ここへ来るのは、もう何回目だろうか。
「あら、早苗じゃない。また来たの?」
「ええ、里での買い物が思ったより早く済んだから……」
そう早苗は嘘をついて、今日もいつものように少しばかりの時間を霊夢と一緒に過ごすことになった。
霊夢と交わす会話は本当になんでもないただの世間話だ。
早苗にとっても会話の内容自体は特別なものでもなんでもない。
しかし、早苗には、自分との会話で霊夢が笑うのがとても嬉しかった。呆れ顔をされることすらもが嬉しくて仕方がなかった。
一体いつからこんな風になってしまったのか、それを考えれば多分あの時……霊夢が守矢神社へ攻め込んできたときだと思う。
一連の騒動が決着した後、彼女はそれまで戦っていた早苗に向かってさも当たり前のような顔をして言ったのだ。
「あんたも後で、お茶のみに来なさい」……と。
一目ぼれだったんだ。我ながらなんて単純! 笑っちゃう。
それから早苗は、ことあるごとに博麗神社を訪れるようになった。
今日も里での買い物を大急ぎで終わらせて、はやる気持ちを抑えながらここへ来たのだ。
空から境内で掃除をしている霊夢を見つけた時の早苗は、誰も見たことのないような締まりのない顔をしていた。
あんな顔、誰かに見られていたらもうどうしていいか……。
「そういえばさ、早苗」
霊夢の声で、早苗は我に返る。
さいわい、ぼーっとしていたのは見咎められなかったらしい。
「なんですか? 霊夢さん」
名前を呼ばれたことにすら頬が緩みそうになるのを必死に我慢して、努めて平静を装って返事を返す。
「あんたって、ついこの間まで外の世界にいたのよね?」
「ええ……もうずいぶん昔のことに思えますけどね」
「ね、聞かせてよ」
「え、外の世界のことですか?」
「うん! 興味あるなあ。ね、聞かせてよ」
そうやって、小さな子供みたいな顔をして身を乗り出してくる霊夢はとても可愛くて、なんだか訳もなく恥ずかしくなってしまった早苗は、矢継ぎ早に話をすることで真っ赤になりそうなのを何とかごまかした。
「ふーん……外の世界ってそうなってるのね」
「ええ、こことはずいぶん違うでしょ? だからわたしも来たばっかりの時は色々困ったんですよ」
「あはは、まあそうでしょ。ここはそこらじゅうに妖怪やら妖精やらばっかりだからねえ」
「それに、外の世界にはわたし以外に巫女なんていませんでしたからね」
霊夢は、ふふっとクールな感じに笑って、ぴょんと立ち上がった。
「ね、もしさあ……」
「……?」
「もし、私が外の世界に生まれてたら、やっぱりこうしてあんたとおしゃべりしてたかもね」
肩越しにそう言った霊夢の口調はまったくいつも通りで、だけれど、その言葉は早苗の頭の中を真っ白にするには十分で、
だからもう呆けてしまったのをごまかすことなんてできやしなかった。
「ちょっと、早苗?」
「わあ!」
驚くくらい近くから無遠慮に覗き込まれて、早苗は思わず大声を上げてあとずさってしまった。
霊夢の方はそんな早苗を見てきょとんとしている。自分がなんてことを言ったのか全然分かってない顔だ。
霊夢さんのばか! 早苗は胸の中で文句を言う。
「どしたの? ぼーっとして」
「な、なんでもないですから! 気にしないで下さい」
「そお?」
そっけなくそう言うと、霊夢はまた、早苗の隣りに座って大きなあくびをした。
「もお、そんなに大口開けて……」
「いーじゃない別に。夕べ遅かったんだから」
「妖怪とお酒、どっちを相手にしてたんです?」
「両方よ……」
からかい気味にそんなことを言ってやると、霊夢はあくび混じりに答えて縁側にごろりと横になった。髪が揺れて、白い首筋があらわになる。早苗は意味もなく、息を止めてみたりした。
「ちょっと、霊夢さん、霊夢さんってば!」
「んー……湯飲みは後で片付けるから、そのままでいいわよー……」
そんなことを言いながら、霊夢は本当に眠ってしまった。
困った……。
このまま立ち去ってしまうのもなんだか悪いし、かといって起こすのも気が引ける。
とりあえず湯飲みに残ったお茶を飲み干してみたものの、それでなにがどうなる訳でもない。
視線を横にやれば、すぐ手の届くところに無防備な寝姿を晒す霊夢。
早苗は今ごろになって、自分の心臓が早鐘を打っていることに気づく。
すう、すうというかすかな寝息。
規則正しく上下する胸。
無造作に投げ出された肢体。
手を伸ばす。ふるえている指先が他人事のようだった。
髪に、触れる。
それだけで、熱のこもった吐息が漏れた。
もっと触れたい……ううん、触れ合いたい。
そう、わたしにも触れて欲しい。霊夢から触れて欲しい。
自分でも、どうしてこんなに霊夢が好きなのか、分からない。
「霊夢、さん……」
名前を呼ぶだけでも、胸がぎゅっと締め付けられる。
「れい……む……」
相手が寝ているのをいいことに、呼び捨てにしてみる。起きているときなら、絶対にこんなことは出来ない。
自分の欲求を一方的に押し付けているみたいだ……そんな理性的な考えがちくりと痛い。
指先をずらして頬の辺りに触れたときにはもうそんな考えもなくなっていた。
いつの間にか霊夢の上に覆い被さっている自分が遠くに感じられて、もうはっきり分かるのは、だんだん近づいてくる霊夢の唇だけで――
そこで、霊夢が目を開けた。
反射的に身を引こうとして、間に合わなかった。
さっきまで寝ていたとは思えない素早さで霊夢の手が伸びて、早苗の腕を捕まえた。
強引に引っ張られて、早苗はそのまま霊夢の胸の中に倒れ込む。
「やあ……っ」
早苗の口から零れたのは、かすれたようにひどく弱々しい悲鳴だった。
「お願い、離して……」
大声で叫ぼうとしたけれど、口から出たのはやっぱり弱々しいかすれ声だけだった。
どんなに声を出そうとしても、早苗の喉から出るのは、擦り切れたような声だけなのだった。
霊夢は早苗を離してくれない。何も言わずに両手で私を抱きしめて、自分の胸に押しつけていた。
どのくらいの時間が経ったのかはもうよく分からない。早苗は泣いていた。
「ね、早苗」
びくっと、飼い主に拳を振り上げられた犬みたいに早苗はふるえた。
早苗を胸に抱いたまま、霊夢は続ける。
「私のこと、好きなの?」
胸に顔を押し付けているせいで、霊夢の顔は見えない。もし身体が自由でも、霊夢の顔をまともに見ることなんてできない。
今も、そして多分、これからも……。
「ね、好き?」
しかし霊夢はいつも通りの、世間話をする時の口調で、早苗にそう聞いてきた。
「だって……寝てるときになんて……こんな卑怯なこと……」
言葉を話そうとすればするほど喉がつかえて、早苗はやっとそれだけを口にした。
情けない。消えてしまいたい。
どうしていいか分からずに、早苗はただ霊夢の腕の中でふるえるだけだった。
と、霊夢の腕が動いて、早苗のうつむいたままの顔をぐいっと押し上げた。
だめ、見られちゃう……!
