秋の夜は妙に長い。単純な意味で日の入りが早いこともあるし、人の感性的にもそう感じるところがあるの
かもしれない。名を残す数々の詩人はその夜の長さをどう表現しようか頭を働かせ、数々の詩を創りあげて
いった。
「は、ぁ……」
しかし、そんな情景的な表現も今の彼女にとっては全くの無縁だといっても決して間違いではなかった。神
社名物煎餅布団の中で一人の少女がその身を震わせていた。それは寒さに震えているというわけでもな
く、もちろん幽霊が怖いとかそういった意味でもない。彼女は発育は良くないものの、精神的には並みの大
人に匹敵、それ以上のものだといっても過言ではない。幽霊などに怖がっていては巫女は務まらないの
だ、それであれば何故身を震わせているのかというと――――
「んっ、あ……」
簡素な和室に響き渡るのは淫らな音と声。継続的に荒い息が室内で反射されそれが延々と繰り返され
る。巫女は清い存在であった、がそれと同時に彼女も人間だった。当たり前のように性欲が昂ぶる事も珍し
くない。むしろどちらかというと多いほうだった。だから、こうして夜な夜な自身を慰めているのだ。寝巻き用
の浴衣はところどころはだけているがそれは布団にかぶさっていて見えない。しかし、彼女の上気した顔、
とろんと惚けながらも情欲に飢えた瞳、そしてその醸し出す淫の気は一般人の男なら、あるいは女であろう
とも引きずりこんでしまうようなそんな危険な気質を含んでいた。もちろんそんなことを当の本人が気づいて
いるわけでもなく、ただただ欲の発散のために弄り、そのたびに極力抑えた(つもりの)嬌声をあげている。
「んっうぅ!あっ!やぅっ」
やり方はただシンプルに秘所だけを刺激する。たまに秘芽をこすりあげ、時折膣内に指を僅かに埋め込み
中の壁をなぞる。粘った水音は次第に音を増し、彼女の声も1オクターブほどあがりを見せ、絶頂の兆しが
見え隠れしだした。
「はっ!ああぁっ!」
極力抑えていたはずの声もいつの間にか全く逆のものに様変わりしている。そもそも夜の神社には宴会
でもない限り人(妖怪)が来ることなんて滅多に無く声を抑える必要なんて元々無かったのだ。彼女の使わ
ない左手は硬い布団をぎゅっと掴み、来るであろう快感への衝撃に耐えるための準備を始めた。控えめだっ
た指の動きはいつの間にか激しいものへと変わり、自身の膣内を何度も何度も出入りしており、そのたびに
愛液は溢れ、糸をひいては布団に染みを作っていた。
「うっ、いぅ……ふぁぁっ!」
びくっと彼女の身が震え、一瞬だけ反り返る。機能を失った両手はだらしなく地面に垂れ下がり、呼吸は
ひどく荒い。胸は呼吸に合わせ上下しておりどこはかとなくいやらしさが目立つ。次第に落ち着いてきたの
か呼吸も整ってきたころ彼女はおもむろに自身の秘所を弄っていた右手を顔の前に持ってくる。愛液やらな
んやらで濡れた手の指同士を合わせるとつつーっと糸を引いてしばらく伸びた後ぷつりと切れた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
終えてしまえば強烈な疲労感が彼女の身に降りかかった。別に悪い意味のものではなくごく自然のもの
だ。終わった後に必ず来る余韻でもある。徐々に薄れゆく意識、視界、心。明日の寝起きがとんでもないこ
とになりそうだ、と意外と冷静なことを考える自分に少し驚きながらも彼女は目を閉じた。そして安らかな眠
りへと――――
「あら、もう終わりなんてひどいわ」
「……えっ?」
――――つけなかった
ありえないはずの第三者の声は霊夢の意識を再び覚醒へと強制的に戻した。驚いたように大きな瞳をあけ
ると目の前の視界に飛び込んできたのは『紫』だった。
「う、そ……」
「嘘?まさかそんな、貴女の目の前にいるのは真実でも虚でもない。私ですわ」
寝ている状態の霊夢からは隙間から顔を覗かしていつもと変わらない笑みを浮かべている妖怪の姿しか
認識できない。もしかしたら夢の可能性もある。しかしその判断も何もかもが有耶無耶になっていた。そんな
ことよりも霊夢としては今までの行為をみられていたこと事態のほうがよっぽど深刻な問題だった。
