新型コロナウイルス感染拡大の影響は、多くの産業にダメージを与え、多くの失業者を生み出している。そして今、懸念されるのが“餓死”の増加だ。
大阪府高石市では、9月に高齢女性が餓死し、同居の息子も衰弱して入院したことが明らかになった。大阪市港区ではマンションの一室で女性2人の遺体が見つかり、司法解剖したところ、2人とも餓死したとみられることが判明した。
厚生労働省の人口動態調査には、さまざまな死因による死者数が報告されているが、その中で餓死の理由に相当する死因として考えられそうなのが、“栄養失調”と“食糧の不足”である。
そこで、2003年以降の栄養失調と食糧の不足による死者数、その合計を餓死としてグラフ化したのが表1だ。
データによると、2003年は栄養失調が1338人、食料の不足が93人、2019年では栄養失調が1934人、食料の不足が23人と、“栄養失調”が圧倒的に多いことが分かる。“食糧の不足”は2003年(93人)から低下を続けており、2012年以降は年20人程度に抑えられている。
ただし、栄養失調の原因には、高齢者等の病気に起因するものも多く、これらを一概に餓死とするのは難しい面もある。一方で、食糧不足による死者は明らかに餓死と見ることができるのではないか。
では、食糧の不足についてもう少し見てみよう。2005年、2008年、2009年、2011年に増加してはいるものの、その後は減少を辿っている。特に2008年はリーマンショック、2011年には東日本大地震が発生した年であり、新型コロナ禍で苦しむ現在と同じように、経済的に大きなダメージを受けた労働者が多く発生していた。
どうやら餓死数の変移を読み解くにあたり、経済的困窮者の推移がカギになりそうだ。