※はじめに
この作品は、【百合色の】東方の百合カップリング談義3【幻想郷】 925、同じく14スレ目32、17スレ目776、及び常春の百合ろだ[lily_0067.txt]、[lily_0135.txt]、[lily_0166.txt]に投稿したSS、
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にネチョ要素を追記し、統合・加筆修正したものです。
この作品が、上記のSSの盗作、無断使用ではないこと、上記のSSとこの作品の筆者は同一人物であることをここに明記します。
「きゅう」
「しっかし、アンタも懲りないわね」
博麗神社の境内、二つの人影がある。
一つは目にも鮮やかな紅白の衣装。
一つはそこだけ夜に取り残されたような漆黒の衣装。
「だってだっておなかすいてたんだもん」
「ていっ」
「あいたーっ! もーなにするのー」
箒を片手にしたその巫女の名は博麗霊夢。
金色の髪に赤いリボンが印象的なその妖怪の名はルーミア。
ぺちーんとお札を投げつけられたルーミアは額をさすりながら霊夢を上目遣いににらむが、かわいいだけでちっとも怖くない。
「神社の境内で人間襲おうなんて……しかもこんな真っ昼間から? 満足に戦えないことくらい自分で分かるでしょうに」
「だってー……」
うー、と涙目のルーミアを一瞥し、霊夢はため息を一つ。
「仕方ないわねー……ほら」
「う?」
霊夢が差し出した箒を、ルーミアはきょとんと見つめている。
「お昼ご飯食べさせてあげるから、掃除しときなさい」
「そーなのかー♪」
さっきまでの涙目はどこへやら、ぱっと顔を輝かせたルーミアは、箒を手に慣れない手つきで庭を掃き始める。
その様子に苦笑を一つ漏らし、霊夢は台所へと消えていった。
日が中天に差し掛かり、境内が穏やかな陽光に満たされる頃、居間のちゃぶ台には二人分の食事が用意されていた。
「おかぁりーっ!」
「……よく食べるわね」
ルーミアは自分の分を瞬く間に平らげ、霊夢の差し出した3杯目をかき込んでいる。
「まったく、こんなちみっこい体のどこにそんなにたくさん入るのかしら」
「わっかんなーい!」
「ああもう食べながら口開けるの止めなさいっ」
「はーい!」
何も分かっていない返事を元気よく返すルーミア。
3杯目をあっさり平らげると、ぱちんと手を合わせる。
「ごちそーさまでしたっ!」
「はいはい、どういたしまして……あーあー、口元こんなに汚して」
「むにゅむにゅむにゅ」
布巾を取って汚れた口元を拭いてやると、ルーミアはくすぐったそうに目を細める。まるっきり子供、そうでなければ小動物のような仕草に霊夢は、これでも妖怪なのよね……と呆れ顔。
「えへへ、ありがと」
「まったく、子供みたいなんだから……」
無邪気に笑うルーミア。なんとなく手を伸ばして頭を撫でてやると、ルーミアは「にゃはー♪」と笑って嬉しそうに目を細めた。
食器を片付けてから、しばらく霊夢は縁側に座って何をするでもなく庭先に迷い込んできた子猫をいじりまわして遊んでいるルーミアを眺めていた。
そんな風に過ごしていると、ルーミアがひょいと縁側の霊夢の隣に寄ってきて言った。
「ねー霊夢」
「ん? なに」
「ちゅーしてあげよっか」
「……は?」
「だから、ちゅー」
ちゅ~、と唇を突き出してみせるルーミア。ヘンな顔。
「い、いきなり何よ」
「んー、ほら、霊夢にはいつもごはんとか作ってもらってるから、何かお礼したいなあって」
「お礼って……」
「遠慮しなくていいよ?」
「う……」
なんでもないことみたいに言うルーミアを見ていると、やたらと意識してしまっている自分が恥ずかしいというかばかみたいというか。
取り繕おうとすればするほど顔が熱くなっていくのが抑えられない。
そうやって赤面している霊夢の膝の上に、ルーミアがぴょんと飛び乗った。
身長差があるため、ルーミアは霊夢を見上げる形になる。
困惑する霊夢を、無垢な笑顔でルーミアは見上げた。
「ちょ……」
「んーっ」
制止する間もないまま、ルーミアは見上げた霊夢の首に手を回し、ぐいっと引き寄せ、ちょん、と口付けた。
幼い唇が自分のそれと触れたのはほんの一瞬。
技巧も何もない、ただ触れ合わせるだけの接触。それに霊夢はひどく動揺した。
そんな霊夢の動揺を知るはずもなく、ルーミアは身体を離してにっこりと微笑む。
「えへへ、ちゅーしちゃった!」
「ちょ、ちょっと……」
そうして猫が甘えるように霊夢の首筋に抱きつく。
まるっきり子犬や子猫が甘えてくるのと同じ仕草。
顔をすり寄せながらルーミアは、きゅうん……と嬉しそうな声を漏らす。
その声にどこか艶かしいものを感じて、霊夢は頭の芯がぼんやりとした熱に包まれる感覚を覚えた。
「えへへ、ぎゅーっ」
そう言ってルーミアは身体をすり寄せる。
ルーミアの体温に、霊夢はふと、いつだったか里で赤ん坊を抱いたことを思い出す。
赤ん坊や幼い子供は体温が高い。抱いてやるとどこか安心する、染みるような温かさがある。
ルーミアの体温はそれと同じなのだった。
密着した頬や首に回された腕から伝わる体温はあの時の赤ん坊のそれと変わりなく、霊夢はいつしかルーミアの背中に手を回し、小さな身体を抱いていた。
ルーミアはそれに気付くと、霊夢の顔のすぐ近くで「えへ」と笑って、頬をすり寄せた。
触れ合わせた頬が、やわらかく、熱い。
「ねえ霊夢、もっとちゅーする?」
ルーミアはそう言うと、返事も聞かずにちゅ、ちゅ、とじゃれつくように口付けを繰り返す。
霊夢はされるがままだった。
あれだけたくさん食べるのに、口はちっちゃいのね……などとどうでもいいことをぼんやり考えていた。
ようやく唇を離すと、ルーミアは少し身体を離して、にへっとのんきな顔で笑ってみせた。
「にゃはは」
「な、何よ」
「霊夢、顔あかーい」
「な……!」
言われて自覚してしまうともう抑えが利かなくなってしまうもので、何とか落ち着こうとすればするほどどんどん顔が熱くなってしまう。
色々とどうしようもなくなってしまった霊夢を見てルーミアはきょとんとしている。その自覚のない表情が可愛いやらムカつくやらでますます霊夢は混乱する。
……混乱していたので、ルーミアが顔を自分のすぐそばまで寄せていたことに気付かなかった。
「霊夢、なんかかわいいなー」
無邪気な顔でそう言って、ルーミアは霊夢の頬に、ちゅ、と口付けた。
決定的な何かが切れるのを、霊夢は頭の隅で他人事のように感じた。
「あ……あーーーーーもうっ!」
「きゃー」
「はいおしまい! べたべたするのはおしまい!」
「どしたの霊夢?」
「どうしたもこうしたもないわよ! 夕飯の準備があるんだからあっち行ってなさい!」
「えー」
「えーじゃない! ちょっとそんなにくっつかないでよ!」
「なに怒ってるの霊夢ー、ねー、ねってばー」
などとわいわい騒ぎながら、ルーミアをくっつけたまま台所へ向かう霊夢。
数刻後に用意された夕食は、二人で作った不恰好なコロッケだった。
結局ルーミアはその日、夕食の後、夜まで神社にいた。
「じゃーね霊夢、ばいばーい」
「はいはい、これに懲りたら神社の近くで人襲うの止めなさいよー」
「うん、じゃあまた遊びに来るねー」
「……話聞いてないし……」
帰っていくルーミアにぞんざいに手を振るのは、精一杯の照れ隠しだ。
丸くて黒い球体が、月明かりの中をふらふらと危なっかしく飛んでいくのを見送ると、霊夢は室内へと戻る。
戻って、もう一度ルーミアが消えていった空の方を振り返った。
無意識に指先が、唇をなぞる。
「……ちゅー、しちゃった」
ルーミアが言った言葉を、おうむ返しに口にする。
それだけで顔が熱くなるのが分かった。
その理由は結局分からず、霊夢は布団の中でひとり、顔を赤くしていた。
「じっごっくーをみーれーばー、こーこーろーがかーわーくー♪」
いつものように境内を掃除していると、上の方から調子っぱずれなヘンな歌が聞こえてきた。
視線を上げると、見覚えのある黒い球体が漂っている。
「ル、ルーミア?」
「霊夢ー、遊びにきたよー」
黒い球体の中から現れたのは、のんきな笑顔のルーミア。
その顔を見たとたんよみがえる、数日前の出来事。突然のキス。
「……っ」
「今日はねー霊夢にごちそう持ってきたんだよー。ほら、山で摘んできた山菜だよ。……霊夢?」
「え!? ああ、山菜ね、うん、早速料理するから上がりなさいよっ」
「なんかヘンだよ霊夢、どしたの?」
不思議そうに小首をかしげるルーミア。そのままひょいと霊夢に顔を近づける。
「わーもう近い近い近い!」
「ねーえ、どーしたのってばー」
なおもまとわりついてくるルーミアから懸命に赤面した顔を隠しながら、霊夢は台所へ向かっていった。
しばらく経って出来上がった料理を持ってきた霊夢を、ルーミアは満面の笑みで迎えた。
「わー、おいしそー♪」
これ以上の幸福などこの世になしと言わんばかりの顔で料理を食べ始めたルーミアを、霊夢は頬杖をついて眺めている。
ぼんやりとルーミアを眺めている自分の頬が緩んでいるのを、霊夢は他人事のように感じていた。