「なんで、どうし、て……」
「『深夜であればあの隙間妖怪も眠る』そんな常識を勝手に作っている悪い子がいたのでお仕置きに、ね」
「え……?」
霊夢だって博麗の巫女という立場はあるが、だからといって年頃の少女という刻印は消えるわけではな
い。相手がいれば問題はないのだろうがいないとなると溜まりきった性欲を上手く他のことにまわすことも出
来ず結果的にそれは『自慰』という行為にのみ解消される。そう考えたとき真っ先に不安要素のひとつとし
てあげられるのが目の前にいる『八雲紫』だった。神出鬼没というそれは今の状態の霊夢にとって脅威以外
の何でもない。だから、彼女が深い眠りにつく夜を見計らってそうした行為に走るのがほとんど習慣化して
いた。確かに確証たる証拠は無かった。八雲紫が夜に眠り朝までまたは昼前まで眠っているなんて断言で
きるやつはおそらく幻想郷内にはいない。しかし、今まではそれで何とかなっていたのだ、何で今日に限っ
て。そんな思いが霊夢の中を駆け巡る。それをまるで見透かしたかのようなタイミングで紫は口を開く。
「毎回のように見られている。とは思わなかったのかしら?」
「なっ……なにを、きゃっ」
突然紫が降ってきた。厳密には隙間から降りてきたが正しいのだが半分のしかかるように降りてきたので
あながち間違いでもない。だが、霊夢にとってそれよりも先の発言に意識を奪われていた。息がかかる距離
でありながら紫の表情は変わらない。逆に霊夢の表情は狼狽そのものであり、隠す余裕も無いほどに出て
いた。それを見透かしているのか紫は僅かに笑いながら口を開いた。
「どうして、貴女の考えの中に『八雲紫は見ていて姿を現さないだけ』という発想がなかったのかしら?」
「それ、は……」
そうした考えがあったかないかでいえば、確かにあったのだ。霊夢の中にはそうした可能性を危惧する思
考もあった。しかし、それも自慰という目の前の快楽には逆らえず心の奥底にそれを閉まってしまったのだ。
「貴女らしくない、とは言いませんわ。でもね、目の前で毎日気持ちよさそうな自慰を見せ付けられると、ね」
「べ、別に見せてたわけじゃ……っ!」
そこまで言って、言いかけて霊夢は自身の唇に何かが深く重なったのを感じた。声も出ないほど苦しい接
吻だと気付くのに時間はかからなかった。くもぐった声すらも出すことを許さないような長い長い接吻。あわ
や霊夢が窒息してしまうほどに苦しさを感じたときにそれはやっと開放された。自身の肺が足りない分の空
気を補うように激しく催促してくるおかげで霊夢の呼吸はいつにもなく荒れていた。漸く解放され、呼吸も大
分整えた後、霊夢はキッと紫を睨みつけた。何故いきなりこんなことをするのか、という憤りも混じった目を
紫は軽く受け流した。
「ねぇ、霊夢。貴女はここのところ毎晩、ずっと自慰をしていることに気がついている?」
「え、な、何よ急にそんなこと今は関係な……」
「あるのよ」
「え、ちょっ、な、何よ急に、わわっ!?」
ぐいっと何時の間にか霊夢の腰には紫の細い腕がまわっていた。それに気づいた瞬間、霊夢は紫に抱き
寄せられている状態であることに気づいた。必死に抵抗しようと身をよじるが、上手く力が入らないように手
が回されているのかされるがままの状態になってしまっていた
「貴女は気がついていない」
「は、はなして」
「自身のフラストレーションの発散が上手くいかないがために、毎晩のように自慰に耽る。そうしたことに完
全な意味がないことは貴女自身が一番よくわかっているはず。そしてそれは最早『第三者』によってでし
か解消出来ない物ほどになっていることにも」
「なによ、急に現れて、弱みでも握るつもり?そんなことしたって……」
話を聞くつもりは無いという風な霊夢の頑なな態度に紫は息を1つ吐いた。
「まったく、変なところで頑固なんだから、それとも本当にわかっていない?」
「いい加減に……!ひぅっ!?」
抱き寄せられた状態から何とか脱しようともがいていた霊夢だったがそれは突然の刺激によりぴたっと止
んでしまった。それはただ紫が霊夢の臀部を撫でただけなのだ。それなのに霊夢は先程よりも嬌を含んだ
