ちょっと真面目な話
===移動===>忍の里・長の屋敷
「恐れていた事が起こってしまったか・・・」
忍の里の長であるハンゾウ殿は深刻な表情を浮かべている。・・・ゲームの進行上仕方がないんだろうけど、昨日の今日でこれだからな。展開が早過ぎですよ。
「話は分かった。幸いお主らのおかげで社の場所は分かった。里の者に監視させよう。もしもの時は・・・」
「ええ、喜んで力を貸します。」
「おお!宜しく頼むぞ。」
昨日の約束どおり、力を貸す事になるのだが、実際には俺たちプレイヤー側の都合でもあるので若干心が痛む。
とここで、アナウンスが出てきた。
『レイドクエスト【神々に封印されし魔物】を受注しますか?』
・・・なるほど、ここでYESを選択すると、話が進むんだな。しかし、今は準備も何も出来ていない。残念ながら・・・非常に残念ながらここはNOを押し、長の屋敷を後にする。
「それじゃあ僕達も失礼するよ。準備が整い次第連絡するから。」
「失礼します。」
ラングやロゼさんとも分かれ、俺たちもホームに戻る事にした。
===移動===>【アークガルド】クランホーム
「さあ!張り切って兵器開発に勤しむのだー!!」
と言ってアヴァンは地下の工房に突撃していったのだが・・・今からやる気か?もう結構な時間だと思うんだが・・・。ラグマリアとカイザーが付いていったから大丈夫だろう。・・・多分。
「今回も頑張ったブランちゃんたちにお菓子を上げるのです!!」
「クルッ!」「ピュイ!」「がお!」「キュイ!」「キュア!」
・・・眷属の皆を引き連れて行くアーニャはもう餌付けの達人のようになってきた気がするな。これは俺もお菓子の作り方をマスターするべきか?
「何してんのよアルク?」
「私達も行きましょう?」
取り残された俺とアテナ、アルマだが・・・丁度良い。
「ちょっと待て。」
「何?・・・ってキャア!」
「ええ!?」
俺は二人の肩をがっしり掴み引き寄せる。顔と顔が至近距離まで近づくほどに。
「ちょ、どうしたのよ!急に!?」
「ア、アルクさん!?」
困惑する二人を他所に俺は小声で、真剣な声色で話しかける。
「ちょっと聞きたいことがあってな。他には聞かせられない内緒話って奴だ。ぶっちゃけルール違反に近いのは承知の上なんだが・・・」
俺の真剣な表情を見て真面目に聞く気になったのか二人は俺の話に耳を傾けてくれる。
「二人はαテスターだったんだろ?つまり、このゲームの開発者に近い人間だ。それを承知で聞く。今日感じた神の力、【神気】ってのは何だ?」
正直、人のリアル事情に踏み込むのはマナー違反だ。俺だってやりたくは無い。しかし、それを考慮しても確認しないと気が済まないのだ。
「このゲームは精神をダイブさせ、仮想世界に仮想のアバター・・・肉体を作って楽しむゲームだろ?アバターは人間の五感を忠実に再現した物のはずだ。気配感知や状態異常なんかもその感覚を使って再現しているって聞いてる。だが、【神気】っていうのは何か・・・精神の奥底を畏怖させるような何か・・・特別な物を感じる。あれは一体・・・なんなんだ?」
そう、あれは理屈ではなく精神に直接訴えるような・・・そう、第六感に直接働きかけるような・・・だがそんな事が人工的に可能なのか?
