サポーター体験記
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練馬区の長寿生涯学習事業「寿大学」 その人気の理由とは?

練馬区の長寿生涯学習事業「寿大学」 その人気の理由とは?
昭和39年に23区で初めて開講した高齢者のための「寿学級」が発展し、練馬区の生涯学習事業として昭和42年に誕生した寿大学は、今春には90期(45年)を迎える練馬公民館の長寿事業です。対象は65歳以上の練馬区民で、講演会やクラブ活動を通じて向学心を助け、余暇の充実を図り、高齢者の生涯学習を支援することが目的です。

寿大学は、練馬公民館に拠点が置かれ、半年ごとに開講式と講演会(4回)、クラブ活動(5回)の全10回という構成です。毎週水曜の午後2時〜4時に行われ、期間は約2か月間。講演会、クラブ活動ともに毎期多数の応募があり、毎回抽選になるほどの超人気事業でもあります。

受講者のみなさんは寿大学で充実した時間を過ごされることから、修了後も自主的にサークルを立ち上げて活動を続けている方々がいると聞きました。
そこで、練馬公民館長にインタビュー、また修了生が作ったサークルの練習におじゃまして、その人気の秘密を探ってみました。

練馬区 教育委員会事務局 生涯学習部 生涯学習課

練馬公民館長 百丈博世(ももたけ ひろせい)さん

所在地
〒176-0012 練馬区豊玉北6-8-1
電話
03-3991-1667
交通アクセス
西武池袋線・都営地下鉄大江戸線 練馬駅から徒歩10分
開館時間
午前9時〜午後9時30分
休館日
月曜日(ただし、第2月曜日、祝・祭日は除く)・年末年始(12月29日〜1月3日)
*修了生による自主的なサークル活動に関する問い合わせも練馬公民館で受け付けています。
*練馬公民館は、平成24年4月より「生涯学習センター」に名称が変わります。

練馬公民館長 百丈 博世さん

練馬公民館長 百丈 博世さん グループ・サークル活動など自主活動を行う場として、区民に親しまれている練馬公民館。寿大学の講演会やクラブ活動もこちらで行われます
グループ・サークル活動など自主活動を行う場として、区民に親しまれている練馬公民館。寿大学の講演会やクラブ活動もこちらで行われます

Q1.寿大学の特色を教えてください。
A1.文化・芸術や日常の健康・料理など、シニアの関心が高いジャンルから7つのクラブ活動を設定しています。シニアの関心が高いジャンルを選んだ理由は、クラブ活動で出会った仲間とともに趣味や教養を身に付け、修了後もその活動を継続して欲しいと考えているからです。また講演会の演題は、特定の分野に偏らないように各ジャンルから時流を反映したものを選定するので毎期異なります。
 応募者が定員を上回る場合は抽選となりますが、開講式と講演会に関しては、会場が広いのでクラブ活動の抽選に外れても、希望者には再抽選で参加できるような仕組みです。また、3期連続でクラブ活動に落選した場合は、優先して入学(登録)できるお助け制度もあります。

 百丈練馬公民館長(写真右側の中央)にお話をうかがいました
百丈練馬公民館長(写真右側の中央)にお話をうかがいました

Q2.応募者の年齢層を教えてください。また昨年から戦後生まれも65歳以上に加わりつつありますが、何か変化は見られますか?
A2.前回の89期(平成23年秋)で見ると、最高齢は91歳で、最も多いのは70歳代です。最近では、安全を重視すると「年寄り扱いしないでほしい」というご意見をいただくなど、受講者の方々の意識の変化を感じています。また受講者のニーズも多様化しているので、クラブ活動の内容は固定せず2年ごとに見直しを行っています。

