フクジュソウ

学名:Adonis ramosa Franch.

北海道、本州、四国などの山地に自生する多年草で、早春雪解けとともに新芽を出し、何よりも先に光沢のある鮮黄色の花をつけて春の到来を知らせます。「福寿草」という名前が示すように、縁起の良い花として、鉢植えなどがお正月に飾られます。多くの園芸種があり栽培もされています。日本のフクジュソウの仲間にはこのほかにキタミフクジュソウ(A. amurensis)とエダウチフクジュソウ(A. multiflora)があります。 フクジュソウの根は強心利尿薬として用いられます。しかし、新芽をフキノトウと間違えてヒトが中毒おこすことがあります。

有毒成分

フクジュソウは、全草に強心配糖体シマリン(cymarin)を含みます。強心配糖体の詳細については、キョウチクトウの項を参照してください。

検査法

臨床薬として使われている強心配糖体ジゴキシンおよびジギトキシンの高感度定量法として蛍光偏光免疫測定法があり、他の強心配糖体も検出できるといわれていますが、高価な装置(Abbott TDx analyzer)を必要とします(1)。そのほか、高速液体クロマトグラフや薄層クロマトグラフによる検出法が報告されています。

中毒症状

症状としてはまず流涎、嘔吐、疝痛、下痢などの消化器障害が現れます。ついで心臓作用が現れますが、はじめ脈拍は異常に強盛、かつ緩徐で、しだいに心筋の異常興奮のため脈拍頻数、不規則、細弱となり、呼吸も浅弱を示し、四肢けつ冷、痙攣、蹌踉、麻痺、呼吸困難を起こします。その他の症状として、多尿、蛋白尿、頻尿などの腎炎症状も示します。重症のものは昏睡状態に陥り、四肢脱力、呼吸麻痺、麻痺性イレウスの症状を示し、最後は痙攣を起こして死亡します(家畜有毒植物学)。

病理所見

胃腸炎および心筋炎を主徴とし、心内膜炎、弛緩性心麻痺、肺の充血および溢出血斑を示します(家畜有毒植物学)。

文献

1) Cheung, K. et al. 1989. Detection of poisoning by plant-origin cardiac glycoside with the Abbott TDx analyzer. Clin. Chem. (2):295-297.

2) Spoerke, D.G. 1990. Cardiac glycosides. In Toxicity of house plant. (CRC press) p11-13.

 

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最終更新日:2018.2.8
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