※はじめに
amazonで見てみたらプレミア価格高すぎ噴いた。
ほんの些細な、取るに足らない好奇心だった。
浄玻璃鏡。
幻想郷を担当する閻魔である私が亡者の裁定に使用する、水晶でできた鏡。
これには亡者の生前の行いが一挙手一投足、ただ一つの例外もなく映し出される。
今日も数多くの亡者達の行い、さらにはその人の人生が他者に与えてきた影響までもをその透き通った鏡面に映してきた。
その手鏡ほどの大きさの浄玻璃鏡は、覆いをかけられた状態で私の執務用の机の上にある。
これに、閻魔である私自身の姿を映したら、いったいどうなるのだろう。
ぶん、と頭を振る。
何を考えているのか。
閻魔である私自身をこの鏡に映すなど、それは浄玻璃鏡本来の用途ではない。
それ以前に、良識の問題だ。亡者の審判という厳正な儀式に使用する神聖な道具を、そんな子供じみた好奇心で使っていいはずがない。
「疲れてるのかしらね……」
誰もいない執務室で、ひとりごちる。
小町をはじめ、ここの職員は全て勤務を終えている。
残っているのは残務処理をしていた私だけ。
自分のほかには誰もいないという状況が、そんな下らない好奇心を私の心に生じさせたのだろうか。
しばらくは書類に筆を走らせることでその好奇心を忘れていられたものの、最後の書類に印を捺した途端、機会をうかがっていたかのように同じ思いが頭をもたげてきた。
「……」
一度私の心の隅に根付いた好奇心は、洗っても洗ってもなかなか落ちない汚れのように消えない。それどころか、小町をはじめとする私以外の職員は全員勤務を終えて帰宅しており、今ここには私しかいないという状況も手伝ってか、その好奇心はむくむくと大きくなり始めていた。
なんてこと。閻魔ともあろう者が、自らを律することすらできないとは……。
ふうーっ……と深く息を吐く。すこしだけ落ち着いた気がする。
席を立つ。
疲れているんだ、きっと。
熱い湯でも浴びてゆっくり休めば、こんな気持ちは流れて消えてしまうだろう。
私は自室へと向かうことにした。
執務室の扉を閉めるときに肩越しに視線をやると、どこからか風が入ってきたのか、浄玻璃鏡にかけた覆いの端がひらひらと揺れていた。
それがまるで私を誘っているようで……私は慌てて、扉を閉めた。
「……」
湯浴みを終え、自室に戻ってきた私の目の前に、覆いのかけられた手鏡。
一旦自室へ帰ってきた私は、ついに好奇心に負け、執務室へ戻って浄玻璃鏡を取ってきてしまったのだ。
「う……どうしよう……」
自室に公務に使用する道具を持ち込んだというだけですでに規則違反だというのに、この期に及んで私はまだ躊躇っている。
……自分が情けない。
だーれも見ちゃいませんって、そんな小町の幻聴すら聞えるようだ。
ここで素直に執務室へ戻り、浄玻璃鏡を置いてくればそれでおしまいのはず。
それなのに、私はそれができないでいる。
今ここでそうしたとしても、明日、明後日、明々後日と日を重ねていくにつれ、私の心に生じた好奇心は確実に大きくなっていくだろう。
そしていつか、恐らくはそう遠くない未来、小さな穴の空いた堤防のように私の自制心は決壊するだろう。
なら、この場で実行しても同じではないか。
そう考えてしまうこと自体が間違っていると自覚はしているのだ。けれど……。
私の思考は簡単に袋小路に追い詰められてしまう。
「……一回、一回だけ」
虚空に向けて言い訳をする。それでなにがどうなるというわけでもないというのに。
危険物を扱うように羅紗でできた覆いの端をつまみ、そろそろと持ち上げる。
湯上りのせいかかすかに色づいた首もと、緊張に引き結ばれた唇、でも鏡から離れていない目が、順番に覆いの下から現れる。
――そして、私は覆いを完全にめくった。
澄んだ鏡面と私を隔てるものは何もなく、目の前には私の顔が映っている。
化粧をする習慣もない私にとって、こうして鏡に映った自分と向かい合うことはなかなかない経験だった。
妙に緊張する。
