「咲夜、あ、遊びに来たぜっ」
いつものように大きなドアを開けて入ってきた魔理沙は、いつも様子ではなかった。
「……? どこか具合でも悪いの?」
「そ、そんことないぜ」
出迎えた咲夜にもいつもの軽口はない。目深にかぶった帽子の下から、上目遣いに遠慮がちな視線を向けている。
「どしたの? ん?」
咲夜がかがみ込んで顔を覗き込むと、魔理沙は慌てて視線をそらした。
しばらくそうしていた魔理沙は、ややあって咲夜の方に倒れ込むように歩み寄る。ぽすっと咲夜の胸元に顔を埋めて、魔理沙は咲夜に抱きついた。
咲夜はちょっと驚いた顔をしてから、ふっと微笑んだ。細い背中に手を回してやると、魔理沙の耳が赤くなった。
「おやつ、食べるでしょ?」
咲夜の胸に顔を埋めたまま、魔理沙は「ふが」と返事をした。
魔理沙の先に立って、咲夜は真っ赤な絨毯の敷かれた廊下を歩いていく。
この間までは咲夜の隣りで歩いていた魔理沙が、今日は借りてきた猫のような大人しさで、初めて来た場所を歩くような足取りで咲夜のあとを付いてくる。
「さ、どうぞ。お客さま」
冗談めかしてお辞儀をする咲夜に促されて、魔理沙は応接間に入る。
「……ん?」
ドアをくぐった時に、魔理沙が何かに気付いたように顔を上げた。
咲夜を振り返る魔理沙に、目眼で肯定する。
「気が付いた? さすが魔法使いってところかしら」
「空間が……操作されてる?」
「ご名答。この応接間だけ通常の空間と切り離してるわ。だからしばらくの間、二人きりよ」
「っ!」
咲夜の口にした「二人きり」という単語に、魔理沙は無防備に反応する。
「嬉しい?」
「あ、う……え、えと……」
ごにょごにょと言葉を濁らせる魔理沙の鼻先を、咲夜はちょっとつついてやる。
「ふぎゃっ」
「うふふっ、かーわいい」
「か、からかうなよなー……」
それから二人は、穏やかな午後の日が差す応接間で、用意されたケーキを食べながら過ごした。
魔理沙が取り留めのないことを話し、咲夜がそれに相槌を打つ。たわいない会話。
咲夜が口にする、「そう」とか「ふうん」とかいうなんでもない相槌に、魔理沙にはたまらなく嬉しそうな顔をする。それが咲夜にも嬉しかった。
そんな中、ふと会話が途切れた。
しゃべっている間はそうでもなかったが、静かになると咲夜と二人きりだということを意識してしまうのか、魔理沙は俯いて顔を赤くしてしまう。
そんな魔理沙を、咲夜は何を言うでもなく、柔らかな笑みを浮かべて見つめている。
「さ、咲夜!」
「な、なあに? そんな大声出して」
いきなり立ち上がる魔理沙に、咲夜は思わずのけぞる。魔理沙はというと、これから断崖から飛び降りでもしそうな顔で、息を荒げて、顔を真っ赤にしている。
ああ、なにかとんでもないことを言うな……咲夜はそう確信する。
魔理沙が躊躇っている間に、咲夜は素早く心の準備を整えた。
――よし、これでなにを言われても大丈夫。さあ来なさい、おねーさんが受け止めてあげるわ!
