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 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、埼玉県内でも人工呼吸器などを必要とする重症患者が増えている。重症用病床の使用率は28日に初めて半分を超え、過去最高に。一方、確保済みの重症用病床はまだ県目標の7割程度で、医療現場は「限界だ」と危機感を募らせている。

 埼玉県内の重症患者は29日現在、54人。重症患者をすぐに受け入れることができる重症用病床は23医療機関の107床で、使用率は50・5%に上る。県医療整備課によると、137床までは確保のめどがついているが、目標とする200床には届いていない。

 使用率が上がり始めたのは11月に入ってからだ。それまで10%程度だったものが12月になると30~40%程度で推移するように。病床の数の上では6割以上の「空き」があったが、この時点で切迫感を抱く医療現場もあった。

 重症患者の受け入れ病院の一つ、埼玉医科大学総合医療センター(川越市)の岡秀昭医師(感染症科)は「使用率40%の段階で、人手はすでにいっぱいいっぱいだった」と指摘する。

 同センターでは現在、重症患者向け4床のうち3床が使用中。1床空きがあるが、ほかに20人程度いる中等症患者の容体が悪化した場合に備えて空けておく必要があり、今月上旬以降は「新たな受け入れを断らざるを得ない状況もあった」という。

 重症患者は医師や看護師ら5人ほどのチームが24時間態勢でケアしており、かかる人手は中等症の約5倍。ほかの診療科から人員の応援をもらい、何とか対応しているという。

 岡医師は「現場はもうぎりぎり。これ以上受け入れるのであれば、新型コロナ以外の通常医療は止まる。どちらになるのか、この病院は大きな岐路に立たされている」と話す。(釆沢嘉高)

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 27日、JRさいたま新都心駅近くにある県の研修施設で、人工呼吸器の使い方を学ぶ勉強会があった。集まったのは、コロナ患者を受け入れる病院の看護師ら約40人。講師の医師らと、のどの奥にチューブを入れる「気管挿管」の介助を真剣に練習した。

 挿管のさい、患者がせき込めば飛沫(ひまつ)が飛ぶ可能性がある。実際の医療現場でもスタッフが緊張を強いられる処置だ。感染リスクにも注意を払いながら、手順や投与する薬剤を確認した。参加者は「普段あまりやることではないので難しい」「緊迫感があり言葉がうまく出てこなかった」などと振り返った。

 講師を務めた自治医科大学付属さいたま医療センターの讃井将満医師は「本来なら1年ぐらい、十分なトレーニングが必要だが、そうも言っていられない」と話す。重症者を受け入れる病院への転院が難しくなっており、これまで重症者を診ていなかったコロナ患者の受け入れ病院でも、高度な治療をせざるを得ないという。

 大野元裕知事は23日の記者会見で「重症病床は一つのベッドにかかる負担がとても大きく、増やすのがすごく難しい。研修で(重症に対応できる)人を養成し、地道に一つずつ増やしていきたい」と話した。(長谷川陽子)

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