山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

ヨーロッパの状況

イギリスで拡大する変異型ウイルスとは(12月21日)

共同研究しているIBMの小山さんから情報を頂きました。
ニュースでイギリスの変異型ウイルスが話題になっています。この変異はB.1.1.7系統、もしくはVUI-202012/01 (the first “Variant Under Investigation” in December 2020)と名付けられており、実に17か所もの変異が特徴です。
Report-1_COG-UK_19-December-2020_SARS-CoV-2-Mutations.pdf (cogconsortium.uk)
11月以降、イギリスにおいて急速に拡大しています。
この変異型ウイルスが、従来のウイルスに比べて感染力や毒性が高いという論文は、私の調べた限りでは見つかりません。しかし、イギリスでの急速な拡大から、感染力は従来よりも強い可能性が考えられています。17か所の変異のうち、N501Y変異と、69-70 del変異は、それぞれ感染性の強さと、ワクチン等の免疫反応性に関与する可能性が考えらています。これらの変異は、ヨーロッパの一部に加えて、N501Y変異はオーストラリアで、69-70 del変異はオーストラリアやニュージーランドでも同定されています。
GISAID - phylodynamics
日本は感染研がゲノムデータを公開しており、これらの変異は報告されていません。
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査(2020年10月26日現在) (niid.go.jp)
しかし、感染研からの報告は1026日現在のデータであり、また大都市の検体はほとんど解析されていないようです。
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21日現在、イギリスを含むヨーロッパからの入国に関しては、水際対策としての検査が義務付けられています。一方、オーストラリアやニュージーランドからの入国に際しては検査が免除されています。
000691776.pdf (mhlw.go.jp)
今後、これらの変異が日本に持ち込まれないか、注視する必要がありますし、検疫に関しても再検討が必要かもしれません。

他の国から学ぶ(欧州)7月17日

イタリア、スペイン、イギリスなどの欧州は3月後半から4月にかけて爆発的な感染に襲われました。しかし現在では、感染者数は落ち着き、増加傾向にはありません(図1)。
Googleの行動解析(図2)によると、都市封鎖政策により80から90%におよび社会経済活動の制限が2カ月近く続いたことがわかります。東京とは比較にならない厳しさです。
検査体制を見ても(図3)、日本よりはるかに多い検査数であることがわかります。
図1 新規感染者の推移(New York Timesより)
図2 Googleによる行動解析
図3 人口1000人あたりの検査数