魔理沙がぐっと顔を上げた。すう、と息を吸う。
「だ……!」
「だ?」
「抱いてっ!!」
「だ……!?」
魔理沙が、爆発するように叫んだ。
――沈黙。
日の光すらもが凍りついたような、沈黙。
魔理沙は両手を振り上げた妙な姿勢のまま、塑像のように仁王立ちで硬直している。よく見ると、小刻みにぷるぷる震えている。
心の準備は思わぬ角度からの攻撃に効果を発揮できず、爆発の直撃を受けた咲夜はぽかんとした表情で固まっている。
「……ぷっ」
先に沈黙に耐え切れなくなったのは咲夜の方だった。
「あははは……! な、何言うのよいきなり!」
「ばっ……! だっ……! な……っ!」
大笑いする咲夜に、魔理沙は今にも火を噴きそうなほど顔を真っ赤にして何か言おうとするが、言えない。
見れば目に涙まで溜めている。
「……う~~~っ!」
魔理沙はどうしようもなくなって、顔面からソファーに突っ込んだ。
大きな帽子を両手で引っぱって自閉モードに移行している。
変な生き物みたいになってしまった魔理沙の背中を咲夜がつつくと、もぞもぞ身じろぎした。
「魔理沙? まりさちゃーん?」
「うー」
「もお、すっかり拗ねちゃって」
「うー」
「えいっ」
「うひゃあう!」
「あ、起きた」
「ヘンなとこ触るなよう!」
喚く魔理沙に、咲夜はうふふ、と余裕の笑顔。
「で、何して欲しいって?」
「だ、だって……」
「だって、なに?」
意地悪くしらばっくれてやると、魔理沙は俯いて、上目遣いに言った。
「あ、会えない間、その、さ、寂しかったん、だもん……」
「……そ、そう」
なんとか余裕の表情は崩さずに済んだものの、咲夜はこの場で押し倒してしまいたい衝動を押さえつけるのに必死だった。
普段の魔理沙のがさつな言動を知っているだけに、目の前の魔理沙のしおらしさが新鮮で、いじらしかった。
無理をして女の子口調にしているのか、それともこれが魔理沙の素なのか。
どちらにせよ、たまらなくいとおしい。
「……さ、咲夜」
魔理沙が遠慮がちに口を開いた。やはりその先がなかなか言えず、もじもじしている。
咲夜が目眼で先を促してやると、魔理沙は少し安心したのか、表情が和らいだ。
「あの、ね」
「な、なに?」
「手……握っても、いい……?」
魔理沙の口から零れたのは、あまりにもささやかなおねだりだった。
ふっと咲夜の肩から力が抜けた。じわりと、胸のあたりに暖かいものが広がった。
「はい」
そう言って咲夜が手を差し出すと、魔理沙はおずおずと手を重ねる。
小さな手が、ふるえていた。
きゅっと両手で握る。
魔理沙のその顔に一瞬、迷い猫が親猫を捜し求めるすがるような表情が掠めたのを、咲夜は見た。
魔理沙は、溺れる者が木片を掴む必死さで、咲夜の手を掻き抱いた。
ぬくもりを求めてか、両手で包み込んだ咲夜の手に、魔理沙は頬をすり寄せる。
「あったかい……」
無防備な声音で、魔理沙はそんなことを言った。
咲夜が空いた手で魔理沙を抱き寄せてやると、小さな身体は差して抵抗もなく腕の中におさまった。
二人は言葉を交わすでもなく、しばらくそうやって抱き合っていた。
咲夜の手が頭を撫でると、魔理沙はもぞ、と身じろぎする。
魔理沙の身体は、緊張のせいか熱くなっていた。
その体温が咲夜の脳裏に、ついこの間の雨の夜、魔理沙との情事の記憶を蘇らせた。
小さな子供のように、咲夜に甘えてきた魔理沙。
咲夜の指で、唇で、幼い身体を跳ねさせて声を上げる魔理沙。
そして……
――さくや……おねえちゃん……
情交の熱に浮かされた声音で、咲夜をそう呼んだ魔理沙。
魔理沙を抱き締めながら、咲夜は息をつく。
かわいい、と思う。
自分をこうして無防備に慕ってくれるのがとても嬉しい。自分にこうして甘えてくれるのが嬉しい。
触れてあげたい。抱きしめてあげたい。この愛しい「妹」を。
「ね、魔理沙」
「……?」
咲夜を見上げる魔理沙の顔はすでに上気していて、ほんのりと赤くなっている。
「ちゅー、しようか」
幼児語でそう言ってやると、魔理沙はとろんと微笑んで、そっと目を閉じた。
最初のキスは、さっき食べたケーキの味だった。
――はぁ、はぁ、はぁ。
昼下がりの陽光が差し込む応接間に、切なげな吐息が響く。
咲夜の指が、すうっと魔理沙の首筋をなぞると、それだけで魔理沙は喉をふるわせた。
隣り合わせにソファに座り、二人はついばむような口付けを繰り返す。
相手に触れるのは専ら咲夜の方で、魔理沙はくたりと全身から力を抜いて、咲夜の愛撫に身を任せている。
「さくやぁ……」
甘い吐息に混じった自分の名前を聞くたびに、咲夜はふぅ……っと息をつく。
そうする必要があるのならどんな媚態でも演じられるであろう自分の、「ほんもの」の吐息。咲夜は自分の吐息がそうであることをはっきりと認めた。
愛撫されている訳でもないのに、名前を呼ばれるだけで、ふるえる。熱くなる。
そして、魔理沙もまた咲夜の漏らした吐息を耳元に受けて、小さく声を漏らす。
「魔理沙、口、開けて……」
「う、うん……」
咲夜の言葉に、魔理沙は恥ずかしそうに、だが従順に従う。
