※ゆかれいむようで、そうではない何か。
鬱の基本は上げて落とす。嫌な予感がしたら回れ右。
拙作「博麗霊夢と幸福論」http://i0-0i.sakura.ne.jp/glueck/ のサブエピソード的な何か? PDF無料公開してます。
姿見で自分の全身を確認する。
黒髪を結わえる赤い大きなリボン、耳の横の房飾り、白い肌に映える紅白の巫女装束。
鏡に向かって小さく笑ってみせる。あどけなさと純朴さ、それにどこか暢気さが混じる。
大丈夫。これで大丈夫。
私は完璧に博麗の巫女だ。
自分に言い聞かせて、きびすを返す。
もう確認は十分。
マヨイガの廊下を歩く。少しだけ木の板がきしむ。しばらくこのあたりは手入れをしなかった。紫がそれを望まなかった。だれもそばに寄ることが出来なかった。
近づこうと歩み寄れば、隙間を通じていつのまにか家の反対側に出てしまうのだ。
このところ、この家の主は誰にも会いたがらなかった。ふさぎこんでいた。
気持ちは分からないでもない。けれど、いつまでもこうしているわけにもいかない。
今日ばかりは妨げられなかった。そう、博麗の巫女を妨げることが出来る者などいやしない。
紫の部屋の前の障子で足を止める。息を一つした。緊張する。
硝子戸の向こう側は青空が見えていた。ただ風は強く、ちぎれ雲を速いスピードで押し流していて、時折かたかたと音を立てて戸を揺らした。
受け入れてもらえるだろうか。はたして、このようなことが。
小さくかぶりをふる。馬鹿げているのだとしても、ここまで来てしまったのだ。
逡巡を振り払うように、障子を開けた。博麗の巫女の流儀なら、こうする。ノックや声かけなどしない。傍若無人、唯我独尊。自分は、そういう人間なのだ。
晴れた昼下がりだというのに、部屋の中は暗い。大きな和室の中に不釣り合いな天蓋付きの寝台。古びた風合いの重い布地がゆったりとしたドレープを作っている。明かりのないせいで、その暗い色の布地が紺なのか紫なのか黒なのか、判別もつかなかった。
僅かに色味の違う別珍の上掛けの下で、ごくわずかな金糸がうごめくのが垣間見えた。主が眠っていた。
主は目を開けずにいる。反応を待った。
やがて声だけがかかる。か細い、長いこと話していない少女の声。
「そこにいるのは、だれ?」
「……まだ寝ぼけてるの?」
苦笑を交える。そうするだろうと思うからだ。
主は目を見開いて、こちらを見た。
「ああ、れいむ。霊夢……」
息を飲み、声は震え、ほとんど過呼吸のようにして息を荒げて、そして身を起こす。はらりと色あせた金髪が寝台の上に広がった。
自分の両手に顔を埋めて、小さくかぶりをふる。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ずっと、夢を見ていて」
「何よ」
言葉を慎重に選びながら、大股で近づく。寝台のそばに寄った。
「ずっと寝込んでるって聞いて……うわっ」
いきなり抱き寄せられて、寝台に引きずり込まれた。腕の力はひどく強い。息が止まりそうなほど。
「ああ、霊夢。愛してる。あいして……」
声はひどく涙ぐんでいた。
「ちょっと、紫、ぐる、じぃ……」
「もう離さないわ。ぜったいに、離すものですか」
感極まった紫の顔が押し当てられる。そしてそのまま首筋や鎖骨に口づけが落とされる。それから、紫のすぐ隣にごろりと身体を転がされた。
腕の力がやっと緩まって、少し咳き込んだ。
申し訳なさそうに、紫は布団の中に顔を半分だけ埋めていた。おずおずと横目でこちらを見る。
「あ、あの……ごめんなさいね。ちょっと突然だったから、つい嬉しくて」
「もう。力の加減ぐらいしてよ。妖怪はみんな馬鹿力なんだから」
