I WANNA MAKE A HIT WIT-CHOO インタビュー





レコーディングあれこれ、純子にホット・インタビュー (インタビュアー:平山雄一)



―――レコーディングはどうでしたか?

八神:凄く充実してました。

―――このプランがスタートしたのは?

八神:スタッフサイドは3年半位前から準備していたんですが、現実的になったのは去年の今頃からです。私は何となくアメリカでやれたらいいなあ位に思ってたんです。そうしたらブルックスが私の「I'm a woman」をきいてぜひプロデュースしてみたいって。

―――ブルックスとはどんな話をしたんですか?

八神:去年の9月に彼が来日して、初対面の時から彼はこっちが圧倒されちゃうくらいヤル気で。私もやりたいって思って、本腰入れて。ブルックスは年末にもう一度日本に来てくれました。

―――L.A.にはいつ?

八神:年末ギリギリにツアーが終わって、今年の1月10日に出発しました。

―――え!?1月10日。ぼくの誕生日だ。(全然関係ないけど)

八神:私は1月5日なんです。

―――じゃ、誕生日が終わってすぐ出発。

八神:そうです。行ってすぐミーティング。一週間、英語のレッスンを受けて。

―――英語は上手だったんですか?

八神:いいえ。趣味でやってただけなので・・・。17日から録音に入ったんです。

―――滞在はホテル?

八神:ええ。ハリウッドの。スティービィー・ワンダーと同じホテルでした。スタジオでも会いました。訪ねたらシャンパン抜いてくれたりして。

―――L.A. じゃ車がないと不便だね。

八神:ビュイックを借りたんですけど、私は運転しなかった。本当はしたかったんですけど。スタジオはメルローズ通りの5505。

―――どんな生活だったんですか?

八神:2階建てのホテルで、プールが目の前。よく泳ぎました。起きてすぐとか、ポッカリ浮いてたり。それからシャワーを浴びてスタジオにお昼頃出かけて、夜中12時位まで。

―――L.A. って名古屋と似てます?

八神:似てました。(笑)空が広いとこ。L.A. はもっと田舎だと思ってたんですけど、新しい店なんかもずいぶんあって。田舎のほうへいくと、まるで名古屋ですけど。

―――お休みは?

八神:徹夜明けの日だけ、録音中の2ヶ月間。

―――キツイなあ。

八神:この期間、ものすごく集中してやってたから。身体全体を歌うためにコンディション整えるっていう状態で。極端に言ったら12時間も通して歌ってたし。いろんな声が出るようになってたし。私、東京でそれなりにレコーディングしてきたつもりなんですが、今回「これだけ私の声が変わるんだ」って見せつけられたり、新しい発見が多かった。

―――シングル・カットになった「恋のスマッシュ・ヒット」はきいて驚いた。まるで別の人みたいだったものね。

八神:私がふだん出す声の1/3ぐらい。難しかった。

―――この曲が一番今までと違っている感じ。プロデューサーが考えている"アメリカ受けする八神純子"が集約されているって思う。

八神:彼としても新しい体験だったと思うんです。でも曲によっては三味線の音、入れようぜとか、ジャケット撮る時もチャイニーズのキラキラした着物を用意したり。それはさすがにNoっていいました。いい悪いを超越して、向こうの人が東洋をどう捉えているかがよくわかる感じなんですけど。中国も日本も一緒なんです。

―――気がめいった?

八神:覚悟してましたから。

―――でも、三味線の音が入っていなくても、充分に日本の感じがする。それも"昔の日本"じゃなくて、"今の日本"のにおいが。いつLPは完成したんですか?

八神:私は日本で仕事があったんで、どうしても3月に帰ってこなければいけなかったんです。帰国する日の朝までレコーディングしていて、その後ブルックスがトラックダウンをして、テープが届いたのは6月の初め。

―――きいて、どうでした?

八神:重いんです、とにかく。いろんなことがあったから。

―――録音してた時のことを思い出してしまうんだ。楽しかった、L.A. は?

八神:なんか不思議な楽しさで、あの時間に戻りたいっていう楽しさじゃなかったみたい。

―――ぼくはA-②の「He's My Kind」が一番好きだな。一番心に入ってくる。

八神:ありがと・・・。あの曲はね、ピーター・アイバースという人が詞を作ってくれて、歌を入れてる時にずうっとつきあってくれたんですけど、「じゃぁまた明日ね」って別れたその晩に、お家で強盗に入られて殺されちゃったんです。この曲が彼の最後の仕事になったんです。だから、そういう意味で、歌入れの時も思い出さないように歌うんだけど、思い出してしまって。

―――・・・・・・。B面は最後に入っているバラード「You'll Take The Best of Me」がよかった。

八神:嬉しい。あれ私の曲です。

―――ブルックスに一番注意されたことは?

八神:発音。

―――LPにはたとえば「Hey Kid」(A-④)みたいな底脱けにアメリカ風にハッピーな曲とか、今までとずいぶん違った曲があるね。

八神:日本だったら絶対OKしない曲ですよね。でもやってみたんです。途中でプロデューサーと信頼関係が崩れそうになったこともあったけど、ブルックスは翌日に必ず何かアイディアを持ってきてくれたり。

―――本当にいろんなことがあったんだ。

八神:でも、私が限界近くまで挑戦できたってことは嬉しかった。すごく充実してました。

―――1、2年してからやっと自分のものになるという中身の濃いLPなのかな。

八神:すべてはこのLPがどういうふうにアメリカ人に受けとられるかにかかってるような気がするんです。

―――それは日本の人に向かって作ったLPと違うということ?

八神:気持ちは一緒です。