声を上げてしまう。
「ほら、やっぱり」
「ば、ばか、やめっ、あ、そこ、撫でない、でっ!」
言葉では抵抗しているがしかし、撫でられるたびに小刻みに体に電流が走り霊夢は強制的に体重を紫に
預けるほかない。かたちの良い小振りなそこを紫は思い思いに浴衣の上からではあったが刺激していた。
「もしかして、私が何かしたとか思ってるの?」
「あたり、まえじゃないっ!」
「ところがどっこい種も仕掛けもありません。全て自身の責任よ?」
「そんな、戯言っ……」
虚勢とも取れる霊夢の発言に紫はにっこりと微笑むと、霊夢の耳にそっと囁いた。
「だったら試してみる?」
「……え?」
紫は抱きしめていた力を少し緩めて突然霊夢の頚部へと舌を這わせた。
「え、あ、あっ、う、そっ……」
じゅるっと謎の感覚と同時に電流が走るような想像以上の快感、快楽に霊夢は驚いたように目を見開い
た。それを紫は楽しそうに観察しながら臀部に愛撫、頚部には舌を這わせ、余った手は霊夢の背中にまわ
し支えていた。己の腕の中で刺激の強弱をつければそれと同じように跳ねて、嬌声を上げる彼女の姿に少
なからずとも嗜虐心を刺激される。
「発散出来ない欲求は溜まり溜まり溜まり、貴女はそれに気づかなかった。昼間であればいつもどおりだけ
ど夜になると再びその『欲』が溢れ出す。それが永遠のサイクルを作るのよ。だから今の貴女は全身が性
感帯のようなものになっているの。わかるかしら?」
「そんなこと、言われたって……っぅ」
「別に怒っているわけじゃないわよ。そのまま溜め込むとそのうち身体的にも影響が出てくるだろうし、ここで
ぱっと全部発散させれば大丈夫かと思ってね。善意よ善意。だから貴女はそのままでいいの、されるがま
までね」
もちろん、霊夢からすればそんなこと願い下げだった。しかし、体は全く逆で紫の動きに対してまさにされ
るがままの状態なのが現実だった。ぬるっと漸く頚部から紫の舌がゆっくり離された刺激にすら敏感に反応
し声をあげてしまうのだ。
「夜はこれから。せっかくだから楽しみましょう」
「だ、誰が、あんたなんかと……」
「まだ、そんなこと言えるのね」
「え、あ、ばか、そこはっ」
ちゅっ、と紫ははだけた浴衣の上からピンポイントに霊夢の乳首へ軽くキスをした。
「ふあぁっ!?」
びくっと霊夢の体が震え反り返る。結果的にそれは紫へより一層乳首をおしつける形になりさらなる快楽
が押し寄せる彼女にとって最悪の循環だった。浴衣の上からさらしは巻かないためいつもよりも感度がひと
しおになっているのも影響があるのかもしれない。
「あぁっ、いやぁっ……」
「これだけでいっちゃうなんてとんだ淫乱さんね。キモチいいんでしょ?胸を吸われるのが?体中まさぐられ
るのが?」
「ちが、ちがうもんっ!こんな、こんなの……わたしじゃ……」
「貴女じゃなければ誰?貴女はこの幻想郷にたった一人しかいないのよ?貴女の代わりなんて者ももちろ
んいない。これは貴女よ、それを受け入れて。そうすればきっと楽になる」
「いやっ、いやぁっ……」
最早だだをこねる子供のような声へと変わってしまいながらも霊夢は否定するように首を横に振る。快楽と
自尊心が複雑に入り混じり一方は『快楽にすべてを委ねろ』と催促し、もう一方は『ひたすら抵抗しろ』の一
点張り。霊夢の頭の中はぐちゃぐちゃで回線が全くかみ合わず、既にまともな思考を取ることさえ難しいもの
へとなっていた。寝入りに襲われた形になったものだから彼女自身もそうだが脳が上手く働かないのも無理
は無かった。
「こんな聞き分けの無い子だったかしら。いや、まぁ当たり前といえばそうかしら」
「うぅっ……」
霊夢はまるで母親に叱られているような錯覚に陥った。親の記憶など全くないのだが、里でよくみる親子
の風景の感覚にどこか似ている。紫はというとそんな霊夢をいつもと変わらない胡散臭い笑みで眺めてい
た。それがまた馬鹿にされたようで悔しくて、霊夢は地面に目線を落とすことによって、涙目の顔を見られる
のを何とか防いだ。
「珍しく弱々しくなっちゃってまぁ」
「うるさいわよ、ばかっ……」
