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無職の最強賢者 〜ノービスだけどゲームの知識で異世界最強に〜 作者:可換 環

第一章

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第十二話 専属契約とギルドでの売却

「いい話があると言って騙された後に、こんな提案をするのもアレですが……」


 魔道具師としての契約を提案するにあたって、俺はまずそう切り出した。


 よく考えたら、一度騙された直後にお金の話を持ち込むなんて、警戒されてもしょうがないよな。

 何とかして、警戒心を解くことができればいいのだが。


「……何でしょう?」


「良かったら……魔道具師として、俺のもとで働きませんか? ちょっと彫ってほしい魔道具があるんです」


 どんな反応を示すか不安になりつつも、俺はそう提案する。

 すると彼女は、不思議そうな面持ちでこう質問してきた。


「……魔道具師ですか? 私、魔道具師のジョブ持ってないですし、お役に立てるとは思えないのですが……」


 どうやら彼女は、お金の話への警戒云々以前に、芸術家に魔道具製作を頼むこと自体を疑問に思ったようだった。



 この食いつき方は、案外チャンスかもしれない。

 どんな仕事をして欲しいと思っているかが明確に伝われば、怪しさはグッと減るはずなので、乗り気になってくれる可能性も高まるだろうからな。


「魔道具って別に、必ずしも魔道具師がスキルで魔法陣を刻む必要はないんですよ。魔法陣を正確に彫れさえすれば、物理的に刻んだものでも魔法陣として機能しますから」


 というわけで、まず俺はそう説明してみた。


「……そうなんですか? なら確かに、見本さえあれば私にも彫れそうな気はしますけど……」


「見本なら俺が用意します。だいたいの魔道具に使われている魔法陣は、空で描けるので」


「それは凄い記憶力ですね……。でもなぜ、本職の魔道具師ではなく私を?」


「手彫りの方が都合が良い魔法陣がいくつか存在して、俺が欲している魔道具はそういうのを用いるものだからですよ。……例えば、『魔道具師』のジョブ固有スキルで刻めない種類の魔法陣とか」


 すると……彼女は俺の話に興味を持ってくれて、俺にいろいろと質問をしてきた。

 なので俺はここぞとばかりに、彫刻家に頼むメリットがちゃんと伝わるよう、言葉を工夫して質問に答えた。


 ちなみに「手彫りの方が都合が良い魔法陣」は、何も「チェンジ」のように手彫りでしか刻めないものには限らない。

 魔道具師による魔法陣を刻むスキルは、その有用さや強力さで消費魔力が変わってくるのだが……中でも強力なものだと、どう足掻いても魔道具師には量産不能なものもある。

 例えば酷いものだと、「大陸一の魔道具師が、マナカフェイン(魔力前借りポーション)で一週間分の魔力を用意し、全魔力を注ぎ込むことでようやく一個刻める」みたいな魔法陣さえあるのだ。


 そういったものの場合、たとえ魔道具師の固有スキルで刻める魔法陣であっても、手彫りの方が却って量産が捗るという状況になる。

 そんな魔道具でさえ、手軽に手に入れられるようになる事を思えば……専属で彫る仕事をする人を雇うのは、非常にリーズナブルだと言えるのである。


「そ、そんなものがあるのですか……。でしたら確かに、私でもお役に立てそうですね」


 しっかり説明した甲斐あってか、彼女はそう納得してくれた。


「でしたら……私、その仕事、やります。助けてくださったご恩もありますし、何より安定した食い扶持は今一番必要なものですから」


 そして、再度こちらから聞くまでもなく、彼女は前向きな返事をしてくれた。


 ……ひとまずは、いい感じに話がまとまったな。

 そう思い、俺は心の中でガッツポーズをした。



「ところで……お名前なんて言うんですか?」


 続けて彼女にそう聞かれ……俺は、大事なことを思い出した。


 そういえば、人を雇おうとしているというのに、名前さえ聞いてなかったな。


「ジェイドです。あなたは?」


「ジーナです」


 名乗るついでに尋ねると、彼女はジーナだと名乗ってくれた。


「分かりました、ジーナさん。これからよろしくお願いします」


「いえ、こちらこそ。ジェイドさん」


 さて、仕事内容にも納得してもらえたことだし、次は給料をどうするか考えるとするか。


「では、給料は……」


 しかし俺はそこまで言いかけたところで、一旦言葉を止めた。


 特殊な仕事を請け負ってもらう以上、俺としてはそれなりの額を払いたいところではあるのだが……そうは言っても、俺の支払い能力を超える額を約束したとて、実際に払えなければ無意味だ。

 なので一旦、たとえば今日の戦果でどれくらいの稼ぎになるのかくらいは、把握してから額を決めたいところ。


「……冒険者ギルドで今日の戦利品を換金してから決めるのでいいですか?」


「最低限生活できるなら何でもいいです!」


 聞いてみると、ジーナは軽く了承してくれた。


 じゃあ……とりあえず盗賊を収納できるだけ収納したら、ギルドに直行するか。

 そんなふうに俺は、これからの予定を決めた。



 ◇



 そして、冒険者ギルドにて。


 ラッシュボアやシャドウレスラーの死体もあるので解体施設隣接の買取所の方に行くと、そこではシルビアさんが暇そうにしていた。


「こちら買い取りお願いします」


 そう言って俺は……とりあえずまずは、ラッシュボア、シャドウレスラー、ギガントホーネットの巣そしてパワーイーグルを取り出した。


「こちらですね、承知しました。……相変わらず綺麗な死体ばかり……」


 シルビアさんはそれらを受け取ると、何やら言いかけたが……その言葉は、シャドウレスラーに視線が向いたところで止まった。


「あれ……シャドウレスラーは、例の魔石交換法で倒したんじゃないんですか?」


「いつまでもアレに頼りきりでいるつもりはないんで。今日でどのくらい強くなれたか、試しに徒手空拳で倒してみたんです」


「徒手空拳でって……これ、遠距離攻撃でないと倒すの難しいはずなんですが……」


「頭突きをしてきたタイミングで背中に飛び乗れれば案外簡単でしたよ」


「頭突きに乗るって、まずそれ自体が普通じゃないんですけどね……」


 シャドウレスラーについて経緯をひとしきり話すとシルビアさんは一度頭を抱えたが、その後は淡々と整理番号などの処理をやってくれた。


「これで全部ですか?」


 そしてシルビアが、そう聞いてきたので……俺は、追加でファントムコアも出すことに決めた。


「これも買い取ってはいただけませんか?」


「大型素材買取」とあるので、これはまた受付の方でと言われそうだと思い、最初は出さなかったのだが……もし行けるとしたら二度手間を省けるので、ついでに聞いてみることにしたのだ。


 だが……出してみると、シルビアさんは目をひん剥いてしまった。


「な……なぜこれが……。これはこの周辺で獲れていいものではないはずなのですが……」


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