒸気中間弁解放
d.主機ターニング停止
e.主機スピニング(ごく少量の蒸気でタービンをゆっくり回す)開始


(1) 暖機準備作業

 主機タービンの暖機作業及び暖機を含め、機関室における出港準備作業は、出港命令簿(または暖機命令簿)に定められた時間割によって行われます。
北斗丸の場合は、出港約4時間ほど前から暖機作業にかかります(潤滑油清浄機は出港約12時間から運転)。

a.休止中のボイラの点火昇圧

 主機暖機作業前に休止していたボイラの点火作業を行います。なお、通常、停泊中ですは一つのボイラのみ運転しており、休止缶は水ドラム内に装備された暖缶(加熱)ラインによって圧力10kgf/cm2に保たれています。
 点火に際しては、燃料系統の確立、起動弁微開(過熱器の焼損を防ぐため蒸気の逃げ口を設ける)、並びに自動燃焼制御装置(Auto Combustion Controler: ACC)のセット等が終わった後、炉内の未燃焼ガスを風で追い出すプリパージが約2分必要です。点火には、棒の先から電気火花が散るイグナイタをバーナのところに差し込んで行います。火花を散らして6秒たっても点火しないときは燃料遮断弁が閉まり、またプリパージからやり直しです(初めは燃料の噴霧がよくないので、なかなか一発では点火しない)。うまい具合に点火したら、過大な熱応力を避け、均等に暖まるように、ゆっくりと昇圧させていきます。

b. 点検準備・電源投入

 停泊中に行われた点検、整備作業が完了していることを確認し、運転に必要なエンジンモニタ、シーケンスコントローラ等の電源を投入します。

c. 主潤滑油系統の確立

 潤滑油は、温度が低いと粘度が高すぎて十分な潤滑効果が得られないので、予め潤滑油を加熱する(45℃)必要があります。通常は、潤滑油清浄機を運転し、清浄する際の加熱によって温度を上げます。潤滑油の温度が十分であること、油量があることを確認した後、主潤滑油ポンプを起動し、潤滑油圧力を弁で調整します。

d.主循環系統の確立

 主循環系統とは、主復水器を海水で冷却する系統のことです。ここの手順では、船底弁及び船外弁をあけ、主循環水ポンプを起動させます。

e.主復水系統の確立

 主復水器のホットウェルの水準を確認後、主復水ポンプを起動し、水準を規定値に保つよう弁で調整します。

f.主機関係制御機器の作動テスト

 主機操縦に必要な主要弁類(蒸気流量を調整する操縦弁等)及び操縦装置の作動の確認を行い。固着その他の不具合がないことを確かめます。

g.主機ターニング作業

 主機のターニングは、この後のタービン主機の蒸気による加熱に先立って、ロータを電動モータでゆっくり回転しておき、各部を均一に暖めるために行うもので、同時に減速歯車装置の均一加熱の意味もあります。ターニングギヤのクラッチが入って噛み合っていることを確認してからモータの回転を始めます。ターニング開始後は、聴音棒にてタービン及び減速装置内部に異常がないか耳で確認します。

(2) 暖機作業

 主機タービンの暖機は、ターニング装置によりロータを回転しながら、暖機蒸気を通すことによって行います。このとき、タービン室内に発生するドレンを排除し、蒸気の流れを確保するために、主復水器内を適度な真勘合したことを空状態(150~250mmHg程度)に保つ必要があります。主復水器内を真空にして、暖機蒸気を通すには、次のような作業手順で行います。

a.グランド蒸気の供給

 タービン軸とその車室貫通部との隙間から空気が車室内へ流入するのを防ぐために、隙間部分にグランド蒸気と呼ばれる低圧の蒸気を供給します。なお、グランド蒸気の供給を始めるとボイラの負荷が増すので、必要に応じてバーナを口径の大きいものに交換したり、ボイラに空気を送る強圧送風機を高速運転する必要があります。

