「んっ……」
夜半。
博麗霊夢は、静かに、眠りより覚めた。
ひんやりとした畳の感触が、肌に心地よい。
涼やかな夜の大気の中、虫の音色が集いている。
虫たちの歌に混じり、密やかな寝息が聞こえてきた。
見れば、博麗神社の居間の、畳の上では、霧雨魔理沙と、アリス・マーガトロイドの二人が、静かに寝こけていた。
机の上には、空になった酒瓶や、つまみが入っていたであろう小鉢が散乱している。
ちゃんとした寝床など整えている筈も無く、皆、思い思いに、畳の上で横になっていた。
――そういえば……。
思いだす。
確か、今日は、魔理沙たちと集まって、ささやかながら酒盛りのようなことをしたのだった。
どうやら、思いもがけず盛り上がってしまい、皆、酔いつぶれてしまったようだ。
季節柄、放っておいても風邪をひくことはないだろうが……。
――どうしようかしら? 起こしてもいいけど、面倒だし……うん?
ふと、そこで、何かに気付く。
――あれ? あいつは、どこにいったのかしら?
確か、酒盛りに参加していたのは、魔理沙とアリスだけではなかった筈だ。
霊夢は、姿が見えない、もう一人の酒盛りの参加者へと、思いを馳せる。
――帰ったのかしら?
あいつなら、酔い潰れ、眠りこけている霊夢たちを放っておいて、一人、家に帰るのも不思議なことでは、無いようにも思えるが……。
などと考えている霊夢の耳元に、突然、“ふぅ”と息が吹きかけられた。
「(――ふふ。私なら、ここにいるけど?)」
霊夢の耳元で、囁く声。
それは、たった今、霊夢が思いを馳せていた者の声だった。
僅かに振り返ってみると、何時の間にか、自分の隣で、八雲紫が横になっている。
「(なんだ。いたの?)」
自然と、眠っている魔理沙たちを起こさぬよう、小声で、紫へと話しかける。
「(ええ。貴女たちを放って帰るのも忍び無かったし。それに、貴女の寝顔は、見ていて、飽きないから)」
「(……何、言ってるのよ……)」
僅かに頬を染めながら、霊夢が言う。
どうやら、不覚にも眠りこけていた自分の寝顔を、紫に、今の今まで、じっくりと観察されていたらしい。
さすがに、気恥ずかしいものを感じ、思わず、目を逸らした。
「(ふふ。可愛かったわよ?)
「(――五月蠅い……!)」
ふん、と。
紫から、逃げるように顔を背ける。
霊夢の背後で、紫が、“くすくす”と忍び笑った。
子供扱いされているようで、面白くない。
「(あら。怒ったかしら?)」
「(……知らないわよ)」
すねたように、呟く霊夢の身体に、“そっ”と、紫の身体が擦り寄ってきた。
温かな人肌の温もりが、衣服越しにでも伝わる。
「(怒らないの)」
紫の腕が伸びてきて、霊夢の身体を、抱きしめるように包み込んだ。
「(ちょっ……コラッ……!)」
慌てたように、霊夢が、紫をたしなめる。
「(あら? 駄目かしら?)」
紫の手のひらが、“すっ”と、霊夢の身体を撫でた。
触れるか、触れないかの、危うい愛撫。
思わず、霊夢の身体が、“ぴくり”と反応する。
「(んっ……。だ、駄目に決まってるでしょっ!? 何考えてっ……魔理沙たちが、傍にいるのよ……!)」
小声で、怒鳴るという、器用な芸当を見せつつ、霊夢が、紫を睨みつける。
紫は、霊夢の、責める様な眼差しを、どこ吹く風といった様子で、受け流した。
「(あら、怖い。あんなにも激しく、愛し合った仲だと言うのに)」
紫の言葉に、霊夢の頬が、瞬きの内に、朱に染まる。
「(――ちょっ……ま、魔理沙たちに聞かれたら、どうするのよっ!?)」
「(別に、私は困らないけど)」
「(あ、あんたは良くても、私が困るでしょっ!?)」
霊夢が、非難めいた視線を、紫に投げかける。
「(ふふ。そうは言ってもね……私達が身体を重ねたのは、事実だし……)」
「(――ち、ちがっ……! だ、だから……あれは、一時の気の迷いで……!)」
慌てふためく霊夢の言葉に、紫は、悪戯な忍び笑いを漏らす。
「(霊夢? そんなに声を上げると、魔理沙たちが、起きてしまうわよ?)」
紫の言葉に、霊夢が、“ぐっ”と言葉に詰まる。
魔理沙たちの方を注視し――規則正しい寝息が、聞こえてくるのを確認する。
“ほっ”と胸を撫で下ろし、紫のほうへと向き直った。
「(紫。いい? 何度も言うけど、あれは、一時の気の迷いっていうか……雰囲気に流されただけっていうか……とにかく! 私は、もう、あんな事はしないの!)」
霊夢が、頬を羞恥に染めて、紫へと言い放つ。
「(あんな事って?)」
「(だ、だからぁっ!)」
さすがに言葉にするのは気恥ずかしいのか、霊夢が、更に声を潜めて、囁くように、言った。
「(……だから、その……い、いやらしい事……)」
月明かりの元でさえ、そうと判るほどに真っ赤になっている霊夢の姿を見て、紫が、“くすくす”と笑う。
「(いやらしい事……ねぇ。でも、それを最初にしていたのは、貴女じゃないかしら?)
“つっ”と、紫の手のひらが、霊夢の密やかな胸に触れた。
「(――ひゃっ……! あ、あれは、その……!)
「(あれは?)」
口ごもる霊夢を、愉快そうに見つめる紫。
“くっ”と、紫の腕に僅かに力がこもる。
「(んっ……!)」)
霊夢は、思わず、漏れそうになった吐息を、無理矢理にかみ殺した。
「(ふふ。ねぇ、霊夢。どうしたのかしら? あれは……なに?)」
「(ふっ……だ、から……あれも、気の迷いで……)」
「(それにしては、随分と手馴れていたようだったけど)」
紫の吐息が、“ふぅ”と、霊夢の耳にかかる。
“ぞくり”とした、悪寒めいた不可思議な感覚が、霊夢の身体から力を抜けさせる。
「(そんな……ことは……なぃ……)」
「(別に、貴女くらいの年頃なら、当たり前の事なのだけどね。……自慰くらい)」
「(あ、ば、馬鹿っ……!!)」
露骨な言葉に羞恥を呼び起こされたか、霊夢が、信じられないといった瞳で、紫を見据える。
「(あの夜の貴女は……とても、可愛かったけれど……)」
紫の腕が、霊夢の身体を、まさぐっていく。
“しゅっ”と、衣擦れの音が、微かに耳に届く。
「(布団に包まって……頬を、今のように羞恥に染めて……この指で……)」
紫の指先が、霊夢の手の甲を、“つっ”と撫でた。
「(あっ……)」
霊夢の身体が、微かに震える。
「(その身体をまさぐって……吐息を荒げて。ふふ。おぼれているように、もがいていたわ)」
己の恥ずべき姿を、まざまざと思い起こされ、霊夢が、羞恥に唇を噛んだ。
「(あんたに……覗かれてたけどね……! この、変態……!)」
「(まぁ、ひどい。私は、偶然、通りがかっただけだというのに)」
「(偶然通りがかっただけの奴が、あんな事を、するもんですか……!)」
「(ふふ。でも、貴女。抵抗、しなかったわ。いいえ。抵抗も、口ばかり。私に、その純潔を、奪われる時さえ……)」
紫の指先が、“つっ”と、霊夢の緋袴の上から、秘所を撫でた。
「(はっ……!)」
霊夢の背が、伸び、身体が震える。
「(……だ、だって……)」
「(だって?)」
“しゅっ”、“しゅっ”と、指先が、布地を擦る音がする。
その音が往復する度に、霊夢の口から、甘やかな吐息が零れそうになる。
「(んっ、ふぁ……だ、だって……スペルカードを使わなかったら……妖怪には、力では勝てない……)」
「(ふふ。まるで私が、力づくで、貴女を手篭めにしたと……そう言っているように聞こえるわよ?)」
霊夢が、“きっ”と、紫を睨み据える。
「(――そうでしょうっ!? 私、初めてだったのに……あんたが、いきなり……!)」
その目には、うっすらと涙さえ光っていた。
「(可愛い顔が、台無しね)」
「(えっ……んっ!? んーっ!?)」
顔に手を添えられたと思った、次の瞬間。
唇を、奪われた。
それだけでは飽き足らないのか、蛇のように蠢く舌が、唇を押し入って、入ってくる。
「(ふっ……んんー……ッ!!)」
“ちゅっ”、“くちゅっ”と、湿った音が響く。
咄嗟の事に、身体が強張る。
紫の身体を押しのけようと、しゃにむに暴れてみせるが、一見、華奢な紫の身体は、びくともしない。
「(んっ……、ふぁっ……あっ……!!)」
“ぴちゃり”と、粘ついた音がする。
必死に、紫の舌から逃れようとするが、狭い口内に、逃れる場所などあるはずが無い。
舌を、絡めとられる。
“ぬるり”とした感触を口内に感じる度。
舌を、他人の舌で蹂躙される度に。
言いようの無い感覚と共に、目の前がぼやけてくる。
身体から、力が、徐々にではあるが、抜けていく。
抜けていってしまう。
――駄目……抵抗、しないと……また……。
「(ふっ、あっ……)」
紫の蹂躙は、舌だけに留まらない。
舌を絡め合い、口内を愛撫しつつ、その手は、絶えず霊夢の身体をまさぐって行く。
「(はっ……んっ……ん、あぁっ……!)」
“ぴくり”、“ひくり”と、霊夢の身体が、微かに震える。
――この……いい、かげんに……!