優れた刀匠の打った刀剣は尋常ならざる輝きを宿し見る者の魂さえ虜にするというが、それはきっとこういう気分なのではないか――そんな埒もない考えが、私の脳裏に浮かんで消えた。
じっと見つめる。10秒、20秒……1分はそうしていただろう。
変化は、何もない。
「……ふう」
何も起きなかった。
考えてみればそうだ。そもそも浄玻璃鏡は亡者の生前の行いを示すための道具。亡者ではない私に使ったところで、何が起きようはずはない。
結局私の下らない好奇心は、何も起こらなかったといういささか気が抜ける結果を得てあっさり収まった。
覆いを元に戻し、机の上に置く。執務室へは明日戻しておけばいいだろう。
「まったく……気が緩んでいるのかしらね」
「ま、たまにはいいんじゃないかな?」
「……っ!?」
独り言に返って来た返事に、私は慌てて振り返る。
机に向かっていた私の背後、さっきまでは誓って誰もいなかったはずのそこに、一人の少女が、そこにいるのが当然といった風情で立っていた。
簡素な白いワンピースを着た、緑色の髪をしたその少女は、何をするでもなく微笑んでいる。
「な……この私を謀るとは、妖魅の類か!?」
「やだなあ、そんな怖い顔しないでよう」
少女、否、少女の姿をした「それ」は、ひるんだ様子もなく、幼い口調で苦笑してみせた。
無防備にこちらに歩み寄ってくる。
「知らない仲じゃないのに、冷たいなあ」
「な……!?」
「私はあなたのこと、よおーく知ってるよ。四季映姫さん?」
「よほどの無知でもなければ、幻想郷の閻魔たる私の名くらい大抵の者は知っています。答えなさい、其は何者か!?」
「わからないかなあ? ね、よく見てよ、私の顔……見覚えない?」
それは今すぐ私に危害を加える様子はない。それの姿を観察する余裕はあった。
妖魅の類であることは間違いない。武器を隠し持っている様子はないが、それで安全というわけでは無論、ない。
背格好は小柄な私よりもさらに小さい。小さな子供と言っても通用するくらいだ。
緑色の髪は肩のあたりで切りそろえられているが、右側だけをすこし長く伸ばしているのが特徴的だ。
青い瞳は無邪気な光を湛えてこちらを見ている。
雷光のように、理解する。
「まさか……!」
「くす、やっと気付いて……ううん、認めてくれたね」
少女を見た瞬間にそう思わなかったのが不思議なくらい、この少女は私に似ていた。否、似ている程度ではない。
私なのだ。私の顔なのだ!
確かに背格好は少女の方が小さい。しかしその顔立ちはまさしく私のそれと瓜二つなのだ。
疑う余地はない。机の上に置かれた浄玻璃鏡に視線をやる。
少女がにこりと笑った。
「そ。わたしはあなただよ。その鏡のおかげで出てきたの」
「信じ難いことですが……しかし、こんなことが……」
「ま、出てきたものは仕方ないじゃない?」
「自分と同じ顔をした者がそんな無責任な言辞を呈するとは……私自身の発言ではないとはいえ、あまり気分のいいものではありませんね……」
そんな私のぼやきに、少女はふふ……と、意味深な笑みを見せた。
「せっかくこうして会えたんだし、ちょっとお話でもしない? 自己紹介は……必要ないか」
「自己紹介は必要なくても、私はあなたの素性を知らない。――何者なんです?」
「やだなあ、あなただなんて他人行儀ぃ~」
そう言いながら私のベッドにぽすんと腰掛ける姿は、私の顔、私の声でありながらやはり私の行動ではない。
そのひどい違和感にめまいすら感じる。
「わたしはね、あなたの中の抑圧された部分なの。浄玻璃鏡の力がそこに作用して、わたしがこうやって出てきたわけ。形成されたって言ってもいいかな?」
細い足をぷらぷらさせながら、少女は続ける。
「わたしはあなたなんだけど、まったく同じ姿はしてないでしょ? あなたが自分自身の中に押さえ込んでるものの一つが『幼児性』なんだろうね。だからわたし、ちょっとあなたより年下なの。背も低いし、おっぱいもちっちゃいし。あ、おっぱいはあんまり変わらないかな~?」
ぴょんと立ち上がった少女は腕を伸ばし、いきなり私の胸を鷲掴みに……!
