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新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、2019年の年末に中国でヒト病原体として出現し、それ以来世界中に広がっています。このウイルスの構造や機能を理解することは、COVID-19疾患に対するワクチンや治療法を開発するために必要不可欠です。
概要
パンデミック初期に行われた迅速な研究により、このウイルス性病原体はベータCoVの系統Bに属することが明らかになりました1,2。コロナウイルスは、その表面から突出するトランプのクラブの形をしたスパイクと、異常に大きなRNAゲノム3を特徴とする、エンベロープを持った一本鎖RNAウイルスです。SARS-CoV-2ゲノムは、4つの主要な構造タンパク質をコードしています:スパイク(S)タンパク質、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、膜(M)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質であり、それぞれがウイルス粒子を構成するために必要不可欠なタンパク質です3。
すべてのコロナウイルスと同様に、SARS-CoV-2はS糖タンパク質を利用して宿主細胞へ侵入します。このタンパク質には2つの機能ドメインが含まれています:S1受容体結合ドメイン(RBD)と、ウイルスと宿主細胞の膜の融合を仲介する2番目のS2ドメインです4。
SARS-CoV-2 Sタンパク質は、まずS1受容体結合ドメインを介して、宿主細胞のACE2受容体に結合します。次に、S1ドメインがウイルス表面から剥がれ、S2ドメインが宿主細胞膜に融合できるようになります。このプロセスは、プロテアーゼフーリンとTMPRSS2を介した2つの部位(S1 / S2とS2 ’)での切断による、Sタンパク質の活性化に依存します。S1 / S2部位でのフリン切断は、RBDおよび/またはS2ドメインを露出させるSタンパク質の構造変化につながっている可能性があります。 SARS-CoV-2 Sタンパク質のTMPRSS2による切断により、ウイルスキャプシドと宿主細胞の融合が可能になり、ウイルスが細胞へと侵入すると考えられています5,6。
S1タンパク質サブユニットのRBDの露出は、不安定なサブユニットの立体配座(コンフォーメーション)を生みます。その結果、このサブユニットは結合の際に、アップとダウンとして知られる、2つの状態間でのコンフォメーションの再配置を経ます。ダウン状態は一時的にRBDを隠し、アップ状態はRBDを解放しますが、一時的にタンパク質サブユニットを不安定化します7,8,9。三量体Sタンパク質内では、3つのRBDのうちの1つだけがヒトアンジオテンシン2(hACE2)宿主細胞受容体に結合でき、アクセス可能なコンフォメーションで存在します10。
宿主細胞への結合やウイルス侵入において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、ACE2、フーリン、TMPRSS2酵素は機能的重要性が高いです。そのためCOVID-19に対する取り組みにおいては、これらの因子が薬物開発およびウイルス阻害の主要なターゲットとなっています。
ACE2への結合に加えて、SARS-CoV-2ウイルスが他の細胞表面分子にも結合して細胞侵入できると示唆する研究結果が増えてきています。SARS-CoVと比べたSARS-CoV-2の感染力の強力さは、ウイルスが宿主細胞に侵入できるようにする細胞受容体の数の多さによって説明できる可能性があります。
ニューロピリン(NP)1と2の両方は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の切断型に結合して、宿主細胞の侵入を仲介することが示されています11, 12。ニューロピリンタンパク質はニューロンで発現しているため、ウイルスの神経系への侵入を許してしまいます。この侵入はヒトCOVID-19剖検の神経病理学的分析でも観察されています12 。NP受容体の抗体遮断、受容体変異誘発および構造の研究結果はすべて、SARS-CoV-2 Sタンパク質の細胞受容体としてのNPの機能を裏付けています11, 12。既知のACE2受容体に加えて、細胞表面のNP受容体への結合はSARS-CoV-2への感染を増強することを示唆しており、SARS- CoV と比較した場合に、SARS-CoV-2感染の組織向性の増強の原因となっているかもしれません11, 12。