中途半端に開いた口から覗く薄桃色の舌先に、咲夜は図らずもどきっとする。
魔理沙がこういう経験に乏しいのは考えるまでもない。こうした行為には咲夜の方がずっと長けているはずなのに、その舌先はまるで誘っているようで……ひどく、淫らに思えた。
そういう目で魔理沙を見てしまうことに、咲夜は少し罪悪感を覚えた。ちくりと胸が痛む。
魔理沙の方は自覚しているかどうかはともかく、明確な肉体的な欲求から咲夜を求めているわけではないのだろう。
魔理沙が自分に求めているのは、たぶん、ぬくもりだと咲夜は考える。それも、人間が酸素を求めるのと同じくらい、切実に。
あの日――初めて魔理沙を抱いたあの雨の日。魔理沙は咲夜に自分の過去を、語って聞かせた。
ぬくもりに飢えている、というのはいささか陳腐な言い方だが、魔理沙はまさにそうなのだ。
その相手に自分を選んでくれたことを、咲夜は素直にうれしいと思っていた。
そして同時に、ぬくもりを与えてあげたいとも思った。自分にできるのなら、自分にできるだけ。
「ん……っ」
魔理沙の細い肩を抱き寄せて、より深く口付ける。魔理沙が腕を咲夜の首に回した。咲夜も同じように、魔理沙の背中を抱いてやる。
舌先を絡め合うと、それだけで魔理沙の背中にさざなみのようにふるえが走る。
「ん……ふ、はぁ……」
「はっ、あぅん、ん、ちゅ……」
唇をついばみ、舌の裏側をくすぐる咲夜の技巧に満ちた動きとは対照的に、魔理沙は技巧も何もなく、ほとんど反射的に舌を動かしているだけ。
なのに咲夜は、その動きにこそとろけるような快感を覚えていた。
ろくに肌を合わせたこともないような幼い少女が、自分を求めて懸命に舌を絡めていると思うと、それだけで性的な欲求とは異なる感覚で胸が熱くなる。
「はぁぁ……む、んちゅぷ、ちゅ、ちゅぅぅーっ……」
「んんんーっ……!? んは、はゃ……!」
魔理沙の舌を深くくわえ込み、唇でしごくように吸ってやると、魔理沙は驚きからか快感からか、背中をびくんと跳ねさせた。
口内にくわえ込んだ魔理沙の舌は熱く、甘く、柔らかく……咲夜はかるい酩酊を覚えた。
ややあって唇を離す。
「は、あ……」
吐息を漏らす魔理沙の唇は、二人のものが交じり合った唾液で濡れて、たまらなく色っぽい。
魔理沙は熱に浮かされた視線を、ぼんやりとさまよわせている。
指先で頬をくすぐってやると、魔理沙はくすぐったそうに目を細めた。
その様子がまるで仔猫のようで、咲夜はふふ、と笑みをこぼした。
「はぁ……は……えへへ、咲夜に食べられちゃったあ……」
そう呟く魔理沙の声は、だんだんと幼くなっていた。無防備な、顔。
赤く染まった頬にかるく口付けて、咲夜はすっとソファから腰を上げる。
と、その手を魔理沙が素早く掴んだ。
「……? なに?」
「ど、どこいくの……?」
泣きそうな顔だった。
そう、まるで、母親に置いて行かれた子供のような。
「……どこにも、行きやしないわ」
咲夜がそう言って頭を撫でてやると、魔理沙の表情は和らいでいった。
咲夜はソファに背を預けている魔理沙に、ふわりと覆い被さる。
魔理沙にまたがる形になって、身体が密着した。
「咲夜のからだ……あつい……」
「魔理沙のせいよ」
「え、だってわたし、なんにも……」
してあげられてないのに、という言葉は、口の中に留まった。
咲夜は口の外に出てこなかったその言葉を敏感に読み取った。
そっと魔理沙の手を取る。
そして、自分の胸に押し当ててやった。
「ね、今度は、魔理沙が、して……?」
「え、だって……」
「だって、なあに?」
「その、や、やり方とか……うう、よく、分からないし……それに、咲夜みたいに、う、うまくないし」
しどろもどろにそう言う魔理沙がたまらなくほほえましく、咲夜は笑いを我慢できない。
「な、なんだよぅ、笑うなよぅ……」
「ね、魔理沙は、私に触られるの、いや?」
「そ、そんなことない!」
慌てて首をぶんぶん横に振る魔理沙。
「私も、魔理沙に触って欲しいな?」
「えっ……う……」
「私じゃ、いや?」
「そんなにいじめるなよぅ……」
言いつつ、魔理沙は恐る恐る、咲夜の柔らかな胸に宛がわれた自分の手を動かす。
「……やーらかい」
「うふふ、ありがと」
「うらやましいぜ……わたしのなんかぺったんこだし」
「いいじゃない、かわいくて」
「……持たざる者の苦悩などわかるはずもないのぜ」
となかんとか言いながら、魔理沙は咲夜の胸を触っている。
愛撫などと呼ぶにはいささか幼稚に過ぎる手つきだったが、咲夜は不思議な満足感を覚えた。
「あ……」
不意に魔理沙が何かに気付いたように声を上げた。胸に手を当てたまま咲夜の顔を見上げ、そしてまたうつむく。
「なに?」
「ん……」
問うと魔理沙は、少し恥ずかしそうにして、言った。
「咲夜も、どきどきしてる……」
「……っ!」
言われて咲夜も、今更自分の動機が激しくなっているのを自覚した。顔が段々赤くなっていくのが止められない。
このまま爆発してしまいそうだ。
魔理沙はそっと咲夜の胸に耳を当てる。ううっ、とのけぞる咲夜。
――このコ……分かっててやってるんじゃないでしょうね……?