「きゃ!? ちょ、ちょっと、いきなりなにするんです!?」
「ありゃ、結構ある」
「あ、指、動かさないで……!」
「いいじゃないちょっとくらい。普段ぎゅうぎゅうに押し込められてるんだからあ」
少女はしばらく私の胸をもてあそんでいたが、ふふっと笑って身体を離した。息が乱れているのを自覚し、私は赤面する。
「はぁ、はぁ……こ、こんなこと……!」
「えへへ、キモチよかった?」
「な……!」
「あは、顔真っ赤だよ?」
ますます赤面する私を見て、少女は無邪気にきゃらきゃら笑っている。まるっきり子供の笑顔。
自分の顔がそんな表情をしているのを見て、私の胸中にはっきりしない感情が生まれた。
……羨望、だろうか。一体何に対して?
そんな風に物思いに耽っている私の目の前に、私と同じ顔。
「どしたの? 黙り込んじゃって」
「な、ち、近っ……」
鼻の頭が触れてしまうほど近くから覗き込まれて、私は思わずのけぞってしまう。また笑う少女。
「あはは、面白ーい」
「……ところで、あなたいったい何しに出てきたんです? 正直自分と同じ顔の相手がいるというのは気持ちのいいものではないのですが……」
「うふふ、それはねえ……」
もったいぶった言い方で語尾を切ると、少女はそのまま顔を近づけてきた。
え?と思う間もなかった。
触れた。唇が。そして、舌。
濡れた舌が、弄うように中途半端に開いた私の口から差し込まれ、私の舌先に触れた。
「ん……ぺろ、んちゅ」
「んむ……ん、んぁ……」
抵抗する間もなかった。否、抵抗しようとしなかった。
少女の舌はじゃれつくように私の唇を何度も舐める。熱い。そして、甘い。
自分から舌を動かし始めたのを、私は他人事のように感じていた。
少女の舌を迎え入れるように、舌を差し出す。触れた。
少女が、は……と吐息を漏らした。細い腕が、私の首に回された。口付けが深くなる。
気が付けば私も同じように、少女の背中を抱いていた。
……ややあって、唇を離す。
「ぷは……」
「っは、はぁ、は……」
つ、と唇の間にかかった唾液の糸がぷつりと切れた。
「んふふ、意外に情熱的ぃ」
「な……! あなたがいきなりこんなことするから!」
「でも、キモチ良かったでしょ?」
「う……」
「あはは、沈黙は肯定ってね。正直でよろしい!」
少女はかるく笑ってみせる。
私は無意識に、ついさっきまで少女のそれと触れ合っていた自分の唇に触れる。まだ濡れていた。
「あなたってこういうことに人一倍抵抗を持ってるからねえ。だめだよお? そういう欲求っていうのはちゃんと認めてあげなくちゃ」
「だって、こんな……」
抗議しようとする私を、少女は頬にかるくキスをして遮った。
「ほら、そういうのがいけないんだってば」
自分の方が幼い外見をしているのに、その少女はやけに年上ぶった仕草で笑ってみせた。
「でもま、あながち全然ダメってわけでもなさそうね」
「な、なんのことです?」
「5日前だったかなあ」
「っ!?」
しらばっくれればいいものを、なんて愚かな!
