嗅覚異常、けん怠感、脱毛…コロナの「後遺症」の実態とは? 脱毛は若者にも
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が再拡大していますが、若い世代を中心に「コロナはただの風邪だ」と声高に叫ぶ人たちがいます。確かに、風邪と同程度の軽症で済む人がいるのは事実ですが軽症者でも、回復後数カ月が経過しても、「嗅覚異常」「けん怠感」「脱毛」などの後遺症に悩む人がいるそうです。
新型コロナから回復した人たちの追跡調査を行った、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)研究グループの森岡慎一郎医師に聞きました。
2割以上の人に「脱毛症」
Q.まず、調査結果の概要を教えてください。
森岡さん「調査は7月30日から8月13日に電話で行い、当センターに入院して、2月~6月に退院した63人から回答を得ました。発症からおよそ4カ月たった段階で、『息切れ』『けん怠感』『嗅覚異常』がいずれも10%程度の人にみられました。『脱毛症』も14人で2割以上の人にみられました。14人のうち男性が9人、女性が5人で、新型コロナの発症から2カ月ほどたってから脱毛症状が出たそうです。ほかに、せきや息苦しさを訴える人もいました」
Q. 後遺症は年代を問わず見られるのでしょうか。20代や30代の若い世代でも見られますか。
森岡さん「回答者の平均年齢は48.1歳です。若い人から高齢者まで年齢にはばらつきがありますが、若い人たちにも後遺症は出ていました」
Q.軽症者や無症状者も後遺症が出ているのでしょうか。
森岡さん「軽症者の中にも後遺症はみられました。今回の調査は私たちのセンターに入院した人が対象なので、無症状者は対象になっていません」
Q. 脱毛は若い世代でもあるのでしょうか。また、なぜ、時間がたってから脱毛症になるのでしょうか。
森岡さん「脱毛は比較的若い人でもありました。詳細な年代などは今回は公表していません。脱毛の原因や遅れて発症する理由についてはまだ分かっていません。ただ、ストレス性ではないかという推測はしています。今回、回答を得られたのは63人で回答者数が多くなかったため、詳しい統計解析はできませんでした。年明けから、もっと多くの患者さんに協力していただき、もっと長い期間、研究することを計画しています」
Q.後遺症に対してはどのような治療や対応が取られているのでしょうか。その治療費は感染症そのものと同様、国負担なのでしょうか。それとも自己負担になるのでしょうか。
森岡さん「後遺症の治療については対症療法が基本で、保険診療になっていると思います。従って、原則3割の自己負担がかかります。現在、問題なのは『新型コロナウイルス感染症は後遺症がある』という事実が広く認知されていないことです。けん怠感や嗅覚異常が続いて受診しても『気のせいでしょう』で済まされたり、仕事に行けなくて生活に困ったりしている人がいると思われます。経済的な救済制度も必要になってくるかもしれません」
Q.世の中には「コロナはただの風邪」「インフルエンザではこんなに大騒ぎしない」という声もあります。風邪やインフルエンザの後遺症で脱毛症はあるのでしょうか。
森岡さん「脱毛はエボラ出血熱やデング熱の後遺症としての報告はありますが、風邪やインフルエンザで脱毛の後遺症はありません。『コロナはただの風邪だ』と言っている人たちがいますが決して、ただの風邪ではありません。若い人で、新型コロナ自体は軽症で済んでも、後遺症によって日常生活に支障をきたしたり、脱毛など美容に関わることで悩みが続いたりする人がいることをぜひ知っていただきたいです。
開業医の先生たちにも、新型コロナから回復して退院した後、後遺症で治療が必要な人たちがいることをぜひ知っていただきたいと思います」