初期の研究では、SARS-CoV-2 Sタンパク質が細胞表面のCD147に結合し、その後細胞に侵入すると示唆されました13。この研究で行われたin vitro抗ウイルス試験では、メプラズマブと呼ばれるSタンパク質とCD147細胞表面受容体との相互作用を遮断する抗CD147ヒト化抗体が、ウイルスの細胞侵入を顕著に阻害することが示唆されました。この抗体がCOVID-19を治療する可能性については臨床試験が現在進行中です14。血糖値が高いとCD147の発現が上昇することが明らかになっているため、上記の結果はCOVID-19において糖尿病が予後不良の要因の一つとなっていることを説明できるかもしれません15。
ヒトで頻繁にみられるSARS-CoV-2ウイルスの標的細胞は、神経細胞、血管の内皮細胞、呼吸器系や消化管内の上皮細胞です16。しかし、ACE2は脳内では低レベルでしか発現していないことが知られています17。構造モデリング研究によると、SARS-CoV-2が細胞表面のシアル酸糖タンパク質およびガングリオシドに結合できることが示されており18、シアル酸は、神経細胞を含め、SARS-CoV-2が標的とするすべての細胞タイプの表面で、高レベルで発現していることが知られています19。これは、インフルエンザ 20、MERS、 SARS-CoV およびHCoV-OC43 21 を含む他のウイルスの一般的な細胞侵入メカニズムです。 これらの知見は、SARS- CoV-2細胞侵入を阻害するために、COVID-19患者にシアル酸レベルを低下させる薬物を投与するといった新規治療戦略の潜在的可能性を示唆しています22。
製品名 | 製品番号(AbID) | アプリケーション |
抗SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein S1 抗体 [CR3022] | ab273073 | Neutralising, ELISA |
リコンビナント 抗SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein S1 抗体 [CR3022] - Chimeric | ab273074 | Neutralising, ELISA |
抗SARS spike glycoprotein 抗体 [1A9] | ab273433 | ELISA, WB, ICC/IF, Flow Cyt, IP |
抗SARS nucleocapsid protein 抗体 [6H3] | ab273434 | ELISA, WB, ICC/IF, Flow Cyt, IP |
リコンビナント ヒト coronavirus SARS-CoV-2 nucleocapsid protein (His tag) | ab273530 | ELISA, WB |
ヒト ACE2 ELISA キット | ab235649 | ELISA |
リコンビナント 抗ACE2 抗体 [EPR4435(2)] | ab108252 | IHC-P, IP, WB |
抗ACE2 抗体 [EPR4436] | ab108209 | WB, IP, IHC-P |
リコンビナント ヒト ACE2 protein (Fc chimera) | ab273687 | WB, ELISA, HPLC |
リコンビナント ヒト ACE2 (mutated H374 N + H378 N) protein (Fc Chimera) | ab273885 | WB, ELISA, HPLC |
リコンビナント 抗TMPRSS2 抗体 [EPR3862] | ab109131 | ICC/IF, WB, IHC-P |
リコンビナント 抗TMPRSS2 抗体 [EPR3861] | ab92323 | WB, IHC-P |
DX600 ACE2 インヒビター | ab273525 | Inhibitor |
Camostat mesylate, TMPRSS2 インヒビター | ab145709 | Inhibitor |
リコンビナント 抗Furin 抗体 [EPR14674] | ab183495 | ICC/IF, IHC-P, WB |
Naphthofluorescein, Furin インヒビター | ab145383 | Inhibitor |
リコンビナント 抗Neuropilin 1 抗体 [EPR3113] | ab81321 | ICC/IF, Flow Cyt, IP, IHC-P, WB |
リコンビナント 抗CD147 抗体 [EPR4053] | ab108308 | ICC/IF, IHC-P, WB |
アブカムの製品は研究目的での使用のみを目的としており、診断、治療、またはその他の目的での使用は意図されていません。