新型コロナウイルスの感染者を受け入れる医療機関で、看護師が 逼迫 ひっぱく している。複数人での対応が必要な高齢者や中等症以上の患者が増えているためで、介護や病室の消毒など看護以外の業務も負担になっている。(島田愛美、手嶋由梨)

■一般病床を閉鎖

 9月下旬から1日当たりの新規感染者が2桁の日が続く沖縄県。県立南部医療センター(南風原町、434床)は、周辺の医療機関から重症患者らを受け入れている。

 同センターでは、コロナ以外の患者を診療する一般の28床が「閉鎖中」だ。コロナに対応する看護師を増やすための措置で、一般の入院患者の一部を転院させるなどしたうえで約130人を確保した。

 コロナ専用の病床は22床。うち4床には、血液に酸素を供給する体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)や人工呼吸器を装着する重症患者が入っており、1人の患者に3人の看護師がついている。床ずれを防ぐため、数時間ごとに5人がかりで体位を変えるなど頻繁なケアも必要で、負担は大きい。

 また、感染防止のため外部の業者は入れず、退院後の病室の清掃や消毒といった作業も看護師で行わざるを得ないという。池間真由美師長は「思うように動けない防護服姿での慣れない作業は非常に大変」と話す。

■「人手2、3倍に」

 若い世代の感染者が多かった夏に比べ、今は高齢者が増えている。コロナ患者を受け入れる福岡市の総合病院(約450床)の院長は「夏より2、3倍の人手がかかっている」と訴える。

 この病院のコロナ病床は17床で、軽症や中等症の患者13人(17日時点)が入院している。うち7人が70歳以上で、ほとんどが要介護者。食事の際、看護師は患者の 誤嚥 ごえん を防ぐためにスプーンで口に運んでいるほか、トイレや入浴時も転倒しないよう複数人で介助する。

 専従の看護師は約20人。必ずしも十分な数ではないというが、冬場は心筋 梗塞 こうそく や肺炎などの患者が増えるため、他の病棟から看護師を回すのは見合わせている。院長は「残りは4床だが、満床まで受け入れられないかもしれない」と懸念する。

■人材確保難しく

 こうした中、資格を持ちながら離職した「潜在看護師」を掘り起こす動きもある。福岡県看護協会は対象者に復職を呼びかけ、67人(14日時点)が復職することになった。

 ただ、同県医師・看護職員確保対策室の担当者は「医療機関の求人はそこまで多くはない」と明かす。背景には、コロナ禍による受診控えなどで経営が悪化している病院の増加がある。実際、日本病院会などの調査に回答した病院のうち、9月はコロナ患者を受け入れる459病院の約6割が赤字だった。

 同県病院協会副会長で、浜の町病院(福岡市)の一宮仁・病院長は「病床を確保できても、看護師がいなければ患者は受け入れられない。限られた人員を消耗させないよう、市民には感染を広げないための行動をお願いしたい」と呼びかけている。

根強い偏見・差別

 コロナ患者に接していることで、偏見にさらされる看護師もいる。日本医療労働組合連合会が8月に行った調査では、病院など120施設のうち2割が、看護師らへの差別的対応や嫌がらせが「ある」と回答。美容室で予約を断られるなどの事例が確認された。

 福岡県内の病院でも、同僚から「同じ空間にいていいのか」と避けられるケースがあったという。久留米大保健管理センターの大江美佐里准教授(産業精神保健学)は、「未知のウイルスへの恐怖が差別や偏見につながっている。相談窓口の設置など、病院は看護師が働きやすい環境を整備する必要がある」と話す。