「や……! 顔なんて見ないで……!」
小さな子供みたいにいやいやをすると、早苗の涙が霊夢の顔にふりかかった。
「だめ、だめぇ……霊夢さんの顔、よごれちゃう……」
弱々しく抵抗する早苗に、霊夢は嫌がりもせずにその顔を見上げて、また言った。
「早苗は、わたしのこと、好きなの?」
「……ですか」
「なあに? 聞こえない」
「好きに決まってるじゃないですかあ……!」
ほとんど泣き声で、早苗はそう言ってしまった。
もう自分が何を口にしているのか分からなくなってしまっていた。
「ずっと好きだったに決まってるじゃないですか……お茶に誘ってくれた時からずっと好きだったに決まってるじゃないですか……」
ぽろぽろ涙をこぼしながら、早苗は子供のように泣きじゃくる。
「今日だって霊夢さんに早く会いたくて、急いで買い物終わらせてきて……そしたら霊夢さんが、あんな無防備なかっこうで寝ちゃうからぁ、ちゅーしちゃいたくなるのが当たり前じゃないですかぁ、れーむさんのばかぁ……」
止まらなかった。
涙と一緒に堰を切ったように溢れ出す言葉を押さえることなんて全然できなくて、だから、霊夢が小さな声で、「よかった」と言ったのにも早苗は気づかなかった。
その言葉は早苗が何よりも望んでいた一言で、同時に、自分には決して与えられることはないだろうと思っていた一言で――。
信じられなかった。
「霊夢……え……? 今、なんて……」
「もう一回言わせる気? いじわる」
いたずらっぽくそういう霊夢の顔は、少し赤くかった。
そこで早苗はようやくはっきりと、今の状況がどういうことか理解できたのだった。
「あ……」
早苗の口から最初に出てきたのは、「うれしい」でも「ありがとう」でもなく、そんな呆けた声だった。
そんな早苗を見て、霊夢はくすりと笑った。今まで見たことのない種類の笑顔だった。
「ね、しないの?」
「え……なに、を……?」
「続き……」
呆けっぱなしの早苗が霊夢の手が自分の両頬に伸ばされているのに気づいたのは、霊夢の顔が息がかかるくらいに近くに来てからだった。
息が、詰まる――。
も、ダメ……。
「んっ……!」
待ちきれなくて、早苗は自分の方から霊夢に口づけた。
自分から唇を重ねたというのに、声を上げてしまったのは早苗の方だった。
体中が、ぶるっと震えたのが分かった。
唇を離す。
霊夢が微笑んでいる。
微笑んで、こんなことを言った。
「もう、おしまい?」
「~~~っ!」
顔どころか耳、首筋まで真っ赤になった。
「れっ、霊夢、な、な、なんてコト……!」
文句の一つも言おうとしたけれど、舌がもつれて言葉が出てこない。
そんな早苗を見て、霊夢はくすくす笑っている。
なんか、すごくくやしい……!
だからつい、もう一回、早苗は自分から……してしまった。
霊夢の腕が、早苗を抱き寄せた。
もうろくに力が入らなくなってしまっていた早苗の両腕は、それだけで体を支えられなくなり、霊夢の上に覆いかぶさるようにして倒れこんでしまった。
霊夢は早苗を抱き寄せたまま、まだ唇を離そうとしない。
霊夢の小ぶりな胸と、早苗の豊かな胸とが、二人の体の間でぎゅっと押し付けあった。
密着した体から伝わってくる霊夢の体温が、早苗を惑乱する。
「ぱはぁ……っ」
霊夢がようやく唇を離した。二人の唇の間で、熱く湿った吐息がこぼれて消える。
霊夢は何も言わず、じっと早苗の方を見つめている。その目元に、また一粒、早苗の瞳からこぼれた涙が落ちた。
それを細い指先で、霊夢はぬぐう。その指先を、今しがたまで口づけていた唇から除く舌が、ちろりとなめた。
「ふふ、しょっぱい」
そう言って笑う霊夢。
その笑顔がうれしくて、早苗はぽろぽろ涙をこぼす。
「もお、泣かないの……」
小さな子供をあやすように、霊夢は早苗を抱きしめて、頭を優しくなでてやる。
――これが、二人の始まりだった。
「あら、早苗じゃない。また来たの?」
「ええ……そ、その、霊夢に……会いたくて」
そう早苗は本当のことを言って、今日もいつものように少しばかりの時間を霊夢と一緒に過ごすことになった。
あの出来事から……早苗が霊夢に告白をし、霊夢がそれを受け入れてから、数日が経っていた。
早苗はややためらってから、縁側に腰を下ろした霊夢の隣におずおずと座った。
あれから、二人の会話はずいぶんと減った。
しかしそれは、二人の仲が険悪になったからではない。
霊夢も、早苗も、何も言わない。
はらはらと散る紅葉の中、二人は視線を合わせようともしない。
――その必要が、ないからだった。
そっと霊夢が、手を伸ばした。
早苗の手に触れる。
細い肩が、ぴくんと跳ねた。
ちらりと視線をやると、霊夢は境内に目を向けたまま。
その頬が、ほんのりと赤らんでいた。
早苗の唇から、安堵とも笑みともつかない吐息がこぼれた。
自分の手の甲に置かれた霊夢の手を、遠慮がちに握る。
もうそれだけで、世界中が最高の幸福に満ちて見えた。
何も言わず、視線さえ交わさず、ただ手をつないで、座っているだけ。
たったそれだけで、胸が熱くなる。
――このまま時間が止まってしまえば、どれだけ幸福だろう。
そんなことを本気で想い、そして霊夢も同じように思っていてほしいと願う。
だが、霊夢とそうしているときだけどこかのメイドがいじわるでもしているかのように、あっという間に時間は過ぎてしまう。
「……わたし、そろそろ行きますね。お夕飯の用意しなくちゃ」
「ん、うん」
霊夢はいったんそう返事をしてから、意地悪くタイミングを計って早苗の背中に声をかけた。
「ね、キスしていかない?」
ばね仕掛けのおもちゃのように跳び上がる早苗。
「え……え……?」
振り返った早苗の顔は、霊夢の何倍も赤い。
「あ、う、え、えっと……」
意味もなく周りを見回す早苗。
病気にでもなったかのような動悸を押さえつけながら、かがみこむ。
「え……と、その、……いいですか?」
「そんなこと聞かないでよ、ばか」
からかうようにくすくす笑う霊夢の顔も、やっぱり赤い。
かすかに開いた唇から、熱い吐息が漏れ、早苗のそれと溶け合った。
ん……と、離れ際にどちらからともなく甘い声が漏れた。
「……じゃあ、もう帰ります。このままだと、帰れなくなっちゃう……」
「わたしも、このままだと帰せなくなっちゃうわ。じゃあ、また来なさいよ」
ふふっと笑いあい、早苗は博麗神社を後にした。
日の沈む空の中を飛んでいく早苗の顔は、夕焼けがなくても真っ赤だったに違いない。
はぁ、はぁ、はぁ。
夜の帳の中、なまめく吐息とその熱が夜気を押しのけている。
すらりと伸びた足がときおりふるえ、中途半端に脱がされた寝巻きから覗く肌は上気している。
細い指先が揺れる乳房の先端をつまみ上げ、とくとくと蜜をこぼす花芯に沈み込む。