 クラブ活動「やさしい似顔絵」の作品展示風景
クラブ活動「やさしい似顔絵」の作品展示風景

Q3.寿大学には通信講座もあるそうですが、その内容は?
A3.区内在住の60歳以上の方を対象に書道と俳句の添削指導を毎月行なっており、人数の制限なく誰でも受講できます。受付窓口は公民館のほか敬老館、地区区民館などです。通常は通信制で学んでいますが、春・秋・冬の年3回は講師が直接指導するスクーリングを実施しています。また、受講者による書き初め展も2月に開催しています。現在940名の登録があり、毎月約600名が添削を受けています。
Q4.入学したいのですが、募集はいつ頃から始まりますか。
A4.例年、春季は3月11日、秋季は8月11日の区報でご案内しています。募集期間は約2週間です。クラブ活動によって抽選の競争倍率は1倍台〜3倍台とばらつきがありますが、前述したとおり落選した場合にも再抽選がありますので、お申込みをお待ちしています。(詳細は下記、寿大学概要をご参照ください)

女声合唱団「銀の輪」指導者 三輪裕子(みわ ゆうこ)さん

女声合唱団「銀の輪」指導者 三輪裕子(みわ ゆうこ)さん 女声合唱団「銀の輪」のみなさん。「エーデルワイス」を英語、「月の光に」をフランス語で。やさしく透き通った歌声は、取材も忘れて聴き入ってしまうほどでした
女声合唱団「銀の輪」のみなさん。「エーデルワイス」を英語、「月の光に」をフランス語で。やさしく透き通った歌声は、取材も忘れて聴き入ってしまうほどでした

Q1.「銀の輪」はいつ、どのような目的で発足したのですか? 
A1.平成2年1月に、寿大学・合唱講座修了生の有志(約50名)から「修了後もサークルとして合唱を続けたい」という要望があり、練馬公民館長や職員のアドバイスを得て発足しました。その当時のメンバーが現在も6名在籍、元気に活動を続けています。

Q2.活動内容を教えてください。
A2.練馬文化センターでの定期演奏会(年3回)と区民文化祭として実施される練馬区合唱連盟の合唱祭への参加(年2回)、そして合唱指揮者協会主催の催しに招待していただいています。また、昨年は東日本大震災による節電と猛暑などで中止しましたが、毎年、夏休みに区内の子ども合唱団との交流を行っています。数年前までは区内のデイサービスセンターへうかがい、お喋りをしながら歌うボランティア活動も続けていました。

現在、団員は60〜90歳代で、大半が70歳代です。サークルの発足から20年以上が経ち、かなり高齢の方もいらっしゃいます。「できる人だけでするというのではなく、みんなでできることをする」ということを大切に、ボランティア活動は現在のところ制限しています。

Q3.レッスンは月に何回くらい行っていますか?
A3.高齢の方が多いので会場を転々と変えることは負担になりますし、移動の安全確保も考え、週1回、練馬公民館で行っています。しかし、会場の使用は抽選次第なので、抽選に外れた場合は活動をお休みにしています。練馬公民館は区立施設なので、後期高齢者(75歳以上の方)が多い団体は無料で利用できることがありがたいです。

Q4.入団条件、団員数について教えてください。
A4.60歳以上の女性であれば誰でも、いつでも入団できます。区外の方でも歓迎しております。積極的に募集をしていないこともありますが、古くからの団員の方々が亡くなられたり、体調を崩されたり、家族の都合などで退団されたりで現在は25名です。みなさん、合唱以外にも興味のあるものに積極的に参加するなど、活発に活動しています。団員のみなさんのことを、著名な指揮者・清水雅彦さんが「東京の合唱祭で出会った素敵な合唱団」と著書に書いてくださったほどです。

Q5.活動が長く続いている秘訣を教えてください。
A5.レベルアップを目指すだけでなく、「合唱をシンプルに楽しむ」ことをモットーにして和気あいあいと、練習をしていることでしょうか。ひとりぐらしをされている方も多いので、お喋りタイム(休憩時間)を長めにしてコミュニケーションを大切にしています。

