小平の住民投票が残したもの
東京都小平市で26日に実施された道路の建設を巡る住民投票が不成立で終わった。投票率が35%と開票する条件である50%に届かなかったためだ。残念な結果だが、今後の住民投票のあり方に一石を投じたのではないか。
住民投票は市内に東京都が建設する道路を「住民参加で見直す」か、「見直しは必要ない」かを問うものだった。市民団体が署名を集めて直接請求し、3月に投票条例案が市議会で可決された。
投票率が50%未満ならば開票しないという条件は市がその後、追加した。「(投票結果を)市民の総意として扱うため」と市は説明するが、4月に行われた市長選の投票率が37%だったことからみても、かなり高いハードルだった。
投票には3000万円の費用がかかった。それなのに投票に赴いた5万人を超す市民の声を確認すらしないのはやはりおかしい。
条例による住民投票の場合、首長や議会はその結果を尊重しなければならないが、従わなくても構わない。この点、首長の解職や議会の解散の是非を決める法律に基づいた住民投票とは異なる。
今回のような投票は一種の世論調査なのだから、条件を設けるとしても、その地域の他の選挙の投票率などを勘案すべきだろう。
住民参加の手法として住民投票は有効だが、首長や議会はその実施に否定的だ。過去数年の事例をみると、住民が法律で定める数の署名を集めて条例の制定を求めても、議会が大半を否決している。
総務省は片山善博氏が大臣だった時に、大型の公共施設の建設などに限って、首長や議会が結果に拘束される住民投票制度の法制化を検討した。これも全国知事会などの反対で実現できなかった。
もちろん、住民投票にふさわしいテーマと、そうではないテーマはあるだろう。しかし、地方分権がある程度進み、自治体の権限は着実に増えている。今回の小平市の事例のように首長が民意を問うことに消極的では、住民の信頼を得ることなどできまい。