「れぇ、む……さぁ、ん……」
両手を股間に伸ばすと、腕の間で乳房が押しつぶされる。
指先で自らの秘所を暴きながら、早苗は熱い吐息とともに、脳裏に思い描く相手の名を何度も呼んだ。
乳房よりも、秘所よりも、その名前こそが早苗の官能を刺すように刺激する。
「ひぅぅぅ……っ!」
背中が浮いた。
耳の奥に霊夢の声を確かに聞いて、早苗は一気に絶頂に押し上げられる。
指先がさらに深く秘所に沈み込み、蜜を撒き散らした。
絶頂を待ち焦がれるように充血した淫核を指の腹で押しつぶすと、きつく閉じたまぶたの裏に星が散るのが見えた。
「っあ! れぇむ、さぁぁん……! い、く……! いくぅ……んぅぅぅっ!」
断続的に全身が震えるたびに、乳房が跳ねて汗を飛び散らせる。
数秒間の絶頂と硬直の後、早苗の汗ばんだ背中が、どっと布団に倒れこんだ。
激しく息をつきながら、早苗は今しがた自らを絶頂に導いた指先を、口元に持ってくる。
「霊夢……さぁん……ん、ちゅぱ……ちゅう……」
昼間の神社での霊夢の顔、つないだ手の感触、そして別れ際のキス。
それを思い出しながら、早苗は赤ん坊のように自分の指をしゃぶる。
「霊夢さぁん……わたし……えっちなコになっちゃったよぅ……霊夢さんの、れぇむさんのせいだぁ……」
そこにはいない想い人を非難しながら、早苗は自分の肌に指を這わせるのを止められない。
霊夢の笑顔が、遠慮がちに重ねた指先が、赤く染まった頬が……すべてが、恋しい。
今すぐにでも博麗神社へ飛んで行きたい。そうして……。
今しがた達したばかりの体に、新しい熱が灯るのを早苗は感じた。
まだ震えが収まらない内腿のあたりを、湧き出す蜜が濡らしていく。
「……もっかい、しちゃお……」
きゅっと爪先を布団に立てて、早苗は再び指を動かし始めた。
濡れた唇が、うわごとのように霊夢の名を呼び求める。
「んんんぅぅぅ……! こんど、会いに行ったらぁ……がまんできなく、なっちゃうかも……押し倒して、いっぱいキスして、それから、それからぁぁ……!」
自らの指先の立てる淫らな水音に、早苗はさらに喘ぐ。
「れぇむさぁん、れぇむさぁん、れぇむさああああっん、ん、はぅぅぅ……っ!」
幼い子供のような甘ったるい悲鳴を上げながら、早苗は全身を震わせて達した。
激しく息をつきながら、薄い意識の中で、早苗はもう一度霊夢の名前を呼んだ。
「……」
「……」
博麗神社の境内に降り立った早苗に、霊夢は何も言わない。早苗も何も言わない。
ただ、恥ずかしそうに微笑みかけただけ。
そうして二人は、今日もいつものように少しばかりの時間を霊夢と一緒に過ごすことになった。
いつものように早苗が隣に座ると、霊夢は黙ったまま早苗の手に自分の手を重ねた。
肩どころか、全身が跳ね上がりそうになるのを、早苗は全力で押し留める。
霊夢の手が、触れている。
夕べ、あんなことをした自分の手に……。
早苗の胸中を、興奮とも罪悪感ともつかない感情が満たしていく。
ちらり、と霊夢の方を見やる。
いつもと同じ、霊夢の横顔。
その横顔が、ひどくきれいに見えるのは、なぜだろう。
一度そう見えてしまうと、いつもとまったく同じ霊夢の姿が、どうしようもなくそんな風に見えてしまう。
風に揺れる黒髪からのぞく首筋は、こんなにも艶やかだったろうか。
広い肩口から見えるさらしを巻いた胸元は、こんなにもなまめかしかっただろうか。
「霊夢、さん……」
ほとんど吐息をつくように、霊夢の名前が唇からこぼれた。
霊夢はちらりと、目だけで早苗の方を見る。目が合った。
「……えへ」
やけに子供っぽい顔で、霊夢は笑った。
「ね、早苗」
「はい……?」
霊夢は少しためらうように視線を地面に落としてから、言った。
「早苗が、嫌じゃなかったら、さ」
そこまで言って霊夢は言葉を切って、視線を外した。ふいっと横を向いたその耳元が、ほんのりと赤くなっている。
「お昼寝しない? その……一緒に」
言ってから、霊夢は顔を真っ赤にした。
早苗の方は、たった今霊夢が口にした言葉をのろのろと頭の中で反芻していた。
霊夢は何も言わず――もしかしたら言えず――うつむいたままだ。あろうことか、泣きそうにさえ見える。
「えぅっ……」
慌てて何か返事をしようとして、おかしな声を漏らしてしまう早苗。
気まずい沈黙。
1秒が異常に長い。
「あっ、あの、言ってみただけだからね!? 別に早苗がいやなら、無理には……」
「そんなことないですっ!」
大声でさえぎる早苗。
びっくりして目を丸くする霊夢。
二人はしばらくそうして間抜けな感じで見詰め合っていたが、どちらからともなく吹き出した。
そうして二人は笑いながら、布団の用意をした。
霊夢が持ってきた布団が一組だけだったのに、早苗は奇妙なうれしさを感じて、また笑った。
布団を敷き終わると、二人は何も言わずにもそもそとその中にもぐりこんだ。
閉めた障子を薄く染める夕日の中、早苗はうつぶせになって霊夢の方をうかがう。
一人分の布団の中に霊夢のぬくもりとにおいとが満ちていて、早苗は酒に酔ったように小さく息をつく。
「……へへ」
そんな早苗の顔を見て、霊夢はくすりと笑みを漏らした。
ひょいと手を伸ばして、早苗の頬に触れた。
「早苗、顔赤ーい。うりうりっ」
「か、からかわないでください……もぉ」
「ね、早苗、もっとこっちおいでよ」
「……霊夢さんって、自分から誘うくせに、恥ずかしがってますよね」
自分の顔が、今どんなに真っ赤になっているんだろうな……そんなことを頭の隅で考えながら、早苗はもそもそと霊夢の方へ体をすり寄せた。
息がかかるほどの至近距離に、霊夢の顔。
かすかに開いたその唇から、自分と同じように吐息が漏れているのに、早苗は気づいた。
――霊夢さんも、どきどき、してる……。
身じろぎするだけで、肌が触れ合ってしまいそうなすぐそこに、霊夢がいる。
ふと、霊夢の手に早苗の小指が触れた。
それだけで早苗は、肩が跳ねるのを抑えられなかった。
それに霊夢がくすりと笑みを漏らす。
からかわれたような気分になって、何か言ってやろうと口を開きかけたとき、霊夢がそっと自分の小指を早苗の指に絡めた。
たったそれだけのことで、圧倒的な多幸感が、早苗を襲った。
告白した。抱きしめあった。キスもした。そして今こうして、ひとつの布団の中にいる。
しかし早苗には、そのちょっとしたふれあいが、今まででいちばんしあわせだった。
それが顔に出たのか、霊夢は早苗を見つめながら、ひどく優しい笑顔を浮かべた。
「ふふ……」
霊夢は小さく笑って、絡めた早苗の指に、キスをした。
「ふぁ……!」
それだけで早苗は、甘い声を漏らしてしまった。そんな早苗を見て、霊夢は小さく笑う。
