「ジェンダー炎上」が注目された2020年。「失敗する企業」に足りないものとは

2020年も残りわずかとなった。今年の後半は「ジェンダー炎上」について様々なメディアが取り上げていた。もともと炎上事例をよく紹介していたウェブメディアやインターネットテレビに加え、ラジオや新聞でも取り上げられるようになり、ジェンダー問題に関する取材や企業への助言などを行う私も取材にこたえる機会が増えた。

ジェンダー炎上とは、古い男性像・女性像を描いた広告やCMがSNS上で多くの批判を集めて収拾がつかなくなることを指す。この記事では、今年起きたジェンダー炎上を振り返りつつ、再発防止の方策や、ジェンダー視点で優れた広告を紹介したい。

※本稿は、12月23日に下北沢の本屋B&Bで開かれた「炎上するのが怖いからジェンダー問題には触れないなんて、言わないで欲しい」と題した対談イベントの内容をもとにしている。
イベントでは数々の話題作を手掛け、「広告界の革命児」と呼ばれるThe Breakthrough Company GO 代表でPR/クリエイティブディレクターの三浦崇宏さんと私が対談し、大手広告代理店でプランナーを務める村山佳奈女さんが構成とモデレートを務めた。村山さんは生理用品「ソフィ」のブランディングと生理の知識啓蒙を融合したプロジェクト「#NoBagForMe」の企画に関わったヒットメーカーだ。
 

「ジェンダー炎上」した2つの広告

イベントでは最初に、「炎上」とは一体何なのかについて話し合った。広告やその他の表現について、SNSで抗議する人が大量に表れるのが「炎上」であることについては異論がない。一方で、うその情報が発信され、それを多くの人が信じて拡散し、批判の声が高まることもある。事情を知らない人には「炎上」に見えるけれど、実際には名誉棄損に該当するような事例も、当日は議論に上った。そこでは「ウェブメディアが簡単に『炎上』という言葉を使いすぎるのではないか?」という問題提起があった。

炎上の中でも、今年起きたもので明確に「ジェンダー炎上」したといえる2事例は2つある。

1つ目は、「リカちゃん」のツイート。10月にタカラ・トミーの公式Twitterアカウントが「#個人情報を勝手に暴露します」というハッシュタグと共に、「(とある筋から入手した、某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね…!)」とした上で、リカちゃんの誕生日、星座、身長、体重、電話番号を記した。多数の批判を受け、タカラ・トミーは謝罪した上でこのツイートを取り下げている。

この件について、私は擁護の余地がないと考えている。「リカちゃん」は国民的なキャラクター、つまり公共財に近い商品ブランドだ。これを使って女児に対する犯罪を容認するような表現をしたことは「悪気がない」ではすまない。子どもに対する性犯罪が現実に多数起きている中、子どもを対象にした商品を扱う企業が、犯罪を容認するかのような発信をしたら、批判を受けるのは当然だ。