「なんか、安心する」
そんなことを呟いて、魔理沙は咲夜の胸に頬をすり寄せる。
「なんか、ほんとに子供みたいね」
「いいよ、子供で。……咲夜に甘えられるから」
また、どきん、とした。
ふらり、と手を上げ、咲夜は魔理沙の胸に手のひらを当てる。魔理沙は一瞬ぴくんとふるえたが、抵抗はしなかった。
「魔理沙も、どきどきしてるわ……」
お互いの胸に手を宛がって、お互いの鼓動を感じ合う。
「どき、どき、どき、どき……」
「どき、どき、どき、どき……」
二人は顔を見合わせて、なんとなく笑った。
咲夜が少し身体を離して服のリボンに手をかけ、するりと引き抜くのを、魔理沙はぽーっと眺めていた。
ぷつ、ぷつとメイド服のボタンが外され、咲夜の肌が露になっていく。
開かれたブラウスの合わせ目から、精緻なレースの施された下着に包まれた咲夜の胸の谷間が覗く。
魔理沙は小さく、あ……と声を漏らす。呼吸が微かに乱れ始めていた。
「今度は直接……ね?」
そう言って微笑んでみせると、魔理沙はぼっと顔を赤くした。
下着を外すと、陽光の中に咲夜の肌が晒された。
まろやかな曲線を描く乳房と、ぷくんと隆起したその先端。そして引き締まったおなかのあたり。魔理沙はこくんと唾を飲む。
「さ、触っても……いい……?」
「うん……」
やや迷ったあと、魔理沙は咲夜の乳房の間に顔を埋めた。片手で不器用に乳房に触れる。
「どお? 私の胸……」
「ぽにゃぽにゃで、おっきくって……さきっぽ……固くなってる……」
「うん、魔理沙に触られて、きもちいいの……んっ」
「あ、はぁ……指、埋まっちゃうよ、さくや……ぁ……」
愛撫している魔理沙の方が息を荒げているのに、咲夜は胸中で苦笑した。その初々しさが、可愛くて仕方なかった。
「さくや……おっぱい、やわらかくて、あつい……」
熱い吐息とともに零れる魔理沙の言葉はもうすっかりとろけている。まるで時間を逆行して、幼児にでも戻ってしまったようだ。
だからだろうか、咲夜は自分でもほとんど意図しないうちに、つんと尖った胸の先端を魔理沙の口元に持ってきた。
魔理沙はそれを、赤ん坊がそうするように口に含んだ。
「はぁうぅ……っ」
熱くぬめった感触がを敏感な部分に感じ、咲夜は声を漏らす。
魔理沙の行為は相手に快感を与えることを意図したものではなく、ほとんど意識が朦朧としている状態での反射的な行動だった。
にも関わらず、咲夜はどんな技巧を尽くした愛撫よりもこの行為が心地よかった。
激しい荒波に飲まれるような快感ではない。少しずつ少しずつ、弱火で煮込むような穏やかな快感だった。
「はぁむ、ん、ちゅぱ、ちゅ……ん、れる、ちゅ、ちゅ、ちゅ……」
「んっ、あ、はぁ、は……ふ、ん……ま、りさ……」
魔理沙の名を、吐息の間から呼んでやる。そうすると魔理沙は、咲夜の乳房から唇を離し、熱に浮かされたような顔で咲夜を見上げ、どこか危うさすら感じる幼い笑顔を咲夜に向けた。
「ね、魔理沙、おいしい……? 私の……私のおっぱい、おいしい……?」
「ん、おいひぃよお……あまぁくて、やぁらかくてぇ……とっても、すき……さくやあぁ……」
「ん、あ、はぁう……! 魔理沙、あは、んぅっ……あ、魔理沙……わたしも、わたし、も……」
は、は、は、と、咲夜の呼吸が早まる。
あれ? おかしいな? 咲夜は昂ぶりの中、頭の隅で疑問に思う。
私、もしかして……。
「んぁ、ああ……魔理沙、魔理沙、はぁ、はぁ、んっ、あ……」
「ちゅ、ちゅ、ちゅ、んんーっ、すきぃ……おっぱい、すきぃ……」
――魔理沙に、イカされ、ちゃう――?