そう言うと、ますますしゅんとした。頭まで布団をかぶる。
「だって、急に来るから……寝ぼけてて。つい……だって……霊夢がかわいいから……」
布地ごしでぶつぶつとつぶやいているのが丸聞こえだった。苦笑して、その頭とおぼしきところを撫でてやった。
「かわいいのはあんたのほうよ。まったく」
そう言ってやると、ますます身体を縮こませて、うーとかあーとか言うだけの丸い繭みたいになった。
しばらくの間、寝かしつけるみたいにぽんぽんと撫でてやると、やがてちらちらとこちらを布の隙間から見てきた。わざと気づかないふりをしていると、シーツの隙間から指先だけを出して、こちらの黒髪をくるくると巻き付けた。
「何?」
「さわって、確認しようかと思って」
「いるわよ。ちゃんと」
そう答えると、また瞳を潤ませて、がばりと抱きついてきた。そうして身体の重みをこちらにあずけて、いろいろなところに口づけを落とした。頬、鼻先、額、まぶた。音を立てて、何度も何度も。
「ああ、霊夢、れいむ……」
口づけの合間、息継ぎをするように名前を呼ぶ。
そして仕上げのように、唇へキスが落ちた。唾液で濡れた唇がふれあい、滑る。舌先がおずおずと伸ばされ、ほんの少しだけこちらの唇に触れたかと思うと、すぐに引っ込む。
それだけで分かる。紫は迷っている。味わって良いのか。本当に、お互いの内側までふれあって良いのか。
吐息だけで、苦笑した。
あれだけ全身でうれしさを表現しておいて、どうして今更迷うことがある。
許しを示すように、こちらからも彼女を抱きしめた。背中に手を伸ばす。背骨と肩胛骨と肋骨の間に指先を這わせる。
少しやせたな、と思う。ちゃんと食べていない感じがして、胸が痛んだ。
「ん……」
つ、と指で触れるだけなのに、紫の息が少し荒くなり、そして舌先がおずおずと腔内へ入り込んできた。流れ込んでくる唾液が甘い。唇の裏側、そして歯列の中、奥まで確かめるように触れられる。その愛撫は蹂躙するようなものではなく、それでも押しとどめていられない情熱が熱い肉の塊の形をして内側に入り込んでくる。
それを受け止めて、自分からも舌を絡める。ざらざらとした触感で粘膜どうしが触れ合う。恥ずかしいところを触れさせている。頬が自然と熱くなり、目をぎゅっと閉じる。触れ合った唇がぬるぬるとこぼれた唾液で滑る。
彼女の身体の柔らかな感触。重み。二つの柔らかな乳房が自分の上に載り、心地よい弾力が押しつけられている。その事実に頭の中がぐるぐると回る。しがみつくように、背中に爪を立てた。
「ぷ、ふぁ……」
やっと息をついた。酸欠になりそうで、息を荒げた。
紫は私の着物のひもに手を掛けた。しゅっと引っ張って解いてしまってから、いたずらを見つかった子供のように、おずおずと訊いた。
「……いいかしら?」
「いまさらよ」
本当に、何もかもが遅い。苦笑まじりで、紫のワンピースにこちらから手をかけた。後ろのボタンを一つずつ外す。
お互いに服を取り去ってしまって、下着姿になる。
「大きいわね」
ほんの少しの嫉妬を込めて、紫に言う。
「ふふ。吸ってみる? 減らないわよ」
そう言ってたっぷりとした乳房を私の顔に向けて押しつけてくる。そっと指先で触れる。柔らかい。手の平で覆おうとしても、あふれてしまうほどに大きい。
もてあそぶように、くにくにと捏ねる。少し指を食い込ませるだけで形を自由に変える。たっぷりとした肉感が指の間に残る。もっと間近で見たくて、胸の谷間に顔を近づけた。きめ細やかな肌の滑らかな感触。雪のように白い。
唇で触れ、舌先で舐め、そしてそっと歯を立ててみる。痕がつかないように、唾液で濡れた固い歯を滑らせる。そうしているうちに、頂点の桜色が少しずつ色を濃くし、屹立してくる。