(……ヘンなヤツ)
ルーミア。宵闇の妖怪という二つ名の恐ろしげな響きから、誰がこんなのほほーんとした顔を想像できるだろう。
仕草といい行動といい、まるっきりその辺の子供と変わらない。
「ほおら、ご飯ついてる」
「んにゃ」
ルーミアのまるい頬についたご飯粒を、手を伸ばして取ってやる。
それを自分の口に運んでから、霊夢は自分が何をしたかに思い至って顔を赤くする。
「どしたの霊夢? 顔赤いよ?」
「な、なんでもないわよっ」
「そーなのかー」
ルーミアはあっさり納得して、もしゃもしゃと食事を再開した。
「……ね、ルーミア」
「なーにー?」
意識してルーミアから視線をそらしながら、霊夢は言う。
「あんた、今日、なんで私のところに来たの?」
「? なんでって……」
ルーミアはきょとんとした顔をして答える。
「霊夢に会いに来たんだよ?」
「……な、なんで会いに来たの?」
かなり努力して、霊夢はその問いを口にした。
ルーミアはまたきょとんとした顔。なんでそんなことを聞くのか分からない、という顔。なんでそんな分かりきったことを聞くのか分からない、という顔。
「……? 霊夢のこと好きだからだよ?」
「な……っ!?」
顔が紅潮するのは一瞬だったので、それを抑える暇はなかった。
「す、好き……って」
「うん、好きー♪」
無邪気な笑顔で答えるルーミア。その笑顔が直視できない。
霊夢はそれっきり話の接ぎ穂を失って黙りこくったまま食事を続けるが、ルーミアのほうは意に介した風もない。
ルーミアにはなんでもない、霊夢にはとても気まずい沈黙。
「な、なんで……?」
「ふぃ?」
「なんで……その、私のこと、すす、好き……なの?」
しどろもどろになりながら、霊夢は自分の口が勝手に余計なことを口走るのをどうにもできずにいた。
普段なら、そうたとえば紫あたりにからかわれたときなら軽く受け流せるのに、なぜか勝手が違う。
そもそも、こんな風に無邪気にじゃれつかれたことなどないのだ。だから……
ルーミアはというと、困惑する霊夢を気にした風もなく、指先を唇に当てて「んー……?」と考え込んでいる。
「んっとねー……ご飯食べさせてくれるからかなー」
動物か。
「んー……なんかよくわかんないや」
てへへとのんきな顔でルーミアは笑う。
その顔を見ていると自分が一人で懊悩しているのがなんだかばかみたいになってきて、霊夢はため息を一つついて食事を再開した。
ルーミアはルーミアで、よくわかんないという結論で安心したのか、3杯目をかきこみ始めている。
「ごちそうさま……」
「ごちそーさまでしたっ!」
しばらくして二人とも食事を終え、霊夢はどこかげっそりした感じで、ルーミアは相変わらず無意味に元気にごちそうさまの挨拶をした。
「じゃ、片付けてくるからしばらく待ってなさいよ」
「はーい」
元気よく返事をするルーミア。そこでルーミアは、ふと何かに気付いたような顔をした。
「あー」
「ん? 何よ?」
ルーミアがちゃぶ台の向こうから身を乗り出す。
間近にルーミアの顔がきて、思わず霊夢はのけぞりそうになった。
「ちょ、ちょっと、何?」
「えへへー」
ルーミアはにこっと笑うと霊夢の顔に唇を寄せて、小さな舌を伸ばして霊夢の頬をぺろりと舐めた。
ぐわたっ、と今度こそ霊夢はのけぞる。
「な、ななっ、何よ!? 何なのよ!?」
「ごはん」
「……は?」
「ごはんついてた。ほっぺに」
なんでもないことのようにルーミアはそう言って、もう一度にこっと笑った。
「~~~っ!!」
顔を赤くする以外、霊夢は何もできなくなる。ルーミアは、そんな霊夢を不思議そうな顔で見ていた。
食事の片づけを終えて居間に戻ると、ルーミアは寝ていた。
「……なにしてるのこんなとこで」
「すかぴー」
へんじがない。ただのルーミアのようだ。
ルーミアは猫のように丸まって寝息を立てている。
おなか一杯になったらすぐに寝てしまうなんて、まるっきり動物みたいだ、と苦笑する。
ときどき身じろぎしているのが可愛らしくて、霊夢は頬が緩んでしまう。
「こおら、妖怪。巫女の家でのんきに昼寝なんて無防備すぎるんじゃないの?」
言いながら頬をつついてやると、ルーミアはむにゅむにゅと寝言を漏らす。
その様子が可愛くて、霊夢はしばらくルーミアの頬をぷにぷにしていたが、ふとあることを思いついた。
ルーミアはちょうど半分閉まった障子の影にいる。
その障子を音を立てないように注意深く動かし、反対側に影を作ってやる。
するとルーミアは、むにゅむにゅ言いながらもぞもぞと影の方に動いていく。
「あはは、やっぱり……」
今度は障子を元に戻してやると、反対側へむにゅむにゅもぞもぞ。
むにゅむにゅ寝言を漏らしながら、ルーミアは一向に起きる気配がない。
また頬をつついてやると、ルーミアがまるで幼い赤ん坊がそうするように手を伸ばして、その手を掴んだ。
そのまま、霊夢の手をきゅっと握り、頬を寄せる。
「ふぁ……にふぅ……」
言葉とも吐息ともつかない声を漏らして、ルーミアは安心しきった表情で微笑んだ。
霊夢は自分でも驚くほど優しい気分になって、空いた手でルーミアの頭を撫でてやった。
「かわいいな……」
そんな風に呟いて、霊夢はちょっと顔を赤くした。
ルーミアを起こさないように注意しながら小さな頭を抱え上げて、自分の膝の上に乗せてやる。
膝の上の重みとルーミアの体温に、霊夢は不思議な安堵を覚えた。
誰かに膝枕するなんて、初めてだなあ……霊夢はそんなことを考えながら、ルーミアのさらさらの金髪を撫でてやる。
んー……とくすぐったそうに身じろぎをするルーミア。
自分にこんな風に、打算も何もなく、ただ懐いてくれているのが、なんとなくうれしい。
横顔にかかった髪をやさしく払ってやると、柔らかい頬、そして白いブラウスの襟から覗く首筋。
普段日に当たらないせいか、着ているブラウスよりもなお白く見える細い首もとのラインに妙な色気を感じ、霊夢は少しどきっとした。
最初から誰もいるはずのない室内を見回し、霊夢は身体を屈めて、ルーミアの頬に唇を寄せる。
起きてしまわないだろうか、もし起きてしまったらどんな顔をしよう。たぶん向こうはなんとも思わないだろうけど、こっちはそうはいかないわよね……。
そんなことを頭の隅で考えながら、口づける。
唇で感じるルーミアの体温、柔らかさ。名残惜しいのを我慢して、ルーミアが起きないうちに唇を離す。
ルーミアは僅かに身じろぎしただけで、起きる様子はない。
ほっとしたような、少し残念なような、はっきりしない気持ちで、霊夢はルーミアの頭を撫でる。
「……ちゅー、しちゃった」
そう口にした途端に、顔が赤くなったのが分かった。
「もお。あんたが悪いんだからね……」
そんな無責任な責任転嫁が、午後の空気に溶けて消える。
そのまましばらくの間膝の上にルーミアを乗せたまま、霊夢は愛しげに指先で髪の毛をもてあそんでいた。
縁側から差し込んでくる日差しが少し弱まってきた頃、ルーーミアがやっと目を覚ました。
もぞもぞと身じろぎして、身体を起こす。
「ん~……あー、霊夢だー……」
「……ちょっと、ちゃんと起きてる?」
「おにく~?」
「あー……だめだわこりゃ」
ふらふらと頭を左右に揺らしているその様子は、どう見ても寝ぼけている。
「ほら、しゃんとしなさいったら」
「んみ……わたし、寝ちゃってた……?」
「気持ちよさそうにね。おなかいっぱいになったら寝ちゃうなんて行儀が悪いわよ」
「ん……」
子猫のような仕草でまぶたをこすりながら、ルーミアは思い出したように不思議そうな顔をした。
「ねー霊夢、霊夢も一緒に寝てたの?」
「えっ、う、うん、まあ……」
歯切れの悪い返事を返す霊夢。まさか、寝顔があんまり可愛いから思わず膝枕して、その上ちゅーまでしちゃいました、などと言えるはずがない。
寝起きのせいか、ルーミアは霊夢のあいまいな返事を咀嚼するのに時間がかかっているようだった。
ややあってルーミアは、ふにゃーっと相好を崩す。
「にゃはー♪」
「な、なに……?」
「うん、うれしいなーって。誰かと一緒に寝るなんて、はじめてだから」
そう言ってルーミアはもう一度、うれしいな、と笑った。
その無邪気な笑顔に、霊夢は同じような嬉しさとちょっとした罪悪感を同時に覚えた。
「えへへ、霊夢ー♪」
抱きついてくるルーミアを、霊夢はいくらか素直に受け止めることができた。
「もお……甘えんぼ」
「うん、わたし、甘えんぼー♪ ねぇね、撫でてっ、あたま撫でてっ」
「どうしたのよ、急に」
「んー、なんかね、甘えたくなっちゃったの」
霊夢の胸にぎゅっと抱きついて、ルーミアは上目遣いにそんなことを言う。
胸の奥から湧き上がるようないとおしさに突き動かされるように、霊夢はルーミアの背中に手を回した。
小さな身体だった。両手の中にすっぽりと納まってしまうくらい小さなルーミア。
頭を撫でてやると、ルーミアは嬉しそうな声を漏らして、霊夢の胸に顔をぐりぐりこすりつける。
外から聞こえる鳥の声が、霊夢にはどこか遠い。とても穏やかな気分だった。
