嘘みたいなきっかけが
大スクープを生んだ!
まあ、許してくれるから自由に書いていいというのはメディア側の甘えとしかいいようがありません。この記事以降、メディアもプライバシー侵害の問題を真剣に考えるようになったことは事実です。
長嶋さんといえば2度、巨人の監督をしていますが、1度目の解任には、週刊文春と週刊新潮の2つの雑誌が大きな役割を果たしました。週刊文春はシーズン中に巨人軍OBの座談会を掲載しました。後任監督となる藤田元司さんや有力OBが長嶋さんを実名で批判。これが、球団と親会社が長嶋解任に動く原因になりました。
実は、記事で司会をしていたのは、文春で野球解説をしていた元巨人軍コーチの滝安治さんでした。メンバーは滝さんがゲラを見て不穏当な部分は修正してくれるだろうと、安心して飲みに出かけたのですが、滝さんはそのままでいいやと思ったので、思いも寄らない大騒ぎになったというのが実情でした。
そして、文春は週刊新潮の大スクープにしてやられます。
長嶋解任を週刊新潮が完全スクープ。しかも、長嶋監督と、長嶋直系のスポーツ新聞記者との電話での会話が詳細に再現されています。解任されそうだということ。その場合どうするか。長嶋が球団の裏切りに怒りまくっているといった内容がリアルに出ているのです。その週の週刊文春には長嶋のナの字も入っていないのですから、完敗です。
それから20年たって、スクープの真相を知りました。信じがたい話ですが、解任らしいという情報を知った新潮の記者が長嶋家に電話をかけたら、たまたま混線したらしく、会話が全部聞こえたというのです。嘘だろうと思いましたが、真実です。その真相を当時の週刊新潮記者だった松田宏さんが月刊『文藝春秋』の90周年記念号に寄稿してくださっています。