持ち上げた手も、疲労しきっているかのように、力が無い。
自分の意に反して、力が、込められない。
「(んっ……ちゅっ……ふ、んっ……!)」
――駄目……だってば……。この……触、るなぁ……! そんな……とこぉ……!
心中で叫ぶも、口に出せぬ言葉が、紫に届くはずも無い。
“ぐらり”と、目の前が揺らぎ、霞んでいく。
溺れているような――。
必死に、目の前を掻き分けても、終わりが見えない水底へと沈んでいくような、危うい感覚。
酸素が足りず、喘いでいるのに、それを、思わず求めてしまいそうになる――そんな、背徳感が、霊夢の思考を、麻酔していく。
思考が麻痺すれば、次は、身体。
既に、形ばかりとなっていた抵抗も、やがて、諦めたかのように、大人しくなっていく。
――あ……なんか……頭が、ぼーっとして……。
――本当……駄目……。しっかり、しないと……また……。
“ぐらり”、“ぐらり”。
既に横になっているというのに、世界が、“ぐるり”、“ぐるり”と回っている。
涙で霞んだ視界の中、見えるのは、紫の、金色の瞳だけ――否。
その金色の瞳に写った、口付けをされている、自分の姿。
――あ……私……だ。でも……。
霊夢は、霞む視界の中、紫の目に映っている、自分の姿を見つめた。
“とろん”と、夢遊病めいて落ちた瞳。
朱に染まった頬。
重ね合わせた唇の隙間から、時折、蠢く、互いの舌の赤が覗いた。
――私……こんな……顔、してた……っけ? こ、んな……。
――いやらしい、顔……。
――あ、でも……この……顔……。
――前に、どこかで……。
麻酔された霊夢の思考に、薄く、白い靄がかかっていく。
霧の奥から、鏡のように、もう一人の霊夢が、霊夢の姿を見つめ返してくる。
――だから、や、めて……。私……そんなんじゃ……。
――違う……私……そんな、顔……して、ない……。
――だから……そんな、目で……見ない、で……。
――そんな……あの時の、顔……。
絡み合う舌の感触と、不安定に揺らぐ世界の中。
身体に、紫の温もりと、指の感触を感じ。
“ぴくり”と、震える身体と、“はぁ”と、喘ぐ吐息の中。
霊夢は、思い出す。
……あれは、何時の事だったか。
寝苦しい、夜だった。
寝つきは良いはずなのだが、その日に限っては、何時までたっても、眠りに身を委ねる事が出来ず、布団の中で、寝返りを繰り返していた。
寝る前に飲んだのが不味かったのだろうか。
身体が、火照って、思うように眠りにつけない。
暗い部屋で、一人。
蒼ざめた月だけが、霊夢を見つめていた。
そんな夜だったからだろう。
魔が差したとでも言うのだろうか。
思いがけず、自分の指が、己の身体をまさぐり初めているのに気付いた。
「んっ……」
指が触れた箇所から、“じわり”と、熱のようなものが湧き上がってくる。
時折、“ぴり”と、電気のようなものが走った。
「ふぁっ……」
最初は、恐る恐る。
徐々に、大胆に。
自分の指が生み出すものが、紛れも無い快感であることに気付き。
霊夢の指は、止まらなくなっていった。
「はっ……んっ……あぁ……」
知らず、吐息が、荒くなっていく。
寝間着の上から、まさぐっていた指が、その内側に潜り込むまで、さして時間は掛からなかった。
指が、秘所へと達したとき。
“ぬるり”と、僅かに粘性のある液体が、滲み出していた。
「ひゃっ……う……っ……あっ……!」
“ぬるぬる”と、その液体を潤滑油に、指を、秘所にそって滑らせると、意図せず、はしたない声が漏れた。
“くちゅくちゅ”と、淫らな水音が響く。
“はぁはぁ”と、窒息しているように、息が乱れる。
空いた手が、膨らみかけの乳房を揉みしだく。
「ふ、んっ……んっ……は、ぁっ……!」
腕は、既に自分のものでないかのように、意思に反して、勝手に動いた。
それは、霊夢が、生まれて初めての、性の快楽に身を委ねた瞬間だった。
霊夢とて、年頃の娘だ。
その行為が、自慰であることは、おぼろげながら知っていた。
はしたない行為だという自覚はある。
それを恥じ入る気持ちも、残っていた。
しかし、それ以上に。
自分の指と、身体が生み出す性の快楽は、甘美だった。
手を、指の動きを止めなければ――そう思う。
だが、同時に。
この、生まれて初めて味わう快楽を、今しばらく味わっていたい――そう思ってしまう。
駄目だと、声を上げる自分の意識は。
堕ちてしまえと、囁く己の意識に飲み込まれた。
「ひゃ、っん……うっ……ふぅぁ……んんっ……!」
腰から下が、“ひくり”と、痙攣したように震えた。
“もぞもぞ”と、布団の中で、霊夢の身体が動く。
“くねくね”と、布団の下で、蛇のように、霊夢の腰が、淫らな動きを見せた。
「は、ぁっ、あっ……!」
“ばさり”と、布団を跳ね除ける。
既に、寝間着ははだけ、身体を覆う役目を、果たしていなかった。
腰帯が解け、胸と、下着とが、月明かりの元に露となる。
胸を弄る手の下で、既に、桜色の突起は、“つん”と、上を向いていた。
指先でつまみ、捏ねると、“びくん”と、身体が震える。
「――っ……!!」
下着は、指の形に盛り上がり、それもまた、淫らに動き続けていた。
蠢く指にあわせ、霊夢の身体が跳ね、震え、そして、甘やかな吐息が零れた。
「う、あぁっ……はぁっ、んっ……ふぁっ、あ……!」
“ぐちゅぐちゅ”と、掻き回すような水音が、褥の空気を震わせている。
だらしなく開かれた口元から、よだれが垂れている事にも、最早、気付くだけの余裕は無かった。
ややあって。
「……ふっ……んんっ……!」
霊夢は、もどかしそうに、下着に手をかけた。
下着を、風呂に入る時のように脱ごうとして――そこで、一瞬の逡巡があった。
だが――。
「――ッ……!」
一度、身体についた欲望の火を、押しとどめる術を、まだ経験も浅い少女は、知らなかった。
火は、“じりじり”と燃え盛り、霊夢の理性を、焼け爛れさせていく。
なんという、はしたない行為をしようとしているのか。
正気では無いと、わずかに残った理性が、警鐘を鳴らす。
止めろと、頭のどこかで、その行為を押しとどめようと指令が下される。
しかし。
身体が、熱い。
息が、荒い。
胸が、張り詰めている。
秘所が――己の身体の、はしたない部分が、はやく、はやくと、攻め立ててくる。
“ゆるゆる”と、蜜が、絶え間なく溢れている。
――触り……たい。
――触り、たい。
――触りたい。
――触りたい!