さっきルーミアは、誰かと寝るのは初めてだったと言っていたが、霊夢もこんな穏やかな気分で誰かと抱き合っているのは初めての経験だった。
はじめて同士だね、と霊夢は胸の中でルーミアに語りかけた。
「……ね、霊夢ぅ」
「ん……?」
霊夢の胸に顔を埋めたまま、ルーミアは視線だけを霊夢の方に向けている。
上目遣いの顔が、とてもかわいい。
ルーミアはすぐには続きを口にしなかった。ためらっているのか、それともまた眠くなっているのか、よくは分からなかった。
「あのね、今ね、なんだかすごく、霊夢とちゅーしたいの。してもいい?」
隠すものの何もない、あまりにもストレートな要求に、霊夢は思わず苦笑する。
霊夢は答えず、ルーミアの頬に手をあてがってやった。
ルーミアはそれを肯定と理解したのか、えへ……と笑みを浮かべて、身を屈めた霊夢にそっと口づけた。
いつだったかのような、ほんの一瞬の無邪気なキスとは違った、時間をかけたキス。ルーミアは霊夢の唇の感触を確かめるように、触れあわせた唇をしばらく離さないでいた。
霊夢も同じように、ルーミアの小さく幼い唇を、時間をかけて味わった。
しばらくして、どちらからともなく唇を離す。離した唇の狭間に漏れた自分の吐息が、熱く湿っているのを霊夢ははっきりと自覚した。
ルーミアもまた、どこかぽーっとした表情で霊夢を見上げている。心なしか、頬も上気しているようだ。
何を言うでもなく、霊夢はルーミアを見つめる。
普段の言動が幼い分、ルーミアのこういう表情はとても魅力的に、否、蠱惑的にすら見える。
もちろん、ルーミアはそんなことは意識もしていないのだろうが……。
そんなことを考えていると、ルーミアは霊夢の首に手を伸ばした。もぞもぞと身体を移動させて、霊夢の膝の上にちょこんと腰を下ろした。
「霊夢ぅ……もっと、ちゅーしたいな……」
「うん……」
ルーミアの舌ったらずな口調に、茫洋としながら霊夢は答える。
さっきよりも身体が密着して、霊夢はどきんとなる。それにルーミアの顔が近い。潤み始めた瞳が、まるで誘惑するようだ。
再び唇を重ねる。
「ん……ちゅっ、ちゅ、んむ、ん……」
ルーミアは一番なじむ角度を探すように、唇を離しては触れさせるのを繰りかえす。そのうちにその行為自体が気に入ったのか、吐息に甘い色がにじみ始めた。
ルーミアの頭を抱きかかえてその髪に鼻先を埋めると、ふわりと甘いにおい。
香水なんかつけているはずはないのに、いいにおい。
ルーミアのにおい。
「にへへ……」
小さな頭を抱きしめている胸元から、ルーミアのくぐもった笑い声。
「な、なに……?」
視線をおろすと、自分の方を見上げているルーミアの視線と目が合った。
ルーミアはもう一度、えへへと笑ってみせる。
「霊夢、なんかいいにおいがするー……」
ルーミアが自分が考えていたのと同じ事を口にしたのが、なんだかおかしい。
ふふっと笑うと、ルーミアもえへへと笑う。
そして二人は、どちらからともなく唇を寄せ合った。
ルーミアの柔らかな唇の感触が心地よい。ただ触れ合わせるだけの、ままごとみたいなキス。それがたまらなく心地いい。
ちゅ、ちゅ、と音を立てながら、二人は口づけを繰り返す。
ぷは……と唇を離すと、熱い吐息が溶けて混ざった。
「ふわ……はぁ……」
「ふ……ぅ、は……」
浅く息をつく。
ルーミアの頬を染めてとろんとした目をした表情は、見た目の幼さとのギャップでひどく色っぽく見えた。
誘蛾灯に誘われるように、霊夢はその頬に手を伸ばす。そっと手を添えてやると、ルーミアは目を子猫のように細めて、霊夢の手のひらに頬をすり寄せた。
「んに……霊夢ぅ……」
ルーミアは両手で頬に添えられた霊夢の手をきゅっと握った。ちっちゃい手だな、と霊夢は思った。
両手で握った霊夢の手に頬をすり寄せて、ルーミアは幸せそうな吐息を漏らす。その手が、ルーミアのやわらかな唇に触れた。
あ、と思うまもなく、霊夢の指は熱くやわらかいものに包まれる。
「あ……!」
思わず声を上げる。ルーミアが両手で握った自分の指を――口に、含んでいる。
今までに一度も感じたことのない、自分以外の口内の感触。
熱く、ぬめって、やわらかく……。
れる……とルーミアの舌が指先に這うと、霊夢の背筋があわ立つ。
「んちゅ、ちゅぱ……んぅーう、んぷ、れろ……れぇ……むぅ……」
多分ルーミアは分かってこんなことをしているのではないだろう。小さな赤ん坊がおしゃぶりをくわえると泣き止むのと同じようなものなのだ。
……そんな思考は、一瞬で溶けてなくなった。
「ル、ぅ、ミア……ん、ふぅ、ふぅ……」
快感に耐えるように、ぎゅうっと眉根を寄せる霊夢。
肩が、指先が、時折ぴくん、ぴくんと断続的にふるえる。
ルーミアが思い出したように視線を上げる。その視線にすら、霊夢は身体をふるわせた。
「んゅう、ちゅぅ、ちゅ、ちゅぱ、ちゅぱ……」
薄桃色に染まった頬。濡れた音を漏らす唇。潤んだ瞳――。
それらを備えているのが、あの無邪気で幼いルーミアだなんて、信じられない……。
あのルーミアが、こんな、こんな……!
「は、ぁ……ルーミアぁ……はぁ、は、あ、あ……ッん!」
びく、と霊夢の肩が跳ねた。かるく達したのだ。
「う、そ……」
乱れた息をつきながら、霊夢は呟く。
「指だけ……で……?」
困惑と羞恥とがないまぜになって、霊夢は呆然としてしまう。
はじめての経験だった。
それも、自分よりも小さなルーミアに、だなんて……。
ちゅぽ……と音を立てて、ルーミアの小さな口から濡れた指が引き抜かれる。
指先からルーミアの舌先につながる唾液の糸が、ひどく淫らだ。
「んはぁ……」
ルーミアの吐息もまた、すでに熱く湿っていた。
まどろむようなぼんやりした表情で、霊夢を見上げている。
はぁ、はぁと息をつくその唇の間から、ついさっきまで自分の指を這っていた舌先が覗いた。
ルーミアが腕を伸ばし、霊夢の首にしがみつく。そのまま顔を近づける。唇から漏れた息が、熱い。
はぁっ……と息をついて、ルーミアが舌を伸ばし、霊夢の唇をぺろりと舐めた。
んぅー……と、鼻にかかった甘い声で、ルーミアは霊夢の唇や頬にぺろん、ぺろんと舌を這わせる。
小さくてかわいらしい舌先が、とろけるように熱い。
意識してかしないでか、霊夢は両手でルーミアの頬を包む。
ルーミアは一瞬きょとんとした顔をしてから、にゃはー……と微笑んだ。
霊夢も釣られて微笑んで、唇を寄せ、舌を伸ばす。
ルーミアも同じように舌を伸ばし……舌先が、ぴとっと触れ合う。
いつの間にか、どちらからともなく指を絡ませ手を繋いでいた。
舌先を少しずつ動かすたびに、自分の手の中のルーミアの小さな手が、ぴくん、ぴくんとふるえるのに、霊夢はたまらないいとおしさを覚えた。
ルーミアは差し出された霊夢の舌を、拙い動きでなぞっていく。
くすぐったいくらいの刺激だったが、それが霊夢には快感だった。
肉体的な、というよりは、ルーミアが素直に自分を求めてくれているということがもたらす、精神的な快感。
ちょん、ちょん、と互いの舌先をつつく。
その度に自分のものとは思えないような甘ったるい声が漏れてしまい、霊夢は顔どころか体中がかっと熱くなった。
深くも浅くもない、そんなキスをしばらく繰り返して、二人は唇を離した。
離れ際に霊夢が、ちゅっとかるく口づけてやると、ルーミアは嬉しそうに微笑んだ。
「にへへ……霊夢、なんだか、あまーい……」
「もぉ……ほんとに、甘えんぼなんだから。それに……」
「……?」
小首をかしげるルーミアに霊夢は胸の中で、「こんなにいっぱい、キスするなんて……」と文句を言った。
ルーミアはまだ顔を赤くしたまま、あどけない笑みを浮かべている。
わけもなく気恥ずかしくなって、霊夢はごまかそうと手を伸ばして、頭を撫でてやったり、頬をくすぐってやったりする
「みぅん……くすぐったぁい……」
ルーミアは喉を撫でてもらっている猫のように目を細める。
「えへへ、触ってもらうの、すきー……」
ルーミアのそんな仕草に、霊夢はいちいちどきっとする。今までに抱いたことのない感覚だった。
触れてあげたい。かまってあげたい。
「じゃあ、もっと……触っていい……?」
「うん。いっぱい、触って……」
霊夢はルーミアの身体を抱え上げ、自分の膝の上に後ろ向きに座らせる。
後ろから覆いかぶさるように腕を回すと、ルーミアの身体はすっぽりと腕の中に納まってしまう。
頬に沿わせた指先を首筋のあたりにまで持っていくと、ルーミアはくすぐったそうに細い肩をすくめる。
「なんか、ぞくぞくってするぅ……」
「いやじゃない……?」
「やじゃないよ、きもちいいよ……」
ちょっと気になって聞いてみると、ルーミアはふるふると首を振ってみせる。
安心した霊夢はルーミアの頬にかるく口づけて、手を下の方に――ルーミアの黒いベストのすそに持っていく。
ルーミアが怖がらないか心配だったが、腕の中のルーミアにはそんな様子はなく、霊夢の行為に身を任せていた。
ベストの下の白いブラウスのすそをそっと引き出し、指先をもぐりこませる。
