「私はジャパンライフの顧問になってくれとは一度も頼まれたことがないんですね。日本文化協会の代表理事になってくれということを頼まれたわけで」
「週刊文春」記者にそう話すのは、朝日新聞元政治部長で、ジャパンライフ株式会社の顧問を2013年から17年まで務めた橘優氏だ。
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社会部デスクの解説。
「9月18日、マルチ商法によって顧客に嘘の説明をして現金をだまし取ったとして、ジャパンライフの山口隆祥元会長(78)ら幹部14人が警視庁に逮捕された。全国で約1万人の被害者がおり、被害総額は2100億円に上ります」
山口容疑者は2015年の「桜を見る会」に招待されていたことが問題に。
「昨年の臨時国会では、桜を見る会への山口元会長の招待について、安倍前首相の推薦枠だったのではないかと野党が追及した。安倍氏は『個人的関係は一切ない』と述べたが、誰が推薦したかは未だに明らかになっていません」(政治部記者)
昨年4月、家宅捜索を受けた際の山口元会長
その招待に関わったのでは? と囁かれているのが、朝日政治部時代に加藤紘一元官房長官に深く食い込み、政界に知己も多い橘氏だ。ジャパンライフ関係者が明かす。
「橘氏は一般社団法人・日本文化協会の代表理事を務めていますが、協会のスポンサーであり理事も務める山口会長に自分の部屋が欲しいと言い出して、ジャパンライフからカネが出たと聞いている。また、ジャパンライフから(顧問の)報酬も2カ月ごとに120万ほど支払われていた。橘氏の協会での業務といっても、定款の草案作成などで、大した実態はありません」
9月21日、「週刊文春」記者の取材に、橘氏は電話で60分にわたって反論した。
「顧問料5年で約3000万円」に対する回答は?
――桜を見る会について官邸側に働きかけた?
「私は安倍さんをよく存じ上げないし、桜を見る会の招待状については全く関知していません」
――日本文化協会の部屋を欲しいとお願いした?
「部屋が欲しいと申し上げたことはないし、現に私はそこ(文化協会)の部屋を使ったことはほとんどない」
――2カ月に一度、120万円ほど報酬の支払いがあったそうだが。
「額はこれまでもお答えできないと言っているので、私からは申し上げない」
――顧問料が5年で約3000万円だったと言われている。
「そういったことは全て弁護士の方に任せている」
――返金はしない?
「弁護士が言うには、報酬は一切返す必要がないと」
――詐欺の被害者の方々から損害賠償を求めて訴訟を起こされているが?
「私はジャパンライフの業務には一切関わっていないし、山口さんがどういうことをやっていたかも一切関知していない。磁気による治療器を販売していると理解していました。私の顔が(チラシなどに)出ていたからって宣伝効果があったとは思えないっていうのが私の立場です」
ただ、約1万人の被害者の中には虎の子の老後資金を失った人も少なくない。彼らの前でも橘氏は同じ言葉を言えるのだろうか。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年10月1日号)