からかわれたようで、早苗はなんだか悔しくなってしまった。自分だって、顔、赤くしてるくせに……。
「……そういうこと、あんまり軽々しくしないで下さいよぅ」
「じゃあ、さ。早苗も……」
「はい?」
霊夢の白い喉が、「んくっ」と唾を飲み込んだのが分かった。
「じゃあ早苗も……早苗も、すれば……いいじゃない」
「え……えええええ!?」
「な、なに大声上げてるのよ」
「え、だ、だって……その……」
早苗はしどろもどろになって、視線を泳がせる。
そしてようやく落ち着いて、ぽそっと言った。
「……知りませんからね、どうなっても」
「……何するつもりよあんた」
「そんなこと言えるわけないじゃないですかぁ……もぉ」
冗談を返しながら、早苗は霊夢の方に両手を伸ばして、体を摺り寄せる。
顔が近づくにつれて、お互いの息が荒くなっているのがはっきりと分かった。
霊夢の瞳が、かすかに潤んでいるのがはっきりと分かった。
その頬が帯びた熱が、はっきりと分かった。
「霊夢、さぁん……」
消え入るような早苗の声は、二人の唇の中に溶けた。
唇を離し、今度は頬に口付ける。
「霊夢さん……ぎゅって、していいですかぁ……?」
離した唇から漏れた早苗の声は、甘い熱を帯びている。
「な、なに、そんな甘えた声出してるのよ……」
「だって……なんだか、そんな気分なんだもん」
霊夢の返事を待たずに、早苗は霊夢を抱きしめる。
髪に鼻先をうずめると、甘い香りでくらくらしそうになる。
霊夢も同じだといいな、と早苗はぼんやりと思った。
「霊夢さぁん、霊夢さぁん……んぅーっ、ちゅ、ちゅ……」
早苗は頬を摺り寄せながら、霊夢の頬や唇にキスの雨を降らせる。
霊夢はくすぐったそうな顔をして、でも笑っていた。
「早苗の、あまえんぼ……かわいいっ」
そう言って霊夢は、早苗の顔を抱き寄せて、その鼻先にキスをした。
「もっと、もっとぉ……もっと、キスして、ほしいです……」
「言われなくても……するわよ」
早苗が目を閉じると、霊夢はその両頬に手を添えて、そっとキスしてくれた。
唇を離すと、すぐそばに霊夢の赤い顔。
「……へへ」
ちょっと子供っぽい笑顔で、霊夢が笑う。
「なんか、しあわせだな……」
「わたしも、しあわせ……」
二人は見詰め合って、小さく笑った。
うつ伏せになった霊夢の上に、早苗が覆いかぶさる。
霊夢が自然に手をつないでくれたのが、早苗にはうれしかった。
自分と同じように、どきどきして、恥ずかしがって、頬を火照らせてくれるのが、早苗にはうれしかった。
密着した体に伝わってくる体温が、にじむように心地よい。
「霊夢さんは……」
「うん?」
「霊夢さんは……こういうことするつもりで、お昼寝しようなんて、言ったんですか……?」
なるべく責めるような口調にならないように、そう聞いてみた。
我ながら間抜けな質問だとは思ったけれど、聞かずにはいられなかった。
興味というよりは、不安から……否、期待からだった。自分と同じ気持ちでいてほしい、自分と同じことを望んでいてほしい……そういう期待があった。
浅ましい、という気持ちが少しだけ浮かび上がってきて、早苗は霊夢から少し目をそらした。
霊夢はすぐには答えなかった。二人は抱き合ったまま、沈黙を保っていた。
密着した肌から、霊夢が答えるのをためらっている気配が伝わってくるのが分かった。
嫌われてしまったかも、という考えがわきあがってきそうになったとき、やっと霊夢が答えてくれた。
「ずっと……」
そらしていた視線を霊夢に戻す。
「ずっと、早苗と、こういうことしたいって……思ってた。でも、そんなの言えるわけないじゃない……」
霊夢の声の端々に、泣きそうな気配が見え隠れしていた。
でも早苗には、霊夢の告白を黙って聞いていることしかできなかった。
「もう……言っちゃうね? わたし、早苗とこういうことするの想像しながら……その……」
霊夢がもぞりと身じろぎした。はぁ……とかすかに息を漏らす。それだけで早苗は、自分のそこが、じわりと熱くなるのを感じた。
「しちゃったん、だ……ひとりで……」
霊夢の顔が一瞬、くしゃくしゃに歪んだ。
その顔が涙で崩れそうになった瞬間、早苗は間髪入れずに叫んでいた。
「わたしもしました!」
「へ?」
「わたしも、霊夢さんのコト思って、ひとりえっちしてました! だから……」
さっきまで叫んでいた声を尻すぼみになる。霊夢の泣きそうな顔につられて、自分まで泣きそうになりながら、やっとのことで続きを搾り出した。
「だから今度は……ふたりで、しませんか……?」
霊夢はぽかんとしていたが、今まででいちばん顔を赤くして、それから潤んだ瞳からとうとう涙を一滴こぼして、そして、くすりと笑った。
「早苗って……ヘンな子だよね」
「霊夢さんのせいですもん……」
「……じゃあ、しよっか」
「……うん、しましょ……」
二人は体を起こす。
夕日の差し込む部屋で、さっきまで抱き合ってキスしていた霊夢の姿は、いつもよりも何倍もきれいに見えた。
どちらからともなく、手をつないで、口付けた。いつもより長く。
唇と離そうとした霊夢の頬を、早苗の両手が捕らえる。
「まだ、ダメ……」
ささやいて、また口付ける。今度は、もっと深く。
「ん、むぅ……」
うめく霊夢。舌を入れると、つないだ手にきゅっと力がこもったのが分かった。
少し唇を離して舌を触れ合わせる。ぴちゃ……と濡れた音がした。
「んーん、れるぅ、れるん……れぇむ、さぁ……ん」
「ん、ちゅ、んむぅ……さなえ……」
ようやく唇を離すと、二人の唇の間に名残惜しげに糸がかかった。
「霊夢さん……脱がせて、ほしいな……」
甘えた声で早苗が言うと、霊夢はそろそろと手を伸ばした。指先が震えていた。
衣擦れの音、そして、自身の吐息に、早苗は明らかに高ぶっている自分を自覚した。
初めての経験だった。こんなに誰かが、ほしくなるのは。
不器用な霊夢の手つきが、焦らしているようにすら感じる。
はやく、はやくぅ……。
わたしを、裸にして……。
今まで隠していた自分を、想いを、全部、暴いて――。
するりと上着を滑り落とした肩は、吐息に合わせて上下していた。
そして、下着に包まれた豊かな乳房も。
すでに上気していた肌の上を、汗が一筋伝って、深い谷間の奥に滑り落ちていった。
「きれい、だな……」
そう言って霊夢は、早苗のブラジャーのレースに指先で触れた。
「えへへ……霊夢さんに会うときは、いつもお気に入りの、つけてたんですよ?」
「ん、えと……そじゃなくて……」
霊夢は少し言いよどんで、ちらりと早苗の胸元へ視線を向けた。
「早苗の……早苗のからだが、きれいだな、って……」
「あはっ、うれしいなぁ……。ほめてもらっちゃった! ね、霊夢さん」
