月別アーカイブ / 2016年03月

空港の国際線出発ロビーはウキウキする。

きっと、ここいる人達全員が異国の地でスタートする生活に期待しているからだ。
「なんで、あんな重い鉄の塊が飛ぶんだ?」
と言う人がいるけれど、
これだけの人の期待を背負ってしまっては、飛行機サイドも飛ばないわけにはいかない。
飛ばないわけにはいかないから、だから飛行機は飛ぶのである。
人の期待は重い鉄の塊であろうが飛ばすのだ。
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いよいよ今日から半年間のアジア旅がスタートする。

『台湾』からスタートして、ゴールはアジアの西の果て『トルコ』である。
なんてったって、半年間だ。
その間、場所も変われば、季節も変わる。
気温なんてバカみたいに変わる。
ゴール地点のトルコなんて、四捨五入するとアフリカだ。
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“備え”に抜かりはない。

パスポートはもちろん、パスポートのコピーもとっておいた。
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さらには、パスポート用の写真(×2枚)も用意。
万が一紛失した時に、これらを日本大使館に持っていけば、日本大使館のオバハンが、なんとかしてくれるのである。
オバハンは基本、なんとかする生物だ。。
女性トイレが混んでいたら、その時だけ男性になる。それがオバハンだ。

クレジットカードも念のため2枚用意し、
予備の現金は靴の中敷きの下にも忍ばせた。
治安の良い国ばかりではないのだ。

ちなみに私の会社のスタッフは、人生初のイタリア旅行にて、イタリア到着70分後に、身ぐるみ全てをはがされるという世界最速記録を持つ。
日本から持っていった荷物は1ミリも使わず全て預けてしまったので、『旅行客』というより、『運送業者』と呼ぶべきであろう。



旅先ではスマホで調べものをしたり、ブログを更新したりするので、wifiは絶対。
空港でバタバタするのは嫌なので、『イモトのwifi』を事前にWEBで申し込み、出発日の前日に宅配便でお届けしてもらった(配送料は全国一律500円)。
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(マルチ変換プラグのオマケ付き。これさえあれば世界中のコンセントに対応できる!)


荷物は極力コンパクトに収めたいので、衣類圧縮袋も購入。
これさえあれば、かさばる衣類も恐くない。
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(衣類が3分の1に!ダイソーで売ってます。)


衣類圧縮袋の働きにより、空いたスペースには、
『マウイチップス(ハワイアンサワ―クリーム味)』を5袋ブチ込んだ。
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▲NATURA LAWSON等で販売されている。Amazonでも10袋セット=3300円(送料400円)で販売されている。(かなりオススメ!!)


『マウイチップス』は厚切りポテトを伝統的な釜揚げ製法で揚げたポテトチップスで、北海道立オホーツク流氷科学センターの調べでは「食べ物史上一番美味しい食べ物」というデータが出ている。

厚めにスライスされ、しっかりとした歯ごたえがあり、
濃厚なじゃがいもそのものの味わいと、サワークリーム&オニオンの相性が抜群で、
端的に言うと、ゲロ旨いのだ。

この奇跡の食べ物が、はたして海外で手に入るかが分からないので、5袋とは言わず、8袋ブチ込んだ。
鞄の中は、ほとんど『マウイチップス』である。
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(鞄イッパイにマウイチップスをブチ込んだN氏)


仕事関係者への挨拶も無事に済ませた。
番組プロデューサーに、
「突然で申し訳ないですが、明日から半年間、海外に行ってきます」
と申し出たところ、
「へぇ~」
と、とても短い言葉で送りだされた。
もしかするとゴキブリレベルで嫌われているのかもしれない。


そして何といっても、相方の梶原である。
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「明日から、ボクは、どうすればええんやろか?」

と電話口で不安そうにしていたので、昨夜、タクシーで我が家まで来ていただき、
「これで、お米を買うといいよ」
と言って、5千円を渡した。
帰りもタクシーに乗って帰っていったので、往復のタクシー代で5千円以上は消えたハズだ。
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関係者への挨拶も済ませた。
忘れ物は何もない。


今日から大冒険が始まる。
大冒険といえば『天空の城ラピュタ』だ。
主題歌に習って、
「ひときれのパン」と「ナイフ」と「ランプ」を鞄に詰め込んだが、
「ひときれのパン」を残して、あとは空港で取り上げられた。