指先が触れたルーミアの肌は、しっとりと汗ばんでいた。
そのまま、手のひらを上へ。
ルーミアが、ふわぁ……と声を漏らした。
ルーミアの胸のふくらみを手のひらで覆う。小さいけれど、確かにやわらかい感触。
注意深く指先に力を入れ、ほんの少しだけ沈み込ませる。
ぷにっとした感触がなんだかかわいらしくて、霊夢は口元に自然と笑みが浮かぶのを感じた。
「んぅ……わたし、おっぱいちっちゃいから、さわっててもつまんなくないかな……?」
「そんなことないわ……かわいいじゃない」
「そー……なのかぁ……」
ルーミアのささやかな胸をゆっくりと愛撫しているうちに、手の平の真ん中あたりに、ぽつんと固い感触。
指先で、そっと撫でてやる。
「みゃんっ……」
ルーミアが声を上げて、びくっと身体を跳ねさせた。
「ご、ごめんっ、痛かった……?」
「ううん、違うの、なんか……」
なんか……と呟いて、ルーミアはなんと言っていいのか分からないのか、みぅ……とうめいて俯く。
ややあってルーミアは、後ろの霊夢に肩越しに視線をやる。
「霊夢ぅ……もっかい、して……」
「う、うん……」
ルーミアの思わぬおねだりに、霊夢はかっと顔が熱くなる。同時に手の平の中のルーミアの小さな胸の内側に、どきん、どきんという鼓動を感じた。
ルーミアも背中に自分の鼓動を感じているんだろうか……そんなことを考えながら、胸のふくらみの先端を指先でそっと摘む。
「んみゃっ……あぅ……なんか、おっぱいのさきっぽ、じんじんする、よぉ……」
きゅ、きゅと指先の力加減を変えるたび、ルーミアは甘くとろけた声を上げて、しきりに両足をこすり合わせている。
めくりあがった黒いスカートとは対照的な、太ももの半ばまであらわになっている白い両足。
内ももに手をやり、撫で上げる。
「すべすべ、してる……」
スカートが完全にめくれて、飾り気のない白の下着が見えた。
いきなりそこに手を触れるのはなんとなく気が引けて、霊夢はしばらく太ももの感触を味わった。
成熟した体型――例えば紫のような――には程遠いルーミアの身体はしかし、抱きしめて触れてみると全身が柔らかい。
その柔らかさに霊夢は、抱きしめているのに、逆に抱きしめられているような安堵感を覚えた。
と、ルーミアの手が、くい、と霊夢の袖を引いた。
霊夢は小さくうなずいて、内ももに当てていた手のひらを、少しずつ上へ。
そっとそこに指先を乗せると、意外なほどの柔らかさで指先が沈む。
「ふわぁ……」
指先が沈み込んだ分だけ、ルーミアが息を吐き出す。
「いたくない……?」
「ん……」
ルーミアは目を伏せて、は、は、と少しずつ乱れ始めた吐息を漏らしている。
布地越しに、じわりと染みるような熱。人差し指を乗せると、指の腹全体が熱い。
そのまま人差し指を、上下にこするように動かす。
「んみゃ――あ、あー……みぃん……」
ルーミアの細い肩が、ぶるっとふるえた。立てた膝が、頼りなさげに揺れている。
ブラウスの中に潜り込ませた霊夢の手のひらの中で、小さな先端が、つんっとかたくなった。
みぃ、みぃと子猫のようなか細い声で喘ぎながら、ルーミアは秘部に宛がわれた霊夢の手に自分の手を重ねた。
潤んだ瞳で霊夢を見上げるルーミアの胸元の白さがまぶしい。
「れぇ、む……ちゅー……」
「うん、ちゅー、しよ……」
途切れ途切れの言葉で求めてくるルーミアに、霊夢は身体をかがめて口づけた。
んっ、んっ、と懸命に舌を絡めてくるルーミアがたまらなくいとおしくなって、霊夢は両手の愛撫を強めた。
小さな乳首を指の腹でちょん、ちょんとつつきながら、じわりと湿り気を帯びた秘部を布越しにやさしくこする。
「んんーん……みゃああぅ……みぁ……とろとろ、に、なっちゃう、よお……」
「ルーミアぁ……かわいい、かわいい、ルーミア……」
ルーミアのとろけたかわいらしい声に、霊夢もまた、頭の芯がとろけていくようだった。
わたしのだ。そんな稚拙な独占欲が自分の心に生じるのを、霊夢は頭の隅で、意外だな……と他人事のように思った。
こんな、胸もふくらみきってないようなちっちゃな子に、こんなことしてるなんて……。
そんな困惑と罪悪感も、腕の中に抱きすくめたルーミアの甘いにおいと熱とに溶かされ、揮発していく。
揮発した後に残るのは、ただひたすら、ルーミアがいとしいという感情だけ。
「れぇむぅ、れぇむぅ……なんか、ぽーって……おなかの、なか、あつく、て……」
「うん、わたしも、熱いよ、ルーミア……」
「れぇむ、れぇむ……もっと……もっとお、あつく、して……」
その言葉に導かれるように、霊夢はルーミアの下着の中に手を滑り込ませる。
「ルーミア、触るわよ……?」
「んゅ……」
熱く濡れたそこに、とぷん、と指先を沈めたとたん、ルーミアの身体が跳ねた。
「っみぁああああぅ……! ぁは、はわぁ、あ、あ、あ……!」
小さな手足をぎゅうっと縮こまらせて、ぴくん、ぴくんと数度跳ねる。
その度にルーミアの幼い入り口が、きゅんっ、と霊夢の指を締め付けた。
何度か身体を跳ねさせて、ルーミアはくたっと四肢を弛緩させる。
(イッちゃった……んだ……)
霊夢もまた、愛撫こそ受けていないものの、ルーミアのかわいらしい声や反応、そしてルーミアを愛撫するという行為そのものがもたらす快楽で、充足を得ていた。
すっかり脱力したルーミアを膝に乗せていると、わけもなく幸福な気持ちになる。
上気したままの頬に手をやると、ルーミアはおぼつかない手つきで霊夢の手を探り、握った。
「あんたが、悪いんだからね。こんなに……こんなにかわいいから。あんなに、ちゅーしてくるから……」
いとおしげに言い訳をして、ルーミアの汗ばんだ頬にかかった髪を払ってやる。。
ルーミアはそんな無責任な言い訳をとがめもせず、霊夢の膝の上でおとなしく寝息を立てている。
「こぉら、妖怪。巫女の膝の上でのんきにお昼寝なんて、無防備すぎるんじゃないの?」
自分の独り言にふふっと苦笑して、霊夢もまた目を閉じる。
行為の後のけだるさが心地よい。
このまま、私も眠ってしまおう。霊夢はまどろみに身を任せる。誰かの体温を感じながら眠るのなんて初めてだな、そう思いながら霊夢は眠りについた。
数日後。
いつものように庭掃除をしていた霊夢の頭上に、ふっと影がさす。
影の正体は確認するまでもない。
「やほー、霊夢ぅ、遊びに来たよぉ。はいこれっ、お土産ー」
「あら、いらっしゃい。今日は川魚?」
「自分で釣ったんだよー、ねぇねっ、ほめてほめてー」
無邪気にくっついてくるルーミアの体温に、数日前の出来事がフラッシュバック。
なんとか平静を装い、意識してぞんざいにルーミアの頭を撫でてやる。
「はいはい、いい子いい子」
「にゃはー♪」
そんな投げやりな返事にも、ルーミアはうれしそうに笑う。
いよいよ頬の筋肉が弛緩しきるのを抑えられなくなってきたので、くるりと背を向け、台所へ。
「じゃあ、ご飯作るから待ってなさい」
背を向けたところで、ルーミアにくいくいと袖を引かれた。
なあに?と振り向く霊夢。
「んー♪」
ルーミアが、手を後ろに組んで、目を閉じて、つん、と顎を突き出す。
無邪気であけすけな要求に、のけぞる霊夢。
ううっ、とためらっていると、ルーミアが眉根を寄せて「んー!」
ばばっと周りを確認する。よし、誰もいない。
ルーミアの細い肩に手を置いて、ぎゅっと目を閉じ、ちゅっとキスをする。
唇を離して目を開けると、ルーミアは上目遣いに、どこかいたずらっぽい目つきで霊夢を見上げている。
その視線に耐え切れなくなって、霊夢は今度こそ台所へ向かう。
「お、おとなしく待ってなさいよ」
「はーい♪」
肩越しにそう言ってやると、ルーミアはあんまり分かってなさそうな、のんきな声で返事をした。
台所に立っている間中、霊夢はちらちらと居間でくつろいでいるルーミアに視線を向けていた。
わけもなく、気になる。わけもなく、顔が熱くなる。
あまり見ているとルーミアを目が合ってしまいそうで、霊夢はまな板の上の野菜を刻むことに集中する。
「ねぇー、霊夢ーう」
「うわ!」
集中しようとした矢先、ルーミアの間延びした声。霊夢は危うく指を切りそうになる。
「なっ、何よ、びっくりしたじゃないっ。ご飯まだできてないからおとなしくしときなさいよねっ」
「んーと、そじゃなくてねー」
障子の向こうからひょいと身を乗り出して、ルーミアは言った。
「ご飯食べ終わったらぁ、またちゅーしたいなーって」
「~~~っ!」
危うく自分の腕を昼食のおかずにしてしまいそうな霊夢だった。
この作品は、【百合色の】東方の百合カップリング談義3【幻想郷】 925、同じく14スレ目32、17スレ目776、及び常春の百合ろだ[lily_0067.txt]、[lily_0135.txt]、[lily_0166.txt]に投稿したSS、
http://merupo.orz.hm/lily_stories/upload/read.php?mode=com&id=0067&file=lily_0067.txt
