■1番印象に残っている“AD金子MIX”

――AD時代で苦労したことは?

1番印象的なのは『大倉くんと高橋くん』でのことです。高橋優さんが関ジャニ∞に「象」という曲を提供されているんですよ。で、優さんがセルフカバーをしたんです。そのときに、ディレクターの加川(峻)さんと作家の石川(昭人)さんから「どういうことかわかるよな? マッシュアップを作ってこい」と。

つまり、1番は優さんで2番は関ジャニが歌うバージョンを作れということなんです。よくある手法なんですが、「わかるよな?」と言われて、「は、は、はい」と。最初に作ったのは簡単に貼りつけたものだったんですけど、それだけで優さんと大倉(忠義)さんが喜んでくれて。

――たまらない経験じゃないですか。

そのあとにまた「つまりどういうことかわかるよな?」と。今度はオケ(歌以外の演奏部分)を削って、ボーカルだけを引き立たせたものをくっつけて、全員で歌っているように聞こえる音源を編集して作ってこいと言われたんです。どうやっていいかわからなかったんですけど、ミキサーさんやいろんな方に相談しながら作っていた時期は、人生で1番と言っていいほど追い詰められました。

ただ、なんとかして作り上げたら、リスナーさんもお2人も喜んでくれたんです。その後、僕がディレクターになって、最終回間近でもそれをオンエアしました。

――リスナーの間では“AD金子MIX”として有名だったようですね。音楽好きとしては大仕事をやりきった感じでしたか?

そうですね。もっと上手く編集できる人もいるんでしょうけど、頑張りました。それが1番印象に残っています。

――金子さんから見た大倉さんと高橋さんはどんな印象ですか?

メチャクチャ自由な人たちでしたね(笑)。音楽が好きだったので、この番組が担当できてよかったです。優さんはもちろんですけど、大倉さんも自分でドラムをやったり、音楽愛が溢れる方だったので。基本的には関ジャニと優さんの曲を流す番組だったんですけど、僕がディレクターになったあとに、ノリでお2人が曲の名前を言ったら、ADがレコード室に走って取りにいくということばっかりやっていた期間があったんですよ。

面白かったんで、コーナーも全部飛ばして、大倉さんと優さんが聴きたい懐かしの懐メロをかけまくったときがあるんです。それをスペシャル版にしようとなったんですけど、お2人はプロの方なんで、「生で歌ってください」とはなかなか言えないんで、そっとギターを置いといたんです。

――それはいい仕事をしましたね(笑)。

そうしたら、2人ともゆずが好きなんで、『嗚呼、青春の日々』を弾き語りで歌ってくれるという展開があって。その回は今までやってきた中で1番手応えがありました。

■金子司
大学卒業後、2011年にエフエム群馬入社。2016年にサウンドマン(現在のミックスゾーン)に転職。現在はニッポン放送『三四郎のANN』(毎週金曜 25:00~)、『ファーストサマーウイカのANN0』(毎週月曜 27:00~)、『Creepy NutsのANN0』(毎週火曜 27:00~)などを担当。また、この秋から『オールナイトニッポン』のチーフディレクターに就任。