先まで味わっていた快楽を、存分に、思うままに、享受したい。
その果てに、何が待っているのかを、知りたい――見てみたい。
強烈に――狂おしいほどに。
味わいたい。
――ああ……もう、駄目……我慢、できない……!
霊夢は、意を決して……誘惑に破れ、下着を下ろす。
布地が、肌から離れる瞬間。
“ぴちゃり”と、音がした。
おろした下着は、粗相をしたかのように濡れそぼっていた。
「はっ……あぁっ……!」
うつ伏せになり、尻を、高く突き上げる。
開かれた秘唇から、“つぅ”と、蜜が糸を引いた。
躊躇わず、指を、秘唇へと運び、まさぐる。
下着という、指の動きを制限するものが無くなった分、霊夢の指は、激しく、貪欲に動いた。
“にちゃにちゅっ”と、霊夢の指が、蜜を垂らす秘唇を掻き回すたび、濡れた音が、褥に満ちる。
「は、ぁ……はぁーっ、はぁー……ん、んっ……!」
“とろとろ”と、溢れる蜜が、更に指の滑りを加速させていく。
意図せず、突き上げられた尻が、誘蛾灯めいて“ゆらゆら”と揺れた。
「ふぁ……はっ……んんーっ……あ、あ、あ゛……!」
指の動きが、徐々に、激しくなっていく。
水音が、大きくなっていく。
視界が、徐々に白く曇っていく。
背が、“ぴん”と伸びていく。
――はっ……な、何……? 何かが……何かがぁ……ッ!?
“ぐぅっ”と、足の指先までが伸び、布団の皺が引き伸ばされる。
未知のものを畏れる幼子のように、“ぎゅう”と、布団を強く掴んだ。
手のひらに、爪が食い込むほどの力。
――はっ……ひゃうっ……! 来る……何か、がぁ……! 私……この、ままだとぉ……ッ!
――駄目……これ、怖いぃ……! でも……んっ、ふぁっ……指……とま、らなぃ……ッ!
指は、いよいよ、触れた事のない淫核をも捏ねだしていた。
「――ひッ……!?」
霊夢の身体が、限界にまで強張る。
その時が訪れつつある事を、女の本能とでもいうもので、察していた。
――はっ……く、来る……来ちゃ、うぅ……!!
指が早まる。
水音が激しくなる。
もう、己を省みる余裕さえ失う。
昇り詰める。
いまだかつて、経験したことの無い、その頂きへ。
「ふぁ……あ、あ、あ゛……んーっ、ふぁ……ひっ……あ、も、……私……!!」
――駄目……駄目ぇ……!
身体が、“ぐん”と、空に引っ張りあげられる感覚。
同時に、意識を、手放しそうになる。
腰から下の感覚が、既に、無い。
強張った身体は、やがて、緊張の頂きを越え、弛緩の一瞬を求めるようになる。
快楽が高まる。
高まって、高まって、高まって――その全てが、蓄積され、限界を迎えようとしている。
指は、快楽を汲み上げる為の桶と化している。
身体は、汲み上げたそれを溜める為の貯水池だ。
もう、汲み上げられた水は、限界にまで溜め込まれている。
これ以上は、入らない。
溢れてしまう。
溢れる。
溢れる。
溢れる――あと、少し、ほんの僅かで。
――もう……わたし……私っ……!
――あっ……く……い……いっ、きそっ……あっ、はっ、だ、めぇ……!!
霊夢が、その頂点を極めるかと思った刹那。
まるで、その時を待ち望んでいたかの如く。
意識に、“すぅっ”と、水のように堕ち、しみ込んで来る。
妖艶な女の声が、響き渡った。
「――あら? もう、イってしまうの?」
「――え?」
その声に、霊夢が、硬くつぶった目を、僅かに開いた。
……それが、空言ならば、どれ程に良かったことだろう。
月明かりに照らされた、褥に開かれた、空間の亀裂。
それに、優雅に身を委ねて、女が一人、佇んでいた。
紫の洋装と、黄金の髪が、靡いている。
――だ、れ……?
一瞬、それが、誰であるかも判らなかった。
ただ、女の、黄金の瞳が、霊夢の姿を見据えていた。
女の瞳の中。
浅ましい、雌の姿が写っている。
――わ、たし……?
だらしなく開かれた口。
垂れた涎。
つやめく舌。
“とろり”と、夢遊病めいて垂れた瞳。
振り乱した髪が、上気した肌に、汗で、“べったり”と張り付いている。
毎日、鏡のなかで対面する己とは違う、快楽の虜となった雌の姿が、瞳の鏡に映っていた。
――あ、わたし……なんて……いやらしい――。
……それが、とどめとなった。
最早、誰かに見られていると知っても、指の動きを、自慰を止めることが出来ず。
今まで知らなかった、雌の顔を見せる、もう一人の自分に見つめられて。
霊夢は――。
――あ……堕ちる――。
「はっ――ふぁっ……あぁぁぁぁぁっ……ッ!!」
月に吼える、獣のような嬌声を上げて。
生まれて初めての、絶頂をむかえた。
「ひゃっ……ぁ……あぅぅぅぅぅ……!」
伸びきった身体から、不意に、糸の切れた人形のように、力が抜ける。
“とさり”と、布団の上に崩れ落ちた。
「はぁー……はぁー……はぁー……」
必死に酸素を求め、呼吸する。
胡乱な頭で、暗がりへと目を向けた。
そこには、変わらず、金色の瞳と髪を持った、女の姿があった。
“すっ”と、女が、暗がりより、横たわる霊夢へと近付いてくる。
「ゆ……かり……?」
女――八雲紫は、霊夢の傍らに跪いた。
「ふふ。気持ちよかった?」
「あ……」
呆然とする頭で、己の、あられもない姿を、この妖怪に見られていたのだと悟った。
はだけた寝巻きを直すか、或いは、布団を、頭から被ってしまいたかった。
だが、初めて、肉体の快楽の頂上を極めた身体は、いまだ、力が抜けたままで、、思うように動いてはくれなかった。
「……か、えって……」
辛うじて、それだけを口にした。
「嫌よ」
紫は、霊夢の懇願を、むべもなく断った。
紫の指が、霊夢の背を、“つぅっ”っと撫でた。
「ひゃぅっ……!?」
霊夢の口から、甘い悲鳴が漏れる。
「あら、敏感ね。これでは、あれほどまでに乱れてしまうのも、仕方がないことなのかしら?」
「あっ……ゆか、りぃ……や、やめ……!」
「だから、嫌よ」
紫の指が、更に霊夢の身体をなぞる。
「ふぁっ……なんで……どう、してぇ……?」
涙さえ浮かべた霊夢の問いに、紫は、“ちろり”と、赤い舌で唇を湿らせ、答えた。
「ふふ。最初は、見ているだけの心算だったのだけど。気が変わったわ。貴女が、余りにも可愛く、はしたないものだから」
紫の舌が、霊夢の耳をなぞった。
「……な、何をして……」
「――何をして……ではなく。これから、何をされるのか、心配した方がいいわ。霊夢。知っているでしょう? ……妖怪は、人間を、食べてしまうものなのよ」
