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外伝 くまクマ熊ベアー 作者:くまなの
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外伝2 クマさん、着ぐるみを装備する

 マイホームに転送される。

 マイホームは各拠点に配置されており、ギルドタワーと呼ばれている円形の高層タワーに繋がっている。

 ギルドタワーと呼ばれているその理由はは全てのギルドがこのタワーに入っているからだ。

 わたしはソロプレイヤーだから、ギルドには加入はしていない。

 でも、このギルドタワーは個人プレイヤーでも購入することができるようになっている。

 初めは一階しか購入できないが、レベルによって高層階が開放され、ゲーム内のお金によって高層階の部屋を購入することができるようになる。

 わたしが、いるのは最上階。

 ここからの景色の眺めは最高だ。

 人がゴミのように見えるって小馬鹿にする真似はしていない。


 今のわたしの格好は時間と苦労で手に入れた上級の防具が装備されている。

 職業は魔法剣士だ。ソロでやるなら、人気の職業だ。

 魔物には物理耐性や魔法耐性を持ったものがいる。それらの魔物を倒すには片方だけが特化されていても、ゲームを進ませると困ることが起きる。。

 本来はそれを補うのがパーティーなのだが、わたしはギルドには入っていないため、パーティーを組めることは少ない。

 パーティーを組むのはフレンドが暇なときや、人数合わせのときぐらいだ。

 だから、わたしは基本、ソロプレイになる。


 そして、さっそく本日、キャンペーンで手に入れた防具を確認するために着替え部屋に入る。

 この部屋にはわたしが今まで集めた装備がある。

 基本このゲームはこのマイルームの着替え部屋でしか、防具の装備変更ができない。ちなみに武器はどこでも変更はできる。

 さきほどの手に入れたクマさん装備一式を見る。

 どこから見ても着ぐるみだ。女の子が部屋でパジャマにして着ている服だ。

 見た目さえ気にしなければ、最強クラスの防具だ。

 とりあえず、着てみることにする。

 自分の部屋だから、誰かに見られることはない。

 だから、着て見るだけだ。

 決して可愛いから、着てみたいとは違う。

 わたしはクマの着ぐるみに手を伸ばす。

 着替えは簡単、着替え部屋にある装備に触れて『はい』ボタンを押すだけ。

 わたしはクマ装備に触れると、

『この防具を装備しますか』

 とのウィンドウがでたあと、その下に『はい』『いいえ』のウィンドウ表示がでる。

 わたしは迷わず『はい』ボタンを押す。

 これで着替えは完了だ。

 一瞬で装備の変更が出来る。

 大きな鏡があるので、クマ装備を確認する。

 クマだ。

 どっから見ても着ぐるみのクマだ。

 可愛いけど、こんな格好でゲームの中とはいえ歩けない。

 もし、歩くものなら、掲示版になにを書かれるか分かったものじゃない。

 タイトル、クマが現れるwwww クマ装備wwww 着ぐるみwwww

 と書かれるのが想像できる。

 さらに、画像とか貼り付けられる。

 考えただけで気が重くなるので、クマの防具を外そうとする。


「……うん?」


 ウィンドウ表示がおかしい。

 目を擦って、もう一度見る。


「……」


 わたしはウィンドウに出てきた一部を見て、思考が一瞬止まる。

 ウィンドウにはこう表示されていた。


『この装備は外すことができません』


「なんだこりゃ~~~~~~」


 ちょっと待って。

 たぶん、操作ミスだ。

 きっと、勘違いだ。

 そう思い、もう一度装備を外す操作をする。

 出てきたウィンドウ表示は。


「この装備は外すことができません」


 ちょっと、バグ?

 運営に連絡を。

 メール画面を出し、運営に装備が外れないことをメールをする。

 返事が返ってくるまで、いろいろ試してみる。

 他の防具を触れて、変更しようと思っても、出る画面は。


『装備の変更はできません』


 と表示される。

 あらゆる方法を試すが外すことは出来ない。

 掲示板を見て、同様なことが起きていないか調べるが、そような書き込みはされていない。

 どうなっているのよ。

 わたしは着ぐるみのまま、部屋の中を彷徨うろつく。


 ゲームに参加出来ずにソファーに座って困っていると。

 メール音が鳴る。

 すぐにメールを確認する。

 差出人は運営会社からだ。


『仕様です。防具の説明文を最後までお読み下さい。では、これからも、お楽しみください』


 ちょっと待て。

 防具の説明文?