私は「バルス」と叫んで、膝から崩れ落ちたのであった。

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大分の旅行代理店は春だった。

担当の佐伯さんが、旅の資料をめくりながら懇切丁寧に説明してくださっていたのに、僕の耳には何の音も入ってこない。
佐伯さんが下を向く度、長い髪が前に垂れ、その髪をかき上げると同時に毛先から天使達が放射され、そいつら天使達が僕の目や鼻や耳や口、さらには毛穴という毛穴を全て塞いでいたからだ。
これが恋か。
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ようやく聴力を取り戻した頃、
佐伯さんが「この時期だと台湾もオススメですよ。『千と千尋の神隠し』のモデルとなった街もあります」と提案してくださった。
台湾は今回のアジア旅行の候補地には入れていなかったのだが、よくよく考えてみると、前々から台湾に一番興味があったような気がする。
全ての予定をスッ飛ばして、最初の旅先を台湾に決めた。
彼女の提案を受け入れ、彼女の仕事の評価を上げることで、この悪しき旅行代理店(監獄)から逃がしてやることができるのなら、
僕はイギリスでもイングランドでもどこにでも行ってやる。

もろもろの手続きを済ませた後、別れは突然やってきた。
「またのご利用お願いいたします」
彼女はそう言ったが、僕には分かっていた。
最愛の妹を人質にとった独裁者が店の奥で目を光らせる中、本音が言えるはずなかろう。
彼女は、「私を助けに戻ってきて」と言っているに違いないすぎるのである。

佐伯さんは店の外までお見送りに来てくださったので、僕は思いきって

「この旅が終われば、必ずココに戻ってきます! そして、あなたをこの監獄から連れ出してみせます。その時までどうかご無事で!」

という顔をして、後ろを振り向かずに走った。



せっかく別府まで来たので温泉にでも入って帰ろうとフラフラ歩いていたら、『竹瓦温泉(たけがわらおんせん)』という奇妙な名前の共同浴場に辿りついた。
1879年に創設され、当時は“竹屋根葺き”で、その後改築されたものが“瓦葺き”だったため、『竹瓦温泉』という名前になったそうだ。
使われている素材そのものが自分の名前になっているという珍しいタイプの温泉だ。
なかやまきんに君みたいなノリだろう。
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▲別府駅から徒歩10分
【営業時間】6時半~22時半
【電話】0977-23-1585


それにしても、この重厚な木造建築よ。見事じゃないか。
地球建築史上もっともダサイと言われている「京都駅」は、ここを見習うべきなのである。

「なんで京都の玄関口を、どこにでもあるようなガラス張りのデザインにしてんだバカ!お前、歴史の文脈を読み取る能力と、京都の強みを活かして観光客を増やすという発想がねーのか!超ダセー!」

と誰かが言っていたような気がするので、僕が代わりにここに記しておく。
一生懸命作った人がいるのに、ヒドイことを言う輩がいたもんだ。
悪口は言っちゃいけないと思うのである。


竹瓦温泉の現在の建物は1938年に完成したもので、
2004年6月9日に『登録有形文化財』に登録され、
2009年2月6日には『近代産業遺産』に認定されたのだとW氏が言っていた。
W氏というのは、Wikipediaのことである。

日帰り入浴料が100円と格安であったので、入ってみることにした。

中に入ると、まるで昭和にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。
柱に壁に床に天井に歴史があり、そこかしこに長年愛されてきた名残があった
この内装を見るだけでも100円分の価値は十分すぎるほどある。
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脱衣所と湯船の間には仕切りがなく、
脱衣所から階段を降りた先に洗い場と石造りの湯船があるメゾネットタイプだった。
おかげで天井が高く開放感がある。
湯船に浸かった瞬間の「はぁ~」という声が上に抜けて、心地が良い。
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湯温はかなり熱かったが、常連さんと思しきご老人は目を閉じて長時間浸かっていたので、「熱くないんですか?」と訊いてみたら、「熱くて死にそう」と返ってきた。
竹瓦温泉の湯は熱いのである。
だけど、本当に良い温泉だった。