「ん……?」
いつもはけっこうクールな霊夢が、照れたり赤くなったり恥ずかしがっていたりするのが、早苗にはなんだかうれしかった。うれしくて、ついついからかってみたくなってしまう。
早苗は胸の上に両手を乗せて、汗ばんだ乳房をくいっと突き出してみせた。
「早苗のおっぱい……スキですかぁ?」
「えぅっ……」
おかしなうめき声を漏らす霊夢。それを見て笑う早苗。
「あんた……なんか性格変わってない?」
「だぁってぇ……霊夢さんが悪いんだもん。わたしのコト、こんな風にしちゃったのは霊夢さんなんですよ?」
くすくす笑ってやると、霊夢はすねたような顔をする。それがまた可愛くて、うれしかった。
「ねえ、答えてほしいなぁ。わたしのムネ、すき?」
可愛く小首を傾げてやると、霊夢の顔がますます赤くなった。
甘い勝利感に酔いつつ、早苗は微笑む。
「ね、霊夢さん、ぜんぶ、脱がして下さい?」
「ん……うん……」
早苗のブラジャーに手を伸ばすが、着けたことがないのか外し方が分からないようだった。
もどかしい手つきをひとしきり愉しんでから、早苗は助け舟を出す。
「霊夢さんは、こういうのあんまり着けないんですか?」
「ん……だから、外し方とか、よくわかんないや……」
「じゃあ、はい。種明かしです」
そう言って早苗は霊夢に背を向けた。
「背中のとこ、ホックになってるから、それで……」
「ん、と……ここかな?」
「ひゃん!」
思わず声を上げてしまう早苗。
肩越しに振り返ると、霊夢はびっくりした顔をしている。
「あ……あの、背中、弱いんですよ、わたし……」
「あ、えと、そなの……ごめん」
一瞬沈黙した後、二人は間抜けな感じで、ごまかすように笑った。
「え、えとですね、そこの、合わせ目のところ……うん、上下にずらして……」
「うーんと、こうでいいのかな……?」
試行錯誤の後、小さな音を立ててホックが外れた。
ブラジャーから開放された乳房が、たぷんと揺れる。
背中にくっついていた霊夢が、耳元で息をつくのが分かった。
「おっきい……」
「触って、みます?」
霊夢の手が、遠慮がちに早苗の乳房に添えられる。おそるおそるといった感じの手つきが少しもどかしい。
自分で触れるときとはまったく違う、じわりと沁みるような快感を、早苗は覚えた。
はぁー……っと、深く息をつく。
「わ、あ……早苗のおっぱい、たぷたぷだぁ……ぽよぽよって、揺れてる……」
手のひらに乗せた乳房を揺らしながら、感心したようにつぶやく霊夢。
霊夢が何かしゃべったり、息をするだけで、その吐息が首筋や耳元にかかって、早苗は肩をふるわせる。
「ね、ねぇっ、もっと、触ってもいい……?」
「うん、いいですよ……でもぉ……」
肩越しに振り返って、早苗はすっかり出来上がってしまった感じの霊夢に、かわいくウインクしてみせた。
「やさしくしてくれなきゃ、やぁですよ……?」
「う、うん……優しく、するね」
霊夢は両手を、すくい上げるように動かした。
手の中で、乳房はやわらかく形を変える。
「やわらかくって、熱い……よ」
「だって、霊夢さんに触られてるからぁ……んぅ……」
「早苗は……こんな風に、触ってたの……? ひとりで、するとき……」
言葉の端々に吐息を乱れさせながら、霊夢は問う。
「そんなこと……はぁ……聞かないで下さいよぅ……でも……」
同じように乱れ始めた吐息の下で、早苗はくすりと笑みを漏らした。
「霊夢さんの手の方が、ずぅっときもちいい……です……あ、あ……」
早苗の吐息に誘われるように、霊夢は両手を乳房の感触を味わうように動かす。遠慮がちな刺激だったが、早苗にはそれが、気遣ってもらっているようでうれしかった。
早苗が吐息を漏らすたびに、霊夢もそれに釣られるように吐息を漏らす。
耳元にかかる霊夢の吐息が、たまらなくいとおしい。
「あ、は……霊夢さん、はぁはぁしてるぅ……」
「だ、だって……どきどきするんだもん……早苗の声、やらしくて、かわいくて、どきどきするんだもん……」
うわごとめいた口調で、霊夢はそんな言い訳をする。両手でぎゅっと乳房を寄せるように愛撫されて、早苗は肩を震わせた。
それでも刺激が足りなくなってきた。性的な快楽が、というよりも、霊夢に触れてほしい、霊夢に甘えたいという気持ちが、どんどん嵩を増してきた。
「早苗のおっぱい、触ってると……じわーって、熱いよ……早苗のからだ、なんか……えっち……」
愛撫しているのは自分だというのに、霊夢は呼吸を乱れさせながら、甘ったるい口調で文句を言う。
「早苗の……えっち……おっぱいも、おしりもおっきくって、早苗のからだ、えっちだ……」
「それって……ふふ、ほめてくれてるんですよね?」
「ばか……」
抗議のつもりか、霊夢は早苗の乳房に添えた手にぎゅっと力を入れた。
「はぅん……もっと、ぎゅうってして、くださ、あ、あはぅ……」
眠ってしまった霊夢に、こっそりキスをしようとして泣いてしまったことがウソのようだ。今はこんなに、素直に求められる。
霊夢を想って自慰にふけってしまった事に対する小さな罪悪感も、もうなくなっていた。
裸の背中に感じる霊夢の体温とやわらかさ、そして鼓動が、早苗をさらに熱くしていく。
「霊夢さぁん……さきっぽ、乳首……も、触ってくださぁい……」
「え、えと……こう……?」
霊夢は指先で、遠慮がちに早苗のつんと尖った乳首をつまんだ。中途半端な力加減に、早苗は焦燥感にも似たもどかしさを覚えた。
背筋に断続的なふるえが走り、早苗の漏らす吐息が高くなる。
「早苗の、さきっぽ、こんな……こりこりになってる……」
霊夢が指先で早苗の乳首を押し込んでやると、固くなった乳首は柔らかい乳房に埋もれた。
指を離すと、埋もれた乳首がぴょこんと飛び出す。
「あはは……なんか、かわいいな。ほら、くにゅ、くにゅって……」
「ひぅん……さきっぽ、さきっぽ、気持ちいいのぉ……」
「ね、早苗、どんなふうにするのが気持ちいいの? おしえて、早苗……。わたし、早苗のこと、気持ちよくしてあげたい……」
「あは……ぁ、うれ、しい……ですぅ……でもぉ……」
早苗は首をそらして、後ろにいる霊夢を見つめる。潤んだ瞳で、精一杯の愛情をこめた視線を送る。
「霊夢さんがぁ……触ってくれるなら、それだけで、わたし……きもちよくなれちゃいますから……だから……」
早苗の手が、そっと霊夢の手をとった。桜色に色づいた乳房に押し当てる。
「もっと、して……?」
霊夢はその言葉に導かれるように、早苗の乳房を愛撫し続けた。
円を描くようにもみしだき、揺らし、絞り上げる。
乳房は霊夢の指の動きに従順に応え、その形を変えていく。
「早苗のおっぱい……すべすべで、やぁらかぁい……」
