通常医療との両立困難

「今週、赤に変えました。体制がひっ迫していると思われるということです。入院患者の増加傾向が続いているのに伴い、新型コロナウイルス感染症患者のための医療と通常医療との両立が困難な状況になったと考えます」

東京都のモニタリング会議では、感染状況と医療提供体制を4段階で評価しており、深刻度が最も高い赤から、オレンジ、黄色、緑、としている。

先週までは、感染状況は最も深刻な赤、医療提供体制は上から2番目のオレンジだった。

その評価をするために、感染状況と医療提供体制はそれぞれ4つずつ指標があるが、感染状況は4つとも悪化、医療提供体制4つのうち3つが悪化している。

これらを受け、12月17日に開かれた東京都の新型コロナウイルスのモニタリング会議で、ついに医療提供体制も最も深刻な「体制がひっ迫している」に初めて引き上げられた。

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入院患者が一時2000人超え

今週、入院患者数は一時2000人を超えた上、医療機関は感染者と同様の感染予防対策と個室管理が必要な疑い患者を、都内全域で最大1日200人程度受け入れているという。

感染者数、重症者数の増加に伴い通常医療の病床をコロナ患者に転用し、それに合わせて人員配置も変えなくてはならないことなどから、新型コロナのための医療と通常医療の両立が困難な状況になったという。

「もうやることをやって、運営で結果を見る状況となっています」

10日のモニタリング会議で、“手を尽くした”ことを強調した東京都医師会の猪口正孝副会長。17日は、ため息をつくような口調で「余力の部分は全部使った」と述べた。

東京都医師会 猪口正孝副会長

感染状況は「経験したことのない高い値で推移」

「経験したことのない非常に高い値で推移しております。複数の地域・感染経路でクラスターが頻発しておりまして、感染の拡大は続いております。通常の医療が圧迫される深刻な状況となっております」

すでに警戒レベルが最も深刻、とされている感染状況についても、国立国際医療研究センターの大曲貴夫センター長から非常に厳しい現状と見通しが示された。

感染者数の7日間平均が513人と過去最多となり、前の週と比較した増加比も121%に上がった。

この状況が続くだけで2週間後には1日の感染者数が751人、1カ月後は1100人となり、増加比がさらに上昇すると感染者数が爆発的に増加する、との分析が出された。

国立国際医療研究センター 大曲貴夫センター長

警戒レベル“赤”へ引き上げの背景

もともと、数週間前から「どうにもならない状態になる前に医療提供体制も赤に変えるべき」という声は専門家から上がっていたが、「本当に打つ手がなくなってから赤くすべき」ということで、ギリギリまで踏みとどまっていたという。

関係者によると、引き上げが決まったのは17日午前10時40分、まだ過去最多の822人の感染が確認される前だったという。

「新宿など夜の街で感染拡大していた時は、そこに集団検査をかけて、感染している人を隔離すればおさまっていった。今回はさまざまなところで大規模というより中・小規模のクラスターが起きている。その分、抑え込みが難しい」

別の関係者は今後、感染が収束するまでは時間がかかる、と見ている。

“勝負の3週間”の後のもっと厳しい年末年始。収束への気配は全く見えてこない。

(執筆:フジテレビ都庁担当・小川美那記者)