ふと顔を上げると、紫は顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。こくりと生唾を飲み込んだのが分かる。
「?」
目が合ったまま首をかしげると、彼女は声にならないうめき声を出して、両手で自分の顔を覆った。大きく何度も息をつく。
「どうしたの?」
「なんだか、信じられなくて……今でも、まだ夢を見てるみたい」
肩をふるわせて、紫は言う。
「夢じゃなくて、私を見て」
私はそう答えた。
「ちゃんと、こっちを見て」
彼女の指先のひとつひとつに口づけを落とす。咲き初めの桜がほころびるように少しずつ力が緩んで解けていく。
間から彼女の不安げに揺れる瞳がのぞく。安心させるように微笑んだ。
「やっと会えた、ね」
そう言うと、彼女の顔がみるみるうちに歪んで、また子供のようにぽろぽろと涙を流した。それを舌先で舐め取っていく。苦いような塩辛いような味がした。
長い金髪を指で梳いてやる。首筋に腕をまわして抱きしめてやる。子供をあやすようにその頭を撫でてやる。
「よく我慢したね。偉かったね。もういいよ。もう大丈夫なのよ」
そっとささやく。自分の吐く息が彼女の肌にぶつかって跳ね返って、その熱さを増した。
深い深い口づけを交わした。その間も、紫の指先は私の身体をゆっくりと撫でていた。そのこそばゆいような迷いが、身体の熱をたかぶらせた。
それでも背中や肩口や腰に指を伝わせるぐらいで、あくまでも乳房や尻のような性的なところにはけして触れなかった。紫は何かを恐れているようだった。
本当に、この期に及んでまだ躊躇うつもりなのか。
あきれを通り越して憐憫すら覚えるほどの臆病者だと思った。
ぐっと力を込めて、紫の腕を掴み、押し倒す。抵抗はなかった。涙で潤んだ瞳が熱っぽく、触れられるのを切望していて、かすかにほころんだ唇は何もかもを受け入れる準備のために艶めいて薄く光っていた。
「あのね、紫。私、怒ってるのよ」
鼻と鼻がくっつきそうな距離で、わざとそんなことを言った。
紫はびくりと身体を震わせて、それから泣きそうな顔をして、視線をそらした。
「……そうね。当然だわ」
「そうじゃない。そうじゃないの。ああもう。どうしようもない妖怪ね」
ふざけるように、鼻をぎゅっとつまんでやった。
「目を見てちゃんと好きだと言って。まだ私、言われてないわ」
「あ、う……」
みるみるうちに、紫の顔がかあっと赤くなっていった。それを見ているうちにこっちまで恥ずかしくなってきた。まったく何を言っているんだろう。
紫は深くため息をして、それからこぼれ落ちる椿の花のように一息で言った。
「好きよ、霊夢。愛してる。どうしようもないくらいに。食べてしまいたいくらいに」
その言葉の語尾は悲しげにかすれていた。それを埋めるように口づけをした。浅く。
そして私ははにかみを込めて笑う。
「いいよ。紫になら」
そう言って、彼女の手と指先に口づけをする。そのまま舌先でちろちろと舐め、吸い付く。口の中に右手の中指の先を含むと、紫が小さくうめいた。
「っ、れい、む……」
紫が切なげな声を上げる。耐えきれなくなった左手が私の胸に触れる。紫に比べれば小さな乳房がおずおずと、それから次第に大胆に揺らされる。
「ん……」
甘く鼻を鳴らす。とくとくと心臓が鳴る。胸の上、指先でつままれてぴりりと痺れるような感覚が走る。けれど、その快感よりは安堵感の方が大きかった。
溺れてくれるなら、その方が良い。沈み込んでいるよりは、ずっと。
