転んで膝の靱帯(じんたい)を痛めた。通っているリハビリで理学療法士が口を酸っぱくして言う。「内股の癖を直さないと再発しますよ」。内股は女性に多いとされる。そうしている気はないのだが、正常な位置に膝を保てない▼思い返せば、膝を開いて座るのは「行儀が悪い」と言われて育った。メディアに登場する萌(も)えキャラやモデルは膝を閉じて笑みを浮かべ、見る側はそれが女の子らしいポーズだと無意識に思い込む▼先日、男女共同参画を考える宇都宮市のグループの読書会に誘われた。課題図書「これからの男の子たちへ」の著者は弁護士の太田啓子(おおたけいこ)さん。男児2人の母親である▼子育てや裁判を通じ、社会からすり込まれる「有害な男らしさ」を感じずにはいられないという。一般には、弱音を吐かず、社会的な成功と地位を積極的に追求し、危機的状況でも動じないのが「男らしい」と称賛される▼一方で弱みを見せられず心身共に追い込まれ、勝ち負けに固執し、果てはDVを引き起こすといった弊害を生んでいないかと訴える。参加者は「せめて息子はそうならないよう接したい」と口をそろえた▼知らず知らず身に付けている、危うい男らしさ、女らしさ。それによって魅力や能力といった個性を発揮できなくなる側面は否定できない。人それぞれの「らしさ」こそ追求したい。