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 平和的に街頭で意思を表す自由が封じられてはならない。デモ活動をした香港の若者らに対する弾圧に強く反対する。

 香港で昨年夏に起きた無許可のデモを扇動した罪などに問われた3人に、地元裁判所が実刑判決を言い渡した。

 いずれも20代の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)、林朗彦(アイバン・ラム)の3氏である。

 デモは逃亡犯条例の改正への反対を訴え、黄氏らは積極的に対外発信を続けていた。

 黄氏は禁錮1年1カ月半、周氏は同10カ月、林氏は同7カ月とされた。周氏はさらに、香港国家安全維持法国安法)違反容疑でも逮捕されている。

 昨年以降、香港の言論をめぐる状況の悪化ぶりは目を覆うばかりである。

 3人だけではなく、昨年の抗議行動を理由に拘束された者はすでに1万人以上にのぼり、うち2千人以上が起訴された。

 苛酷(かこく)な法執行を通じて、市民らの言動を威嚇しようとする当局側の意図は明確だ。

 とくに今年6月に中国が香港の頭越しに国安法を成立させて以降、弾圧姿勢は急速に激しさを増している。

 このままでは香港基本法で保障される「独立した司法権」が脅かされ、自由や民主を唱える市民に広く厳罰が科されるのでは、との声は強い。この3人を含む大量の訴追と刑罰は、その懸念が現実のものになっていることを感じさせる。

 憂慮すべき事態は、それだけではない。

 抗議活動で拘束された者のうち、1千人以上は18歳未満の中高生らだとされる。香港政府はこれを重視し、学校での愛国教育の強化に乗り出した。役人たちが中国や香港政府に忠誠を誓う「義務」を、厳しく守らせる動きも進められている。

 香港の繁栄を築いてきた自由と法治が、根本から破壊されかねない。香港返還時の国際公約である「一国二制度」と「高度な自治」の保障を、中国に求め続けねばならない。

 日本や欧米各国の政府は強い懸念をくり返し表明している。中国は反発を強めているが、それによって圧力を弱めるようなことがあってはならない。かつて植民地統治をしていた英国を筆頭に、国際社会は共同行動を強めるべきだ。

 「正直言って怖い。でも、いま声をあげなければ、もうあげられなくなるかもしれないんです」。昨年6月に日本を訪れた際、周氏は独学で学んだ日本語で必死に訴えていた。

 香港の若者が日本に向けて放った言葉の重み。それをいま、改めてかみしめたい。

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