http://merupo.orz.hm/lily_stories/upload/read.php?id=0135&file=lily_0135.txt
http://merupo.orz.hm/lily_stories/upload/read.php?id=166&file=lily_0166.txt
にネチョ要素を追記し、統合・加筆修正したものです。
この作品が、上記のSSの盗作、無断使用ではないこと、上記のSSとこの作品の筆者は同一人物であることをここに明記します。
「きゅう」
「しっかし、アンタも懲りないわね」
博麗神社の境内、二つの人影がある。
一つは目にも鮮やかな紅白の衣装。
一つはそこだけ夜に取り残されたような漆黒の衣装。
「だってだっておなかすいてたんだもん」
「ていっ」
「あいたーっ! もーなにするのー」
箒を片手にしたその巫女の名は博麗霊夢。
金色の髪に赤いリボンが印象的なその妖怪の名はルーミア。
ぺちーんとお札を投げつけられたルーミアは額をさすりながら霊夢を上目遣いににらむが、かわいいだけでちっとも怖くない。
「神社の境内で人間襲おうなんて……しかもこんな真っ昼間から? 満足に戦えないことくらい自分で分かるでしょうに」
「だってー……」
うー、と涙目のルーミアを一瞥し、霊夢はため息を一つ。
「仕方ないわねー……ほら」
「う?」
霊夢が差し出した箒を、ルーミアはきょとんと見つめている。
「お昼ご飯食べさせてあげるから、掃除しときなさい」
「そーなのかー♪」
さっきまでの涙目はどこへやら、ぱっと顔を輝かせたルーミアは、箒を手に慣れない手つきで庭を掃き始める。
その様子に苦笑を一つ漏らし、霊夢は台所へと消えていった。
日が中天に差し掛かり、境内が穏やかな陽光に満たされる頃、居間のちゃぶ台には二人分の食事が用意されていた。
「おかぁりーっ!」
「……よく食べるわね」
ルーミアは自分の分を瞬く間に平らげ、霊夢の差し出した3杯目をかき込んでいる。
「まったく、こんなちみっこい体のどこにそんなにたくさん入るのかしら」
「わっかんなーい!」
「ああもう食べながら口開けるの止めなさいっ」
「はーい!」
何も分かっていない返事を元気よく返すルーミア。
3杯目をあっさり平らげると、ぱちんと手を合わせる。
「ごちそーさまでしたっ!」
「はいはい、どういたしまして……あーあー、口元こんなに汚して」
「むにゅむにゅむにゅ」
布巾を取って汚れた口元を拭いてやると、ルーミアはくすぐったそうに目を細める。まるっきり子供、そうでなければ小動物のような仕草に霊夢は、これでも妖怪なのよね……と呆れ顔。
「えへへ、ありがと」
「まったく、子供みたいなんだから……」
無邪気に笑うルーミア。なんとなく手を伸ばして頭を撫でてやると、ルーミアは「にゃはー♪」と笑って嬉しそうに目を細めた。
食器を片付けてから、しばらく霊夢は縁側に座って何をするでもなく庭先に迷い込んできた子猫をいじりまわして遊んでいるルーミアを眺めていた。
そんな風に過ごしていると、ルーミアがひょいと縁側の霊夢の隣に寄ってきて言った。
「ねー霊夢」
「ん? なに」
「ちゅーしてあげよっか」
「……は?」
「だから、ちゅー」
ちゅ~、と唇を突き出してみせるルーミア。ヘンな顔。
「い、いきなり何よ」
「んー、ほら、霊夢にはいつもごはんとか作ってもらってるから、何かお礼したいなあって」
「お礼って……」
「遠慮しなくていいよ?」
「う……」
なんでもないことみたいに言うルーミアを見ていると、やたらと意識してしまっている自分が恥ずかしいというかばかみたいというか。
取り繕おうとすればするほど顔が熱くなっていくのが抑えられない。
そうやって赤面している霊夢の膝の上に、ルーミアがぴょんと飛び乗った。
身長差があるため、ルーミアは霊夢を見上げる形になる。
困惑する霊夢を、無垢な笑顔でルーミアは見上げた。
「ちょ……」
「んーっ」
制止する間もないまま、ルーミアは見上げた霊夢の首に手を回し、ぐいっと引き寄せ、ちょん、と口付けた。
幼い唇が自分のそれと触れたのはほんの一瞬。
技巧も何もない、ただ触れ合わせるだけの接触。それに霊夢はひどく動揺した。
そんな霊夢の動揺を知るはずもなく、ルーミアは身体を離してにっこりと微笑む。
「えへへ、ちゅーしちゃった!」
「ちょ、ちょっと……」
そうして猫が甘えるように霊夢の首筋に抱きつく。
まるっきり子犬や子猫が甘えてくるのと同じ仕草。
顔をすり寄せながらルーミアは、きゅうん……と嬉しそうな声を漏らす。
その声にどこか艶かしいものを感じて、霊夢は頭の芯がぼんやりとした熱に包まれる感覚を覚えた。
「えへへ、ぎゅーっ」
そう言ってルーミアは身体をすり寄せる。
ルーミアの体温に、霊夢はふと、いつだったか里で赤ん坊を抱いたことを思い出す。
赤ん坊や幼い子供は体温が高い。抱いてやるとどこか安心する、染みるような温かさがある。
ルーミアの体温はそれと同じなのだった。
密着した頬や首に回された腕から伝わる体温はあの時の赤ん坊のそれと変わりなく、霊夢はいつしかルーミアの背中に手を回し、小さな身体を抱いていた。
ルーミアはそれに気付くと、霊夢の顔のすぐ近くで「えへ」と笑って、頬をすり寄せた。
触れ合わせた頬が、やわらかく、熱い。
「ねえ霊夢、もっとちゅーする?」
ルーミアはそう言うと、返事も聞かずにちゅ、ちゅ、とじゃれつくように口付けを繰り返す。
霊夢はされるがままだった。
あれだけたくさん食べるのに、口はちっちゃいのね……などとどうでもいいことをぼんやり考えていた。
ようやく唇を離すと、ルーミアは少し身体を離して、にへっとのんきな顔で笑ってみせた。
「にゃはは」
「な、何よ」
「霊夢、顔あかーい」
「な……!」
言われて自覚してしまうともう抑えが利かなくなってしまうもので、何とか落ち着こうとすればするほどどんどん顔が熱くなってしまう。
色々とどうしようもなくなってしまった霊夢を見てルーミアはきょとんとしている。その自覚のない表情が可愛いやらムカつくやらでますます霊夢は混乱する。
……混乱していたので、ルーミアが顔を自分のすぐそばまで寄せていたことに気付かなかった。
「霊夢、なんかかわいいなー」
無邪気な顔でそう言って、ルーミアは霊夢の頬に、ちゅ、と口付けた。
決定的な何かが切れるのを、霊夢は頭の隅で他人事のように感じた。
「あ……あーーーーーもうっ!」
「きゃー」
「はいおしまい! べたべたするのはおしまい!」
「どしたの霊夢?」
「どうしたもこうしたもないわよ! 夕飯の準備があるんだからあっち行ってなさい!」
「えー」
「えーじゃない! ちょっとそんなにくっつかないでよ!」
「なに怒ってるの霊夢ー、ねー、ねってばー」
などとわいわい騒ぎながら、ルーミアをくっつけたまま台所へ向かう霊夢。
数刻後に用意された夕食は、二人で作った不恰好なコロッケだった。
結局ルーミアはその日、夕食の後、夜まで神社にいた。
「じゃーね霊夢、ばいばーい」
「はいはい、これに懲りたら神社の近くで人襲うの止めなさいよー」
「うん、じゃあまた遊びに来るねー」
「……話聞いてないし……」
帰っていくルーミアにぞんざいに手を振るのは、精一杯の照れ隠しだ。
丸くて黒い球体が、月明かりの中をふらふらと危なっかしく飛んでいくのを見送ると、霊夢は室内へと戻る。
戻って、もう一度ルーミアが消えていった空の方を振り返った。
無意識に指先が、唇をなぞる。
「……ちゅー、しちゃった」
ルーミアが言った言葉を、おうむ返しに口にする。
それだけで顔が熱くなるのが分かった。
その理由は結局分からず、霊夢は布団の中でひとり、顔を赤くしていた。
「じっごっくーをみーれーばー、こーこーろーがかーわーくー♪」
いつものように境内を掃除していると、上の方から調子っぱずれなヘンな歌が聞こえてきた。
視線を上げると、見覚えのある黒い球体が漂っている。
「ル、ルーミア?」
「霊夢ー、遊びにきたよー」
黒い球体の中から現れたのは、のんきな笑顔のルーミア。
その顔を見たとたんよみがえる、数日前の出来事。突然のキス。
「……っ」
「今日はねー霊夢にごちそう持ってきたんだよー。ほら、山で摘んできた山菜だよ。……霊夢?」
「え!? ああ、山菜ね、うん、早速料理するから上がりなさいよっ」
「なんかヘンだよ霊夢、どしたの?」
不思議そうに小首をかしげるルーミア。そのままひょいと霊夢に顔を近づける。
「わーもう近い近い近い!」
「ねーえ、どーしたのってばー」
なおもまとわりついてくるルーミアから懸命に赤面した顔を隠しながら、霊夢は台所へ向かっていった。
しばらく経って出来上がった料理を持ってきた霊夢を、ルーミアは満面の笑みで迎えた。
「わー、おいしそー♪」
これ以上の幸福などこの世になしと言わんばかりの顔で料理を食べ始めたルーミアを、霊夢は頬杖をついて眺めている。
ぼんやりとルーミアを眺めている自分の頬が緩んでいるのを、霊夢は他人事のように感じていた。
(……ヘンなヤツ)
