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無職の最強賢者 〜ノービスだけどゲームの知識で異世界最強に〜 作者:可換 環

第一章

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第八話 三ツ星討伐者になれた

 冒険者ギルドに帰ると、受付ではシルビアさんが待機していた。


 ……この人、別に解体施設に隣接した買取所が持ち場ってわけじゃないのか?

 まあ、ギルド職員の持ち場のローテーションがどうなっているかなど、そこまで興味があるわけではないが。


 などと考えていると、早速シルビアさんはラモンの様子が変なのに気がついたみたいで、彼にこう尋ねた。


「ラモンさん、どうしたんですか? いつになく動揺していますが……」


 するとラモンは、一旦深呼吸した後、ゆっくりと話し始める。


「いいかシルビア、心して聞いてくれ。こいつは……とんでもない実力の持ち主だった。即刻Bランクくらいには上げるべきの、な」


「……は?」


 ラモンの発言を聞いて、シルビアさんは耳を疑うようにそう聞き返した。


「……ラモンさんって、そんな変な冗談を言うタイプの人じゃなかったですよね? ……ちょっとギルドマスターを呼んできます!」


 かと思ったら、シルビアさんはそう言って、「Staff Only」と書かれた部屋に入ってしまった。



 ……たかが冒険者登録で普通ギルドマスターが出てくるかよ。

 ラモンの(おそらくは比喩であろう)即刻Bランク発言、そんな重大な扱いになるもんなのか?


 などと思っていると、シルビアさんが初老の男性——おそらく彼がギルドマスターだ——を連れて戻ってくる。


「ラモン、お前例のノービス受験者をBランクにせいなどと言ったのか? 一体何がどうなったら、そんな言葉がお前の口から飛び出すのじゃ……」


 そしてその男性は、ラモンにそう問いかけた。


「この冒険者登録試験の受験者は……俺の目の前で、アースクェイクを単独討伐した。……それも、見たこともない魔道具で」


 そこで初めて、ラモンは事の詳細を話す。


「アース……ん? 聞き間違いかのう?」


「いや、間違いなくアースクェイクだ。ちなみにこの受験者は、謎の魔法でアースクェイクの死体を『収納』しているらしいので、解体施設で証拠品を見せるのも可能だ」


 聞き返してきたギルドマスターに対しラモンはそう続け、それから俺に目配せをした。


 ラモンの目配せに対し、何か補足しようと思っていると……それより先に、シルビアさんがこう証言する。


「彼が『収納』とやらを使えるのは事実です。私も今朝、彼がどこからともなくラッシュボアの死体を出現させたのを目にしました」


「……そこまで言うなら、実物を見せてもらうとするかのう。解体施設へ移動じゃ」


 そして俺たちは、話の続きを解体施設で行うことになった。



 ◇



 解体施設にて。


「ストレージ」


 俺がアースクェイクの死体を外に出すと……シルビアさんとギルドマスターは、揃いも揃って目が点になった。


「ほ、本当にアースクェイクを……」


「そんな……一体どうやって……?」


 二人ともうわ言のように、それぞれそんな感想を口にした。


「よく分かんねえが、魔物の体内の魔石と魔道具に使用した魔石を入れ替える効果の魔道具を使ったんだとよ。そんなの聞いたこともねえし、こいつの発明品なんじゃねえのか?」