その思考がトリガーだった。
咲夜の全身を、震えが駆け抜けた。
「あっ……? あ、あぁ、んぅっ……は、あ――……っ」
不思議な感覚だった。
喜悦の絶叫でもなければ、愉悦の悲鳴でもない。
安堵のため息のような声だった。魔理沙の頭をきゅっと抱きしめ、咲夜は達した。
今まで一度も経験したことのない、穏やかな絶頂だった。
「んはぁ……っ」
絶頂の余韻に身をふるわせる咲夜。そんな咲夜を、魔理沙はぼんやりと見上げている。無垢な視線。
自然と手が伸び、魔理沙の頭を撫でていた。
「魔理沙……ありがと」
「ふぇ……?」
「とっても、きもちよくしてくれて……」
「きもちよく、できた……?」
「うん……」
そっと抱き寄せて額にキスしてやると、魔理沙はんん……とくすぐったそうに身じろぎした。
裸の胸に魔理沙の体温が心地よい。
窓から差す穏やかな陽光のせいか、咲夜にはこれが性行為だという感覚が不思議と薄かった。
まるで、仲のよい猫同士が日向でじゃれあっているような、そんな気分だった。
抱き寄せた魔理沙の髪に鼻先を埋める。いい匂いがした。
「ね、咲夜……」
咲夜の胸の谷間から、魔理沙の潤んだ瞳が見上げている。
魔理沙は身体を離して、たどたどしい手つきで自分の服に手をかけた。
不器用に服をめくり上げる。
肌を自分から晒す緊張からか、興奮からか、呼吸が少し速くなっていた。んく……と唾を飲む。
平べったいおなか、次いでささやかに膨らんだ胸が露になった。
胸の先端はすでに健気に尖っている。
「わたしのも、さわって、ほしい……」
はぁ、はぁと息を乱しながらの可愛らしいおねだりに、咲夜ははぁ……っと吐息を漏らす。
どんな技巧を尽くした愛撫よりも、魔理沙のいじらしい仕草が咲夜にはたまらなく心地よかった。とろけるように微笑む。
そっと手を宛がっただけで、魔理沙はびくんと身体をふるわせた。
当てた手のひらから、魔理沙の体温と鼓動が伝わってくる。
「ぁはあああ……っ」
深く息をつく魔理沙。くたりと力の抜けた身体を、咲夜の愛撫に委ねている。
「自分からおねだりなんて、魔理沙ったらえっちな子……」
「やぁぁん……違うもん……」
軽く言葉でいじめてやると、魔理沙は頬を染めていやいやをした。言葉遣いもいつの間にか女の子口調になっている。
咲夜の愛撫に敏感に反応して身体をくねらせるたび、その動きがまた次の快感に繋がる。魔理沙を絡め取る、甘い甘い、蜜の迷宮。
囚われているのは咲夜も同様だった。
魔理沙の可愛らしい痴態に、咲夜は自分の体が否応なしに昂ぶっていくのを感じていた。
手のひらで、指先で、魔理沙を責めるたびに、自分もまた同じだけの快楽を、魔理沙の切羽詰った喘ぎから、長く尾を引く吐息から、甘く蕩けた言葉から、与えられているのだ。咲夜はそう思った。
そう思いながら、魔理沙の幼い胸の先端を指先で弄う。指の腹で撫でるように触れてやると、魔理沙の細い肩が断続的に跳ねた。
「んゃぁ……! だ、め! さきっぽ、いじめちゃ、だめぇぇ……! おっぱい、しびれてぇぇ……ん! ん! きゅうぅん……!」
「あは、可愛い、魔理沙……ちっちゃなおっぱいで、ちゃんと感じてるのね……」
「やぁぁ……恥ずかしいこと言っちゃやだぁ……」
ああ……イってるんだ。魔理沙の跳ねる肩を抱きしめた咲夜の腰が、ふるっとふるえた。かるく達したのを感じた。
声だけで、その肢体だけで達してしまうほど、こんなにも昂ぶってしまう。
でも、やっぱり直接、触れ合いたい。
「ね、魔理沙……」
声をかけると、魔理沙はひっきりなしに熱い吐息をこぼしながら咲夜を見上げた。
無造作に投げ出された魔理沙の手を取る。
「ここも、触って……」
「あ……!」
咲夜は魔理沙の手をそっとスカートの中へと導いた。
熱く濡れた下着越しに、ひくひくと蠢くものがある。
そこに触れると、魔理沙はぴくんと手を引っ込めようとしたが、恐る恐るそこの感触を確かめた。
「ぬれ、てる……ぬるぬるで、あつい……」
「指、入れてみて……」
「う、うん……」
魔理沙がゆっくりと指先をぬめりの中へ埋めていく。咲夜のそこは熱く濡れて、魔理沙の指を包む。