己を見下ろしてくる紫の瞳を、霊夢は、初めて怖いと思った。
「食べ……ないで……」
それは、霊夢が、紫に対して、初めて行った、心からの懇願だった。
それが、余りにもか弱く、美しいものであったから。
「博麗の巫女とは、思えぬ言葉ね。ふふ……でも、残念。その言葉で。更に火がついてしまいました。一度、飢えた私は――」
紫の腕が、霊夢の顎に添えられる。
無理矢理とも言える強引さで持って、霊夢の面を、紫の方へと向けた。
紫の唇が、霊夢のそれに近付いていく。
――食べられる。
そう、思った。
怖いと思うのに、身体も意識も、いまだ麻酔されたままで、動かない。
……だと、言うのに。
――どうして、私は……。
紫の瞳に写った、自分は。
――こんな……いやらしい顔を、しているんだろう? こんな、嬉しそうな――。
「――誰よりも、貪欲なの。だから、頂戴ね。霊夢。貴女を――」
紫の唇が、霊夢の唇を、奪った。
それが、霊夢の、生まれて初めての口付けだった。
……後の事は、詳しくは覚えていない。
気付いたときには、朝になっていた。
行為の最中で、気を失ってしまったのだろうと思う。
抵抗も出来ず、褥で、弄ばれたのだという事は、おぼろげながら理解できた。
紫は、優しかったようにも思えるし、こちらの事など、何も考えずに激しく求められたようにも思う。
他人の指が、初めて、自分の秘所に触れた、鮮烈な感覚だけが、焼きついていた。
嵐の中、翻弄される小船のように。
気を失うまで、何度も、幾度と無く、数え切れぬほどに、紫の手で上り詰めさせられたようにも思う。
夢では無かったのか、とさえ思った。
一夜限りの、淫らな夢。
しかし。
目覚めた時、行為の最中には気付かなかった、下腹部に感じる鈍い痛みと、布団にのこった血の跡とが、それは夢でなく、現実なのだと伝えていた。
恐る恐る、秘所を指でなぞって見ると、忘れようもない、肉体の快楽を、再び味わうことが出来た。
そして、霊夢は。
またも、狂ったように、自慰をした。
それから、もう、幾度と無く。
時折、気紛れのようにやってくる紫の求めを、拒む術を見つけられず。
霊夢は、紫に抱かれた。
思いを交わしたわけでもない、ただ、身体だけの繋がり。
そして、今夜も――。
“ぴちゃぴちゃ”と、水音が耳に残響する。
それが、水音ではなく、舌を絡めあう音だと、判別するだけの思考もない。
紫は、薄く微笑んでいる。
その笑みは、果たして何に向けられたものだろう。
もう、抵抗する気力さえ麻酔された、霊夢に向けられたものだろうか。
それとも――。
……霊夢は、気付いていない。
紫が、とうに舌の動きを止めている事に。
今、絡み合う音を立てているのは、紛れも無く、霊夢の舌だということに。
“とさり”と、音を立てて。
霊夢の腕が、地に落ちた。
紫は、そこで、霊夢の唇に、重ね合わせていた、己の唇を離す。
くねり、絡み合っていた舌が離れる。
「(は、ぁ……)」
「(ふふ。素直になったかしら?)」
紫の腕が、霊夢を抱く。
霊夢は、力の抜けた身体で、“ふるふる”と首を振った。
「(紫……お願いだから……。あの……して、いいから……。だから……)」
霊夢は、“ちらり”と、自分に背を向けて眠りこけている、魔理沙と、アリスの姿を見た。
「(だから?)」
紫が、“ふぅ”と、霊夢の耳に息を吹きかける。
「(あ……)」
霊夢の身体が、震えた。
「(お願い……だから。違う場所で……二人に見つかったら……)」
「(ふふ。先もいったけど、私は、困らないわ。どうしてもばれるのが嫌なら……貴女が、声を我慢すればいいだけでしょう?)」
紫の腕が、霊夢の服の内側へともぐりこむ。
そのまま、ひそやかな乳房を揉んだ。
「(あっ……!)」
霊夢が、思わず、紫の服を掴む。
「(そう。その調子。ふふ。じゃあ、最後まで頑張ってね)」
「(そんな……。ね? ほんとに、止めて……)」
霊夢の懇願を、やはり紫は、何時ものように、笑顔で踏み躙る。
「(駄目よ。言ったでしょう? 私は、貪欲だと)」
「(んっ、ふぅぁ……っ……)」
「(だから――そこの二人に見つかるのが嫌なら、我慢しなさいな)」
「(はっ……ぁ……で、もぉ……!)」
「「(大丈夫よ。滅多なことでは、起きないから。貴女さえ我慢していれば……ね)」
紫の指が、袴の内側にまでもぐりこんで来る。
そのまま、下着の上から、霊夢の秘裂をなぞりあげた。
「(っ……!!)」
“ちゅくり”と、霊夢の耳には、たしかに、淫らな水音が響いた。
「(何時もより、濡れているわね。傍に、魔理沙たちがいるからかしら?)」
「(そんな……こと……あるわけ……っ……!)」
「(では、これは何かしらね? ふふ。口では否定しても――やはり、貴女の身体は、素直だわ。そういう所……とても、好きよ)」
耳もとで囁かれ、霊夢の身体が、跳ねるように、わなないた。
「(あ、わたしは……はっ……! あ、んたの……そういう、ところが……嫌い、なのよ……っ……!)」
「(じゃあ……抵抗して見せて頂戴)」
「(んっ……くぅぅ……ふぁっ……ん、んー、っ……!)」
霊夢は、必死に、己の服の袖を噛み、声を、押し殺した。
「(ほら。少しは、抵抗しないと。今から、そんなでは、とても最後まで、耐えられないわよ?)」
紫の囁きが、必要以上に大きく、耳に届く。
反論の一つでもしてやりたいが、今、口を開けば、淫らな声を上げてしまうのだと、判っている。
必死に、紫の指が生み出す快楽に、身を強張らせ、耐えている。
「(……っ……っ……ふぁっ……んっ……!)」
薄闇の中。
静かに、魔理沙とアリスの寝息に混じり、“しゅるり”という衣擦れの音と、“くちゅり”と、粘ついた水音が響いていた。
霊夢は、霞む視界の中、祈りをこめて、寝入っている二人の姿へと目をやった。
――お願い……目を、覚まさないで……!
「(本当は……見て欲しいのでは無い? あさましい、自分の姿を……)」
己の耳をなぞる、唾液を纏った、紫の舌の温もり。
自分の流した愛液を纏う、紫の指の温もり。
心に染み入ってくる、紫の言葉。
身体を焼く快楽に、必死に抗いながら、心の中で、溺れそうになる自分の意識を、懸命に繋ぎとめた。
――そんな……こと、ない……ッ! だから……やめて、よ……。ああ、もう……! そんなとこ、触らないでぇ……!
