能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.25 魔術師は付与する
「脱いでくれ」
クルシュのその一言にアリスは少し硬直してから赤面する。
「何を赤くなってるんだ?そうじゃないと付与魔法をかけられないだろう」
「そ、それはそうだけど..........その............」
もちろん躊躇うには理由がある。アリスはこの下に何を着ているわけでもなく、下着だ。いくら親しい仲とはいえ裸に近い状態を見られるのはとても羞恥に値する。
「早くしないとレオが待ってるぞ?」
「わ、分かったから!あ、あっち向いてて..........」
「分かった」
クルシュが後ろを向くと服が擦れる音が聞こえる。パサり、パサリと1枚ずつ床に落ちていき、その音は3回で止んだ。
「ふ、振り向かないで。そのまま...........そのまま..........」
「なんでもいいが脱いだなら早く渡してくれないか?」
「クルシュ君デリカシー無さすぎ!はいこれ!」
半ば八つ当たり気味に頭に乗せられた服を机に乗せて同じ工程を踏む。逆証魔術から付与魔術、5つ付与したところで順に返す。カッターシャツ、ブレザー、最後にスカート。常時服のスれる音が聞こえるが彼は気にしない、もともと興味が無いという訳ではなく、単純に付与に集中しているからだ。
「そろそろ振り向いていいか?」
「う、うん...........」
「さっきから思ってたんだが何を恥ずかしそうにしてるんだ?」
「そ、それはその.............えっと...............」
「まぁいい。じゃあ出ていってくれ、俺が着替えれない」
「え?」
その後クルシュの頬に紅葉が出来た...........訳もなく、簡単に避けられ部屋からつまみ出されたアリスであった。
◇
階段から降りてきた2人、しかしレオの目に映ったのは何食わぬ顔で歩みを進める少年と赤面して少し怒ったような表情を見せる少女。反射的にレオは口が緩んでしまった。
「何か可笑しいか?」
「いや、まぁ........忘れてくれ。服は似合ってるぞ、2人とも」
「そうか、ありがとう」
短く返事したクルシュはサイズもぴったりであった。肩幅にちょうど収まり、首から下げるネクタイは程よい締りで清潔感を出している。
「さすが私の弟だ...........」
「あらあら〜レオさんは弟君にメロメロじゃないの〜 」
「やめろ、こんな公衆の面前で。こっちが恥ずかしくなるだろう」
「クルシュ、今日1日それで..........」
「断る。さすがに俺でもシワになれば専門業者に出すしかないからな」
真っ向から両断されたレオはその場に崩れ落ちる。クルシュはすでに亭主にコーヒーを入れてもらい優雅にそれを嗜んでいる。だがその光景を見て少女は不服そうな顔を浮かべる。
「ん?どうかしたのか?アリス」
「えっ?、い、いやなんでもないわよ!?」
「そうか。まぁいい、10時だが朝食にしよう」
数秒で立ち直ったレオに促されアリスも椅子に座る。目の前には焼いたトーストと目玉焼きとベーコン、一般的な洋風の朝食である。
「そういえばだいぶ時間がかかっていたが、そんなに着替えるのは難しかったか?」
「いいや、少し着ている物の性能がゴミ以下でな、改善していた」
「ゴミ以下って.........付与できるだけでも凄いわよ」
「まるで星宝の刻印とは思えないほどだものな。今までの諸説が嘘に感じる」
「感じるじゃなくて嘘だ、お前達が一般的に備えている知識はな」
「どういうこと?」
「前も言っただろ、誰かが何かの為に嘘をばらまいたって」
「でもそんなことしても誰の得って訳でもないでしょ?」
「そこは不明だ。まずその誰かがわからない時点で手の出しようもないからな。まぁ正体が分かっても俺はほっとくけどな」
そこでクルシュは話を終える。コーヒーを飲んで朝刊を両手に記事に目を落とす。
「まぁなんにせよ、私はクルシュがそれでいいなら気にはしない」
「私は金色だから分からないな............」
「で、話は変わるが今年は王族大集合みたいだな」
「そうなの?」
「お前、新聞くらい見るだろ?」
「ううん、見ないけど?」
クルシュはやれやれとため息をついて新聞をアリスに手渡す。手渡されたアリスは両手で印の付いた箇所を読んでみた。
「..........現実?」
「生憎ながらな」
「その話は私も聞いたぞ。今年は隣国の王女とこの王国の王子、その親戚が一同に集まる年らしい」
「しかも俺たちと同年代、この学園に通うと来た」
「な、なによそれ..........」
まぁ別に俺としてはどうでもいい。ただひたすらに静かに暮らしたいだけだ。王族に関わるのだけは真っ平御免だからな、.........そう、あれは300歳の頃............いや、この話は閉まっておこう。
「お前達、騎士団長の弟と領主の娘なんだから、大人しくしておくんだぞ?特にすクルシュ!」
「なんで俺なんだ?アリスだろう普通」
「私何か問題起こしたっけ!?」
「お前あれだろ、ヘリオスとかいうやつビンタしただろ」
「え?誰だっけ?」
「ほら、模擬戦の時に戦った...........」
「あー!、あの口先だけの奴ね!鬱陶しいから成敗してやったわ!!」
笑顔で言ってのけるアリスにレオはやれやれと頭を抑える。クルシュは呆れたような目線を送るがアリスは気づいていない。
「とりあえずお前達、特にクルシュは問題を起こさないようにな。私も騎士団長の立場がある」
「だから何度も俺は静かに暮らすと言っただろ」
「頼むから有言実行してくれよ.........?」
俄然クルシュはすました顔でコーヒーを嗜む。レオは懇願するようにそんな思いを馳せるのであった。