直接見えない分指先の感覚が敏感になっているのか、魔理沙は少し指を動かすたびに小さく声を上げる。
「っん……! ふ、はぁ……あ、うぅんっ……!」
「さ、咲夜……気持ち、いいの……?」
「うん……魔理沙の指で、気持ちいいの……」
「はぁ、はぁ、咲夜のここ、すごく、あ、あつくて、うねうねしてて……ゆ、指が、こんな、深く……咲夜ぁ……!」
咲夜に導かれ、指先をそこに埋没させていく魔理沙。初めての感覚に困惑とも快感に耐えているとも取れる表情で眉根を寄せている。
「た、たべ、食べてるぅぅ……咲夜の、ここ、わ、わたしの指っ、食べてるよおお……っ」
うわごとのようにそんな言葉を漏らす魔理沙。
咲夜はその様に、高揚といとおしさの入り混じった不思議な気分になった。
気付けば魔理沙の上にまたがった咲夜の腰が、さらなる快感を求めて前後に揺れ始めている。
「魔理沙、魔理沙ぁぁ……魔理沙の指、とっても、はぁ、気持ち良いわ……」
吐息を漏らす咲夜の唇に、魔理沙が自分のそれを寄せる。
舌を絡み合わせるとそれだけで、咲夜のスカートの影から、つ……と一筋の熱い滴が滑り落ち、快感と興奮でばら色に染まった魔理沙の太ももを濡らした。
「さく、や……いっしょ、いっしょに、して……いっしょに、し、したいのぉっ……いっしょが、いいのぉ……っ」
昂ぶった感情を抑えられないのか、魔理沙は上ずった声で途切れ途切れに咲夜に懇願する。
「うん、うん……いいわよ、魔理沙……さわりっこ、しよ……」
はぁ、はぁ、と息を荒げながら、咲夜はそっと魔理沙の足の間に指を伸ばす。
触れたそこは、湯の中かと思うほど熱く濡れて咲夜を迎え入れる。入り口のあたりが抵抗と許容、固さと柔らかさの入り混じった感触で、咲夜の指を締め付ける。
外縁にをなぞるように指を動かす。魔理沙は喘ぐ。切なげなスタッカートを紡ぐ唇から覗く舌先が、小さくふるえている。
咲夜が唇を寄せ、絡めとる。ぴちゃりと濡れた音を立てて触れ合った二人の舌から唾液が零れ、魔理沙の首元に垂れた。
重力に従い、二人のそれが混ざり合った唾液はピンク色に染まった魔理沙の肌を伝い、痛いくらいに固く尖った幼い乳首にかかる。
ぷくんとふくらんだ先端を愛撫するように、粘性を持った液体はしばらくの間そこに留まり、名残惜しげに長い糸を引いて腿の上に落ちた。
その感触さえ快感を引き起こしているかのように、魔理沙は背筋をふるわせる。
「は、はぁっ、さ、さくやぁぁ、ほしいぃ、ほしい、のぉっ」
「うふ……なぁに? 言ってごらんなさい? してあげるから、なぁんでも……」
魔理沙は突き上げる快感に翻弄され、言葉をうまく紡ぐことすらできないでいた。
短く途切れた喘ぎをひっきりなしに漏らしながら、魔理沙は必死に返事をしようとするが、性行為に不慣れな身体は咲夜の巧みな指遣いに過敏に反応してしまう。
咲夜はそれを目ざとく察して、指の動きをおとなしめなものに変えた。それでも魔理沙は乱れる呼吸をなかなか整えられないでいる。
「……て……」
「なぁに? よく聞こえない」
「っ! 咲夜の、いじわるぅ……!」
涙目で抗議する魔理沙はそれだけで達しそうになるほど可愛らしく、咲夜の背筋にぞくぞくとふるえが走る。
はぁ、はぁ、と懸命に呼吸を整えようとするがなかなかそうできないもどかしさ、弱くはなったもののまだ与え続けられる刺激、それらが間断なく攻め立てられ、魔理沙はぽろぽろと涙を流しながら、やっと荒い息の下から哀願を口にした。
「ゆびぃ……っ、いれて、ほし、のおっ……! さくやの、ゆびぃぃ……わたし、の、なかぁ、いれてぇぇ……っ!」
「魔理沙ぁ……!」
その哀願に、咲夜は、達した。ぱしゅっ、とスカートの中で熱い体液が爆ぜ、下にある魔理沙の腰のあたりを濡らした。
達しながら咲夜は、魔理沙の求めるまま、指を押し進めた。
「っひ、ひぁ、ひきゃあああああ!!」
絹を裂くよう悲鳴が迸った。
咲夜にまたがられた魔理沙の腰が、上にある咲夜の身体が一瞬浮くほど激しく跳ねた。釣られて咲夜の乳房が揺れ、汗が飛び散る。