私の唾液で濡れた右手中指が乳首の上をぬるりと滑る。ふうくらと屹立させられて、親指と共になぶるようにこねられる。こらえた私の吐息より、興奮した彼女のあえぎの方がずっと大きく聞こえた。熱にうかされたみたいに、私の首筋や鎖骨に唇を落とし、吸い付き、痕を残す。ちくりとした痛みと快楽の間にあるものが私の腰の下をとろかしていく。
もう大丈夫。たぶん。
「……っ、ゆか、り」
名前を呼ぶ。手を握ってくれる。そのまま紫は身体を下にずらした。乳房から下、腹、腰、へそ、そして太ももの付け根まで唇でわざと音を立てて吸い付いていく。そして私の足の間へ手を入れた。少しだけ羞恥が勝って、膝の間を閉じようとしたが、抵抗はむなしく、こじ開けられてしまう。
「きれい」
熱にうかされたように、紫はつぶやいた。息がかかりそうなぐらいの間近で見つめられる。自分のそこがすっかりとろけてしまっていて、少しずつ揮発しているのが分かるぐらいに。
「あん、まり……その、」
顔を背ける。本当に耳まで熱くなってしまっている。
「ん。ごめんなさい」
いいざま、その場所に口づけされた。そして、水音が立つほどに激しく舐められる。指先で茂みをかき分けられて、そのぬるりとした様子で、恥ずかしく濡れてしまっていることが自分でも分かる。
「っ、う、ぁっ……」
演技ではないあえぎ声が出て、思わず口を自分でふさぐ。紫の指先がその花弁を焦らして、ゆっくりと入り口をなぞる。舌先で周りにこぼれた蜜をなめられる。太ももの内側にまで唇が這う。そこまで垂れてしまっているということか。
「んっ、ぅ……ゃ……」
完全に主導権は握られて、焦らされている。円を描くように花弁とその周りを撫でられて、高い声が漏れそうになる。顔が熱い。自分の手の平に感じる息の温度に火傷しそうだ。さっきまでの余裕なんてもうどこにもない。ただ、無様に声を上げないために、親指をぎゅっと噛む。でもそんなことでごまかせるわけがなかった。
「ふゃぁ……」
紫の指先が陰核に触れた時に、あからさまな声が漏れた。紫が感嘆する息を感じて、もう耐えきれなくなった。足を閉じて丸くなる。両手で自分の顔を覆う。
「ちょっと、」
紫の慌てた声が聞こえる。でも振り返らない。
後ろから肩に触れられる。吐息が背中にかかる。
「いやだった?」
不安げなその声に、かぶりをふる。けっして嫌じゃなかった。ただひたすらに恥ずかしいだけで、それを説明するのさえ恥ずかしい。
「ん。いやじゃないなら、いいわ」
笑みを含んだ声で、紫は言った。丸まった背中をつ、となぞられて、思わずぴんと背筋が伸びた。その隙に尻の間に手を差し入れられる。
「ひゃっ……」
尻の穴までびっしょりと垂れてきていることに今更気がついて焦る。
「や、そこ、だめ。きた……っ、ぁう……」
うつぶせにさせられて、後ろから責められる。すぼまった後ろの穴の上をぬるぬると指で愛撫されて、独りでにお腹に力が入った。
「ほ、ほんとにそこは……だめ……ばかっ」
思わず罵倒の言葉が口から出た。それなのに紫はくすくす笑いをやめない。
「じゃあ、どちらか選びなさいな」
「い、いじわる……」
恥ずかしさのせいで本当に泣きそうになっていた。ごろんと寝返りをうって、紫をにらみつけた。
「ん。ごめんなさいね。ちゃんと優しくするわ」
お詫びのように、優しい口づけが降りた。乳房と乳房が重なり、柔らかな肌どうしがくっついた。そのまま一体になってしまいそうなぐらいに同じ体温をしていた。
唇と唇を合わせたままで、足の間へ触れられる。身体がかすかにこわばる。
「だいじょうぶだから。ね、力ぬいて」
愛おしげに声を掛けられて、出来るだけそうしようと思う。
たっぷりと濡れそぼったそこに指先が押し当てられる。
「挿れる、ね」