私が自分の顔が真っ赤になるのを止められなかった。
「顔真っ赤~」
「な、何を言っているんです?」
「あーら、まーだしらばっくれるんだ」
ふふん、と鼻で笑う少女。自分と同じ顔にそういうことをされると余計に腹が立つのは何故だろうか……。
「姦通罪を犯した亡者が来たんだよね、確か。で、審判の時に浄玻璃鏡でその亡者の悪行ぜんぶ見ちゃった、と。うふふ、審判中は眉一つ動かさなかったのはさすがって感じ」
「~~~っ!」
「でもぉ、その日の夜にぃ、しちゃったんだよねぇ、一人で」
「きゃわーっ!!」
己のの喉が奇声を上げるのを、私は抑えれらなかった。そのまま少女の口を塞ごうとして、ベッドに押し倒してしまった。
「やーん、襲われちゃうよお」
少女は押し倒されながらもなお、私をからかうのを止めない。
こんな……こんなのが私だとか、ああ……最悪の冗談だ!
「すごかったよねえ、あーんな声出しちゃって。それに続けて4回もイッちゃってたしぃ。たまってたの?」
「だっだだ黙りなさいっ! 裁判にかけるまでもありませんこの場で処刑してあげます……!」
「きゃー、こわーい」
少女と私とはしばらくそうやってもつれ合っていたが、ややあって少女はぴたりと黙った。観念した……なんてことはないだろう。
「ねえ、認めてよ、わたしのこと」
「え……?」
そう言って少女は、私の胸に体を預けてきた。さっきまで暴れていたせいか、熱い。
「気持ちいい事をしたいと思うのって、悪いことじゃないよ。誰だってそうだもん。だから、無理に押し込めないで」
「……」
さっきまでとはまったく違う、神妙な声音が、私を沈黙させていた。
「それにね、あなただって、閻魔さまであると同時に、女の子だもん。女の子のあなたを、拒まないで」
「……」
「ね?」
どう答えれば……いいのだろうか。
自覚が全くないわけではなかった。規律を重んじるあまり、自分そのものの意志を無理矢理押さえ込んでしまうことがあるのは自分でも分かっていた。
しかし、規律を重んじようとしているのもやはり自分で……ああもう、禅問答だ! 訳が分からなくなってきた……。
「うん、そうだよね。そのどれもが、あなたなんだもんね」
「え……? 私の、考えていることが……」
「分かるよ。だって、わたしはあなただから」
「……それに、私は怖いのです。一度そういった抑圧されている部分を吐き出せる口実を見つけてしまったら……私はもう二度と自分を律することができなくなってしまう、そんな気がして……」
「マジメなんだ」
「ええ……融通の利かない頑固者です」
私は苦笑した。少女も一緒に笑った。
「大丈夫だよ。あなたは強いもの。そういう自分の弱いところとも、きっとうまくやっていける」
「……そう、でしょうか」
「もすこし自分を信用したら?」
「それは……とても、難しいことです」
「ふふ……あなたらしいや。でも……」
少女は体を起こして、ベッドの上に膝立ちになった。
ワンピースに手をかける。
脱ぎ捨てた。
「……!」
はっと息を呑んだ。
少女はワンピースの下には、何も着けていなかった。
真っ白な、幻影かと思えるほどに白い肌を、幼い裸身を、少女は惜しげもなく私の眼前に晒している。
素肌を隠すそぶりも見せず、少女は微笑んだ。
「たまには、素直になろ?」
白いワンピースが、はらりとベッドの上に落ちた。
「あ、は……! んん……っ!」
「ほらあ……遠慮しないで、声、出して?」
「そんな、はしたない、こと……っあう!」
「そんなかたいこと言ってると、もっとすごいこと、しちゃうぞお?」
「きゃ……や、やだ! あ、だめ、やあああ……っ!」
びくん!と背中が反るのを止められなかった。
ぞくぞくっと全身に震えが走る。
「っは……! あ、はぁ、はぁ……っ」
「うふ、かわいい……」
