学名:Narcissus
英名:daffodil, narcissus
スイセンはヒガンバナ科(Amaryllidaceae、分類体系によってはユリ科に分類されます)の球根植物で、多くの園芸品種が育成されています。日本に野生化しているニホンズイセン(Narcissus tazetta L. var. chinensis Roemer)は、フサザキスイセン(Narcissus tazetta L. )の変種です。そのほかにも、ラッパスイセン(N. pseudo-narcissus)、ギリシャ神話でナルキッソスの生まれかわりといわれるクチベニスイセン(N. poeticus)、タイハイスイセン(N. incomparabilis L.)、ショウハイスイセン、ヤエザキスイセンなど、多数の品種があります。
![]()
(いずれもタイハイスイセン、青森県、5月)
ニラやノビルと間違えて食べないで下さい
春先に、スイセンの葉をニラと間違えて食べてしまう事故がときどき起きています。
スイセンの葉の方が幅が広く、厚いので、形だけでも見分けがつくと思いますが、匂いをかげば間違えようがありません。
家庭でスイセンとニラを栽培する時は、離して植えた方がいいでしょう。
また、スイセンの鱗茎をノビル(Allium grayi)の鱗茎と間違えてしまうこともあるようです。
いずれにしても、ニラやノビルには独特の匂いがありますので、見分けは簡単だと思うのですが。
有毒成分
スイセンは全草、特に鱗茎に、C6-C-N-C1-C6ユニットからなるノルベラジンアルカロイド(norbelladine alkaloid )を含んでいます。代表的なアルカロイドには、ガランタミン(galanthamin)、リコリン(lycorine)、タゼッチン(tazettine)などがあります。スイセンの他にもヒガンバナ(Lycoris radiata)などのヒガンバナ科植物に含まれています。これらのアルカロイドの一部はアセチルコリンエステラーゼを阻害する作用があります(1)。ヒガンバナ科の植物に含まれるアルカロイドのうち、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性がもっとも強いのは、ガランタミンと構造が類似したサンギニン(sanguinine)で、ガランタミンの活性はこの10分の1程度です。リコリンやタゼッチンにはアセチルコリンエステラーゼ阻害活性はほとんど無いようです。
また、スイセンは不溶性のシュウ酸カルシウムを含んでいて、接触性皮膚炎を起こします。
中毒症状
スイセン中毒は、ヒト、イヌ、ネコ(2)などで報告されています。中毒症状は、激しい嘔吐や下痢、食欲不振、昏睡、低体温などが観察されます。これらの症状は、ノルベラジンアルカロイドのアセチルコリンエステラーゼ阻害作用によると考えられていますが、消化管粘膜の局所刺激なども関与しているともいわれています。
また、スイセン栽培農家や花屋さんが"daffodil pickers' rash" (スイセンを摘む人の発疹)と呼ばれる皮膚炎を起こすことがありますが、これは、スイセンの茎から出る樹液に含まれているシュウ酸カルシウムによるものと考えられています(3)。
文献