b.主空気抽出装置の作動

 グランド蒸気の供給作業が終了したら、主空気抽出機を始動します。北斗丸では、蒸気作動式エゼクタ(大成丸ではエゼクタの代わりに真空ポンプを装備)を起動、エゼクタ蒸気弁を調整して、主復水器内の真空を150~250mmHgに保持(あまり真空度を高めると車室内が冷えすぎる)します。

c.暖機蒸気の供給

 主復水器内の真空が上昇してから、前後進用暖機弁を開け、暖機蒸気を供給します。ターニング暖機に要する時間は、冷態からの場合1時間以上が必要です。

d.暖管

 停泊中蒸気を通していない、主機に至る主蒸気管を予め暖めることで、熱応力の軽減とドレンの滞留防止を図るため、ボイラ共通作業の約1時間ほど前から、ボイラ出口からタービンの間の蒸気パイプを蒸気で暖めておく暖管作業を行います。

(3) 試運転準備作業

a.ボイラ共通作業及び補機類の試運転

 ボイラ圧力が37kgf/cm2になったら、バーナ交換(点火昇圧用にチョロチョロ燃やすチップ口径の細いバーナをウントコショと引っこ抜いてから、通常タイプに交換)を行います。なお、一缶につきバーナは2本装備されていますので、1本を燃やしたままにして順番に交換します。両方のボイラの圧力が等しくなったところで主蒸気塞止弁等を開放、起動弁を閉鎖し、自動燃焼制御装置の制御モードをBGB (Boiler Gauge Board:ボイラ前の制御装置盤)にて "INDIVIDUAL"(各缶独立)から"PARARELL"(両缶並行)に切り替えます。

b.暖機蒸気の停止

 暖機蒸気弁及び同元弁を閉鎖し、暖機蒸気の供給を止めますます。

c.主復水器の真空上昇

 暖機中は過冷却を防ぐために主復水器の真空度を低めに保持していましたが、試運転前に器内真空を上昇させます。

d.主蒸気中間弁の開放

e.主機ターニング停止

 主復水器の真空が上昇したら、ターニングを停止し、ターニングギアを離脱します。

f.主機スピニング開始

 暖機後は、船がまだ動いていない時でも、せっかく暖めたタービンが、冷えて変に縮小して曲がることがないよう、前進側と後進側に交互に少量の蒸気を送り込んで、タービンを極微速で回転させ、その温度分布を均一に保ちます。ターニング停止からスピニング(Spinning)に移るまでは3分以内に行う必要があります。
 スピニング開始時は、タービン及び減速車室の内部音に異常がないことを聴音棒等により確認します。その他ボイラを含めて機関各部が正常であることを確認したら、船橋に連絡して、試運転に移ります。


4.試運転

 主機タービンは、系岸、錨泊に関わらず、通常、出港(抜錨)予定時刻の20分前に試運転を行います。

 試運転は、通常、制御室コントロールからレバーコントロール方式(遠隔自動制御により操縦弁開度を操作する方法)、及びダイレクトスイッチコントロール方式(制御回路が故障した場合に制御室コンソールのスイッチにより直接電気・油圧制御で操縦弁開度を操作する)の二通りで行い、次いで、機側タービンコントロールスタンドから非常用手動操縦ハンドルにて行います。

(1) 制御室試運転

1)レバーコントロール方式による試運転

 操縦方式切替スイッチの位置がレバーコントロールであることを確認した後、操縦レバーを「DEAD SLOW AHEAD」にとり、操縦者は操縦弁開度、高圧タービン入口蒸気圧力、主軸回転数等を確認します。機側においては、蒸気流入音、タービン及び減速装置の回転音等に異常がないこと、各部に蒸気の漏洩がないこと等を確認します。次ぎに、一旦制御レバーをSTOP位置にした後、後進側に運転し、同様に各部の点検を行った後、停止します。

