3時のおやつはタコだった!?
タコ育ちの大阪の漁師さん

泉佐野漁協青空市場1Fでは、新鮮な魚介類を安く販売する店舗が並ぶ

 泉佐野市・佐野漁港は大阪府下でも一、二を争う漁獲量を誇る。泉佐野漁業協同組合は、88名の組合員が所属。底曳き網漁が盛んで、イワシ、アジ、マサバをはじめ、岩礁に棲むクロダイ、カサゴ、メバル、マダコ、沿岸部の砂底にいるカレイやエビ、カニなど多種にわたる魚介が水揚げされる。

 佐野漁港に隣接する「泉佐野漁協青空市場」では、毎日午後2時からセリが行われる。この日もさまざまな魚が並び、活気を見せていた。

「もともとは屋根がなくて、ほんまに青空の市場。昔は、とろ箱から逃げだしたタコが道路に這うてるし、アナゴがニョロニョロしてたわ(笑)」

 と語るのは泉佐野漁業協同組合代表理事組合長・高倉智之さん。漁師歴38年、親の代から漁師で、底曳き網漁とタコ漁を行っている。

 高倉さんにとっても、タコは身近な存在。「子どものころは、3時のおやつはタコやったもん。ここいらの漁師の子はみんなそうやと思うわ」というタコ育ちである。

泉佐野漁業協同組合代表理事組合長・高倉智之さん。高倉さんがタコ漁、息子さんが底曳き網漁を行っている

 泉州沖はタコの好物であるエビやカニが豊富で、風味がよく美味しいタコが育つ。また、潮の流れが穏やかなため、やわらかい。「泉州のタコはうまい! 甘みが違うわ。食べたらわかる。ファンになるで(笑)」と高倉さん。

 タコは通年獲れるが、いちばん漁獲量の多い時期は6~9月ごろ。高倉さんは、タコ漁をタコつぼ100個、タコかご300個を駆使して行う。季節に応じて移動するタコの位置を把握して沈める作業は、長年の経験がものをいう。

 タコ漁は「タコとのかけひきや」と高倉さんは語る。

朝、出漁した船は昼過ぎに戻り、水揚げされた魚介類は、14時ごろからスタートするセリにかけられる。

「基本のエサはイワシやアジやけど、それをいろんな船がやっとったら、タコが飽きて食いつきが悪くなる。そのタイミングを見極めてエサを変えるのも大事やな」

 道具も大事である。

「タコって、ごっつきれい好きなんですわ。あんなヌケたような顔してるけど、潔癖症やで(笑)」

 つぼもかごも、少しでも海藻類などの付着物があると入ってこないため、こまめに掃除をして「ホテル並みにピカピカの状態」にする。

高倉さんが釣ったタコ。6月から本格的なタコ漁シーズンになる

「あとな、タコも進化すんねん」

 タコが、かごの仕掛けに慣れて入りが悪くなってくることがあるらしい。そうなったら、研究熱心な高倉さんは「潜って確かめますわ」。スキューバで海の中へ潜って、タコがかごに入るところをジーッと観察するのである。8本の足を使って器用にエサをとろうとするタコの動きを確認して、仕掛けを改良。

「わいの道具も進化させるんや」

 獲れたタコは、海水で作った氷で鮮度を維持。そして、「みんなに活きのいい美味しいタコを食べてほしいし」と高倉さんは、一刻も早くと港へ船を走らせる。