外に出ると、すっかり夜になっていた。
竹瓦温泉の前には竹瓦小路という道幅2~3メートルの古いアーケード街があった。
入り口に「経済産業省認定『近代化産業遺産』」という紙が貼ってあったので、竹瓦温泉のバーターとして認定されたのかもしれない。
現存する日本最古の木造アーケードだそうだ。
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中に入ってみると、雰囲気のあるスナックがあった。
聞き覚えのある声がしたので、スナックの中を覗いたら、大きなビールジョッキを傾けた彼女がいた。
現代の三蔵法師こと、旅行代理店の佐伯さんである。
しかも、佐伯さんの向かいの席には、あの憎きスケベ独裁者がスケベ面で座っている。
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ところが、
佐伯さんときたら、どこか楽しそうだ。
それどころか、時折、手を握り合っている。
一体どうしたんだい?

イケナイことだとは分かっていたが、スナックのガラス窓にヘバリつき、会話を盗み聞きした。

「え?今年も?」
「当たり前じゃん!記念日は毎年ディズニーランドに行くの!」

“記念日”とは何だろう?
次の瞬間、僕は見つけてしまった。
佐伯さんの左手の薬指に、指輪が光っていたのだ。

――夫婦だったのか。

だから、佐伯さんに対して、あんな態度がとれたわけだ。
そうか、そうだったのか。

「もう少し間を空けた方が、楽しみも増すんじゃない?」
「ダメダメ!毎年行くのぉ~!」

彼女はとても楽しそうだった。とても幸せそうだった。
僕はいてもたってもいられず、スナックの中に飛び込んだ。
ドアの近くにいた店主はヒイと声を上げ、佐伯さんご夫婦は僕の方を見ていたが、
二人の表情までは分からなかった。

目に映るもの全てが滲んでいたのだ。

別府の温泉のように涙が次から次へと湧き出てきて、止め方なんて分からない。
佐伯さんの旦那が「大丈夫ですか?」と声をかけてきたので、その言葉をかき消すように叫んだ。

「愛は靴紐です!
マメに結び直さないと、ほどけてしまいます。
だから、今年も彼女をディズニーランドに連れてってあげてください!」

どうして、こんなことを言ったんだろう?
どうして、ライバルの背中を押してしまったんだろう?

気づいたら店の外に走りだしていた。
そして、目の前にあった坂を、ただひたすら上った。

息は切れ、涙と鼻水がとまらず流れ続け、顔面はビチョビチョになっていた。
涙がこぼれないように空を見上げたが、こぼれた。

叶わぬ恋だったのだ。
ただ、これだけは言える。
彼女に出会って、こうしてツライ想いをしたけれど、
彼女に出会わなかった人生より幸せだ。

僕と出会ってくれてありがとう。
アジア旅行は傷心旅行となる。いいじゃないか、カッコ悪くて。
ここまで落ちれば、あとは上がるだけだ。

山の上から望む別府湾の夜景は綺麗だった。とても。
畜生。なんで綺麗なんだよ。
こんなに綺麗だったら、この夜を忘れることができないじゃないか。

来週から、いよいよ台湾だ。
おもいっきり旅をしよう。そして、おもいっきり笑おう。

だから、今夜はもう少しだけ泣く。

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別府温泉の歴史は古く、奈良時代(710年~794年)に書かれた「豊後国風土記」や「伊予国風土記」に登場しているらしい。
「風土記(ふどき)」というのは、名産物や名所、伝説その他を、地方別に記した書物のことで、まあ、今でいうガイドブックのようなもの。
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大分空港からバスに揺られること約40分、そこから、差し入れ用に買った「ざびえる」(残り2個)を食べ尽くすこと5分。
ここまで来たからには大分の海の幸をいただこうと思い、「大分 寿司」で検索すると、
『亀正くるくる寿し』という回転寿司屋さんがヒット。
調べてみると「別府で一番ウマい」と評判だ。

「じゃらん」の口コミ評価では5点満点中、4.6点と超高得点。ほぼ満点ではないか!
旅行代理店の方との待ち合わせ時刻は迫っていたが、
しかし、
昔から、どこかで言い伝えられているハズの、