 二人の感想に対し、ラモンは俺が通りに「チェンジ」について説明する。


 ……そうだ。証拠品として、アレも見せとくか。


「これが入れ替えられたアースクェイクの魔石です。代わりにアースクェイクの体内には、魔道具に使用したスライムの魔石が入ってますよ」


 俺はそう補足しつつ、「ストレージ」からメロンサイズの魔石を取り出した。



「そんなことが……でも確かに、このアースクェイク、傷一つついてませんね。それなのに、その魔石を抜き取れているということは……」


「ノービスがアースクェイクを討伐というだけでも、おとぎ話にしか聞こえんというのに……更に未知の魔道具使いとはのう……」


 シルビアさんとギルドマスターは、俺が取り出した魔石に目が釘付けになりながら、それぞれそんな感想を漏らした。


「……あ、でもそれで謎が解けました!」


 かと思うと、シルビアさんは何か閃いたように手をポンと叩き、そう言った。


「謎? ……何がじゃ?」


「実はジェイドさんが持ち込んだラッシュボア……ちょっと変な所があったんですよね」


 シルビアさんはそう言って、解体済みのラッシュボアが置かれているところを指す。


「あのラッシュボア、魔石が体内になかったんです。本来魔石があるはずの部位には、粉々になった、スライムの魔石大の干からびた小石が入っていたのみでした」


 そしてシルビアさんは、そう続けた。


「なるほどのう、つまり魔石の交換とやらは常套手段なのじゃな」


 一連の話を聞いて、ギルドマスターは何度か頷きながらそう呟く。


「ここまで証拠を見せつけられては仕方があるまい。此度の受験者については、最大限の特待合格措置を付けるとしよう」


 そしてギルドマスターはそう言い残し、冒険者証発行手続きのため解体施設を後にした。



「あ……ところで、せっかくなんで冒険者証ができるまでにお伝えしたいことがあるのですが」


 ギルドマスターの姿が見えなくなると……シルビアさんはそう言って、話題を変えた。


「何でしょう?」


「ラッシュボアとギガントホーネットの巣の査定が済みましたので、買い取り金額をお支払いします」


 何のことかと思って聞いてみると、解体が済んだ素材の査定額が出たとのことだった。


「ラッシュボアが13万パース、ギガントホーネットの巣は30万パースで、受験料2万パースを差し引いて41万パースになります! ラッシュボアには魔石が無かった分、査定額が低くなっていますが……ご了承ください」


 シルビアさんはそう言うと、41万パース分の金貨と銀貨を俺の前に並べた。


「ありがとうございます」


 俺はそのお金を「ストレージ」に収納した。



 家を追い出される際、投げつけられた小袋に入ってたのが1万パースで、それがナイフと宿代に全て消えたことを思えば……これだけでもかなりの稼ぎだ。

 これでひとまず、お金の心配はなくなったな。

 そう思うと、俺は少し安心することができた。

 そして俺は、冒険者証が発行されるまで、ギルドの待合室で待つことにしたのだった。



 ◇



 そして……ついにギルド証が完成して。


「こちらがジェイドさんの冒険者証になります」


 シルビアさんがそう言って、俺に一枚のカードを渡した。


「本来はラモンさんが言ったように、即刻Bランクにでもしたいくらいだったのですが……冒険者ランクは戦闘能力だけではなく貢献度とかも加味されるものなので、流石にそうはいかず。GからSランクまである中の、Eランクとして登録することになりました」


「そうですか」


 まあ、言うてそんなもんだよな。

 俺はそう思ったが、この話には続きがあった。


「ですが……代わりにジェイドさんは、三ツ星討伐者として登録することになりました」


「三ツ星討伐者?」


「はい。討伐依頼に関してのみ、星の数だけ上のランクのものを受けられる制度です。ジェイドさんの場合、これにてBランクの依頼を受けられることになります」


 なんと結局、討伐依頼に関しては実質Bランクということになっていたのだ。


「そこまでしてくれたんですね……ありがとうございます」


「いえいえ。こちらとしても、実力のある方には相応の依頼を受けてほしいですから!」


 そんなことを言われつつ、俺は冒険者ギルドを後にすることにした。



 NSOではそんな制度見かけなかったが……まあゲーム内では実績と実力がほぼイコールで積み重なっていったので、制度自体はあっても縁が無かったというところだろうか。

 まあ何にしても、早いうちから強い魔物を相手にして、それをちゃんと依頼の実績としてカウントしてもらえるのはありがたいな。


 などと思いつつ、俺はまた平原に向かった。


 そして「サーチ」を駆使してちゃちゃっとスライムの魔石を集めると、宿に戻り、明日の準備として魔法陣の刻印に取りかかった。


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