2)ダイレクトスイッチコントロール方式による試運転

 操縦方式切替スイッチの位置をダイレクトコントロールに切り替えます。次ぎにエンジンテレグラフを「DEAD SLOW AHEAD」にし、船橋からのアンサーバックを待って、前進用ダイレクトスイッチを「INC」側に倒します。まず、操縦弁カム角度を35%とし、各部の追従を確認した後、適宜ダイレクトスイッチを「INC」または「DEC」側に倒して増減速を行い各部の状態を点検します。前進終了後、後進用ダイレクトスイッチコントロールについても同様の操作を行い、以上の試運転が終了したら、操縦方式をレバーコントロール方式に戻します。

(2) 機側試運転

 操縦場所切替スイッチを「Engine/Side」位置にし、非常用手動操縦ハンドルを前進、後進にし、各部の状態を点検し、機側に装備されている主機タービンの手動トリップ(停止)装置の作動テストを行います。


 以上で通常の試運転は終了します。試運転が終了すれば、速やかに操縦位置を制御室に戻し、オートスピニングの状態に戻します。
 試運転結果が良好であったなら、その旨を船橋及び機関室内に連絡し、サブテレグラフを「F/W ENG (=Finish with Engine)」とし、オートスピニングの状態で待機します。


5.出港時

 機関用意「S/B Eng (=Stand by Engine)」になったら、船橋からのエンジンテレグラフ指示に追従するよう素早く主機操縦レバーを動かします。なお、北斗丸では40rpm付近に軸系捩り危険回転数があるので、この付近での運転は避けるよう注意が必要です。


6.航海状態への切替と主機増減速時の注意

(1) 航海状態への切替準備

 サプテレグラフ及びエンジンテレグラフにて「R/up ENG(=Run up Engine)」の指示を受けた後に、次の作業を行います。

a.使用ノズル数は、予め運行計画を考慮して機関長から指示されますが、この段階でノズル制御弁の開閉を行って使用ノズル数とします。
b.船橋からの連絡によって、甲坂送水(錨と錨鎖に付着した泥を落とすため等に使用)を停止し、ウインドラス(揚錨機)、ウインチ類への給電を止めます。
c.パウスラスタの使用が停止すれば電源を切り、補助発電機(ディーゼル駆動)を停止します。補助発電機は、主発電機のバックアップとしてスタンバイ状態にしておきます。

(2)主機タービンの増速

(1)の諸作業と並行して主機タービンの増速を行います。

a.操縦レバーを100%に設定します。但し、タービン設計上は増速プログラムに従うに任せて何ら問題はありませんが、それでもタービンの暖機程度に注意し、蒸気入口室温度の変化等を参考とし、段階的に操縦弁開度を増すことが望まれます。

b.操縦弁は、カム角度75%までは高速プログラムで開き、その後低速プログラムに切り替わります。

c.この後約20分間で、低速プログラムにより操縦弁はカム角度85%まで徐々に開き、増速が一旦停止します。

d.操縦弁がカム角度85%に達したら、制御室コンソールの「SEA GOING CONDITION」押しボタンを押して、プラントモードを「MANUVERING CONDITION」から「SEA GOING CONDITION」へ切り替えます。