「旅行代理店に行くのは、大分旅行を堪能してからであるべしぞも」

という聞いたこともない言葉を無視するわけにはいかないので、『亀正くるくる寿し』に向かった。
先祖連中のことは大事にする男なのである。


『亀正くるくる寿し』はランチタイムでもないのに店内には客が溢れかえっていた。
どうやら大変な人気店だ。
客商売をする身としては、この繁盛っぷりには憧れる。
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こちとら、その昔、
とある劇場で、「お客さんが2人」という世紀末的状況があった。
それでも漫才師は相方の顔を見れば誤魔化しもきくが、
その時、地獄を見たのが「もりやすバンバンビガロ」というピンの大道芸人。

「お客さん二人をステージに上げて、くす玉を割る」というネタがあるのだが、その時も、お客さん2人をステージに上げてしまい、客席で見る人がいなかったのだ。
ステージに3人、客席に0人。
誰がどう見ても、リハーサル風景にしか見えないカオス空間。
くす玉が割れる音が、あそこまで鮮明に聞こえたのは、地球創生以来初めてだろう。
くす玉は、とても乾いた音で割れるのであった。


さて本題、『亀正くるくる寿し』の寿司である。
まずは見た目。
とにかくネタが大きいのなんのって!
それでいて、一皿130円~200円程度で、バチクソにリーズナブル。
一番高いものが、かの有名な「関サバ」「関アジ」のご両人、これも360円。
さらには、魚の出汁が効いていて美味しい味噌汁が「飲み放題」ときた。
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このボリュームで、この値段は絶対マズイに決まっている。
きっとネタもシャリもパサパサに違いない。そうでないと割が合わないからだ。

ところがどっこい、割が合わなかったのである。
ネタの締まり、甘み、そして透明度、全てに非の打ち所がない。
鹿児島産カンパチの歯ごたえよ、太刀魚のプリップリぶりよ!
甘ダレが少し塗られた「うなぎ」は、ふっわふわ。
「中トロの軍艦のせ」に関しては、「よくぞ軍艦に乗ってくれた」と叫んだほどだ。
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ときどき酢が立ち過ぎている酢飯を提供する寿司屋に出くわすことがあるが、
『亀正くるくる寿し』のシャリの酢加減は絶妙すぎるったらありゃしない。これぞ銀シャリ!
ちなみに、お笑いコンビ『銀シャリ』の橋本くんは「おでん君」に似ている。
僕の相方の梶原君は「周富徳」に似ている。

これだけ食べて、2000円以内で収まった。
天国すぎるぞ、『亀正くるくす寿し』。
別府に行かれる際は、是非、お立ち寄りいただきたい。
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▲営業時間11時~21時 
定休日:水曜 ※完全禁煙
行き方:亀の井バス「湯の川口」下車すぐ


腹がパンパンに膨れ上がったので、旅行代理店まで歩いていくことにした。
ここは硫黄の匂いがほのかに香る、湯けむり温泉郷である。

旅行代理店の外で出迎えてくださったのは20代半ばの女性店員さん。
名札には「佐伯」と書いてあった。

佐伯さんは、美しく大きな瞳だけれど、笑うと顔がクシャッと潰れて、それがもう可愛いすぎる。
そよ風が局地的に突然発生しているのだろう。終始、髪がフワフワとなびいていた。
おかげでシャンプーの匂いが漂い、半径10メートルが春になる。

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(旅行代理店の佐伯さん)

その天使のごとき佐伯さんに対し、店の奥から上司と思しき男が「おう、よろしく頼んだ!」と実に偉そうに声をかけた。

その偉そうすぎる感じは、まさに独裁者のそれで、おそらく佐伯さんの最愛の妹を人質にとっているか、
佐伯さんのお母様の病気を治す奇跡の漢方薬を全て牛耳っていて、
それをダシに、佐伯さんに奴隷契約を結ばせたに違いないすぎるのであった。
絶対に性格が悪いに決まっている。
店の奥で犬や老人を蹴っていたような気もする。いや、たしか蹴っていた。

そんな中、佐伯さんは
「はーい!」
と手をあげて、これまたくったくのない笑顔を独裁者に返すもんだから、
僕は胸を締め付けられ、ここから助け出してやりたくなった。

ーーこの感情を「恋」と呼ぶのだろうか? 

いいや、まだ出会ってばかりでパーソナル情報が1ミリもない相手に恋をするはずがない。
その時、昔、スピードワゴン小沢さんが教えてくれた言葉を思い出した。


「恋は『する』ものではなく、『落ちる』ものだよ」


結論、
スピードワゴン小沢さんは今日も気持ち悪いのである。




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