寿大学 概要

■対象 練馬区在住の65歳以上の方
■開講日程 春季:4月〜6月上旬、秋季:9月〜11月上旬
各期全10回(約2か月間)
毎週水曜日の午後2時〜4時
■会場 練馬公民館ホール(開講式と講演会) 練馬公民館各教室(クラブ活動)
春季・秋季とも前半は様々なテーマでの講演会、後半は料理・絵画・芸術・歴史・体操などのクラブ活動で構成されています。
■費用 無料 ※ただし、クラブ活動の中には材料費などの実費が必要な場合もあり。
■応募方法
春季は3月11日、秋季は8月11日の区報で募集内容を掲載します。往復ハガキで申し込みいただき、応募が定員を超えた場合は抽選となります。抽選に落選した方の中から、開講式・講演会(全5回)のみの参加者を再抽選します。
申込みは1人1通までですが、過去に3回連続した落選通知をお持ちの方には優先制度があります。
詳細は申込期間中に練馬公民館までお問い合せください。

参考資料

※第89期(平成23年度秋季)の募集内容
◆開講式 講談(定員300名)
◆講演会(定員300名)4回連続
 ①歴史小説の楽しみ
 ②日常生活に活かすストレス低減テクニック
 ③長寿社会とアンチエイジング
 ④ジョイントコンサート
◆クラブ活動(下記から1つ選択。5回連続)
 ①野菜たっぷり、からだにやさしい家庭料理(24名、材料費4,000円)
 ②折り紙で楽しみを(30名、300円)
 ③やさしい似顔絵(36名、1,000円)
 ④江戸東京の舞台興行〜浅草六区を中心に〜(54名、材料費2,000円)
 ⑤健康づくりのための運動(30名、保険代100円)
 ⑥詩吟で心を豊かに(50名、無料)
 ⑦楽しい読み聞かせ(30名、無料)
 ※( )内は定員と料金。講演会は無料です。

シニアにおススメできるポイント!

・65歳以上の練馬区民なら誰でも応募ができます。
・講座の内容はシニア向けの時流に乗った内容なので興味深く受講できます。
・クラブ活動は7つのジャンルから興味があるものを選ぶことができます。
・講演会の演題は毎期異なるので、興味があれば毎期でも受講の応募ができます。
・受講生が同年代なので、仲間を見つけることができます。
・週に1回、約2時間の講座なので無理せず受講できます。
・寿大学通信講座(書道と俳句)は自宅で学習でき、受講費用も無料です。

サポーターの取材後記

案山子
寿大学の取材中に、寿大学修了生たちのその後に関心が移りました。寿大学で得たことが、次のステップにつながらず一過性で終わったらモッタイナイと思ったからです。しかし心配は無用でした。修了生たちは同好のサークルに加わり、社会から孤立することなく社会参加を果たし、精神的にも身体的にも健康の増進に努めて、これからの余暇を楽しんでいました。 寿大学修了生たちと、その素晴らしきサークル仲間たちに乾杯!
まゆ
私も寿大学には何回か応募していますが、なかなか抽選に当たりません。4回(つまり2年間)辛抱強く待てばよいのですが、そうすると演題が変わったりして、本当に受講してみたい授業が受けられなくなってしまいます。こんなに向学心の熱いシニアが多いのですから、もっと多くの希望者が受講できるように、受講制度の改善はできないものでしょうか? また、寿大学は45年の歴史がある長寿事業ですが、さらに22年も続いている修了生のサークルがあると聞いてびっくりしました。このように元気な高齢者が活動する場面があるのは素晴らしいことですね。
ねりまっこ
寿大学ではクラブ活動が4年生大学の専門みたいでおもしろいですね。それで前段で教養課程の講演会が入るのですね。65歳を機に私も今までにやったことのない 「やさしい似顔絵」「楽しい読み聞かせ」あたりからチャレンジしたいです。落選し たら講演会だけでも聞きたいし、3回外れるまで頑張ってみます。

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