少女の軽口に何かを言い返す余裕もなく、私は乱れた呼吸を整えるので精一杯だった。
もう何回、達しただろうか。部屋の中は熱気でむせ返るようだ。甘い熱を孕んだ空気。
少女の指先が、唇が肌を這うたび、私はあられもない嬌声を上げた。
そういう行為に関して聡いわけではない私に彼女の技量を計る術はなかったが、私の身体は彼女の指先が動くたびにふるえ、わなないた。
自分よりも小さな少女にもてあそばれ、息を荒げ、声を上げ、痴態を晒し、何度も達した。
羞恥はあったが、嫌悪感はなかった。それどころか、奇妙な安堵すら覚えた。
それが一体どこから来るものなのか、それはわからないけれど……。
「ふふ、ちょっとお休みしようか」
そう言って少女は、身を起こすこともできないでいる私の裸の胸の上に頭を乗せた。
柔らかな髪がくすぐったい。
自然と手が伸びて、私は少女の頭を撫でていた。
少女は嬉しそうに目を細め、私の胸に頬をすり寄せてきた。
「くす……子猫、みたい」
「ネコはそっちでしょ」
「え……?」
「わかんないならいいや」
そう言って少女は、猫が甘えるように身体をこすりつけてきた。
胸も膨らみきっていない少女の身体は情交の熱を宿して熱く、触れ合うだけで私は甘い痺れを覚えた。
それを感じ取ったのか、少女は私の肌についばむようなキスを始めた。
「んー、ちゅ、ちゅ……」
「うンっ、もお……そんな、ほんとに、猫みたい……」
「んふ、体中、ぺろぺろしてあげる……」
「やぁう……」
少女の柔らかな舌が身体を這う感触は優しく、私はまどろみに落ちるような気持ちになった。
いつしか快楽を素直に享受している自分に、頭の隅で驚く。
少女の熱い舌先が這い登ってきて、私の胸の先端を口に含んだ。
「あ……やぁぁう……そんなに、吸っちゃ、だめ……」
「えへへ、ふるえてる……ぁむ、んく、んー、んちゅ……」
口の中、熱い……。
舌が先端にひたりと当てられ、そのまま円を描くように動いていく。
「んゅう……っ」
声を抑えようとして、妙な声が出てしまった。
ああ……顔が真っ赤になるのが抑えられない。
「あはは、かわいい~」
私の胸元で、少女はからかうような笑みを見せる。
「か、からかわないで……」
「もお、いじっぱりなんだから。我ながら」
「わ、わたしはあなたみたいに……そ、その、ふしだらな性格じゃありませんっ」
「あ、まーだそんなこと言うんだ」
少女は意地悪そうにそう言って、空いた手でもう片方の胸に触れた。
指の腹が先端に触れるか触れないかの中途半端な刺激に、私はむずがゆくなる。
息をつくと同時に、自分の口から出ているとは思えない甘えた声が漏れるのを、私は抑えられなかった。
むしろそうすることで昂ぶっている自分がいた。
「はぁ、はぁう、ん、あ……」
きゅう、と摘まれると、先端がますます固く尖っていくのが分かった。
「んぁ……きゃう! つ、摘んじゃだめぇ……」
「じゃ、こういうのは……?」
少女は身体を起こし、私の上に覆い被さってくる。
首筋に両手を回し、ぎゅっとしがみついてくる少女。
「ひぁう……!」
声を先に上げたのは少女のほうだった。
少女の小さな胸の先端と私のそれとが、互いに押し潰しあうように密着している。
「や……!? こんな、やり方……!」
私の方は、快感よりも困惑が先に立った。本当に知らなかったのだ、その、こういう方法は。
「んふ、こういうのは、知らなかったのかな? っん、あは、ちくび、かたぁいよう……」
「や、や、そんなこすりつけ、ふぅっ、ないで……!」
未成熟な肢体に汗を浮かべて、あられもない嬌声を上げる少女の姿に、私は得体の知れない昂ぶりを覚えた。
幼い少女のその痴態は、その幼さ故に普段の私なら目を背けてしまうほど淫猥で、しかし私は目を離せない。
これも、私なのだ。
