東日本大震災発生時にミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市幸区)の天井仕上げ材などが落下した問題で、川崎市は12日、日本建築防災協会に委託した被害調査の最終報告書を公表した。天井の吊(つ)り元に設置されたフック状金具の強度不足などから「フック状金具や溶接部分のいずれかに最大耐力を超える力がかかった」との見方を示した。市は設置者(UR都市機構)などに対し、損害賠償請求など法的対応を進める考えだ。
調査結果では、フック状金具の標準的な設置間隔が、使用された製品のカタログの注意事項の記載内容よりも長いことが判明。崩落部分はこうした状態で整備されていた箇所が多くを占めた。天井と鉄骨をつなぐボルトの溶接強度にも問題があったとしている。
こうした状況から、「地震によって、天井の下地組みの接合部のうちフック状金具(あるいは溶接部分)のいずれかに最大耐力を超える力がかかり、この部分が壊れて天井が垂下。隣接する下地組みも支援できなくなり、連鎖的に天井が落下していったであろうことが、計算や実験結果から説明できる」と結論付けた。
これまでの調査で、譲渡契約時の図面上にある天井下地を支える筋交いの設置箇所数が4カ所少ないことが判明。この点について、最終報告書では「筋交いが偏っていることによるねじれにより、大きく揺れた可能性がある」と報告した。このほか、天井板に大きく複雑な揺れを生じさせた推測要因として、天井板の重さ・形状(凹凸状)や下地組みの吊り長さの長短などを挙げた。天井落下が始まった場所の特定には至らなかった。
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