「鍋絶ち」し、昼食も軽めに済ませたおかげで、夜の僧兵鍋は至福の味に出合えた。一昨年から一般販売している湯の山温泉の「僧兵味噌」(夏・冬バージョンあり)は八丁味噌に信州の味噌、チキンコンソメ、ゴマ、ニンニクが少々と絶妙な味を醸し出す。
鹿つみれは臭い消しのためショウガ、タマネギ、卵、粉ザンショウなどが入り、猪バラ肉と鶏肉がジビエのベース。モヤシ、大根、春菊、ゴボウ、キクラゲ、シイタケ、小芋、厚揚げ、コンニャク、ニンジンと、地場産の旬の野菜を堪能した。締めは味噌の染みたうどん。
体の芯から温まりつつ、頬とズボンのベルトを緩めずにいられない。「ガッツリ感を求める人には、特製ラー油がお薦めです」と武藤健一料理長(39)。通常は3月末まで、事前予約で僧兵鍋が経験できる。朝食には通年で食べられる「僧兵汁」がうれしい。
◇ ◇
「統一レシピ」を成し遂げた湯の山温泉だが、やはり菰野町を売り込む温泉の女将パワーも大きな役割を担っている。「鹿の湯ホテル」の若女将、伊藤寿美子さん(47)もその一人だ。「女将の会きらら」では「僧兵味噌」のパッケージ考案や「僧兵鍋のおきて」のPR、温泉だけでなく菰野町の宣伝に余念がない。
各旅館や道の駅では、鈴鹿山系の花こう岩に育まれた雪解け水を使った日本酒や、お茶、陶器、米、菓子、くず餅など、新たな土産物・特産品がズラリと並ぶ。女将さんパワーには、さすがの僧兵も「参った」と降参するかもしれない。
<マメ知識>町名の「マコモ」栽培復活
菰野町の名の由来は、かつて自生していたイネ科マコモ属の多年草「真菰」。葉は古来、神社のしめ縄に使われ、栄養素が豊富な緑葉は健康食材に利用される。根元の茎はマコモダケとして秋に収穫し、タケノコのような食感を生かした料理がある。
菰野町では10年ほど前から休耕田を利用した真菰の本格栽培が復活。2012年には菰野町で「第7回全国マコモサミット」が開かれた。マコモダケの収穫体験や薬膳料理、温泉、御在所ロープウエイで絶景を楽しむ「まこもな女子会」なども行っている。
菰野町の名の由来は、かつて自生していたイネ科マコモ属の多年草「真菰」。葉は古来、神社のしめ縄に使われ、栄養素が豊富な緑葉は健康食材に利用される。根元の茎はマコモダケとして秋に収穫し、タケノコのような食感を生かした料理がある。
菰野町では10年ほど前から休耕田を利用した真菰の本格栽培が復活。2012年には菰野町で「第7回全国マコモサミット」が開かれた。マコモダケの収穫体験や薬膳料理、温泉、御在所ロープウエイで絶景を楽しむ「まこもな女子会」なども行っている。
(編集委員 嶋沢裕志)
[日本経済新聞夕刊2017年3月7日付]