「れぇむさぁん……もっと、つよくしてもいいからぁ、ぎゅーって、してくださぁいぃ……」
「ん、うん、ぎゅーって、するね、こぉ……?」
早苗の指は快楽にふるえながらも霊夢のそれに絡みつき、導いていく。
固くなった乳首を指先でつまみ、引っ張る。持ち上げると、柔らかな乳房は釣鐘型に形を変えた。
指を離すと乳房はぷるんと波打ち、ピンク色の乳首の先から汗のしずくが飛んだ。
早苗の肩が小刻みにふるえ、吐息が切なげなスタッカートを刻み始めた。
「早苗、いっちゃいそう……なの?」
心配そうな声でそう聞いてくる霊夢に、早苗はすっかりとろけた声で返事を返す。
「はぁぃぃ……れぇむさんのゆびでぇ、わた、ひっ、もぉ……いきそ、ですぅ……れぇむさぁぁん……」
霊夢の名前をしきりに呼ぶ早苗。霊夢も息を荒げながら、固くしこった乳首をしごく。
「さなえっ、さなえ……きもちいいっ? きもちいいの、さなえ……?」
「は、ひぅんっ……! いいれ、すぅぅ……! ちくびっ、ちくびっ、こりこり、いいよお……あ、あ、あ、も、らめ……い、く、よおお……っ!」
早苗の両手が自分の乳房をしぼるように握り締める。同時に霊夢の指先が、乳首を摘み上げた。
爪先がぎゅうっと握り締められ、背筋を反り返る。
「はぅ、はぅ、はぅぅぅ……! んにゃあああああううぅぅ……!」
断続的な痙攣が早苗の全身を襲った。霊夢の腕の中で、早苗の熱い身体が跳ね、乳房が揺れる。
ひとしきり身体を躍らせた後、早苗は背中から霊夢の胸に倒れこんだ。
息を荒げながら、絶頂の直後のぼんやりした視線で霊夢を見上げる早苗。
霊夢も同じように荒い息をついていたが、不意にふっと笑みを浮かべた。
「早苗……かわいかった……」
「ふぇ……?」
「早苗の、いっちゃうとこ。びくびくーってふるえて、切なそうな声上げて……かわいかった」
そう言って霊夢は、幼い子供をあやすように、早苗の頭を優しく撫でてくれた。
その感触に早苗は、今しがた味わった絶頂以上の、それとはまったく異なった、安堵と快楽の入り混じった官能を覚えた。
「ふにゃあ……♪」
ひどく甘い気分になって、早苗は目を細めて子猫のように幼い笑みを浮かべた。恥ずかしさとくすぐったさが入り混じった、不思議な気分だった。
そんな早苗に、霊夢は優しく微笑んでくれた。
霊夢の表情、触れてくれる指の感触、背中を預けた胸の柔らかさ……それらすべてが、早苗に酩酊にも似た多幸感をもたらしていた。
「おっぱいだけで……いっちゃいまひた……」
「早苗の、えっち……かわいい……」
霊夢の手が、そっと早苗の頬に添えられた。早苗は赤ん坊がむずがるように、んん……と声を漏らす。
頬を指先でくすぐられるのすら、麻薬的な快楽だった。
身をかがめて、まだ呼吸の整わない早苗の唇に、霊夢はそっと口付ける。
口付けている間も、霊夢は早苗の髪や頬を優しい手つきで撫でていてくれた。
唇を離し際、霊夢はもう一度、「かわいい」とつぶやいた。
「ねぇ、早苗……」
肩から手を回して早苗を抱きしめて、汗ばんだ額に唇を寄せて、霊夢が言う。
その言葉ははっきりと熱を帯びて、甘い。
「わたしも、もぉ……ね? してほしいの、早苗に……いっぱい……いろんなトコ……」
とろけるような幸福感。霊夢が、求めてくれている。
布団の中でしてくれたように、早苗は霊夢の手をとって、そっと口付けた。それだけでは足りず、舌先をちろりとその指に這わせる。霊夢の手が小さくふるえた。
「うん……しますぅ……れぇむさんのこと、いっぱい……きもちよく、しちゃいます……いっぱい、いっぱい、ちゅっちゅして、さわさわして……ごほーし、しますぅ……♪」
早苗は身じろぎして霊夢の方に向き直ろうとするが、絶頂の余韻が抜けていないのか、力がうまく入らない。そのまま二人して後ろに倒れこんでしまった。
「いたた……ちょっと早苗、大丈夫?」
「えへへぇ……気持ちよすぎて、力、はいらにゃぁい……」
霊夢の胸に顔をうずめて、早苗は酔っ払ったように甘えてみせた。
ふらふらと危なっかしく身体を起こすと、もぞもぞとスカートを脱ぎ捨てる。
「ほらぁ……見て、れぇむさぁん……もぉ、ぱんつ、ぐしょぐしょ……」
「ほんと、だ……濡れ、てる……」
スカートの下の緑と白のストライプのショーツ、そしてすらりとした太ももの辺りはじっとりと湿っている。
濡れて肌に張り付いたショーツには、薄布一枚隔てた向こうにある秘部のかたちがうっすらと浮かび上がっていた。
霊夢ののどが、こくんと鳴った。
「れぇむさんが、いっぱい触ってくれたからぁ……こんなになっちゃった……」
ひどく幼い顔で早苗は微笑んで、霊夢に覆いかぶさった。たどたどしい手つきで、霊夢の着衣を解いていく。
早苗の指先が肌に触れるたびに、霊夢は身体をふるわせる。
「うふふ……なんだか、プレゼントのリボン、ほどいてるみたぁい……」
「なに言ってるのよ、ばか……」
するりとさらしを解くと、上気した肌があらわになる。
解いたさらしの白さが、なおのことその肌の色を引き立てて見えた。
「あは……れぇむさんの裸……白くて、ピンク色で……お菓子みたいだぁ……」
そんなことを言いながら、早苗は身をかがめて霊夢の小ぶりな乳房をやわやわともみしだく。
小さな嬌声を漏らす霊夢を見下ろしながら、早苗はくすくすと笑みをこぼしていた。
「ふふ……」
「な、何笑ってるのよ……」
霊夢が小さなふるえの混じり始めた声でそう問うと、それには答えず、早苗はふっと笑った。
「れぇむさんのおっぱい、白くて、やわらかくて……えへへ、マシュマロみたいです……♪」
笑みと吐息をこぼしながら、早苗は霊夢の肌に舌を這わせた。
ぴちゃ、とかすかな音とともにおなかの辺りに舌が触れ、ふるえる肌を上に向かって上っていく。
ちゅ、ちゅと断続的に口付けるたびに、それに合わせて霊夢はスレンダーな肢体は跳ねさせ、手で押さえた口元から嬌声を漏らす。
笑みを浮かべた早苗の唇が、柔らかな曲線を描く乳房のふちに触れた。舌先で押してやると、ぷにゅ、ぷにゅんとプリンのようにふるえる。
唇と舌が乳首へと近づいていくと、霊夢の声の色が変わり始めた。
早苗が上目遣いに霊夢の方を伺うと、霊夢は吐息をこぼしながら早苗を見下ろした。
その瞳に求めるような色を見て、早苗はそっと霊夢の乳首に舌先で触れた。
「……っん!」
霊夢の身体がびくっと激しく跳ねた。
円を描くように舌先を動かしてやると、霊夢の漏らす声色が、少しずつ甘やいできた。
ぷっくりとけなげに膨らんだ乳首を舌先で弄び、口に含んでやる。
漏らす声と同じに、たまらない甘さがあった。
「んーっ、んっ、んっ、ちゅぱ、ちゅう……」
「ひぁ……! や、あ、それ、それ……だめえ……あっ、あっ、ちゅうちゅう、だめ……」