 クマの服


 なにも書いていないけど。

 うん?

 下の余白部分が動く。

 文章の下の方にスクロールすると、『この装備は一度装備すると外すことはできません』

 と書かれていた。


「こ こんなの気付くか~~~~~~~」


 床をドンドンと殴り付ける。

 その度にクマさんパペットの顔が変形する。


 わたしが集めた防具が……

 わたしが苦労して集めた防具が……

 わたしの1年が……

 せめても救いは武器は装備できることだ。

 重い足取りで武器が置かれている場所に行く

 その中から一本の剣を握る。

 風属性を持つ、レア剣だ。

 手に入れるのに苦労した剣をクマさんパペットの口が咥える。


 あらためて鏡の前に立つ。

 クマが剣を持っている。

 これが、他人事なら腹を押さえて笑っていただろう。

 シュールだ。

 悲しくなってくる。

 泣いていいよね。


 いろいろ調べた結果。

 職業が変わっていた。

 わたしの今の職業はクマ、サブ職もクマ。


「職業がクマってなんなのよ~~~~~~~」


 怒る力も無くなり、わたしは外にも行かずにソファーの上に倒れ込んでいる。

 せっかく、アップデートの初日なのにゲームに参加することができない。

 そんなとき、チャットの呼び出し音が鳴る。

 誰かと思ったら、奥様プレイヤーのティルミナさんだ。話しによると、10歳の娘がいるって話だ。

 会話をする気分じゃなかったけど、少ないフレンドだ。それにティルミナさんにはいろいろお世話になっている。


「もしもし」

『ユナちゃん、今どこにいるの? ちょっと会いたいんだけど』


 会いたい?

 会えるわけがない。

 いったいどんな格好でティルミナさんに会えと仰いますか。

 どんな格好ってクマの格好しかない。と自分で突っ込みを入れる。

 どう、足掻いてもクマの格好しかない。右に振っても、左に振っても、クマしかない。


「今日はもう落ちようかと思って…」

『嘘はダメよ。アップデートの当日にユナちゃんが落ちるわけないでしょう。それで、どこにいるの? もう、街の外?』

「うん、実は外なんだ。だから、今日は会えないんだ。ごめんね」

『ユナちゃん。嘘はいけないわ』

「…………」

『今日、誰もユナちゃん見ていないって言うし』

「…………」

『ユナちゃんわたしのお願いを聞いてくれないの?』


 ティルミナさんにはお世話になっている。

 優しくしてくれる数少ないフレンドだ。

 悩んだ結果。


「わかりました。会います。でも、条件があります」

『条件?』

「わたしのことを見ても笑わないこと、誰にもわたしのことを話さないこと」

『よく、わからないけど、笑わないで、誰にも話さなければいいのね』

「もし、反故にされたら、わたし、ゲーム引退するから」

『ちょっ、なにを』

「嘘じゃないですよ。もし、本当に他の人に話したりしたら、引退しますよ」

『わかったわ。それで、どこにいるの?』

「ギルドタワーの自分の部屋です。許可申請しておくので、中に入って来てください」

『悪いんだけど、もう一人いいかな』

「もう一人?」

『わたしの娘なんだけど、紹介したいのよ』

「娘さんですか」


 本当なら、会いたくない。

 でも、ティルミナさんにはお世話になっている。


「わかりました。でも、娘さんにも先ほどの約束は守らせてくださいね」

『わかったわ。それじゃ、娘からユナちゃんにフレンド登録の申請を送るからよろしくね。なまえはフィナだから』


 しばらくすると、フレンド申請が飛んでくる。

 名前はフィナ。

 わたしはフレンド許可申請ボタンを押し、部屋の中の入れる許可申請もしておく。

 クマの格好をして小さなため息を吐く。

 引退かな?



ユナ 職業 クマ(元魔法剣士) サブ職 クマ(元?)


フィナ 職業 魔法使い サブ職 薬師


ティルミナ 職業 剣士 サブ職 ?

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