e.プラントモードを「SEA GOING CONDITION」に切り替えることにより、次の各弁が自動開閉します。

 これと同時に、再び低速プログラムで増速が始まり、約20分で操縦弁はカム角度100%に達します。

f.抽気運転を始めるには、更に次の諸弁を開ける操作が必要です。

g.増速中は絶えず各部の温度、圧力、音響等に注意し、異常を認めた時は直ちに適切な処置をとらなければなりません。


7.運転中の注意事項

 運転中は下記のことなどに注意が必要です。

a.出力、トルク、回転数及び操縦弁入口蒸気圧力、温度についてその制限値内で運転する。

b.異常な振動を生じたり、振動が増える傾向にあるときは、直ちにタービン回転数を下げるか、停止して原因を調査する。

c.各部の圧力、温度等を定期的に点検、記録し、その結果を計画値や過去のデータと比較し、各部に異常がないことを確認する。

d.スタンバイ待機機を含め、関連補機についても、同時にその運転状態を定期的に点検記録し、正常な運転を確保する。

e.無抽気状態では主軸回転数が174rpm、出力が6300PS以上とならないよう操縦弁開度を制限する。

f.運転中ノズル制御弁を開閉する場合は、ノズル制御弁を操作しても出力が急変しないよう、操縦弁を絞った状態で行う。

g.1段抽気点圧力が10.5kgf/cm2、2段抽気点圧力が2.5kgf/cm2では抽気は行わない。

h.復水の塩分濃度に注意し、復水器冷却管漏洩によるボイラの過大損傷を引き起こさないよう注意する。

i.寒冷地では、蒸気配管を含め、タービン各部が局部的に冷やされることのないよう注意する。

j.海水温度の変化に注意を払い、主循環水船外弁の開度を調整し適正な循環水量を確保して、主復水器真空を最適に保つよう努める。真空が高すぎてもプラント効率が低下することになる。

k.各部からの蒸気、水、潤滑油等の漏洩がないよう点検すると共に、定期的に弁グランド等の保守手入れを行う。

l.操縦弁、ノズル制御弁その他の高温弁は、長時間同じ位置に放置すると弁棒が焼き付く恐れがあるので、1日に1度これらの弁を数ミリ動かして焼き付きを防ぐ。


8.入港・機関終了作業

(1) 入港用意

(a) 入港15マイル前

 主機の減速を開始します。減速に際しては、ボイラをはじめプラント全体の運転状態の急変を避けるため、ある程度時間をかけて減速を行います。

a.操縦レバーを微調整ダイヤルにて徐々に下げると、実際の操縦弁カム角度と少し偏差ができたところで、操縦弁は閉じる方向に動く。

b.操縦弁カム角度が85%にまで減少すると、プラントは自動的に「SEA GOING CONDITION」から「MANEUVERING CONDITION」に切り替わる。
 同時に、次の各弁が自動開閉する。

c.次の諸弁を手動にて閉める。

d.入港5マイル前までには、操縦弁カム角度を75%まで減速する。

(b) 入港5マイル前ないし3マイル前

a.バウスラスタ使用の連絡を受けて補助発電機を始動し、要すれば試運転を行う。

b.ノズル数は、スタンバイ状態においては、15ノズルを使用するので、必要なノズル制御弁の開閉操作を行う。

c.更に減速を続行し、S/B eng (スタンバイ・エンジン)直前には、主軸回転数が120rpm程度になっていることを目標とする。
 また、減速に伴い各部の温度、圧力、音響等が変化するので、特に注意し適正な調整を行う。

(c) S/B Eng

 S/B Eng になれば、操縦レバーを「FULL AHEAD」位置にして、主軸回転数を110rpmに整定させる。
 以後は、出港時と同様の注意をもって機関操作を行う。


(2) 機関終了作業

 機関の使用終了後、主機タービンを停泊状態とするには、暖機のときと同様な考え方に基づいて、熱応力の低減を図りつつ、関係補機を順序立てて停止することが必要です。

(イ)冷機準備作業及び乾燥

1) 操縦油圧のトリップ:後進側に主機を10回転程度回転させた後、制御室の手動トリップスイッチにてトリップさせる。ここでオートスピニングスイッチをOFFする。
2) 主蒸気中間弁を閉鎖し、ドレン弁を開いて残圧を排除
3) ターニング開始:主機遊転停止を確認後、制御室からの遠隔操作にてターニングギヤを嵌合し、ターニング開始。タービン各部の温度はまだ高いので、ターニングをしながら時間をかけてまんべんなく自然冷却させる。
4) 主復水器真空の低下:主復水器内の真空を200mmHg程度に低下させて、タービン内部の冷却、乾燥を行う。
5) その他の作業:潤滑油清浄機の停止など。
6) 主空気抽出装置の停止
7) グランド蒸気の供給停止

