韓国の日本への要求/過去の書き換えを目指す

日本安全保障戦略研究所研究員  藤井 賢二 

 日韓関係は1965年の日韓条約で国交を結んで以来最悪といわれる。日韓条約中の請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」はずの戦時中の朝鮮半島出身労働者に対する補償問題を、2018年の韓国大法院判決で韓国が蒸し返したことがきっかけである。

 判決文は、原告が請求しているのは未払い賃金や補償金ではなく、「不法な植民支配および侵略戦争の遂行に直結する日本企業の反人道的な不法行為」を前提とした強制動員への慰謝料であり、請求権協定は「日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための取り決めではなかった」と非難した。1910年の日韓併合による日本の支配は不法なのに罰せられていないという不満がある。

 韓国はこれまでも、日本の支配は不法と日本に認めさせようとしてきた。より高圧的な、自分たちは日本と戦った連合国=戦勝国(日本は敗戦国)と主張したことすらある。 

 日本と連合国との戦争を正式に終わらせるための平和条約を米国が作った時、51年5月の協議で英国は「韓国は日本と戦争したことは決してなかった」と述べた。同年7月、米国は「日本と戦争状態にあり、かつ42年1月の連合国宣言の署名国である国のみが条約に署名するので、韓国政府は条約の署名国にならないであろう」と韓国に告げた。中国にあった臨時政府が対日宣戦布告したと韓国が抗議すると「米国政府は韓国臨時政府を承認したことはない」とし、韓国は署名国にはなれなかった(塚本孝「韓国の対日平和条約署名問題」『レファレンス』494)。

 平和条約に従って国交を結ぶための交渉(日韓会談)が51年10月に始まると、韓国は連合国のような要求をした。たとえば、韓国が提案した基本条約案は「大韓民国は日本国を独立主権国家として承認する」と、サンフランシスコ平和条約の「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」と似ていた。しかし韓国はその姿勢を抑え、支配を不法と日本に認めさせることもできなかった。日韓条約中の基本関係条約の、日韓併合条約などは「もはや無効である」という文言について、支配は不法と主張したい韓国は初めから無効と主張したが、日本は締約当時は有効だったが現在は無効と説明した。

 1人当たりの所得で日本を抜くという声もある現在の韓国に、日本への遠慮はない。話題になったボルトン回顧録には、昨年4月の米韓首脳会談で、文(ムン)在寅(ジェイン)大統領は日韓条約を「ひっくり返そう(upend)としていた」とある。叶(かな)えられなかった夢の実現に韓国は力を傾けているが、その夢とは日本を罰することではないのか、そのような懸念すら抱かせる。

 戦後間もない47年、平和条約作成のための英連邦会議に向けてニュージーランド政府が作成した文書がある。朝鮮について、日本統治期に中国で多数の朝鮮人が抗日闘争を、国内でガンジー式の不服従運動を成功裏に行ったとある。英米両国が否定・無視したこのような説明が韓国人の宣伝の成果だとすれば、警戒すべきである。彼らの対外活動を決して侮ってはならない。

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 ふじい・けんじ 島根県竹島問題研究顧問。同県吉賀町出身。近著に「サンフランシスコ平和条約における竹島の取扱いについて」(『島嶼研究ジャーナル』10巻1号)がある

2020年12月27日 無断転載禁止