紫は、快楽にもだえる霊夢の姿を、愉しんでいるかのように、薄い笑みを浮かべる。
霊夢の身体を、弄び、花開かせていく。
「(はっ……っ……ん、ふぅ……っ……んっ……!)」
霊夢が、身体をわななかせ、声を上げそうになる度に、紫は、指の動きを緩めていく。
燻る火種で、“じりじり”と焦がしていくよう。
霊夢の理性を、何時も以上に、時間をかけ、溶かしていく。
――何時もより……ゆっくりと、なんて……。こい、つ……。
“きっ”と睨みつけても、紫は、そしらぬ顔で、微笑むばかり。
――絶対に……声なんか……上げて、やらない……から……。
霊夢は目を硬く瞑り、このまま、何事もなく時が過ぎてくれることを、神に祈った。
そんな霊夢の祈りを、嘲笑うかのように、紫は、霊夢の首筋に舌を這わせた。
“つぷり”と、紫の舌先が、霊夢の肌をなぞって行く。
“ぬらぬら”と、蛞蝓が這ったかのように、霊夢の肌に、唾液のあとが刻まれる。
「(っ……ッ!)」
霊夢の首筋から、肩。
そして、鎖骨へかけて。
紫の舌が、滑っていく。
“つっ”……“ちゅっ”……“ちゅぷり”。
「(んっ……んぅ……っ)」
肌の上で舌を滑らせながら、紫の手は、霊夢の纏う巫女の装いを、剥ぎ取りにかかる。
紫の手が、己の服にかけられたのを察し、さすがに、霊夢が、紫の手を掴んだ。
「(ちょっ……何を、する気よ……!)」
「(ふふ。今更、問うまでも無いでしょうに)」
紫は、“ちらり”と、魔理沙たちを見やる。
「(この状況で服を着たまま交わるだなんて、無粋もいいとこだわ)」
紫の言葉に、霊夢が、血相を変える。
「(じょ、冗談……でしょう……? だって――)」
霊夢が、何かを恐れるような瞳で、魔理沙たちを見た。
もし、紫に服を剥ぎ取られ――その姿を、魔理沙たちに目撃されたとしたら。
言い訳など、しようも無い。
そんな事になったら……。
「(……そ、それだけは止めて! ね、紫。このままでも――)」
「(――駄目よ。私が、見たいの。月明かりの下で。貴女の、その可愛らしい肢体をね)」
“ぐっ”と、紫の手が、強く、霊夢の乳房を掴んだ。
「(――痛ぅ……ッ!)」
かすかに、霊夢の面が苦痛に歪む。
紫は、気にもとめず、霊夢のささやかな乳房を、揉みしだいた。
「(ふ、ぅ……ん……)」
「(――今更、何を嫌がるのかしら。貴女は、もう、私の前に全てを曝け出したはずでしょう? この胸も――)」
乱暴とも言える手つきで、霊夢の乳房が、幾度も形を変えられる。
「(……あっ……やっ、ぁ……!)」
「(私の指で摘まれ……舌でなぞられて。はしたなく屹立する、この乳首も――)」
紫の指が、服の上から、霊夢の乳首を摘み、捏ね上げる。
“ざらり”とした服の感触が、紫の指の圧力と共に、擦れるような刺激を生み出す。
「(ふぁっ……っ……あっ……!)」
「(たおやかな四肢も――)」
“すっ”と、紫の唇が、霊夢の細い腕をとり、その肌に口付けをする。
「(もちろん……ここも……)」
「(あっ……!?)」
紫の指が、霊夢の袴の内側へと、再び、潜り込んでいく。
「(そう……はしたなく、甘い蜜を垂らす、この花弁も――)」
「(くっ、ふっ……ひゃっ……ぅ……ッ!)」
「(全て――私の前に晒したでしょう? 全て――私の指と、唇が、触れたでしょう?)」
「(ふぁっ……そ、れはぁ……! あんた、がぁ……!)」
「(――無理矢理に? ふふ。でも――最初に、淫らな一人遊びに耽っていたのは、誰かしら? 声を荒げて――私を貪欲にさせてしまったのは、誰かしら?)」
「(……ッ――!)」
「(霊夢――貴女でしょう?)」
「(あ、はっ……ぁっ……!)」
紫は、霊夢への愛撫を止め、耳元で、囁いた。
「(霊夢。服を、脱ぎなさい)」
静かに、けれども強く、拒否を許さぬ口調で。
「(……でも……魔理沙たちが……)」
「(――霊夢)」
紫の言葉に、霊夢の身体が、“びくり”と震える。
「(脱ぎなさい。さもなくば――)
紫の、黄金の瞳に、剣呑な色が宿された。
「(その服を、力づくで引き裂いて――無茶苦茶に、犯してあげるわ。その時は……ふふ。貴女の懸念が、現実のものになると思いなさいね)」
霊夢は、幾度となく視線を、紫と、魔理沙の間とで彷徨わせた。
ややあって。
頬を羞恥に染め、かすれた様な声で、紫に、懇願する。
「(場所……変わって……)」
「(駄目よ。寝ている、あの娘たちの傍で無いと――)」
「(あの……そうじゃ、なくて……)」
「(……?)」
紫が、不思議そうな顔をする。
「(ほら……この位置だと……魔理沙たちが、寝返りをうったりしたら……見えちゃうから。私と、あんたの今の位置……変わってくれるだけで、いいから……)」
紫は、霊夢の背後へと目を向ける。
丁度、霊夢の背後で、霊夢に背を向けるようにして、魔理沙が寝入っている。
魔理沙の身体の向こうで、それと向かい合うようにして、横たわるアリスの姿があった。
二人の、規則正しい寝息が聞こえてくる。
その表情は、ここからは確認できない。
確かに、この位置関係で、服を脱いだりすれば。
何かの拍子に、二人が目を覚まし、寝返りをうっただけで、霊夢の痴態が、露となってしまうだろう。
「(背、あんたの方が高いし……位置変わったら、私の姿、あんたの身体に隠されて、二人からは丁度、死角になるから。それなら、もしもの時も、まだ安心できるかな……って……)」
存外、可愛らしい霊夢の嘆願に、紫は、“くすり”と笑う。
「(位置を変えれば……自分から、服を脱ぐ、と?)」
紫の、意地悪な問いに、霊夢は、恥ずかしそうに、“こくり”と頷く。
「(ふふ。そうね……どうしようかしら?)」
「(あの……お願い……。それだけで、いいから……)」
霊夢としては、それが、最大限の譲歩なのだろう。
今にも泣きそうになっている霊夢の顔を、満足そうに見つめ、紫は、優しげな笑みを浮かべた。
「(もし、駄目といったら?)」
「(その時は――舌を噛んで、死んでやるわよ……)」
「(あら。それは、困るわね)」
紫は、“くすり”と笑う。
「(じゃあ……そうね。今から言う、二つの条件を飲むならば、変わってあげましょう)」
「(二つ……?)」
「(ええ。そんな不安そうな顔をしなくても。簡単なことよ)」
そのように言われても、安心など出来るはずもなく、霊夢は、無言で、紫の言葉の先を促した。
「(一つ。今から、私の質問には、正直に答えること。嘘、偽りなく。どんな恥ずかしい質問にも……ね)」
「(……正直、に……)」
「(そう。出来るかしら?)」
霊夢は、紫を見つめ、しばし、逡巡する。
ややあって、“こくり”と、無言で、首を縦に振った。
「(ふふ。じゃあ……そうね……)」
紫は、悪戯な笑みを浮かべ、霊夢の言葉の真偽を確かめる問いを放つ。
「(私が、先まで触れていた、貴女の身体……今は、どのようになっているのかしら?)」
紫の問いに、霊夢の頬が、瞬く間に、羞恥に染まる。
「(……この、変態……!)」
恨めしげに、それだけを言った。
「(ふふ。ちゃんと、答えてくれないとね。ああ、言うまでもないけど――黙秘権は、認めないわよ。さて。それでは。その、可愛らしい胸は?)」