魔理沙のそこは入れられた咲夜の指を離すまいとするかのようにぎゅうっと締め付ける。その感触に咲夜はまた絶頂した。
「はぁ、はひぃ、はひってるぅぅ……さくやの、ゆびぃぃ……! おまたにぃぃ、はいってるよぉぉ……っ!」
魔理沙の声、魔理沙の体温、魔理沙の仕草、魔理沙の感触。
魔理沙、魔理沙、魔理沙。
魔理沙の全てが全方向から咲夜に牙を剥き、その柔肉を容赦なく千々に引き裂く。
二人は片手で互いの秘所を愛撫しながら、もう片方の手をどちらからともなく絡めあった。
「はひゃ、はぁ、は、は、はぁっ、あーっ、あ、あ、あひ、ひぃうぅ……!」
魔理沙はがくがくと全身を痙攣させるほどの快楽に晒されて、咲夜にまたがられているため腰を引くこともできない。
甲高い悲鳴をあげながら、汗と涙を飛び散らせている。
そして、それは咲夜も同じだった。
「魔理沙、魔理沙、まり、さぁぁ……っ!」
魔理沙の名を呼ぶという行為さえもが、咲夜の身体に強い快楽をもたらしていた。その快楽をそのまま魔理沙に返すように、指先を動かす。動かすたびに魔理沙のそこは敏感に反応し、蕩けていく。
愛用のナイフの切っ先のように、意識するまでもなくその指先は正確に魔理沙の弱い部分を射抜く。小さな突起を探り当てると、魔理沙は擦り切れるような悲鳴を上げた。
「ひぃぃ……っ! そ、こぉ、つよひゅ、ぎひぃぅ! ひゃああう!」
「魔理沙、イッてるのね? 私の指で、はぁぅ、気持ちよくなってるのね……っ?」
「い、ぃひ、ひぃってるぅぅ! わら、ひ、いってるの、まりさ、いってるのぉ……!」
魔理沙の言葉は快楽の熱に溶けて崩れて、幼児のそれのようになっていた。
咲夜は自ら腰を回し、魔理沙の指に自分のそこを押し付ける。魔理沙にそうしているように、咲夜もまた魔理沙の指に自分の突起を宛がい、擦り付ける。
「ん、ふ、はぁぁ……っ! 魔理沙の指、イイわ……魔理沙の指で、私、きもち、よ、くぅぅぅん……っ!」
「ひにゃああ……! さくやの、おまたぁ……ゆび、とろとろにされ、てぇ、ぬるぬるだよぉ……!」
魔理沙の指でそこを愛撫しているというよりはむしろ、自分のそこで魔理沙の指を犯すように、咲夜は腰を上下させる。まるで騎乗位でのセックスのように腰をくねらせては、そこに飲み込んだ魔理沙の指をさらに深くへと導く。
そうすることで咲夜は、本当に魔理沙と交わっているような感覚に陥ることができた。
咲夜が腰を動かすたびに魔理沙はあられもない嬌声を上げ、魔理沙が喘ぐたびに咲夜は身をふるわせる。
そうして二人は互いに互いの快楽を循環させ、増幅させていく。
「さく、さくやぁ、も、だ、め、いくのぉ、いくのぉ、いっしょ、いっしょぉぉ……っ!」
「うん、うん、魔理沙、魔理沙、一緒に、一緒に……!」
そして、申し合わせたかのようなタイミングで、二人の指先が同時に、お互いの最奥を抉った。
「――――――っっっ!」
二人分のそれが入り混じった嬌声が、部屋に響き渡った。
咲夜の体の下で魔理沙の体がぎゅううっと硬直する。そのまま、びく、びくんと数度跳ねた。先に弛緩した咲夜の体がそれを受け止める。
もたれかかるようにして抱きしめた咲夜の体の下で、魔理沙の体が長く尾を引く絶頂の余韻にひくひくとふるえる。
「……っは、は、は、はぁ、はひぅ、ひぁ、ひくっ、っく、んく、ぁは、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ、あ、はぁ、ふぅ、ん……」
魔理沙は急にがくっと身体を弛緩させ、途切れ途切れに息をつく。
後頭部をソファの背もたれに預けて、喉笛をもたれかかった咲夜に晒している。唇の端から滴り落ちた魔理沙の唾液が、つぅっと細い喉を伝い、咲夜が絶頂の余韻が抜けきらずに頼りなくふるえる舌でそれをすくいとる。
「ひきゅぅぅんん……」
そのちょっとした刺激にも魔理沙は声を上げ、咲夜の腰の下で太ももがもぞりと動いた。
そうして二人は、しばらくの間行為の余韻に身を任せていた。
言葉は交わさない。ただお互いの吐息を感じているだけで十分だった。
咲夜が微笑みかける。魔理沙が微笑みを返す。