弱々しく身をよじる霊夢。愛撫から逃れようとするかのようなその動きが、むしろ淫らだった。
ちゅぱぁ……と、音を立てて霊夢の乳首から唇が離れる。
名残惜しげに唾液の糸がかかり、ぷつりと切れ、霊夢の胸元に落ちた。
「あは……♪ れぇむさんのおっぱい、あまぁい……」
愛撫の感触を反芻するように、早苗は指先に舌を這わせた。その様を、霊夢はとろんとした目で見つめている。
くたりと脱力した霊夢の頬に、早苗は優しく口付ける。
「きもちよかったですかぁ……?」
耳元でそうささやいてやると、霊夢は両腕がふらふらと伸ばし、ぎゅっと早苗を抱きしめた。
早苗も同じように、霊夢の汗ばんだ背中に手を伸ばす。
「そんなこと聞かないでよ、ばか……」
「えへへ、ぎゅーっ……♪」
熱を帯びた二人の身体の間で、乳房がぎゅうっと押し付けあう。
ほんの少し身じろぎするだけで肌がこすれ、二人は小さく声を上げた。
「さな、え……、早苗ぇ……」
とろけた声で呼ばれるだけで、早苗は身体の芯がしびれるような快楽を覚えた。
霊夢が腰をもぞもぞ動かして、スカートを爪先から脱ぐ。その動きでさえ快感だった。
「んーっ、れぇむさぁん……」
自分でも驚くほど甘い気持ちになって、早苗は幼い子供がそうするように、火照った頬をすり寄せる。
「くすぐったいよ、早苗……」
言いながら霊夢は、早苗の頭を抱き寄せてくれた。
霊夢の肌の感触、吐息、滴り落ちる汗すらもが、幸福に満ちていた。
「わたし……すごくしあわせ……」
甘くささやいて早苗は、唇を重ねる。伸ばした舌先がぴちゃりと音を立てて触れあい、絡まる。
細い腰が淫らにくねり、すっかり濡れそぼったそこを霊夢のふとももにすりつける。
「ほらぁ、おっぱいも、ぎゅーって……さきっぽもぉ、つんつんっ……♪」
重なり合った乳房が、お互いに押しつぶしあい、やわらかく形を変える。固くしこった乳首がこすれあうたび、二人は甘い声を上げた。
早苗は甘くとろけた微笑を浮かべながら、多幸感に身を委ねていた。
絡めた指を霊夢が握り返してくれることが、自分の流した汗と霊夢のそれが交じり合うことが、肌をすり寄せる度に霊夢がその肢体をふるわせることが、ひとたまりもなく早苗を恍惚とさせていた。
「れぇむさん、きもちいいですかぁ……? わたしのからだ、きもちいいですかぁ……?」
霊夢は、はぁ、はぁと息をつきながら早苗を見下ろした。
その潤んだ目に、早苗はたまらない幸福感を覚えた。
はぁ……っ、と、吐息をこぼしながら甘く微笑む早苗。
「れぇむさん、もっときもちよくしてあげる……わたしにしてくれたみたいに、してあげますね……」
言いながら早苗は、すでにじっとりと濡れた霊夢のショーツに手をかける。
薄布一枚の向こうには、ひくつく秘部の形が透けて見えている。
「わぁ……もう、こんなに濡れてる……」
「い、言わないでよぉ、ばかぁ……」
弱々しい声で抗議する霊夢に、早苗はくすりと笑みを漏らした。いたずらっぽく聞いてやる。
「れぇむさん、そんなによかったんだぁ、わたしのからだ……」
「だ、だって……だって、早苗が、早苗がぁ……」
「えへへ……わたしのせいに、しちゃうんですかぁ……?」
「だって、早苗が……かわいいんだもん……早苗がかわいいから、こんなになっちゃったんだもん……い、言わせないでよこんなこと……」
真っ赤になった顔を覆った指の間から潤んだ瞳をのぞかせて、霊夢がか細い抗議の声を上げる。
早苗は笑みを浮かべた唇を、霊夢の太ももに寄せる。
そっと口付けると、霊夢の足がぴくんと跳ねた。
へへ、と早苗は笑い、汗ばんだ太ももに火照った頬をすり寄せる。
「えへへ、すべすべー……んぅーん、ちゅ、ちゅ……」
「やああん……くすぐったい……」
両足をもじもじさせる霊夢の声が、少しずつ幼くなっていく。
早苗がそっと濡れたショーツに手をかけても、霊夢は抵抗しなかった。
ゆっくりと霊夢を、そして自分自身をじらすように、ショーツを脱がせていく。
最後の残った一枚を脱がされ、霊夢は一糸まとわぬ姿になった。
霊夢は両手で顔を覆うばかりで、あらわになったそこを隠そうとはしない。
ひくん、ひくんと切なげに収縮をくりかえすそこは、誘うように濡れ光っている。
「れぇむさぁん……いっぱい、いっぱい……きもちよくしてあげますね……」
甘くささやいて、早苗はそこに口付ける。とたん、霊夢の腰がびくんと跳ねた。
「ひゃあああうっ! あ、あ、なかぁ……舌、舌、はいってるぅぅぅ……っ!」
「んーんっ、ぷちゅ、ちゅううっ、れるれるぅ……んんんーっ……」
早苗の顎から胸元にかけていく筋もの愛液がこぼれ、布団に大小の染みを作っていく。
指先で霊夢のそこを割り開くと、ピンク色の洞穴があらわになった。
「あはぁ……れぇむさんの……奥まで、見ちゃいますよぉ……♪ ぬちゅぬちゅで、とろとろぉ……」
「だってぇ……早苗がぁ……早苗が、いっぱいえっちなこと、するからぁ……」
「じゃあ、もっとえっちなこと……しちゃいますよぉ……♪」
早苗の指先が、きゅうっと霊夢のそこに埋められる。
霊夢の腰が断続的にふるえ、あふれる蜜が二人の身体を濡らしていく。
「はああああぅ……っ、は、いって、るぅぅ……さなえの、ゆ、びぃ……きもち、いいよお……」
早苗の指が入った分だけ、霊夢は甘い呻きを漏らす。
「れぇむさんのここ、わたしの指、きゅーって締め付けて、すごく、えっち……♪ もっと、してあげますね……」
「ひあ、あ、はぅんっ、いい、よおおっ、ゆび、いいよおっ、さなえっ、さなえっ、さなえ……っ!」
「れぇむさぁぁん、いって、いって、わたしで、早苗で、いって……! ……ん、はぷっ、んちゅぅぅーっ!」
ぢゅぽ、ぢゅぽと音を立てて指を抜き差ししながら、早苗はひくつく霊夢の淫核にむしゃぶりつく。
瞬間、霊夢の爪先が布団に突き立てられ、腰が浮き、背中が思い切りのけぞった。
膣内に突き入れた指先から、吸い付いた唇と舌から、霊夢が絶頂するのがはっきりと分かった。
「あーっ、あーっ、あーっ、だめだめだめっ、いくっ、いくっ、おくちでいくのぉっ、さなえのおくちでっ、いくのぉぉぉ……っ!!」
ぷしゅうっと、霊夢の蜜が爆ぜる。霊夢のそこからは愛液が飛び散り、早苗の口元や乳房を濡らす。
断続的に続く絶頂の快感に霊夢の肢体は容赦なく打ち据えられ、手足をがくがくとふるわせる。
はひ、はひ、と忙しなく息をつく霊夢に、早苗は唇を寄せ、赤らんだ頬に何度も口付けた。
「れぇむさぁん……かわいいよぉ……んちゅ、ちゅ、れぇむさんがいっちゃうとこ……かわいかったよぉ……ちゅ……」
霊夢は早苗にされるがままになっている。唇からこぼれた唾液をなめとる早苗の舌を追うように、霊夢は頼りなげにふるえる舌を伸ばす。