そう認めてしまったのは、快楽の熱に浮かされてしまっていたからだろうか。
「……っと」
壊れかけの鍵が半端に開くように、不意に声が漏れた。
はぁ、はぁという乱れた呼吸の下から、小さな声が。
「もっと……して……」
少女が微笑んだ。
幼い外見に似つかわしくない、なんというか……母性的な笑みだった。
すっと両手が伸びてきて、私の頬を包んだ。
私も両手を伸ばして、彼女の頬を包んだ。
唇を重ねた。
「んふ、んるぅ、れぅ、んっ、んっ、んっ……」
「っは、れるぅ、んむ、んゃ、はぁう……っ」
舌を絡ませ合う。濡れた音が響くのも、重ねた唇から漏れた唾液がぽたぽたと滴るのも、興奮を煽りこそすれ気にはならなかった。
「んはぁ、はゅうぅんん……こ、すれ、て、おっぱい、こすれて……いい、よおお……っ」
「あっ、あ、あ、あ、く、る……ぞくぞくってするぅぅ……!」
部屋に響く蕩けきった嬌声も、もうどちらのものか分からない。
熱を帯びた肌はもう私たちを隔てるものではない。
「あ、い、く、おっぱいだけで、いっちゃう、こすりあわせて、いっちゃう、んぁ、あああ、っああああああああう!」
「ちくびっ、ちくび、きゅううって、きゅううってぇ! んゃ、やはあああああっ……!」
ぎゅうっとお互いを抱きしめながら、私たちは同時に達した。
密着した肌から、余韻に震えているのが伝わってくる。
私たちは言葉を交わすこともなく、激しく息をつきながら見詰め合っていた。
どちらともなく、照れたように微笑みあった。そしてかるくキス。
「ねぇ……」
「うん……?」
そう少女に問い掛けた私の声はすこしかすれていて、ちょっと恥ずかしかった。
少女は私の胸元から、大きな瞳で見上げてくる。かわいいな、と思ってしまうのは自己陶酔になるのだろうか。
「もっと……いい?」
少女は答えの代わりに、ちょん、と私の鼻の頭にキスをして、体を起こした。
「じゃ、ここ……合わせよう?」
そう言って少女は足を開いた。未成熟な少女のそこが露になって、わたしはちょっと赤面した。
少女のそこは濡れて、ひらいていた。つぅっと少女の内腿を伝って、滴が一筋落ちた。
綺麗なピンク色のそこは花のようで、私はなんだか見とれてしまった。
「やだ、そんなに見ないでよぅ、えっち」
「ご、ごめんなさい」
私がつい謝ってしまうと、少女はくすりと笑った。こんな行為をしているとは思えないほど、無邪気な笑みだった。
「ね、きて……」
両手を広げ、少女が私を迎え入れる。
ふらりと、吸い込まれるように私は少女を抱きしめる。
数回キスを交わし、そこを触れあわせる。
くちゃ……と、濡れた音。
剥き出しの粘膜は敏感で、触れ合っただけで腰が跳ねてしまった。
「きゃうっ……! あ、はぁ、触れた、だけなのに……」
「えへへ……ほらぁ、こっちのおくちも、んぅっ、ちゅーしてるみたい……」
少女の子供じみた口調は、かえって情欲をあおるもので……私は自分から、自分から……してしまった。
両足を少女の細い腰に絡め、ぐいっと自分のそこに押し付ける。
「ひゃあああうぅ……!」
「ふわ、は、はゃあああっ……!」
私の上げた甲高い声と、少女の上げたふるえる声が絡み合う。快楽に声を上げる、その行為がまた次の快楽を呼ぶ。
わずかな身じろぎ、肌のふるえ、互いの息遣い、飛び散る汗、桜色に染まった体、涙を湛えた瞳、粘ついた水音、平坦な胸の上でぷっくりとふくらんだピンク色の乳首、もう言葉の体を為していない吐息をこぼすふっくらとした唇、そして……私のそれとこすれ合い、絡み合い、押しつけ合い、嬲り合い、爆ぜるように熱い体液を噴出し続ける、少女の、そこ。
その全てが、たまらなくいとおしかった。
感じているだけで、見ているだけで、聞いているだけで達してしまいそうだった。