ルーミア。宵闇の妖怪という二つ名の恐ろしげな響きから、誰がこんなのほほーんとした顔を想像できるだろう。
仕草といい行動といい、まるっきりその辺の子供と変わらない。
「ほおら、ご飯ついてる」
「んにゃ」
ルーミアのまるい頬についたご飯粒を、手を伸ばして取ってやる。
それを自分の口に運んでから、霊夢は自分が何をしたかに思い至って顔を赤くする。
「どしたの霊夢? 顔赤いよ?」
「な、なんでもないわよっ」
「そーなのかー」
ルーミアはあっさり納得して、もしゃもしゃと食事を再開した。
「……ね、ルーミア」
「なーにー?」
意識してルーミアから視線をそらしながら、霊夢は言う。
「あんた、今日、なんで私のところに来たの?」
「? なんでって……」
ルーミアはきょとんとした顔をして答える。
「霊夢に会いに来たんだよ?」
「……な、なんで会いに来たの?」
かなり努力して、霊夢はその問いを口にした。
ルーミアはまたきょとんとした顔。なんでそんなことを聞くのか分からない、という顔。なんでそんな分かりきったことを聞くのか分からない、という顔。
「……? 霊夢のこと好きだからだよ?」
「な……っ!?」
顔が紅潮するのは一瞬だったので、それを抑える暇はなかった。
「す、好き……って」
「うん、好きー♪」
無邪気な笑顔で答えるルーミア。その笑顔が直視できない。
霊夢はそれっきり話の接ぎ穂を失って黙りこくったまま食事を続けるが、ルーミアのほうは意に介した風もない。
ルーミアにはなんでもない、霊夢にはとても気まずい沈黙。
「な、なんで……?」
「ふぃ?」
「なんで……その、私のこと、すす、好き……なの?」
しどろもどろになりながら、霊夢は自分の口が勝手に余計なことを口走るのをどうにもできずにいた。
普段なら、そうたとえば紫あたりにからかわれたときなら軽く受け流せるのに、なぜか勝手が違う。
そもそも、こんな風に無邪気にじゃれつかれたことなどないのだ。だから……
ルーミアはというと、困惑する霊夢を気にした風もなく、指先を唇に当てて「んー……?」と考え込んでいる。
「んっとねー……ご飯食べさせてくれるからかなー」
動物か。
「んー……なんかよくわかんないや」
てへへとのんきな顔でルーミアは笑う。
その顔を見ていると自分が一人で懊悩しているのがなんだかばかみたいになってきて、霊夢はため息を一つついて食事を再開した。
ルーミアはルーミアで、よくわかんないという結論で安心したのか、3杯目をかきこみ始めている。
「ごちそうさま……」
「ごちそーさまでしたっ!」
しばらくして二人とも食事を終え、霊夢はどこかげっそりした感じで、ルーミアは相変わらず無意味に元気にごちそうさまの挨拶をした。
「じゃ、片付けてくるからしばらく待ってなさいよ」
「はーい」
元気よく返事をするルーミア。そこでルーミアは、ふと何かに気付いたような顔をした。
「あー」
「ん? 何よ?」
ルーミアがちゃぶ台の向こうから身を乗り出す。
間近にルーミアの顔がきて、思わず霊夢はのけぞりそうになった。
「ちょ、ちょっと、何?」
「えへへー」
ルーミアはにこっと笑うと霊夢の顔に唇を寄せて、小さな舌を伸ばして霊夢の頬をぺろりと舐めた。
ぐわたっ、と今度こそ霊夢はのけぞる。
「な、ななっ、何よ!? 何なのよ!?」
「ごはん」
「……は?」
「ごはんついてた。ほっぺに」
なんでもないことのようにルーミアはそう言って、もう一度にこっと笑った。
「~~~っ!!」
顔を赤くする以外、霊夢は何もできなくなる。ルーミアは、そんな霊夢を不思議そうな顔で見ていた。
食事の片づけを終えて居間に戻ると、ルーミアは寝ていた。
「……なにしてるのこんなとこで」
「すかぴー」
へんじがない。ただのルーミアのようだ。
ルーミアは猫のように丸まって寝息を立てている。
おなか一杯になったらすぐに寝てしまうなんて、まるっきり動物みたいだ、と苦笑する。
ときどき身じろぎしているのが可愛らしくて、霊夢は頬が緩んでしまう。
「こおら、妖怪。巫女の家でのんきに昼寝なんて無防備すぎるんじゃないの?」
言いながら頬をつついてやると、ルーミアはむにゅむにゅと寝言を漏らす。
その様子が可愛くて、霊夢はしばらくルーミアの頬をぷにぷにしていたが、ふとあることを思いついた。
ルーミアはちょうど半分閉まった障子の影にいる。
その障子を音を立てないように注意深く動かし、反対側に影を作ってやる。
するとルーミアは、むにゅむにゅ言いながらもぞもぞと影の方に動いていく。
「あはは、やっぱり……」
今度は障子を元に戻してやると、反対側へむにゅむにゅもぞもぞ。
むにゅむにゅ寝言を漏らしながら、ルーミアは一向に起きる気配がない。
また頬をつついてやると、ルーミアがまるで幼い赤ん坊がそうするように手を伸ばして、その手を掴んだ。
そのまま、霊夢の手をきゅっと握り、頬を寄せる。
「ふぁ……にふぅ……」
言葉とも吐息ともつかない声を漏らして、ルーミアは安心しきった表情で微笑んだ。
霊夢は自分でも驚くほど優しい気分になって、空いた手でルーミアの頭を撫でてやった。
「かわいいな……」
そんな風に呟いて、霊夢はちょっと顔を赤くした。
ルーミアを起こさないように注意しながら小さな頭を抱え上げて、自分の膝の上に乗せてやる。
膝の上の重みとルーミアの体温に、霊夢は不思議な安堵を覚えた。
誰かに膝枕するなんて、初めてだなあ……霊夢はそんなことを考えながら、ルーミアのさらさらの金髪を撫でてやる。
んー……とくすぐったそうに身じろぎをするルーミア。
自分にこんな風に、打算も何もなく、ただ懐いてくれているのが、なんとなくうれしい。
横顔にかかった髪をやさしく払ってやると、柔らかい頬、そして白いブラウスの襟から覗く首筋。
普段日に当たらないせいか、着ているブラウスよりもなお白く見える細い首もとのラインに妙な色気を感じ、霊夢は少しどきっとした。
最初から誰もいるはずのない室内を見回し、霊夢は身体を屈めて、ルーミアの頬に唇を寄せる。
起きてしまわないだろうか、もし起きてしまったらどんな顔をしよう。たぶん向こうはなんとも思わないだろうけど、こっちはそうはいかないわよね……。
そんなことを頭の隅で考えながら、口づける。
唇で感じるルーミアの体温、柔らかさ。名残惜しいのを我慢して、ルーミアが起きないうちに唇を離す。
ルーミアは僅かに身じろぎしただけで、起きる様子はない。
ほっとしたような、少し残念なような、はっきりしない気持ちで、霊夢はルーミアの頭を撫でる。
「……ちゅー、しちゃった」
そう口にした途端に、顔が赤くなったのが分かった。
「もお。あんたが悪いんだからね……」
そんな無責任な責任転嫁が、午後の空気に溶けて消える。
そのまましばらくの間膝の上にルーミアを乗せたまま、霊夢は愛しげに指先で髪の毛をもてあそんでいた。
縁側から差し込んでくる日差しが少し弱まってきた頃、ルーーミアがやっと目を覚ました。
もぞもぞと身じろぎして、身体を起こす。
「ん~……あー、霊夢だー……」
「……ちょっと、ちゃんと起きてる?」
「おにく~?」
「あー……だめだわこりゃ」
ふらふらと頭を左右に揺らしているその様子は、どう見ても寝ぼけている。
「ほら、しゃんとしなさいったら」
「んみ……わたし、寝ちゃってた……?」
「気持ちよさそうにね。おなかいっぱいになったら寝ちゃうなんて行儀が悪いわよ」
「ん……」
子猫のような仕草でまぶたをこすりながら、ルーミアは思い出したように不思議そうな顔をした。
「ねー霊夢、霊夢も一緒に寝てたの?」
「えっ、う、うん、まあ……」
歯切れの悪い返事を返す霊夢。まさか、寝顔があんまり可愛いから思わず膝枕して、その上ちゅーまでしちゃいました、などと言えるはずがない。
寝起きのせいか、ルーミアは霊夢のあいまいな返事を咀嚼するのに時間がかかっているようだった。
ややあってルーミアは、ふにゃーっと相好を崩す。
「にゃはー♪」
「な、なに……?」
「うん、うれしいなーって。誰かと一緒に寝るなんて、はじめてだから」
そう言ってルーミアはもう一度、うれしいな、と笑った。
その無邪気な笑顔に、霊夢は同じような嬉しさとちょっとした罪悪感を同時に覚えた。
「えへへ、霊夢ー♪」
抱きついてくるルーミアを、霊夢はいくらか素直に受け止めることができた。
「もお……甘えんぼ」
「うん、わたし、甘えんぼー♪ ねぇね、撫でてっ、あたま撫でてっ」
「どうしたのよ、急に」
「んー、なんかね、甘えたくなっちゃったの」
霊夢の胸にぎゅっと抱きついて、ルーミアは上目遣いにそんなことを言う。
胸の奥から湧き上がるようないとおしさに突き動かされるように、霊夢はルーミアの背中に手を回した。
小さな身体だった。両手の中にすっぽりと納まってしまうくらい小さなルーミア。
頭を撫でてやると、ルーミアは嬉しそうな声を漏らして、霊夢の胸に顔をぐりぐりこすりつける。
外から聞こえる鳥の声が、霊夢にはどこか遠い。とても穏やかな気分だった。
さっきルーミアは、誰かと寝るのは初めてだったと言っていたが、霊夢もこんな穏やかな気分で誰かと抱き合っているのは初めての経験だった。
