パワートレーン
全固体電池へのチャレンジが、
圧倒的優位なEV車を
世の中にデビューさせる
電池生技開発部
K.K
2006年11月、キャリア入社。前職は、大手電機メーカーでリチウムイオン電池の生産技術に従事。トヨタ入社後から2009年まで、トヨタ初のリチウムイオン号口ラインの立ち上げに携わり、2010年より、全固体電池の立ち上げのために現部署に異動。
EVとトヨタの未来を切り拓く
「全固体電池」の量産化に向けて
電池生技開発部で、全固体電池という電気自動車(EV)向けの次世代バッテリーを開発しています。全固体電池は、EVの走行距離を劇的に伸ばし、充電もガソリン車並みの速さでできるなど、今後のEVにおいて圧倒的な優位性を生みだすカギとなる製品です。
2010年に本格的に全固体電池を立ち上げるためにこの部署は誕生しました。私は当初から参加し、電池の性能向上を目指して、試験や性能評価を行っていましたが、当時はまだ大学の研究室でも、LEDを点灯させるのが精一杯。まさに世界のどこを探しても答えがない中で、失敗した電池の山を築きながら、なんとか電池と呼べる形にしていきました。そこから、扇風機、キックボードを動かせるようになり、ついに(2014年)コムスという超小型EVを動かすことに成功しました。
それから、「いかにいいものを安くつくるか」という目線で量産工法開発に着手し、現在は高速で電極を加工して、積層するセル組立工程を手がけています。
電池の生産技術を高め、
世界一のEVを目指したい
もともと前職ではリチウムイオン電池の生産技術を担当していました。電池メーカーの宿命として、最も重視されるのは、顧客の要望通りの電池をつくることです。「もっとこうしたらいいのに」と思っても、顧客が不要といえばつくることはできない。「将来こんなものが実現できたら喜ばれる」という視点で電池をつくりたいと考えた時、完成車メーカーであれば、その希望が叶うのではないかと思いました。
数ある完成車メーカーの中からトヨタを選んだのは、コアとなる技術や生産技術に非常に力を入れていたからです。入社当時から、世の中に市場を驚かすようなEVが出ていないのは電池技術が足りないからであり、自分が培ってきた電池の生産技術を、トヨタ生産方式やコア技術開発の力を通じて高めていけば、きっとお客様に喜ばれる世界一のEVを実現できるはず、と考えていました。そのためには、自身の守備範囲を広め、トヨタの電池開発や製造ラインを総合的にプロデュースできるよう、力を磨いていきたいと今も思っています。
大胆な研究開発費や
人材を投入できる
強固な財務基盤
生産技術という観点から、トヨタに入社して驚いたのは、「徹底的にやりきる」という姿勢でしょうか。「とりあえずできたらいい」ではなく、メカニズムも工程も緻密に押さえて、深掘りしていく。現地現物の加工点へのこだわり、目に見えないところまで見に行き、なんとか自分たちのものにしていく。その結果が、ブレイクスルーにつながっていくのだと思います。
そのためには、基礎研究から量産技術開発まで、研究開発費も惜しみません。財務基盤がしっかりしているトヨタだから可能なのだと思います。必要性がしっかりと認められれば、個人もチャレンジさせてもらえる。私も新しい工法を試すために、新規の設備を入れさせてもらいました。提案を聞いた専務も「チャレンジしよう」と背中を押してくれました。
誰もやったことのない中で、
答えを見つけるために
挑戦する楽しさ
印象的な仕事といえば、特に2010年にスタートしてしばらくは一番大変でしたね。冒頭でもお話ししたように、当時はまだまだ実用化には程遠い状態。最初は、耳かき1杯ぐらいの材料ではじめました。日々性能向上に取り組みながらも「本当にこんなものでクルマを動かせるのか」と悩んだりもしました。
1年ほど過ぎた頃、材料加工で「この方法にすれば絶対に性能が上がるはず」という方向性が見えてきて、メンバーでアイデアを出し合い、地道なアイデアから奇想天外なアイデアまで数えきれないほど試しました。失敗の山を築きながらも、そのひとつがヒットしたのです。そこから、性能が著しく上がりました。担当役員に報告に行くと、「すぐに社長に報告して来い!」と、まるで怒っているかのように興奮し、喜んでくれました。ブレイクスルーできた喜びとともに、自分たちのやっていることは、非常に大きな会社の期待を背負っているのだ、と強く実感できました。
まだまだ、クリアすべき課題は山のようにありますが、何としても自分たちの手で全固体電池を完成させたい。そして、世界を驚かせる全固体電池搭載のEV車のテープカット式には、その生みの親の一人として出てみたい。その夢が叶うのは、そう遠くないはずです。
パワートレーン部門とは
エンジン・トランスミッションから次世代環境車の動力源である燃料電池まで手掛けています。先行開発から生産まで一気通貫で担い、自ら創造したものを製品にすることができます。熱い想いと確かな技術で、トヨタの走り・地球の環境を創造します。
それは、ITに携わるエンジニアにとってこのうえなく刺激的な世界でもあるのです。