否、現実に私は達していた。達し続けていた。
少女に自分と同じだけの快楽を与えながら、少女から自分と同じだけの快楽を与えられていた。
もう、自分と彼女の境い目が分からなくなり始めていた。
「ひ、はひ、ひゃああう、ひゃひ、ひ、っく、いく、ひぃぁ、あ、あ、あ……――――――ぁ――――――――……!」
いちばん大きな絶頂の波に、私の、彼女の、意識が一息に洗われた。
快楽の熱に白く灼き融かされていく意識の中、私は自分と同じ顔をした少女の、優しい笑顔を見た気がした。
――唐突に、意識が戻った。
私はベッドに身を横たえている。
部屋には……誰もいない。
服は着ている。
「……」
幻覚、だったのだろうか。
だが、気のせいの一言で片付けるには、この身に残った情交の余韻はあまりにも生々しく、耳朶にはあの自分と同じ姿をした幼い少女の嬌声がはっきりと残っている。
「ふぅ……っ」
両手で自分の身体を抱きしめると、震える吐息が漏れた。
脳裏にはあの少女の、そして自分の痴態がはっきりと焼きついている。
その記憶すらもが私を愛撫しているようで、身体の奥がじわりと熱を持つのを感じた。
「なんて……淫らなこと、しちゃったんだろう……」
そう言いつつも、あの感触を懐かしんでいる自分がいた。
わたしはあなた、あの少女はそう言っていた。
私を優しく、激しく愛撫して、もてあそんで、私にも同じようにされて、声を上げていた少女――。
あんな少女が、私の中にいるなんて。
でも不思議と、私はそれを受け入れていた。
そういう行為に対する忌避する気持ちや罪悪感は、自分でも意外なほど希薄なものになっていた。
そっと手を下ろし、下着の中に指を忍ばせる。
濡れていた。
たった今まであの小さな手に触れられていたかのように、そこはまだ熱を帯びていた。
「う……っん」
指でなぞっただけで、身体がふるえた。
ちらりと横目で時計を見ると、部屋に戻ってきてから30分も経ってはいない。
1時間も2時間も行為に没頭していた気がするのに……。
そこで私ははっと浄玻璃鏡のことを思い出した。
机の上にはちゃんと浄玻璃鏡があった。
覆いはかかっていない。
頼りない足取りでベッドを降り、鏡を手に取る。
透き通った鏡面には、やや髪の乱れた自分の顔。
じっと見つめていても、何も起こらない。
「……えっち」
鏡に向かって、なんとなくそんなことを呟いてみた。
無意味に一人、赤面する。
浄玻璃鏡に覆いをかけ、机に置く。
鏡は明日の朝、元の場所に返しておけばいいだろう。
ベッドに戻り、枕に顔を埋める。
……まだ、身体が熱い。
ぎゅっと身体をちぢこめて、胸に触れた。いつの間にか、先端が固くなっている。
浄玻璃鏡を置いた机に背を向け、濡れた下着にそっと指を宛がう。
それだけで鼓動が早くなったのが分かった。
肩越しに、机に視線をやる。
「のぞいちゃ、やですからね……」
視線を戻す時にどこからか風が吹き込んで、浄玻璃鏡にかけた覆いの端がふわりと揺れる。
鏡の向こうで、誰かが笑った気がした。
作者とは酒を飲みながらじっくり語りたいです。
初心なのはいつ見てもいいですねえ
それにしても身持ちの堅い映姫様にはオナニーが似合う
……これオナニーだよね?
正直映姫様はそんなに好きくないんだけれどうっかり萌えちゃったぜ!
徐々にえっちくなっていく女の子はいいですなぁ。特に映姫のような身持ちの堅いキャラならなおさら。本編終了後も激しくナニに耽っているところを想像するとたまりません。
チビ映姫も良かった。小悪魔っぷりがツボに入っちまったよ。エロいし。いい作品をありがとう。
なんとなく夢オチの気もしますが、「本能」にやられちゃう「理性」っていいよね。
それの具現化が刺激的。これは映姫様だから成り立つ。
結構いいなぁ。
えーきさんがいちいち可愛かった。