同時に、相手の秘所に埋めていた指先を抜いた。
ちゅぷ……と粘ついた音とともに引き抜かれた指先は二人とも同じように、手のひら全体がぬらついた液体で濡れていた。
その手を、二人が同時に口に含んだ。
「んふゃ、んぷぅ、ぢゅぅ、ちゅ、ん、ん、んふぅぅ……っ」
「ん、ちゅ、ちゅぱ、るぅ、れる、ん……」
口に含み舌を這わせているのは自分の指だというのに、二人はあたかもお互いを愛撫し合っているような感覚に陥っていた。
ぷは、と指から唇を離す。指先から唾液が糸を引いて滴って、ぽたりと落ちた。
「どんな、味……?」
そう聞くと、魔理沙はまだぼんやりした視線を緩慢に咲夜に向けて、次いで今しがた唇から離したばかりの自分の指先を見つめた。
「咲夜の、味……」
そう呟いて魔理沙は、照れたように視線をそらした。
ふふ、と笑う咲夜。
「魔理沙のも、甘ぁ……いわ」
「やぁ……」
見せつけるようにゆっくりと指先に舌を這わせて見せると、魔理沙は恥ずかしそうに顔を伏せた。
そんな魔理沙のやや乱れた髪の毛を撫でてやる。
「気持ちよかった?」
「うん……」
咲夜の問いに魔理沙は素直に頷く。
意識がまだはっきりしていないせいか、それとも……。
「咲夜の指、やさしかった……」
まどろむような口調でそんなことを言う魔理沙。
咲夜はなんだかくすぐったいような不思議に優しい気持ちになって、まだ赤みの引かない魔理沙の頬にキスをした。
魔理沙はふぁ……とため息のような声を漏らした。
そうして二人はしばらくの間、行為の後の心地よい疲労感に身を委ねていた。
陽光の差す中で肌を晒して抱き合っているのがなんだか非日常的だった。
しばらくして、咲夜は魔理沙の上からどいて、簡単に着衣を整えた。魔理沙はまだぐったりしている。
「ふぅ……汗びっしょりだわ。誰かさんがあんまり可愛いから張り切っちゃった」
「ばか……」
「着替えたいし、シャワーも浴びたいわね。一緒にお風呂入ろうか?」
肩越しに魔理沙を振り返ると、魔理沙はもごもご言いながら俯いている。可愛くて仕方ない。
咲夜はようやくソファから体を起こした魔理沙の鼻先まで顔を近づける。
「それともぉ……お風呂でえっち、する?」
「……っ!」
思ったとおり爆発するように顔を真っ赤にする魔理沙。
あはは、とひとしきり笑い、ドアに向かおうとする咲夜の手を、魔理沙が掴んだ。
見ると魔理沙は上目遣いに咲夜を見上げている。
ぽそっと小さな声で呟いた。
「また……きもちよく、してくれる……?」
今度は咲夜が、爆発した。
この甘さはグッジョブと言わざるをえない
なんて暖かなサクマリなんだ!たまらない!グレイトゥ!
お兄さんと呼ばせて下さいッ!
こんな甘い物をご馳走さまでしたm(_ _)m
女の子口調の魔理沙は可愛すぎるぜ…。お姉さんな咲夜さんも最高だぜ…。
うん、ゆーとぴあ!
妹魔理沙と姉咲夜、甘すぎる…!
おねえちゃん発言で砂糖の紅魔館が建った
おかわりおねがいします。
さあお風呂の話を書くんだいや書いてくださいお願いします
そんなことは無かったぜ。ぜひ続きを!!
おねだり攻撃する魔理沙の破壊力すごい。
キスから、おっぱいおねだりから、魔理沙かわいすぎて咲夜かわいいよお!!
お互いドキドキしてるのがかわいい素敵。
いやぁ…氏の書くサクマリはやはりいい…
思わず砂糖を大量に吐いちまったZE☆
まさか続編がでるとは思わなかったから嬉しい限りです。
そして魔理沙の「さくやおねぇちゃん」発言にまたもや残機0。
くそう…あなたのサクマリは反則過ぎる…!
次回作も頑張ってください!
砂糖爆発注意ってことだったんすね^-^
次はお風呂モノを正座で待とうと思いますwタイトル予想は…「沸騰注意」?w
思いっきり女の子してる魔理沙が可愛いよぉ可愛いよぉ~
女の子魔理沙も受け魔理沙も甘える魔理沙もあああもう魔理沙かわいいなぁ!!!
あ、もちろん咲夜さんも素敵です
次回作を口に角砂糖詰めて待ってます
あなたの咲マリが…もっと読みたいです。
素晴らしい
女の子口調の魔理沙は美味しい、美味しすぎる!
ドールマスターさん貴方は神なんだな・・・・・
うむ、納得!