苦し紛れに呟いたそれは、そこはかとない抵抗のつもりだったのだが、それもあまり意味を成しているよう
に霊夢は感じなかった。既に身体の根本的な部分は諦めているのではないか。そう考えてしまうと抵抗し
ている自分がひどくみすぼらしい気がしてきていた。このまま流されてもいいのではないか?そんな思考が
頭をよぎり回線を繋ぎ始める。このまま八雲紫という妖怪に襲われ、その快楽に身を委ねてしまうのもあり
なのではないか。そう考えると身体の中心付近の丹田あたりが熱を持ったように火照りだす。
「ふふ、ごめんね。ちょっと意地悪しすぎたわ」
「あ……」
そんな時に、ぎゅっと優しく包み込まれたらどうだろうか。八雲紫がそこまで計算して行動しているかどう
かはともかく、それは霊夢の身にとって決定的な一打となったのだ。
「…………いいわよ」
諦めたような声音が意図せずに出てくる。
「え?」
一度切り出すと脳から送られる受容の合図に素直に従ってしまう。すべてを受け入れすべてに委ねる。そ
うだ、私は昔からどうだったではないかと、無理矢理な合理化を行い少しでもショックを減らそうとする。しか
し、そんなこともちんけに思えるほど霊夢の体は欲情に捕らわれていた。1人で発散出来る量と第三者にや
ってもらうことの違いはまるで身体が知っているかのように求めた。
「ここまでしたんだから最後まで責任ぐらい取りなさいよ。もう体、疼いて……」
そこまでいってぼふっと霊夢は紫の胸元にうずくまった。震えているのは快感だけではないのだろうと察し
た紫はもう一度力強く抱きしめ、頭を撫でてやる。いつもこんなことをすると大体軽く払われたりしてあしらわ
れるのだが、今日に限っては許してもらえるらしい。
「もしも顔を見られたくないのならそうやってうずくまってなさい」
霊夢からの合図のようにもう一段階胸への圧力が加わったことを確認してから紫は右手をそっと大腿部へ
差し入れた。ぬちっ、と粘液状の物に手が触れ、霊夢はより一層震える力を強めた。
「こんなに濡らして、つらかったでしょう?」
「…………っ」
「いいわよ、何も言わなくて」
そう言って、紫はついに霊夢の秘所へと手を伸ばした。最初はくちっ、と水が弾けるような音がした。紫が
そこで上下に表面上だけを擦ってやると、すぐに新しい愛液がぞくぞくと分泌され、にちゃにちゅと粘着音を
含んだ音になる。
「ふぁっ、ぅぅっ……!」
胸元にうずくまっているおかげか、霊夢は声は抑えることに成功しているのだが、胸元に生暖かい呼吸が
繰り返し排出され、紫の胸元は妙な湿り気を帯びていた。気にするほどでもないが、このままずっとそうして
いると流石に自身の式神あたりに勘付かれそうなので、少しだけ話をそらす事にした。さっきの行動からあ
る気づいたことがあったのだ。
「ねぇ、霊夢。貴女どうして下着穿いてないの?」
違和感があったのは大腿部に手を差し込んだとき。確かに感度は異常なほど上がっているように紫は見
ていたがそれでもここまで垂れることはないだろう。それは『下着を穿いているのであれば』でありしかし、い
ざ秘所へ手を伸ばしてみると遮るものは何一つ無く、柔らかい恥丘までいとも簡単に辿りついてしまったの
だ。流石にこれを指摘せず放置するのはまずい気がした。むしろ今まで誰も気づかなかったのだろうか。と
紫は頭をひねった。そうして霊夢に尋ねてみるとゆっくりと顔をあげた。その顔は情欲に流れまいと必死に
耐えながらも押し寄せる快楽に何度も揺さぶられるような、ひどく欲を掻き立てるような、そんな顔だった。
紫は今すぐにでも秘所を刺激し、心から乱れる彼女の表情が見たいと思ったが、今そんなことしたら本当に
彼女が塞ぎ込んでしまいそうなそんな雰囲気があったので何とか踏ん張った。
「だって、寝るときドロワーズを穿くと蒸れるから……」
搾り出した答えは妙に気恥ずかしがっており、初夜を迎える生娘のような雰囲気まで出していた。紫自身
の情欲までも彼女は無意識に刺激しているのだ。
「あぁ、なるほどね……それじゃ、今度普通の下着持ってきてあげるから。せめてそれぐらい着けておきなさい」
「ん……」
暴漢に寝込みでも襲われたらどうするつもりだったのだろうかと考えて、再び胸元にうずくまった霊夢にわ