「ん、ぺちゃ、ちゅぱ、ちゅ、れるぅ……れぇむさぁん、早苗のおくち……きもちよかったですかぁ……?」
「ちゅ、ちゅ、んぅーっ……れろれろぉ……んっ、んっ……うん……すごぉく……よかった……いっぱい、いっぱい……いっちゃったぁ……」
甘えた声で問う早苗に、霊夢もすっかりとろけた声で答える。
「えへ……うれしいなあ……れぇむさん、わたしのおくちで、きもちよくなってくれたんだぁ……うれしい……♪」
両手を霊夢の首に絡めて早苗が抱きつくと、霊夢もまだ絶頂の余韻が収まらない両手を早苗の背中に回した。
その手が、早苗のお尻に触れる。弱々しい手つきだったが、霊夢が触れてくれるというだけで、早苗には快感だった。
霊夢の手を誘うように、早苗はお尻をくねらせる。
「早苗のお尻……すべすべ……」
「ふにゃ……♪ お尻、さわってくださぁい……」
霊夢の手が早苗のショーツにかかり、するりと脱がせた。早苗のむき卵のようなお尻があらわになる。
生まれたままの姿になった二人は、覆い隠すものの何もないお互いの身体の感触を確かめるように、深く抱きしめ合った。
霊夢の腰を早苗の手が引き寄せる。霊夢が早苗を迎え入れるように足を開いた。
言葉はなかった。ふたりの唇からこぼれる吐息の高まりが、熱に浮かされた視線が、二人の間に交わされたものだった。
ぬちゃ、という濡れた音とともに、そこが触れ合った瞬間、早苗は自分の頭の中に、かちんと鍵が外れるような音が響くのを聞いた。
同時に早苗の身体は、はじかれたように制御を失った。霊夢に覆いかぶさるなりその片足を抱え込んで、秘部をすりつける。
「れぇむさぁんっ、れぇむさぁぁんっ、すきっ、すきっ、だいすきぃぃっ、すきですぅぅぅ……! らぁいしゅきひぃぃ……!!」
熱に浮かされたように睦言を叫びながら、早苗は夢中になって快楽をむさぼる。
白い喉をさらしてのけぞり、早苗に揺さぶられながら、霊夢は絹を裂くような悲鳴を上げる。
快楽で真っ白になりかけている早苗の思考の中のわずかに残った部分が、その中に混じった言葉を探り当てた。
だ――
ぎゅううっと布団を掴んでいた霊夢の両手が、激しく揺さぶられる早苗の乳房を掴む。
い――
よだれを噴きこぼし、緩みきった霊夢の口が、微笑みの形になる。
す――
二人の汗と吐息が交じり合い、たまらなく甘い熱気を部屋の中に充満させる。
き――
ほとんど失禁したかのような勢いで、重ねあわされた二人の秘部から愛液が漏れ出る。
最後の一文字を探り当てた瞬間、早苗の中で、熱いものがあふれた。
止める間もなく、止めようと考えもしなかった。
ぽたり、と。
霊夢の裸の胸の上に、早苗の涙が落ちた。
最初の一滴が落ちたときにはもう、早苗の瞳は涙であふれていた。
子供のように泣きじゃくりながら、早苗は何かを求めるように霊夢にすがりついた。
霊夢も涙をこぼしていた。涙と快楽とでほとんどまともにものが見えていない視界の中で、それだけがはっきりと分かった。
激しい衝動に突き動かされ、早苗は霊夢の唇にむしゃぶりつく。
口を通して体内に睦言を吹き込もうとするように、唇を深く深く重ねて、舌を絡め合わせながら喘ぎ、叫んだ。
だいすき、だいすき、だいすき。
霊夢に覆いかぶさって、涙をこぼして、キスをして。
真っ白な快楽に塗りつぶされながら、早苗は、ああ、あのときと同じだと思った。
でも今は違う。霊夢が抱きしめてくれている。自分と同じように涙をこぼしながら。
かすむ視界の中、激しい喘ぎの中で、霊夢がかすかに微笑んでいる。
「ぁひ、ひ、ひ、ひぃぃ、ひぁ、あ、へえぇ……! れぇぇむぅひゃぁんっ、わら、わらひぃ、ひぁあわせぇぇぇ、あひぅぅぅっ、あいひてっ、まぁひゅうぅぅ……! あいぃ、ひぃ、ひぃぃぃぃ――……っ!!」
ひときわ大きな絶頂感が早苗を打ちのめす。
今度こそ意識のすべてを真っ白に染め上げられながら、早苗は霊夢の上に倒れこんだ。
すぐ近くに霊夢の顔がある。
早苗はもう一度だけ、霊夢がそうしてくれているように微笑んでから、意識を手放した。
「れーむさーん♪」
そう早苗は弾んだ声とともに、今日もいつものように博麗神社を訪れた。
縁側に座った霊夢の姿を見つけるなり、早苗はその腕に飛びつく。
「な、なによぅ、いきなり……」
「えへへー♪」
ぎゅーっと大きな胸を霊夢の腕に押し付けながら、早苗は罪のない笑顔を霊夢に向ける。
対する霊夢はひたすら顔を赤くしている。
腕に押し付けられる柔らかな感触が、否応なしにあのときの、早苗との激しい情事を思い出させるのだ。
そんな霊夢に、早苗はおかまいなしにぐいぐい身体を押し付ける。
「ちょ、ちょっと、そんなにくっつかないでよ……」
「えー、だってぇー……」
子供のように口を尖らせる早苗。
「だって、れーむさんに会いたくて、ずーっとうずうずしてたんだもぉん……」
「だもぉん、って……。あんた絶対性格変わったわよね、アレから」
霊夢が言うと、早苗は顔を赤くして身体をくねらせ始めた。
「やぁぁん……♪ だってぇ、あんなに激しくされたらぁ……。早苗はれーむさんの燃える口づけを受けて夢見る少女じゃいられなくなっちゃったんですよぅ……せ・き・に・ん、とってくださいね」
「ちょ、なに言い出すのよこのコはっ。だ、だいたいアレは双方の合意の上で……」
「つまり相思相愛ってことですよね♪」
「ダメだ話が通じてない……ていうかきっとこれがこのコの素なのね……」
うんざり顔の霊夢と、しあわせ絶頂の早苗。
「ねーえ、れーむさぁん……久しぶりに会ったんだしぃ……ね?」
早苗は自分でも信じられないくらい子供っぽい仕草で甘えてみせる。
ほんの少し前まで、霊夢のことが好きな気持ちを重く抱えていたことが嘘のようだった。目を合わせるのすらためらっていたのが信じられなかった。
霊夢が自分のことを好きでいてくれることに、そして、自分が霊夢を好きなことに、もう何の疑いもためらいも恐れもなかった。
身体を押し付けたまま、目を閉じる。
何も見る必要はない。霊夢が今どんな顔をしているかなんて目を閉じていても十分分かる。
ほら、優しい手が、肩にかけられる。もうあのいとしい唇が、すぐそこまで迫っているはずだ。もうすぐ、もうすぐ。
――けれど、いつまで待っても待ち望んでいる感触は与えられない。
針で突いたほどのかすかな不安が早苗の胸に現れようとしたとき、その耳元に、ささやく声があった。
――またふたりで、いっぱい、えっちしよ?
レイサナマスターの称号を進呈しよう
ということは続きがあるんですよね?
期待してます!
あ、ちなみに二番でお願いします。
次回も楽しみにしてるぜ
続編を期待して待っています
次回どれもみたいが、
さ、三番で!(弄ばれるなんてサイry)