日本も巻き込まれる「医療用ゴム手袋」調達危機

マレーシアの世界最大手工場で大規模感染

医療現場のあらゆるシーンで活用される医療用ゴム手袋の不足は喫緊の課題だ(写真:RyanKing999/iStock)

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、にわかに深刻さを増しているのが、医療用ゴム手袋の不足だ。世界的に需要が急速に高まっていることから「医療用ゴム手袋争奪戦」が起きており、価格が高騰している。その争奪戦の渦中の舞台は、現在フル回転で稼働している東南アジアのマレーシア、ゴム手袋生産の現場だ。

ゴム手袋メーカーを有するマレーシアでは、外国人労働者が住み込みで暮らす寮などで、新型コロナウイルスの感染が拡大。政府は外国人労働者全員に検査を義務付けた(写真は首都クアラルンプール近郊の建設現場で働く外国人労働者の検査風景、筆者撮影)

世界最大手ゴム手袋メーカー パンデミックで恩恵

医療用ゴム手袋は、指先までしっかりと密着する天然ゴム、合成ゴムのニトリル手袋が必要とされており、天然ゴムの原料となる樹液を採取できるゴムノキが広がる広大なプランテーション(大規模農場)を有する東南アジアが、世界シェアの大半を占めている。なかでも、天然ゴムの原産地であるマレーシアは、ゴム手袋の世界シェアトップに君臨しており、そのシェアは実に約65%に上る。

マレーシアには世界最大手のゴム手袋メーカー、トップ・グローブをはじめとして、ハルタレガ・ホールディングス、スーパーマックス・ コーポレーションなどが業界を牽引しており、コロナ禍での世界的な需要拡大の恩恵を受け、株価は軒並み急上昇している。ブルームバーグでは『テスラ顔負け 年初来で1000%超上げた手袋メーカー』などと報じられるなど、マレーシアの”ローテク銘柄”の年初来株価の急速な高騰は、コロナ禍で一躍恩恵を受けた業界として世界の注目を浴びることとなった。

なかでも、最大手トップ・グローブは大部分の売り上げを海外への輸出が占めており、北米、欧州、アジアなど世界190カ国以上に及んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大以降、トップ・グローブには世界各国から注文が殺到し、12月9日に発表された2020年9~11月期決算では、医療用ゴム手袋の販売が大幅に増加したことで、純利益は前年同期比20倍を超え、23億7577万リンギ(約605億円)。売上高は四半期ベースで過去最高の約47億59万リンギ(約1220億円)と、前年同期比293.6%の上昇を記録している。

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