そしてとうとう、警視庁捜査一課長がこの本を名指しで全否定し、ようやくこの説は下火になりました。人は本当の事実より、信じたい事実を読みたがる。フエイクニュースの恐ろしさを思い知りました。
週刊誌発の雑誌やノンフィクションの匿名のニュースソースによる報道は、記者との信頼関係なくしては成立しません。ある週刊誌で、亡くなった人物の追悼記事を書いていたアンカー(注)が、あるデータ原稿が面白かったので、もっと取材しようとそのデータ原稿のネタもとに直接電話をしたところ、証言したはずのその人物はすでに亡くなっていた……というのです。
つまり、そのデータ原稿を持ってきた記者は、匿名の関係者をデッチあげ、読者が読みたい事実を取材情報としてあげていたということになります。匿名だと、その証言が正しいかどうかの検証のしようがありません。
しかし、欧米と異なり日本社会では、内部告発者はどんなに正しくても裏切り者扱いされるので、なかなか匿名以外のニュースソースが確保できません。今後の報道の難しいところです。
北朝鮮の特殊部隊説まで
真相解明はいつになるのか
世田谷一家殺害事件には、まだまだ別の説もあります。作家・麻生幾氏が月刊『文芸春秋』に書いていますが、北朝鮮の特殊部隊の兵士は、時折日本に上陸して日本人を殺害し、また北朝鮮に帰るという訓練をしている。脱北者の1人が、「ある北朝鮮の兵士が世田谷一家殺人事件とそっくりの事件について、自身が関与したことを自慢しているのを聞いた」というのです。
真相はどこにあるのか――。一刻も早く、犯人が逮捕されることを願ってやみません。