はじめて同士だね、と霊夢は胸の中でルーミアに語りかけた。
「……ね、霊夢ぅ」
「ん……?」
霊夢の胸に顔を埋めたまま、ルーミアは視線だけを霊夢の方に向けている。
上目遣いの顔が、とてもかわいい。
ルーミアはすぐには続きを口にしなかった。ためらっているのか、それともまた眠くなっているのか、よくは分からなかった。
「あのね、今ね、なんだかすごく、霊夢とちゅーしたいの。してもいい?」
隠すものの何もない、あまりにもストレートな要求に、霊夢は思わず苦笑する。
霊夢は答えず、ルーミアの頬に手をあてがってやった。
ルーミアはそれを肯定と理解したのか、えへ……と笑みを浮かべて、身を屈めた霊夢にそっと口づけた。
いつだったかのような、ほんの一瞬の無邪気なキスとは違った、時間をかけたキス。ルーミアは霊夢の唇の感触を確かめるように、触れあわせた唇をしばらく離さないでいた。
霊夢も同じように、ルーミアの小さく幼い唇を、時間をかけて味わった。
しばらくして、どちらからともなく唇を離す。離した唇の狭間に漏れた自分の吐息が、熱く湿っているのを霊夢ははっきりと自覚した。
ルーミアもまた、どこかぽーっとした表情で霊夢を見上げている。心なしか、頬も上気しているようだ。
何を言うでもなく、霊夢はルーミアを見つめる。
普段の言動が幼い分、ルーミアのこういう表情はとても魅力的に、否、蠱惑的にすら見える。
もちろん、ルーミアはそんなことは意識もしていないのだろうが……。
そんなことを考えていると、ルーミアは霊夢の首に手を伸ばした。もぞもぞと身体を移動させて、霊夢の膝の上にちょこんと腰を下ろした。
「霊夢ぅ……もっと、ちゅーしたいな……」
「うん……」
ルーミアの舌ったらずな口調に、茫洋としながら霊夢は答える。
さっきよりも身体が密着して、霊夢はどきんとなる。それにルーミアの顔が近い。潤み始めた瞳が、まるで誘惑するようだ。
再び唇を重ねる。
「ん……ちゅっ、ちゅ、んむ、ん……」
ルーミアは一番なじむ角度を探すように、唇を離しては触れさせるのを繰りかえす。そのうちにその行為自体が気に入ったのか、吐息に甘い色がにじみ始めた。
ルーミアの頭を抱きかかえてその髪に鼻先を埋めると、ふわりと甘いにおい。
香水なんかつけているはずはないのに、いいにおい。
ルーミアのにおい。
「にへへ……」
小さな頭を抱きしめている胸元から、ルーミアのくぐもった笑い声。
「な、なに……?」
視線をおろすと、自分の方を見上げているルーミアの視線と目が合った。
ルーミアはもう一度、えへへと笑ってみせる。
「霊夢、なんかいいにおいがするー……」
ルーミアが自分が考えていたのと同じ事を口にしたのが、なんだかおかしい。
ふふっと笑うと、ルーミアもえへへと笑う。
そして二人は、どちらからともなく唇を寄せ合った。
ルーミアの柔らかな唇の感触が心地よい。ただ触れ合わせるだけの、ままごとみたいなキス。それがたまらなく心地いい。
ちゅ、ちゅ、と音を立てながら、二人は口づけを繰り返す。
ぷは……と唇を離すと、熱い吐息が溶けて混ざった。
「ふわ……はぁ……」
「ふ……ぅ、は……」
浅く息をつく。
ルーミアの頬を染めてとろんとした目をした表情は、見た目の幼さとのギャップでひどく色っぽく見えた。
誘蛾灯に誘われるように、霊夢はその頬に手を伸ばす。そっと手を添えてやると、ルーミアは目を子猫のように細めて、霊夢の手のひらに頬をすり寄せた。
「んに……霊夢ぅ……」
ルーミアは両手で頬に添えられた霊夢の手をきゅっと握った。ちっちゃい手だな、と霊夢は思った。
両手で握った霊夢の手に頬をすり寄せて、ルーミアは幸せそうな吐息を漏らす。その手が、ルーミアのやわらかな唇に触れた。
あ、と思うまもなく、霊夢の指は熱くやわらかいものに包まれる。
「あ……!」
思わず声を上げる。ルーミアが両手で握った自分の指を――口に、含んでいる。
今までに一度も感じたことのない、自分以外の口内の感触。
熱く、ぬめって、やわらかく……。
れる……とルーミアの舌が指先に這うと、霊夢の背筋があわ立つ。
「んちゅ、ちゅぱ……んぅーう、んぷ、れろ……れぇ……むぅ……」
多分ルーミアは分かってこんなことをしているのではないだろう。小さな赤ん坊がおしゃぶりをくわえると泣き止むのと同じようなものなのだ。
……そんな思考は、一瞬で溶けてなくなった。
「ル、ぅ、ミア……ん、ふぅ、ふぅ……」
快感に耐えるように、ぎゅうっと眉根を寄せる霊夢。
肩が、指先が、時折ぴくん、ぴくんと断続的にふるえる。
ルーミアが思い出したように視線を上げる。その視線にすら、霊夢は身体をふるわせた。
「んゅう、ちゅぅ、ちゅ、ちゅぱ、ちゅぱ……」
薄桃色に染まった頬。濡れた音を漏らす唇。潤んだ瞳――。
それらを備えているのが、あの無邪気で幼いルーミアだなんて、信じられない……。
あのルーミアが、こんな、こんな……!
「は、ぁ……ルーミアぁ……はぁ、は、あ、あ……ッん!」
びく、と霊夢の肩が跳ねた。かるく達したのだ。
「う、そ……」
乱れた息をつきながら、霊夢は呟く。
「指だけ……で……?」
困惑と羞恥とがないまぜになって、霊夢は呆然としてしまう。
はじめての経験だった。
それも、自分よりも小さなルーミアに、だなんて……。
ちゅぽ……と音を立てて、ルーミアの小さな口から濡れた指が引き抜かれる。
指先からルーミアの舌先につながる唾液の糸が、ひどく淫らだ。
「んはぁ……」
ルーミアの吐息もまた、すでに熱く湿っていた。
まどろむようなぼんやりした表情で、霊夢を見上げている。
はぁ、はぁと息をつくその唇の間から、ついさっきまで自分の指を這っていた舌先が覗いた。
ルーミアが腕を伸ばし、霊夢の首にしがみつく。そのまま顔を近づける。唇から漏れた息が、熱い。
はぁっ……と息をついて、ルーミアが舌を伸ばし、霊夢の唇をぺろりと舐めた。
んぅー……と、鼻にかかった甘い声で、ルーミアは霊夢の唇や頬にぺろん、ぺろんと舌を這わせる。
小さくてかわいらしい舌先が、とろけるように熱い。
意識してかしないでか、霊夢は両手でルーミアの頬を包む。
ルーミアは一瞬きょとんとした顔をしてから、にゃはー……と微笑んだ。
霊夢も釣られて微笑んで、唇を寄せ、舌を伸ばす。
ルーミアも同じように舌を伸ばし……舌先が、ぴとっと触れ合う。
いつの間にか、どちらからともなく指を絡ませ手を繋いでいた。
舌先を少しずつ動かすたびに、自分の手の中のルーミアの小さな手が、ぴくん、ぴくんとふるえるのに、霊夢はたまらないいとおしさを覚えた。
ルーミアは差し出された霊夢の舌を、拙い動きでなぞっていく。
くすぐったいくらいの刺激だったが、それが霊夢には快感だった。
肉体的な、というよりは、ルーミアが素直に自分を求めてくれているということがもたらす、精神的な快感。
ちょん、ちょん、と互いの舌先をつつく。
その度に自分のものとは思えないような甘ったるい声が漏れてしまい、霊夢は顔どころか体中がかっと熱くなった。
深くも浅くもない、そんなキスをしばらく繰り返して、二人は唇を離した。
離れ際に霊夢が、ちゅっとかるく口づけてやると、ルーミアは嬉しそうに微笑んだ。
「にへへ……霊夢、なんだか、あまーい……」
「もぉ……ほんとに、甘えんぼなんだから。それに……」
「……?」
小首をかしげるルーミアに霊夢は胸の中で、「こんなにいっぱい、キスするなんて……」と文句を言った。
ルーミアはまだ顔を赤くしたまま、あどけない笑みを浮かべている。
わけもなく気恥ずかしくなって、霊夢はごまかそうと手を伸ばして、頭を撫でてやったり、頬をくすぐってやったりする
「みぅん……くすぐったぁい……」
ルーミアは喉を撫でてもらっている猫のように目を細める。
「えへへ、触ってもらうの、すきー……」
ルーミアのそんな仕草に、霊夢はいちいちどきっとする。今までに抱いたことのない感覚だった。
触れてあげたい。かまってあげたい。
「じゃあ、もっと……触っていい……?」
「うん。いっぱい、触って……」
霊夢はルーミアの身体を抱え上げ、自分の膝の上に後ろ向きに座らせる。
後ろから覆いかぶさるように腕を回すと、ルーミアの身体はすっぽりと腕の中に納まってしまう。
頬に沿わせた指先を首筋のあたりにまで持っていくと、ルーミアはくすぐったそうに細い肩をすくめる。
「なんか、ぞくぞくってするぅ……」
「いやじゃない……?」
「やじゃないよ、きもちいいよ……」
ちょっと気になって聞いてみると、ルーミアはふるふると首を振ってみせる。
安心した霊夢はルーミアの頬にかるく口づけて、手を下の方に――ルーミアの黒いベストのすそに持っていく。
ルーミアが怖がらないか心配だったが、腕の中のルーミアにはそんな様子はなく、霊夢の行為に身を任せていた。
ベストの下の白いブラウスのすそをそっと引き出し、指先をもぐりこませる。
指先が触れたルーミアの肌は、しっとりと汗ばんでいた。
そのまま、手のひらを上へ。
ルーミアが、ふわぁ……と声を漏らした。