「(……な、なんか……熱くなってる……感じ……)」
「(――先まで硬かった、その乳首は?)」
「(……まだ……硬い……まま……)」
「(では……私の指に、淫らな蜜を絡ませてきた、その、いやらしい下の唇は?)」
霊夢は、とうとう、紫の姿をまともに見ることさえ適わなくなり、俯いた。
「(……まだ……濡れてる……)」
紫は、満足そうに頷いた。
「(では――霊夢。私のこと……嫌いになったかしら?)」
霊夢は、静かに、紫を睨みつけた。
「(……決まっているわよ)」
静かに、告げる。
「(本当に、嫌いになれるなら……どんなに、気が楽でしょうね……)」
「(ふふ。じゃあ、霊夢。激しくして欲しい? それとも、優しいほうがいい?)」
今更、その問いの意味を、判らぬはずが無い。
霊夢は、“ぽつり”と呟くように、紫の問いに答えた。
「(優しく……して欲しい……)」
「(判ったわ。じゃあ――激しくね)」
何が、じゃあ、なのか。
当然のように言い放つ紫を、“じろり”と、恨めしそうに睨みつけ、霊夢は、言った。
「(あんた……やっぱり、意地悪だわ)」
「(ふふ……)」
紫は、静かに微笑む。
「(それで。あと一個は何よ?)」
自棄になったかのように言う霊夢を見て、紫が、もう一つの条件を提示する。
「(口付けを、してちょうだい。私からでなく、貴女から。私の唇に。今の、この位置のまま。もし、この瞬間、寝ている二人が目を覚ましたとしても――止めることなく、見せ付ける。そんな、口付けを)」
「(……)」
霊夢は、静かに、紫の頬に、己の手を添えた。
ゆっくりと、唇を、近づけていく。
触れ合う瞬間、動きを止めた。
「(――どれぐらいの間、すればいいのかしら?)」
「(無粋なことを聞くわね。貴女の中の、私への想いだけ、よ)」
「(――怒りと、恨みとがあるけれど?)」
「(その二つは、どう違うのかしら?)」
「(怒りの口付けは、激しいわ。恨みの口付けは、深いわよ)」
「(では、愛情の、優しい口付けで――)」
「(――怒りと恨みに比べたら、全然、少ないけれど)」
「(ふふ。少ないということは――零では、無いのね)」
「(ふん、だ)」
霊夢は、強引に、紫の唇と、己の唇を重ね合わせた。
ともすれば、互いの歯が、ぶつかりかねない強さで。
すぐさま、唇を離す。
「(あら? もう、終わりかしら? それに、全然、優しくないわね)」
「(――あんたのリクエストには、答えてやらない)」
「(それは、どうして?)」
霊夢は、再び、紫の唇に、自らのそれを近づけた。
「(私の愛情の口付けは――優しくないの。怒りよりも激しくて、恨みよりも、深いのよ)」
有無を言わさず、口付けをし、舌を絡ませた。
その口付けは、窒息するのではないかと思うほどに、激しく、深く――そして、長かった。
紫と、位置を変えた。
背の高い、紫の身体が覆いとなって。
霊夢からは、魔理沙たちの姿が見えなくなる。
それは、向こうも同じこと。
紫もまた、霊夢の方を見ているために、魔理沙たちには、背を向けている格好になる。
紫が、静かに、目で促してきた。
少しばかりの躊躇いはあったが――抵抗しても無駄だということは、経験から判っていたので、諦めたように、衣服に手をかけた。
あの日。
紫に、純潔を散らされてから、もう幾度、彼女の前に裸身を晒したかしれない。
それと同じ数だけ、紫と肌を重ねた。
同じ数だけ、弄ばれ――その悉くが、口では拒絶しながらも、最後まで抗うことは出来ず、身体を委ねた。
同じ数だけ――紫の指で、或いは舌で、時に、もっと、いやらしい部分で。
肉体の悦び、その頂へと押し上げられた。
きっと、これからも。
……幾度、繰り返しても、気恥ずかしさが薄れる事はない。
ゆっくりと、衣服を脱いでいく。
「(……そんな、じろじろ見ないでよ……)」
「(そう言われると、じっくりと見たくなるわね)」
「(……馬鹿……)」
“しゅるり”という衣擦れの音が、微かに響き、霊夢の装いが、解かれていく。
月明かりの下。
ほんのりと上気した肌が、露になる。
さらしを解くと、密やかに息づく胸と、その頂きで、“つん”と上を向いた、桜色の突起が現れた。
「(綺麗だわ)」
「(うる……さい……)」
霊夢は、頬を朱に染め、空いた腕で、胸を覆い隠そうとした。
しかし。
「(――あら、駄目よ。私の前で、隠すことは許さないわ)」
紫の手に、腕を掴まれ、阻まれる。
「(あっ……)」
拘束され、身動きがとれない。
「(どんな気持ちかしら?)」
「(……顔から、火を噴きそうなくらい、恥ずかしい……)」
「(ふふ。それだけ?)」
「(……)」
霊夢は無言で、紫から目を逸らす。
「(――霊夢?)」
ややあって、霊夢は、掠れるような声で、言った。
「(……少し、だけ……)」
「(少しだけ――なにかしら?)」
「(……期待、してないことも、ない……)」
「(何を?)」
「(……これから……あんたが……私に、する事……)」
紫は、薄く笑うと、舌を、霊夢の乳房に這わせた。
「(はっ……!)」
“つぷっ”と、上を向く乳首を、口に含む。
赤子のように、弱い力で、吸った。
「(ひゃっ……んっ……ふぁ……!)」
舌先で、幾度と無く舐る。
桜色の蕾が、“ぬらぬら”とした唾液に塗れ、妖しく光る。
「(ふふ。いやらしい娘ね)」
紫の言葉に、霊夢は、恥ずかしそうに、目を彷徨わせる。
「(だって……あんたが……)」
“もぞもぞ”と、腿を擦り合わせるような仕草。
下着は、既に、その下に在る秘所の形をなぞるように、濡れそぼり、肌に張り付いている。
「(魔理沙たちの横で……あんな風に……触ったり、するから……)」
「(――何時もより、感じてしまった?)」
「(……ん……)」
恥じ入るように、微かに頷く。
「(それに……)」
「(それに?)」
「(……あんたが……激しく、とか言うから……)」
霊夢の言葉に、紫が、“くすり”と笑う。
「(そう。期待させてしまったのなら……答えて、あげないとね)」
紫の手が、濡れそぼった、霊夢の下着へとかけられる。
「(あっ……)」
「(こちらは、私が、脱がしてあげるわ)」
“するり”と、立てた指に、下着を引っ掛け、淀みない手つきで、それをおろしていく。
「(――ッ!)」
己の、はしたない部分を隠す最後の布地が取り払われる。
霊夢は、目を硬く瞑って、その瞬間を迎えた。
“とろり”と、蜜を溢れさせ、湯気が立つのではないかと思うほどに、熱を持っていた秘所が。
紫の手で、暴かれる。
紫の指が、もう、隠すものも遮るものもない、向き出しの、霊夢の泉へとふれる。
“くちぃっ……”と、一際大きな水音が、褥の夜気を震わせた。
「(ひゃっ――あっ……ふ、ぅ……ッ!)」
紫の指は、楽器の鍵盤を叩くように、優雅に振るわれる。
その指に込められた力は、霊夢の秘所から、更に蜜を掬い上げるのには、十分に過ぎた。
「(はっ……駄目、ぇ……つよ、過ぎ……あっ、ぅ……ッ!)」
“ぐちゅり”、“くちり”、“ちゅぷり”……。
「(ひゃっ……くっ……う、ぁ、ぁ、はっ……ふぁ、あ……!)」
紫の指は、すでに、一流の奏者のそれだ。
