自らが推し進める政策の狙いを丁寧に説明し、国民の理解を得ようという姿勢も、政治の信頼回復に向け、安倍前政権の「負の遺産」を清算しようという決意もうかがえなかった。
菅政権発足後初の臨時国会が閉幕した。新型コロナ対策の議論を続ける必要があるなどと、野党は会期延長を求めたが、与党などの反対で否決された。
与党は補正を含む予算編成に専念するためというが、国会答弁に不安のある菅首相が矢面に立たされる舞台をなくし、捜査の進展で再燃した「桜を見る会」をめぐる追及を振り切りたいというのが本音だろう。
説明責任を軽んじ、論戦から逃げ回る姿勢は、前政権から続く宿痾(しゅくあ)のようだ。
この国会の最大のテーマはコロナ対応だった。首相は所信表明演説の冒頭で「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」と約束した。
しかし、感染拡大を受けた「Go To トラベル」の見直しは後手に回り、内容も小出しで不十分だった。首相はきのうの記者会見で「極めて警戒すべき状況」「強い危機感をもって対応している」と語ったが、その言葉と実際の施策の間には大きな乖離(かいり)がある。これでは国民の不安は拭えない。
政府は現状をどう認識しているのか。感染防止と経済をどう両立させるのか。今後どうなったら、どんな対応を考えているのか。そんな疑問に応える具体的な説明は、首相の口からついぞ聞かれなかった。
強制力のない自粛要請中心の日本の対策では、国民の自発的な協力がカギを握る。最高責任者である首相が自らの言葉で、率直にわかりやすく訴えかけずして、それができようか。
「桜を見る会」をめぐっては、前夜祭の費用を安倍氏側が補填(ほてん)していたことがわかり、東京地検特捜部が政治資金規正法違反(不記載)の容疑で捜査を進めている。
時の首相が国会で事実に反する答弁を重ね、立法府の行政監視機能をないがしろにしていたという重大事であるのに、首相は安倍氏に事実関係を確認することもなく、人ごとのような答弁に終始した。日本学術会議が推薦した6人の任命拒否問題でも、納得のいく説明は最後まで聞かれなかった。
きのうの記者会見は、外国訪問時を除くと、9月の就任時以来、約2カ月半ぶりだった。もっと開かないのかという質問に、首相は官房長官が1日2回会見をしている、各閣僚が週2回の閣議後会見に応じているなどと、消極的だった。本気で国民に向き合う気があるのか疑われても仕方あるまい。
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