ルーミアの胸のふくらみを手のひらで覆う。小さいけれど、確かにやわらかい感触。
注意深く指先に力を入れ、ほんの少しだけ沈み込ませる。
ぷにっとした感触がなんだかかわいらしくて、霊夢は口元に自然と笑みが浮かぶのを感じた。
「んぅ……わたし、おっぱいちっちゃいから、さわっててもつまんなくないかな……?」
「そんなことないわ……かわいいじゃない」
「そー……なのかぁ……」
ルーミアのささやかな胸をゆっくりと愛撫しているうちに、手の平の真ん中あたりに、ぽつんと固い感触。
指先で、そっと撫でてやる。
「みゃんっ……」
ルーミアが声を上げて、びくっと身体を跳ねさせた。
「ご、ごめんっ、痛かった……?」
「ううん、違うの、なんか……」
なんか……と呟いて、ルーミアはなんと言っていいのか分からないのか、みぅ……とうめいて俯く。
ややあってルーミアは、後ろの霊夢に肩越しに視線をやる。
「霊夢ぅ……もっかい、して……」
「う、うん……」
ルーミアの思わぬおねだりに、霊夢はかっと顔が熱くなる。同時に手の平の中のルーミアの小さな胸の内側に、どきん、どきんという鼓動を感じた。
ルーミアも背中に自分の鼓動を感じているんだろうか……そんなことを考えながら、胸のふくらみの先端を指先でそっと摘む。
「んみゃっ……あぅ……なんか、おっぱいのさきっぽ、じんじんする、よぉ……」
きゅ、きゅと指先の力加減を変えるたび、ルーミアは甘くとろけた声を上げて、しきりに両足をこすり合わせている。
めくりあがった黒いスカートとは対照的な、太ももの半ばまであらわになっている白い両足。
内ももに手をやり、撫で上げる。
「すべすべ、してる……」
スカートが完全にめくれて、飾り気のない白の下着が見えた。
いきなりそこに手を触れるのはなんとなく気が引けて、霊夢はしばらく太ももの感触を味わった。
成熟した体型――例えば紫のような――には程遠いルーミアの身体はしかし、抱きしめて触れてみると全身が柔らかい。
その柔らかさに霊夢は、抱きしめているのに、逆に抱きしめられているような安堵感を覚えた。
と、ルーミアの手が、くい、と霊夢の袖を引いた。
霊夢は小さくうなずいて、内ももに当てていた手のひらを、少しずつ上へ。
そっとそこに指先を乗せると、意外なほどの柔らかさで指先が沈む。
「ふわぁ……」
指先が沈み込んだ分だけ、ルーミアが息を吐き出す。
「いたくない……?」
「ん……」
ルーミアは目を伏せて、は、は、と少しずつ乱れ始めた吐息を漏らしている。
布地越しに、じわりと染みるような熱。人差し指を乗せると、指の腹全体が熱い。
そのまま人差し指を、上下にこするように動かす。
「んみゃ――あ、あー……みぃん……」
ルーミアの細い肩が、ぶるっとふるえた。立てた膝が、頼りなさげに揺れている。
ブラウスの中に潜り込ませた霊夢の手のひらの中で、小さな先端が、つんっとかたくなった。
みぃ、みぃと子猫のようなか細い声で喘ぎながら、ルーミアは秘部に宛がわれた霊夢の手に自分の手を重ねた。
潤んだ瞳で霊夢を見上げるルーミアの胸元の白さがまぶしい。
「れぇ、む……ちゅー……」
「うん、ちゅー、しよ……」
途切れ途切れの言葉で求めてくるルーミアに、霊夢は身体をかがめて口づけた。
んっ、んっ、と懸命に舌を絡めてくるルーミアがたまらなくいとおしくなって、霊夢は両手の愛撫を強めた。
小さな乳首を指の腹でちょん、ちょんとつつきながら、じわりと湿り気を帯びた秘部を布越しにやさしくこする。
「んんーん……みゃああぅ……みぁ……とろとろ、に、なっちゃう、よお……」
「ルーミアぁ……かわいい、かわいい、ルーミア……」
ルーミアのとろけたかわいらしい声に、霊夢もまた、頭の芯がとろけていくようだった。
わたしのだ。そんな稚拙な独占欲が自分の心に生じるのを、霊夢は頭の隅で、意外だな……と他人事のように思った。
こんな、胸もふくらみきってないようなちっちゃな子に、こんなことしてるなんて……。
そんな困惑と罪悪感も、腕の中に抱きすくめたルーミアの甘いにおいと熱とに溶かされ、揮発していく。
揮発した後に残るのは、ただひたすら、ルーミアがいとしいという感情だけ。
「れぇむぅ、れぇむぅ……なんか、ぽーって……おなかの、なか、あつく、て……」
「うん、わたしも、熱いよ、ルーミア……」
「れぇむ、れぇむ……もっと……もっとお、あつく、して……」
その言葉に導かれるように、霊夢はルーミアの下着の中に手を滑り込ませる。
「ルーミア、触るわよ……?」
「んゅ……」
熱く濡れたそこに、とぷん、と指先を沈めたとたん、ルーミアの身体が跳ねた。
「っみぁああああぅ……! ぁは、はわぁ、あ、あ、あ……!」
小さな手足をぎゅうっと縮こまらせて、ぴくん、ぴくんと数度跳ねる。
その度にルーミアの幼い入り口が、きゅんっ、と霊夢の指を締め付けた。
何度か身体を跳ねさせて、ルーミアはくたっと四肢を弛緩させる。
(イッちゃった……んだ……)
霊夢もまた、愛撫こそ受けていないものの、ルーミアのかわいらしい声や反応、そしてルーミアを愛撫するという行為そのものがもたらす快楽で、充足を得ていた。
すっかり脱力したルーミアを膝に乗せていると、わけもなく幸福な気持ちになる。
上気したままの頬に手をやると、ルーミアはおぼつかない手つきで霊夢の手を探り、握った。
「あんたが、悪いんだからね。こんなに……こんなにかわいいから。あんなに、ちゅーしてくるから……」
いとおしげに言い訳をして、ルーミアの汗ばんだ頬にかかった髪を払ってやる。。
ルーミアはそんな無責任な言い訳をとがめもせず、霊夢の膝の上でおとなしく寝息を立てている。
「こぉら、妖怪。巫女の膝の上でのんきにお昼寝なんて、無防備すぎるんじゃないの?」
自分の独り言にふふっと苦笑して、霊夢もまた目を閉じる。
行為の後のけだるさが心地よい。
このまま、私も眠ってしまおう。霊夢はまどろみに身を任せる。誰かの体温を感じながら眠るのなんて初めてだな、そう思いながら霊夢は眠りについた。
数日後。
いつものように庭掃除をしていた霊夢の頭上に、ふっと影がさす。
影の正体は確認するまでもない。
「やほー、霊夢ぅ、遊びに来たよぉ。はいこれっ、お土産ー」
「あら、いらっしゃい。今日は川魚?」
「自分で釣ったんだよー、ねぇねっ、ほめてほめてー」
無邪気にくっついてくるルーミアの体温に、数日前の出来事がフラッシュバック。
なんとか平静を装い、意識してぞんざいにルーミアの頭を撫でてやる。
「はいはい、いい子いい子」
「にゃはー♪」
そんな投げやりな返事にも、ルーミアはうれしそうに笑う。
いよいよ頬の筋肉が弛緩しきるのを抑えられなくなってきたので、くるりと背を向け、台所へ。
「じゃあ、ご飯作るから待ってなさい」
背を向けたところで、ルーミアにくいくいと袖を引かれた。
なあに?と振り向く霊夢。
「んー♪」
ルーミアが、手を後ろに組んで、目を閉じて、つん、と顎を突き出す。
無邪気であけすけな要求に、のけぞる霊夢。
ううっ、とためらっていると、ルーミアが眉根を寄せて「んー!」
ばばっと周りを確認する。よし、誰もいない。
ルーミアの細い肩に手を置いて、ぎゅっと目を閉じ、ちゅっとキスをする。
唇を離して目を開けると、ルーミアは上目遣いに、どこかいたずらっぽい目つきで霊夢を見上げている。
その視線に耐え切れなくなって、霊夢は今度こそ台所へ向かう。
「お、おとなしく待ってなさいよ」
「はーい♪」
肩越しにそう言ってやると、ルーミアはあんまり分かってなさそうな、のんきな声で返事をした。
台所に立っている間中、霊夢はちらちらと居間でくつろいでいるルーミアに視線を向けていた。
わけもなく、気になる。わけもなく、顔が熱くなる。
あまり見ているとルーミアを目が合ってしまいそうで、霊夢はまな板の上の野菜を刻むことに集中する。
「ねぇー、霊夢ーう」
「うわ!」
集中しようとした矢先、ルーミアの間延びした声。霊夢は危うく指を切りそうになる。
「なっ、何よ、びっくりしたじゃないっ。ご飯まだできてないからおとなしくしときなさいよねっ」
「んーと、そじゃなくてねー」
障子の向こうからひょいと身を乗り出して、ルーミアは言った。
「ご飯食べ終わったらぁ、またちゅーしたいなーって」
「~~~っ!」
危うく自分の腕を昼食のおかずにしてしまいそうな霊夢だった。
今後こういった雰囲気のSSが増えると良いな~
GJ!!!!!
GJ
ルーミアの可愛さで叫びそうになりました。この組み合わせって良いですよねぇ。
あと2本のこの組み合わせに期待してますぜ!
次回次々回も楽しみにしてます。こりゃカウパーが乾く暇がないぜ。
今から残りの2本が待ち遠しいです。
無邪気なルーミアに対し意識してしまう霊夢ももう!たまらない!
ああどうしてこんなにかわいいんだろう。
口から角砂糖がぽんぽん飛び出して困っちゃったNE☆
百合ろだで読んだ時に凄くツボだったので、ここで再び目に出来て良かった!
るみゃれいむたまらん
るみゃれいむは素晴らしい