叩くたびに、なぞる度に、霊夢という楽器から、淫らな音を、吐息を――声を引き出していく。
「(はしたない音……そんなに水音を立ててしまっては、折角、声を抑えても、二人の耳に届いてしまうわよ?)」
「(――ッ!?」)
霊夢が、咄嗟に、唇を噛む。
しかし。
「(口を噤んでも、仕方ないでしょう? この――)」
“ぬるり”と、濡れた指が、秘豆を摘む。
「(――ぁ……っ!!)」
霊夢の身体が、水を叩く、若鮎のように跳ねた。
「(溢れる、いやらしい蜜を、とめないと)」
「(あっ……ふぁ……ん、く、ぅあ……そんなの……自分の意思で、とめられるわけ、がぁ……!)」
「(ふふ。そうね。とまらないわね。だから――)」
霊夢の身体が、“くねくね”と、別の生き物のように踊っている。
「(もっと……聞かせてちょうだい。貴女の声――)」
「(はっ……! ふっ、あっ……ぁ……ッ!!」)
「(貴女の、蜜の音――)」
“くちゅり”、“くちゅ”、“ちゅっ”、“ぬちゃり”……。
「(見せてちょうだい。貴女の、あさましい姿――)」
「(ひゃっ……ひっ……ん、ぁ……ゆ、かりぃ……!)」
「(ふふ。霊夢。腰が……動いているわ。どうしたのかしら?)」
「(あっ……いや……そんな……。違う……のぉ……! か、勝手にぃ……! ふぁあ……!)」
紫に弄ばれ、霊夢の腰から下は、既に、霊夢自身の意思からは離れていた。
“ゆらゆら”と、水に揺蕩うように、妖しく踊る。
“ひくひく”と、蜜を垂れ流す秘裂が、誘うように蠢いていた。
「(ふっ……あっ……ひゃっ、うぅ……!)」
「(乱れる貴女の姿は、やはり、可愛らしいわね。藍は、どうやっても可愛いという風ではないし……)」
「(あっ……こ、このぉ……!)」
「(あら。どうかした?)」
「(こ、こんな……時にぃ……他の……っ……はっ、女の、話を……する、なぁ……!)」
「(あら。妬いてくれているのかしら?)」
「(知らない……わよ……!)」
「(霊夢? 正直に……それが、約束よ?)」
紫の言葉に、霊夢は、“ぐっ”と、一瞬だけ言葉に詰まる。
「(んっ……あんたが、他の……奴のこと話してると……っ……もやもや、するだけ……! それ、だけよ……!)」
「(そう。じゃあ、止めるわ。ごめんなさいね。今は、貴女だけ――)」
「(何が、今は……よ……! ……ふっ……んー、ふぁっ……! あぁっ……ゆ、かり……っ! ゆかりぃ……!)」
紫は、霊夢と唇を重ねる。
口内に潜む舌を、己の舌で絡めとリ、暴き立てる。
霊夢の蜜に塗れた指で、さらなる快感を、霊夢の秘所の奥から沸きあがらせる。
空いた手は、汗に塗れ、“ぬらり”と光る霊夢の身体を、撫で、弄ぶ。
「(そんなに呼ばなくても……聞こえているわ。声を抑えないと……後ろの二人に、聞き耳を立てられてしまうかも)」
「(あ、はぁ、んっ……!)」
霊夢は、恥じ入るように、己の指を噛んで、声を押し殺す。
「(……っ……ふー……んー……は、っ……!)
「(ふふ。意識したら……また、溢れてきたわ。洪水のよう。霊夢。本当は……二人に、見られたいのではない? 快楽に溺れる、自分の姿を)」
「(そ、んな……こと……ない……! ひゃ、ぅ……っ……あ……ッ!)」
「(本当。こんな姿を……後ろの二人にでも見られたら……どうなってしまうのかしら?)」
紫の囁きに、霊夢の身体が、一際強く跳ねた。
口の端から、涎をたらし、酸素を求めるように、もがき、喘ぐ。
「(そんなこと……い、わないでぇ……ッ!!)」
「(ふふ。ほら……また。溢れてきた。熱く、なってきたわ)」
「(ひゅ、あっ……はぁっ……!! はっ……あっ、ふぁ、ぁぁ……ッ!!)」
既に、霊夢の秘所から溢れた蜜は、腿を伝い、畳の上に、“とろり”とした水溜りを作っている。
霊夢が、紫から逃げるように、身悶えする。
無駄な足掻きを咎めるように、紫の腕は、霊夢の身体を、捕らえたまま、離さない。
紫の腕のうちで、霊夢の背が、徐々に、強張っていく。
「(……いきそう、かしら?)」
悪戯な、紫のささやき。
「(……っ……そんな……ことぉ……!)」
「(――正直に)」
紫の言葉は、まるで、麻薬のように、霊夢の、蕩けきった思考へと堕ちてくる。
「(……ああッ! ……ふぁ、……き、そう……なの……っ! なにか……なにかがぁ……!)」
「(自分の指で慰めるのと……どちらが、いいかしら?)」
「(やぁ……! いい……たく、っ……なぃぃ……!)」
「(――口を噤む権利さえ、認めないと、いったわよ?)」
「(あっ……あんたの……方が、ずっと……き、かないで、よぉ……ッ!)」
「(ふふそう。私の方がいいの。では、霊夢。……いきたい?)」
「(っ……ひゅっ……ふぁ、あっ……そんな、の……っ……き、たい……に、決まって……焦らさ、ない……でぇ……ッ!)」
あられもない霊夢の叫びに、紫は、陶然とした笑みを、面にのぼらせる。
「(じゃあ、霊夢。私にも――)」
紫の囁きに、何かを考えるより先に、霊夢の腕が動く。
否、それを言うのなら。
もう、意味のあることを考える思考など、とうに麻痺させられている。
後ろ手に、紫のスカートの内側へと、手を潜り込ませた。
……熱い。
熱が、篭っている。
すぐに、紫の、腿へと触れた。
“ぬるり”と、今、自分が溢れさせているものと、同じ滑りが、そこにはある。
手をまさぐる。
紫の、下着へと触れた。
“ぴちゃり”と、篭った水音。
紫の下着の内へと、指をもぐりこませて行く。
「(んっ……)」
くぐもった息が、紫から漏れる。
「(そう……っ……そこ、よ……)」
霊夢の指先に、纏わりつく、愛液の感触。
蠢く、秘肉の温もり。
紫の秘所は、自分のものに負けず劣らず、熱く、淫らに爛れていた。
「(はっ……くっ……上手く……なったわね……)」
「(ふぁっ……っ……嬉しく……ないわよ……)」
霊夢の身体が、絶頂を迎えようと、徐々に、その強張りを強めていく。
「(霊夢……もう少し、我慢しなさい。んっ……私も、すぐに、追いつくから……)」
「(……っ……早く……しな、さいよ……! 私、もう……!)」
「(ふふ。……霊夢)」
紫が、霊夢の秘所をまさぐったまま、まさぐられたまま、霊夢の唇を、奪う。
「(ふぅ、ん……っ……ふぁっ……は、んっ……)」
「(んっ……ちゅっ……っ……霊夢……)」
指が秘所を、爛れさせるように犯すなら。
舌は口内を、蕩かせるように蹂躙する。
絡み合う舌と、糸を引く唾液の水音。
まさぐりあう指と、あふれ出す愛液の水音が、褥の静寂を乱していく。
絡み合う情痴の果て、紫の身体も、また、霊夢と同じように強張っていく。
「(あっ……私も……そろそろ、かしら……ね……)」
その言葉を聞き、霊夢の指が、一層激しく、蠢きはじめる。
「(は、じめて……)」
「(くっ……なに、かしら……)」
霊夢は、うっすらと涙を浮かべ、髪を、汗で顔に貼り付けながらも、うっすらとした笑みを浮かべる。
「(あんた……っ……わたし、の……手で、い、くわね……)」
「(そういえば……そう、ね……っ……少し、恥辱……だわ……。でも、貴女、も……一緒に、よ……)」
「(ふぁっ……ひゃ……ん、ふぅあ……! あ、っ……ゆ、かり……はや、く……いき、な、さいよ……)」