(ロ)各部の冷却及び手じまい

1) 主循環ポンプの停止:主復水器の冷却が終われば運転を停止させる。
2) 主復水ポンプの停止
3) 運転側ボイラのFDFをHIGH→LOW SPEEDに切り替え。
4) 主機ターニング停止、ターニングギア離脱。
5) 主潤滑油ポンプの停止
6) 電源供給停止:主潤滑油ポンプ、主循環ポンプ、主タービンリモートコントロールボックスなどの各電源を落とす。

(ハ)ボイラ休止作業

 主機使用終了後、冷機作業開始と併せて1ボイラ休止作業を始めます。

1) オートバーナコントロールを次のように切り替える。

a. BGBにて、ボイラ制御を2缶並列の「PARARELL」から各缶独立の「INDIVIDUAL」へ。
b. 制御室にて、「AUTO」から「MANUAL」へ

2) ACC(Automatic Combustion Control)のFOコントロールを手動に切り替え、FOヘッダ圧力を最低油圧に下げる。

3) FDFをHIGH→LOW SPEEDに切り替える。

4) 起動弁を1/2~1回転開とする。

5) ベースバーナを消火する。

6) フレームアイが炎が消えたことを検知して「FLAME FAIL FRIP」が作動し、FO危急遮断弁が閉まり、FOの供給が停止され、「READY PREPURGE」ランプが点灯する。

7) 「PREPURGE START」ボタンを押して、ポストパージ(Postpurge)を行い、ボイラ内の残留ガスを新鮮な空気と置換する。

8) ボイラ圧力が39kgf/cm2程度まで下がれば、次の諸弁操作を行う。

a. 蒸気関係諸弁の閉鎖
b. ドレン弁を開けて、管内の残圧を排除し、排除後閉鎖
c. アシスト蒸気及びパージ蒸気の手じまい

9) ボイラ圧力が38kgf/cm2以下に低下したら起動弁を閉鎖し、起動弁付きドレン弁を全開する。

10) ポストパージ終了後

a. FDFを停止する。
b. BGBにて休止ボイラの電源を切り、フレームアイシールエア元弁を閉鎖する。
c. バーナを抜き出し、ベースバーナのエアレジスタダンパを冷気が入らないように全閉にしておく。

11) この間、制御室ではバーナを消火後、次の操作を行う。

a) ACCのエアコントロールを手動に切り替え、FOコントローラとともに出力を0%にする。
b) FWC(Feed Water Control)の手動操作にてドラム基準水位+100mmまで漲水する。
c) STC(Steam Temparature Control)を手動に切り替え、コントローラ出力を50%とし、警報スイッチを「ON」とする。
d) 漲水が終了したら、FWCコントローラ出力を0%とし、FWC弁出入口弁を閉鎖する。
e) STCを手動に切り替え、コントローラ出力を50%とし、警報スイッチを「ON」とする。

12) 漲水が終了したら、FWCコントローラ出力を0%とし、FWC弁出入り口弁を閉鎖する。

13) Gas Air Heaterのエアー側バイパスダンパを「MANUAL OPEN」とする。

14) 運転側ボイラのバーナを低負荷時用に交換する。

15) ボイラ圧力が10kgf/cm2まで低下したら、ポットムブローを行い、暖缶(ボイラ加熱:次回起動時の所要時間短縮、熱疲労低減、腐食防止のため休缶中も圧力10kgf/cm2を保持する。)を開始する。


謝辞

 この蒸気タービンプラントの説明の殆どは、運輸省航海訓練所作成の「練習船実習生用教科参考資料 運航士編」及び「同 機関科編(練習船北斗丸)」、「北斗丸 -建造の記録-」、「大成丸 -建造の記録-」から引用させていただいたものです。末筆ながら、私の気まぐれな趣味にも関わらず、貴重なノウハウの集まりであるこれら資料の転載を御了承いただきました航海訓練所の方々に厚く御礼申し上げます。また、財団法人練習船教育後援会の方々にも、いろいろお世話になりました。併せて御礼申し上げます。


注意事項


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