からないようにため息を紫はつく。果たして自分がその暴漢になっていることに気付いているのかはどうかと
して、だ。霊夢はそういった変なところにひどく敏感でまた変なところにひどく鈍感だったのだ。
「鈍感なのはいやね、鈍感なのは」
ぼそっとそう呟いて、そろそろ焦らすのもやめにしようかと指を2本交差させて組み合わせたのを霊夢のそ
こへぴったりとあてがった。
「ぁっ……」
その違和感に勘付いたのか、霊夢が小さく喉を鳴らし、準備が完了するのを確認してからゆっくりと味わう
ように紫は指を膣内へ押し込んでいった。
「ふぁっ、ぁぁっ……!んぅぅぅ……」
霊夢の膣は思ったとおり、ぐじゅぐじゅで紫の指をぎゅうぎゅうと締め付ける。愛液は隙間から漏れ、紫の
手掌をつたって地面に糸を張りながら落ちる。それのなんという淫らなことか!紫は自身に男性のそれが生
えてないことを心底後悔した。それがあればきっともっと霊夢を悦ばすことも出来たであろうかも知れない。
能力で付け加えることも出来たであろうがしかし、それをしなかったのは霊夢に対する遠慮というものがあっ
たのかもしれないし、ほんの気まぐれであったのかもしれない。どっちにしろ霊夢にとっては指2本ですら凶
悪な快楽なことに間違いは無かった。胸元に顔をうずめていなければさぞかし可愛らしい嬌声が響いたであ
ろうに、しかし紫にとっては腕の中で震えて耐え忍ぶ彼女を見るだけでも満足だった。人にせよ妖怪にせ
よ、気になる人の意外な一面を見ることが出来るということは、相手のことを少し理解した気になるからだ。
「霊夢、気持ちいい?」
「ん、はぁっ……しら、ないわよ、そんな……あっ」
ゆるり、ゆるりと長く緩い刺激を延々と続けることによって、霊夢の絶頂は少しずつその片鱗を見せ始め
る。息遣いに余裕はなくなり、手は紫の服をぎゅっと力強く握りこむ。抱きしめた状態からでは上手いように
紫が調整できるので、膣内への刺激はまさに変幻自在だった。一人で同じところを攻めるのとは全く違う。
霊夢は未知の快感に心も身体も何度も襲われ、何度もいきかけた。しかし紫はいいところでその責め手を
緩めた。まるで溜め込むように、一気に爆発させるように。現に紫の狙いはそこにあった。大きなフラストレ
ーションはそれに対するが如く大きな快感で打ち消さなくてはならないのだ。たまに秘芽に手を伸ばし、先
のほうを刺激したり、時には肛門までも表面だけではあるが愛撫した。霊夢は徐々に余裕がなくなっていく
のをはっきりと感じ取っていた。わきあがってくる興奮もいまでは体中に浸透しどこに紫の手が触れてもそ
れは快感となり押し寄せる。背中にまわっている紫の手が優しくそこを撫でるだけでも十分なほどの快楽が
襲ってくるのだ。そしてそれらが一気に破錠してしまう時がもうすぐだということもわかっていた。
「あっ、あぁっ……!やだ、ゅかり……なにか、きちゃっ」
「いいわよ、自分の好きなタイミングで好きなようにいきなさい」
ぐにゅっと紫は霊夢の膣に入る分指を埋め込んで中でそれを曲げた。ざらっとしたところも、ぐにぐにと柔ら
かい膣壁も全て刺激した瞬間に、霊夢は体をくの字に曲げ、うずくまることも忘れて最早悲鳴に近い嬌声を
上げた後、ぐったりと倒れこみそうになるところを紫が抱擁した。紫がゆっくりと指を抜いてやると小さく可愛
い声をあげた。膣からはなおも愛液が分泌され、先程よりは少ないがまだ溢れ染みの作りようの無くなった
布団へと滴り落ちる。
「ん、はぁ、あぁ……」
乱れた呼吸を必死に整えようと腕の中で上下する霊夢の体を紫は大事なものを扱うように優しく抱えてや
った。
「お疲れ様。何か言いたいことは?」
「…………すごく、ねむぃ」
霊夢の目はすでに半分は閉じていた。恐らく手で顔を遮ってやれば一瞬で眠りについてしまうような状態
だろう。それを紫は邪魔するつもりはもちろんないし、逆にゆっくり休めるようにと寝やすいように霊夢の体制
を少し傾け、自身の腕が枕になるように膝が敷き布団になるように、心が温かい掛け布団になるように整え
