ワクチン登場もコロナ撲滅期待するな-広がる楽観論に専門家くぎ
John Lauerman、James Paton-
天然痘を1977年に封じ込めるまでに約20年-ポリオはまだ撲滅せず
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未接種の人たちが集団免疫ありそうな地域に再び病気持ち込む恐れ
新型コロナウイルス感染症(COVID19)のワクチンは記録的なスピードで実用化され、さらに多くのワクチンが控えている。感染が世界に広がり始めて1年弱で最初のワクチンが登場したことで、地球上からパンデミック(世界的大流行)が消滅するとの期待が広がりつつある。
米国と英国で現在進められている計画は、世界中の人口80億人全員に接種を目指す活動の先駆けだ。
楽観論には理由がある。ワクチンは感染症を消滅させる最善で恐らく唯一の手段だ。天然痘は撲滅され、ポリオはその一歩手前だ。ただ世界的なワクチン接種運動は時間がかかり、通常は数十年を要する。これはコロナ制圧を目指す前例のない世界的な取り組みを背景に最先端のテクノロジーや資金、権力を持ってしても、近く消滅する可能性は低いことを示唆する。
米疾病対策センター(CDC)予防接種プログラムの元責任者で現在はエモリー・ワクチン・センター幹部のウォルター・オレンスタイン氏は「世界中に広がっているこのウイルスが今、実際に撲滅されれば驚きだろう」とし「いかに感染しやすいかを踏まえると、私は衝撃を受けるだろう」と語った。
世界保健機関(WHO)が天然痘撲滅を目指すことを決意したのは1959年だが、WHOと加盟国が追加資金や人員をコミットした67年までこの取り組みは加速せず、最後の感染拡大を77年に封じ込めるまでに約20年かかった。
新型コロナとの比較でより参考になるのは、重症化して後遺症が出ることがあるポリオかもしれない。ポリオは新型コロナと同様に重篤に陥る人は感染者のごく一部で、約100人に1人の割合だ。
このため広範なコロナワクチン接種で予想される問題の一つが生じた。それは、自分は病気の影響を受けにくいと思う人々が接種を望まないかもしれないことだ。重症化を阻止し感染拡大を予防することで他の人に恩恵を与えると考えられるにもかかわらずだ。
子供に麻痺が残る不安や約65年前からワクチンが入手できる状況にもかかわらず、世界でポリオはまだ撲滅されていない。世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)によると、ワクチン接種率が不十分なためにアフガニスタンとパキスタンではなおポリオの感染が続いている。
ワクチン未接種の人たちは常に、集団免疫が獲得されたとみられる地域に再び病気を持ち込む恐れがある。昨年に世界全体で報告されたはしかの感染者数は年間ベースで6倍強の約87万人と、1996年以来の多さとなった。予防接種率の停滞が背景にある。
世界でコロナのウイルス存続は同じレベルになる可能性が高いと、ノバルティスの元ワクチン担当幹部でWHOでパンデミックに備える取り組みを推進したクラウス・シュテール氏は指摘する。
シュテール氏は「コロナは決して撲滅されることはない。この予想は極めて明白だ」とし、「その理由はコミュニティーには常にかなりの割合で感染しやすい人がいることだ」と語った。
原題:
Vaccines Don’t Mean We’ll See the Last of Covid, Experts Warn(抜粋)