「(っ……霊夢、こそ…っ……ん、ふ、あぁ……)」
互いの間で、淫らな熱が、循環しているよう。
思考と理性が、情欲の炎の中に、溺れていく。
霊夢の身体が、弓のように引き絞られる。
紫の身体が、それに続いた。
「(ゆ、かり……っ……ふぁ……私、くる……きちゃ、う……も……駄目、ぇ……!)」
「(私、も……よ。はっ……いき、そう……だわ……! 一緒、に……!)」
一際、大きな水音を響かせ。
紫が、霊夢を、その頂へと導いていく。
「(はぁっ……う、ぁっ……あぁぁ……! ゆ、かり……ゆかりぃ……ッ!!)」
その瞬間、霊夢の指もまた、紫を絶頂へと押し上げた。
「(はっ……あぁぁっ……! 霊夢……霊夢……ッ!!)」
限界まで緊張していた二人の身体が、互いの名前を呼び合うと同時、急速に弛緩した。
“くたり”と、力の抜けた身体が折り重なり、“はあはあ”と、荒い息遣いだけが聞こえる。
「(……んっ……)
やがて、どちらともなく、唇を重ね合わせた。
“とろん”とした目で、見詰め合う。
「(……気持ちよかった?)」
紫の問いに、霊夢は、無言でうなづく。
心配そうに、横たわる紫の身体に、覆い隠されている向こうを見た。
「(魔理沙たち……起きて……ないわよね……?)」
「(ふふ。さぁ、どうかしらね? 私も、夢中だったから。まぁ、大丈夫でしょう。それより、霊夢――)」
「(んっ……あ、こら……! また……!)」
紫が、霊夢の胸へと、手を這わす。
「(だって。まだ、一回だけではないの。夜はまだ長いし。それに、こんなに魅力的な状況が、そうそう、あるわけじゃないしね)」
「(駄目よ……! これ以上は、本当に、気付かれ――)」
慌てふためく霊夢の言葉を、紫は、意地悪な笑みで遮った。
「(だから? その程度でやめるほど、素直じゃないのは――貴女は、良く知っているでしょう?)」
「(ひゃ……っ! この……だから、やめ――)」
それから、間を置かずして、再び、響き始めた淫らな水音の中に。
「(――あっ……!)」
先よりも、より一層、甘いやかな、霊夢の吐息が混じっていた。
博麗神社の居間に響く、少女達の睦みあう音を、背後で聞きながら。
霧雨魔理沙は、うっすらと頬を染め、どうするべきか、考え込んでいた。
「(……またかよ。あー、もう。元気というか、なんというか……こっちの事も、考えて欲しいぜ)」
「(――本当にね)」
魔理沙の囁くような声に、やはり、頬を朱に染めたアリスが、同意を返す。
「(本当……どうしたもんかしら。終われば、後はなんとでもなると思っていたのだけど……こうなると、本気で、朝までかかりそうだわ)」
「(朝まで……か。えーと。すると、なんだ。私達は、朝まで……その。この音と、声を聞いてなきゃいけないのか?)」
「(そう……なるかしら。……眠ってしまえば、すぐだとは思うけど)」
「(……それが出来たら、こんな苦労してないぜ)」
魔理沙が、肩越しに、こちらに背を向けている紫の姿を盗み見る。
その身体の向こう、時折、少女の白い肌が、妖しく踊っているのが見えた。
「(……そうよね。全く。あいつらは、一体、何を考えているのかしら。盛るなら、もっと、周りのことも気にかけて欲しいものね)」
「(全くだな。こうなると……下手に動くことも出来ないし。居間の出入り口は――二人の、向こうだしな。邪魔するわけにもいかない。やっぱり、このまま、寝ているふりを続けるのが――)」
「(……この状況で?)」
耳を澄まさずとも、濡れた音と、荒い息遣いが、聞こえてくる。
下手に目にすることが出来ない分――いやおうなく、友人の痴態を、まざまざと思い浮かべてしまう。
「(……しか、ないだろ)」
――かなり……辛いけど。
むしろ、拷問に近いな、と。
魔理沙は、心中で呟いた。
何せ、自分たちのすぐ横で、この年頃の少女なら、個人差はあるとは言え――興味を示さずにはいられない行為が、行われている最中なのだ。
意識しない訳がない。
特に、眠れぬ夜、秘めやかな一人遊びに耽り――その悦びを、知ってしまっている身には。
――あー、もう。本当……下着が濡れて、気持ち悪い……。身体も熱いし……。でも……。
“ちらり”と、アリスを盗み見る。
「(……何よ)」
「(……何でもないぜ)」
恥ずかしそうに、頬を染めているアリスの姿。
しかし、その頬の紅潮が、気恥ずかしさからくるだけのものではないだろうな、と。
魔理沙は、おぼろげながら、予想できた。
多分、アリスも、自分と同じ悩みを、抱えている最中だろう。
葛藤と言っても、いいかも知れない。
しかし、それを口に出すのは、やはり、はばかられた。
二人、どちらからともなく、見詰め合う。
「(早く……朝になればいいな……)」
「(そうね……)」
二人は、同時に、溜息をついた。
この状況で、朝まで、何事もなく時が過ぎればいいが……。
そんな事を、考える。
「(……ね、魔理沙)」
「(……なんだぜ?)」
“とろり”と、熱を伴った声で、アリスが囁く。
「(何か……熱くない?)」
「(……熱いぜ)」
「(汗をかいて……気持ち、悪くない?)」
「(……気持ち悪いな)」
「(そう。あの……魔理沙……)」
「(……なんだ?)」
「(あの……ね……)」
背後から聞こえる二人の声が、魔女たちの理性まで麻酔していく。
何をしているわけでもないのに、徐々に、吐息に、甘い熱が篭っていく。
朝は、まだ遠い。
巫女と妖怪は、いまだ、淫らな交わりを続けている。
そして、それから、さほどの時をおかず。
やはり、朝まで続く、もう一組の少女達の情痴が、この夜に交わされる事になるのであるが。
それはまた、別の話なのだった。
――最後に。
夜が明ける頃には、皆、さすがに、“ふらふら”の状態で。
博麗神社の居間の、畳の上の其処彼処に。
この夜の痕跡が、はっきりと刻まれていたことを、付け加えておこう。
なんという増補版。えろえろな霊夢かわいいよ霊夢
シチュも好物で大変おいしゅうございました。素晴らしい。
さて……つぎは魔女組サイドのお話に期待して正座待機続行
今度は紫パワーでチンポ付き!
再投稿の件ですが、中途半端な所で終わらせるのも、終わらせないのも、作品を作る書き手の表現の自由だと思います。
読み手としては半端な結末に“煮え切らなさ”を感じる場合もあるでしょうが、
それも一つの表現であると私は思います。
夜伽景様の思うまま、考えるままに書くことを私は希望します。
素人の立場で出すぎた意見、失礼致しました。
次は紫に優しくしてもらってトロトロになっちゃう霊夢とか見てみたいです
あと、今回はお考えを変えられたようですが作者がこれでよし、と考えれば
それがその作品の完成形だと思うのであまり御気になされないでよいと思います
読者の要望とは本質的に勝手なものですし、なによりお叱り、などと言われると私などは恐縮してしまいます
魔理沙とアリスがwww
だれか救出してあげてーッ
語彙も多く、読んでて飽きませんでした。
そしてゆかりんはやっぱりこの位攻めでないとw
ゆかれいむ美味しいです。
ぜひ魔女サイドも見てみたい!
頑張って、いい作品を書いてください。