新型コロナウイルス感染者のくしゃみを浴びた場合、フェースシールドだけでは飛沫(ひまつ)物がシールドの内側に流入し、感染リスクがあることを福岡大の研究チームが実証し、29日までに米学術誌に発表した。
フェースシールドのみを装着した医療従事者が診療中に、感染者から1メートル離れた位置で正面からくしゃみを浴びる状況を想定し、コンピューターで空気の流れをシミュレーションした。くしゃみの気流で、イルカが口から吐き出す「バブルリング」のような複数の空気の「渦輪(うずわ)」ができ、これが飛沫物を運んでいる様子が明らかになった。
飛沫物は主にシールドの下端から内側に流入。くしゃみから2秒後には、放出された飛沫物の4・4%を、シールドを着けていても呼吸する際に鼻から吸い込むことが確認された。
医療現場ではフェースシールドと高機能なN95マスクを併用するケースが多い。ただN95マスクは装着時の圧迫感が強く呼吸もしにくくなるため、シールドの予防効果を検証してほしいとの相談があり、研究を始めた。
福岡大の赤木富士雄助教(流体工学)は「フェースシールドは飛沫物が入るのをある程度防ぐが、感染リスクを確実に減らすためマスクを併用してほしい」と話した。今回の成果を基に企業と共同し、飛沫物の流入を防ぐ効果が高い形状のシールドを開発中だという。(共同)