クルシュのその一言にアリスは少し硬直してから赤面する。
「何を赤くなってるんだ?そうじゃないと付与魔法をかけられないだろう」
「そ、それはそうだけど..........その............」
もちろん躊躇うには理由がある。アリスはこの下に何を着ているわけでもなく、下着だ。いくら親しい仲とはいえ裸に近い状態を見られるのはとても羞恥に値する。
「早くしないとレオが待ってるぞ?」
「わ、分かったから!あ、あっち向いてて..........」
「分かった」
クルシュが後ろを向くと服が擦れる音が聞こえる。パサり、パサリと1枚ずつ床に落ちていき、その音は3回で止んだ。
「ふ、振り向かないで。そのまま...........そのまま..........」
「なんでもいいが脱いだなら早く渡してくれないか?」
「クルシュ君デリカシー無さすぎ!はいこれ!」
半ば八つ当たり気味に頭に乗せられた服を机に乗せて同じ工程を踏む。逆証魔術から付与魔術、5つ付与したところで順に返す。カッターシャツ、ブレザー、最後にスカート。常時服のスれる音が聞こえるが彼は気にしない、もともと興味が無いという訳ではなく、単純に付与に集中しているからだ。
「そろそろ振り向いていいか?」
「う、うん...........」
「さっきから思ってたんだが何を恥ずかしそうにしてるんだ?」
「そ、それはその.............えっと...............」
「まぁいい。じゃあ出ていってくれ、俺が着替えれない」
「え?」
その後クルシュの頬に紅葉が出来た...........訳もなく、簡単に避けられ部屋からつまみ出されたアリスであった。
◇
階段から降りてきた2人、しかしレオの目に映ったのは何食わぬ顔で歩みを進める少年と赤面して少し怒ったような表情を見せる少女。反射的にレオは口が緩んでしまった。
「何か可笑しいか?」
「いや、まぁ........忘れてくれ。服は似合ってるぞ、2人とも」
「そうか、ありがとう」
短く返事したクルシュはサイズもぴったりであった。肩幅にちょうど収まり、首から下げるネクタイは程よい締りで清潔感を出している。
「さすが私の弟だ...........」
「あらあら〜レオさんは弟君にメロメロじゃないの〜 」
「やめろ、こんな公衆の面前で。こっちが恥ずかしくなるだろう」
「クルシュ、今日1日それで..........」
「断る。さすがに俺でもシワになれば専門業者に出すしかないからな」
真っ向から両断されたレオはその場に崩れ落ちる。クルシュはすでに亭主にコーヒーを入れてもらい優雅にそれを嗜んでいる。だがその光景を見て少女は不服そうな顔を浮かべる。
「ん?どうかしたのか?アリス」
「えっ?、い、いやなんでもないわよ!?」
「そうか。まぁいい、10時だが朝食にしよう」
数秒で立ち直ったレオに促されアリスも椅子に座る。目の前には焼いたトーストと目玉焼きとベーコン、一般的な洋風の朝食である。
「そういえばだいぶ時間がかかっていたが、そんなに着替えるのは難しかったか?」
「いいや、少し着ている物の性能がゴミ以下でな、改善していた」
「ゴミ以下って.........付与できるだけでも凄いわよ」
「まるで星宝の刻印とは思えないほどだものな。今までの諸説が嘘に感じる」
「感じるじゃなくて嘘だ、お前達が一般的に備えている知識はな」
「どういうこと?」
「前も言っただろ、誰かが何かの為に嘘をばらまいたって」
「でもそんなことしても誰の得って訳でもないでしょ?」
「そこは不明だ。まずその誰かがわからない時点で手の出しようもないからな。まぁ正体が分かっても俺はほっとくけどな」
そこでクルシュは話を終える。コーヒーを飲んで朝刊を両手に記事に目を落とす。
「まぁなんにせよ、私はクルシュがそれでいいなら気にはしない」
「私は金色だから分からないな............」
「で、話は変わるが今年は王族大集合みたいだな」
「そうなの?」
「お前、新聞くらい見るだろ?」
「ううん、見ないけど?」
クルシュはやれやれとため息をついて新聞をアリスに手渡す。手渡されたアリスは両手で印の付いた箇所を読んでみた。
「..........現実?」
「生憎ながらな」
「その話は私も聞いたぞ。今年は隣国の王女とこの王国の王子、その親戚が一同に集まる年らしい」
「しかも俺たちと同年代、この学園に通うと来た」
「な、なによそれ..........」
まぁ別に俺としてはどうでもいい。ただひたすらに静かに暮らしたいだけだ。王族に関わるのだけは真っ平御免だからな、.........そう、あれは300歳の頃............いや、この話は閉まっておこう。
「お前達、騎士団長の弟と領主の娘なんだから、大人しくしておくんだぞ?特にすクルシュ!」
「なんで俺なんだ?アリスだろう普通」
「私何か問題起こしたっけ!?」
「お前あれだろ、ヘリオスとかいうやつビンタしただろ」
「え?誰だっけ?」
「ほら、模擬戦の時に戦った...........」
「あー!、あの口先だけの奴ね!鬱陶しいから成敗してやったわ!!」
笑顔で言ってのけるアリスにレオはやれやれと頭を抑える。クルシュは呆れたような目線を送るがアリスは気づいていない。
「とりあえずお前達、特にクルシュは問題を起こさないようにな。私も騎士団長の立場がある」
「だから何度も俺は静かに暮らすと言っただろ」
「頼むから有言実行してくれよ.........?」
俄然クルシュはすました顔でコーヒーを嗜む。レオは懇願するようにそんな思いを馳せるのであった。
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アルス→アリス
一同に集まる歳→一同に集まる年