た。それは神社名物煎餅布団なんかよりも何倍も寝心地がいいということは誰が見てもわかることであろ
う。
「そう、ゆっくり休みなさい。今日ぐらいは腕を貸してあげるから」
「ん……」
先程まであんなに乱れていたのに寝付けはあっという間だった。いや先程までがそうであったからその反
動といえば正しいのかもしれない。穏やかな寝息を聞いていると紫も確かな睡魔に誘われた。やれやれ今
日は疲れたな。と霊夢を起こさないように自身も寝やすいように足を組み替えて、霊夢を包むように瞳を閉じ
た。
目覚めの気分は良かったが、周りはひどいものだった。布団は荒れて染みもついているし衣服も昨日の
名残というのか情事を思い起こすように乱れたままだった。それに何より匂いがひどい。むせかえるようなむ
っとする匂いだ。布団から出るのは秋の早朝の気温的に嫌だったが、この部屋からとっとと出たいという気
持ちのほうがずっと強かった。一緒にいたはずの紫はどこかに行ったのか帰ったのか、いなくなっている。
少しぐらいは片付けぐらいしてほしいものだと霊夢は思いながらのろのろと居間に向かった。
「おはよう、目覚めはどうかしら?」
「…………悔しいけど、最近の中では一番いいわ」
いないと思ったらいる。いると思ったらいない。八雲紫はそんな存在だった。そんな彼女が割烹着を着て調
理しているというのもなんとなく違和感を感じる。ちょうど出来上がったのか、焼き魚を皿に揃え、味噌汁を
注ぎ、ご飯を装う。正直彼女が家事を出来ると思っていなかった霊夢は少しショック(?)のようなものを受け
た。紫はテーブルを促し誘われるように霊夢も座る。朝食は質素であり簡素なものであったがどれも美味し
そうな見た目と匂いをこれでもかとばかりに放っている。
「起きた時部屋の状態はどうだったかしら?」
「最悪だったわ、匂いもひどいし。ちょっとぐらい……」
片付けてくれてもいいんじゃない?そんな言葉を紫は遮った。
「そう、なら良かったわ」
「へっ?」
「あの部屋の匂いにまだ欲情するようだったらもっと貴女と交わらないといけなかったんですもの」
「まさか、そのためにあの部屋は何もせずに?」
「ええ、貴女を起こしてしまう可能性もあったというのもあるけどね」
「……悪趣味」
「うふふ」
紫は扇子を口元にあて、静かに笑った後唐突にすっと立ち上がった。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
霊夢は思わず声をかける。
「どこって、そろそろ帰らないと藍がうるさいから私はお暇するわ」
「え?あ、ちょっと、待ちなさ……」
一瞬で気味の悪い隙間を展開し、最後に霊夢に振り返って優しい笑みを浮かべた。
「霊夢、溜め込むのは体に毒だから、また欲が溜まったら呼ぶのよ。いい?じゃあ、またね」
好きなだけ言葉を残して、紫はさっと隙間を開き入っていった。先程までの騒がしさが一瞬で静まりかえ
り、唖然とした霊夢は一瞬今まで夢を見ていたのではないかという錯覚に陥りそうになった。
「なによ……」
目の前に用意されている一人前の美味しそうな料理も何故かひどく寂しく見える。
「朝食ぐらい、一緒に食べていってもいいじゃない……」
ぼそっと呟いた言葉は寒さに飲み込まれて消えてい――――
「霊夢がそういうんなら仕方ないわね!」
「わ、わわっ!?」
――――かなかった
有り得ないはずの第三者の声は霊夢の意識を無理やり現実に引き戻した。心臓が前に飛び出しそうにな
ったのを抑え、後ろを壊れかけのブリキのおもちゃのように首をまわしてみてみると、気持ち悪いぐらいのに
こやかな笑みを持った八雲紫がいた。気がついたら対面に何時の間にかもう一人分の食事が用意されてい
るではないか。こいつ、謀りやがった!そう気がついてから自分が何を言ったのか思い出してとたんに恥ず
かしくなって顔が一瞬で熱くなっていた。そんな紫はというとしてやったり顔で霊夢の目の前に座りこう言う
のだった。
「朝食ぐらい一緒に食べていってもいいじゃない……」
「やっぱり帰れ!!」
相手するゆかりんも扇情的で、心躍らされる一幕でした。
霊夢可愛いね
楽しめました♪
素敵な二人をごちそうさまです