「・・・」
「・・・私達にも詳しいことは分かりません。私たちがテスターをしていた頃にはあんな物はありませんでした。」
・・・駄目か。そもそも二人はテスターであって開発者ではないからな。
「ただし、このゲーム自体、元々は精神の研究を行った結果で出来たものだって言うのはアルクさんも知っているでしょう?」
「ああ。」
どのゲームでもそうだが、ゲームを始める前はそのゲームの説明と同意が必要だ。特にこのゲームは精神を仮想世界にダイブさせるという特性上、要注意な事項が存在する。
例えば24時間以上、ゲームにログインし続けてはいけない、というものがある。これは肉体への影響もそうだが、睡眠の必要が無いこの世界で精神が覚醒し続けるのは、徹夜を何日も続けるくらいの精神的疲労を与えてしまうといわれているからだ。なので快適にプレイするには6時間ごとにログアウトして休息を取る事が推奨されている。
そういった注意書きを読んだ上で、ゲーム側でも精神に何らかの異常、その兆候が確認された場合は直ちにログアウト、ひどい場合は病院へ直行する事が同意に含まれている。もっともそんな事態に陥った事は一度も無いらしいが。
話が逸れたが、肉体を正常に維持しつつ精神を自由に解き放つ事が出来れば、それこそ自由に何でも可能になる、という研究を元に作り出されたのが仮想世界へ精神をダイブさせるSeven World Onlineだ。
このことはゲームの開発会社も公言している。何でも体が不自由だった当時の社長が、自由に動き回れるようになるためにはどうすれば良いか?と考えたのが発端だそうだ。
・・・と、いう話をラングから長々と聞かされた。実際、その考えに共感した研究者たちが世界中から集まって開発が行われたらしい。会社のホームページにはその当時の研究者達の名前が褒め称えるように載せられてたりする。
「当時の研究では、そもそも精神とは何か?という所から始まったそうです。【神気】というのもその研究成果の一つなんじゃないでしょうか?」
・・・さらっとすごい事をおっしゃってくれるな。多少信じられないところもあるが実際に体験してしまった以上、否定はできないな。
「あとはそうね・・・集合的無意識って知ってる?」
「・・・人間の無意識な部分の深い部分においては他人とも繋がっているって奴か?」
たまにゲームやアニメとかで出てくるな。人間の意識の集合体だとか、個人の意識は世界中の人間の意識と繋がっているだとか・・・
「そう、そしてある研究者はこう言ったそうよ。このゲームの世界は人工的に作られた集合的無意識の世界だって。」
「・・・!?」
「そうなってくるとこの世界は人の思いつくことは何でもありってことになるんじゃない?・・・いいえ、AIなんかまで介入できるとなると本当に何でもありなのかもしれないわね。」
・・・なんか壮大な話になってきたぞ。これ、ゲームの話じゃなかったっけ?
「・・・なんで笑ってるのよ?」
アテナに言われて気づく。そうか、俺は笑っているのか・・・
「・・・いやなに。俄然面白くなってきたなと思ってな。・・・いや、最初から面白かったか。だが今の話を聞いて楽しみが増えた。」
「楽しみ、ですか?」
そう、楽しみ。
「このゲームの行き着く先、っていうの?俺たちはまだまだこの世界を回りきれていない。まだ見ぬ先に何があるのかってな?」
そう、楽しみで仕方が無い。誕生日前にプレゼントを待つ子供のように、新作ゲームを今か今かと待ち続けるゲーマーのように、あるいは未知なる物を求めて旅に出る冒険者のようにな。
「・・・え?そういう反応?そこは恐れおののく所じゃないの?」
「・・・アルクさんに普通な反応を求めてはいけないってことでしょうか?いえ、悪い意味ではないのですが・・・」
・・・失礼な奴らだ。俺は穢れを知らない子供のように純真だぞ。なんでそんな、しょうがない人だなーみたいな顔をしているんだ。
「三人ともー!何をしているので・・・は、はわわわわ!し、失礼したのですー!」
俺たちを呼びに来たらしいアーニャが顔を真っ赤にさせて駆けて行った。
・・・はて?どうしたんだろうか?
俺たちは顔を突き合わせてニヤニヤしてただけなんだが・・・ニヤ(・∀・)ニヤ
「ま、待ってー!アーニャ!」
「ご、誤解ですー!」
アーニャを追っかけてアテナもアルマも駆けて行く。誤解って何だ、誤解って。
・・・まあ良い。気になる事はあるがまずは目前のレイドクエストと一ヵ月後のバトルトーナメントに備えないとな。
俺たちの戦いはこれからだ!!(笑)
===ログアウト===>お疲れ様でした。
まだまだ続きますよ?
あと感想でちょくちょく矛盾や指摘を受けています
己の不甲斐なさにダメージを受ける作者 ( ゜∀゜)っ)`3´)
直ぐには修正できそうに無いのでお許しを m(_ _;)m