こくりとうなずいた。つるりとあっけなく入ってしまった。細い指先だというのに、確かに紫を感じて、胸のときめきが止まらなかった。
「んん……っ」
紫の方が、ずっと感極まっていた。はあはあと息を荒げて、私の腰に回した左手で強く抱いた。もう離れていかないように、と。
ゆっくりと出し入れをされる。自分の膣内が独りでに指を欲しがって締め付けているのが分かった。
「っ……ふぁ、ん、やぁ……」
動くごとに甲高い声が出てしまう。ぐじゅぐじゅといやらしい音が立つ。足を思い切り広げさせられて、奥の子宮口を突かれるごとに、快楽が脳天を白く染める。もう声を止めることも出来はしない。ただされるがままになって嬌声を上げる。
指の角度を巧みに変えられて、どこを突けばよりいっそうよがるのか、確かめられてはその通りになる。貫かれるごとに、もっと欲しいと欲望がこみ上げてくる。
「ふゃ、ゆかり……や、ぁ……」
息もたえだえに、彼女の名前を呼ぶ。一度軽く達して、びくりびくりと腰が震えた。
でも紫はそれだけで許してはくれなかった。
興奮してぷっくりと勃ちあがった陰核の皮を左手で剥かれ、口づけされるだけでこの上ない快楽が走る。それと共にまた中指で膣の中、手前側のざらざらしたところを何度も擦られて、変な衝動がこみ上げてくる。排泄欲にも似た何か。耐えなくちゃと思うのに、執拗に責められてこれ以上はもう無理だというところまで来る。
「あっ、ぁ、ああ、だ、め……ふあ……っっ!」
押さえきれない気持ちが決壊したとき、ぷし、と霧が噴くように自分の下腹部が紫の顔を汚してしまった。やってしまったという気持ちとは裏腹に、もう耐えきれなくなった尿道から透明な液体がこぼれた。
「ぅ、ぁ……」
ごめんなさい、そう言いたかった。けれどその言葉が安易に口に出せないぐらいの圧倒的な迫力で、紫はこの上なく恍惚とした笑みを浮かべていた。
「いいのよ」
これが貴女だから。貴女がそこにいるから。
胸の奥がじくりとした。
そのまま再びうつぶせにされ、今度はよつばいの恰好になる。ほとんど身体に力が入らないのに、尻を高く持ち上げられて、また内側の角度を変えられて、さっきは届かなかった新しい場所を開拓させられる。
「やあぁ……ふゃあぁ……」
声がもう抑えられなかった。自制心はさっき一緒に壊してしまったみたいだった。私に出来るのはただ腕の中の枕を抱きしめて、気絶しないようにしているだけだった。獣のように恥じらいもなく泣き叫んだ。
挿入される指が増えて、より大きく膣内をかき混ぜられる。ごぽりと空気が入るぐらいの緩さになって、紫の指を受け入れている。自分の中の気持ちいいところが下がってきているのが分かる。もっと紫に気持ちよくしてほしくて、子宮が降りてきている。
「れいむ……ああ、れいむ、が、いる……ここに」
私の腰を抱いて、自分の腰を前後に動かして、指を奥に押し込んで、紫は夢を見ているような声でつぶやく。
「んんっっ……ふやぁ……ゆか、り……」
紫が名前を呼ぶごとに胸の中の切なさが増した。背中をそらせて何度目かの絶頂に達する。もうこれ以上は無理だと想うのに、紫の欲望は止まるところを知らない。
ぐったりと力の抜けた私の身体を軽々持ち上げる。そして左手で身体を抱いたまま、壁に押し当てて、右手を膣の中に入れる。指の数はもう三本に達した。
「っ、きゅぅ……や……ぁ」
声はもう枯れていて、ほとんど息ぐらいしか出なかった。死体か人形のようになってされるがままになる。性的な快感はもうほとんど心の器をあふれさせてしまって、膣の中は感じすぎて痺れたようになっていた。
壁のごつごつした感触が裸の背中に当たる。無我夢中になった紫が私の肩に歯を立てる。もう自分で何をしているのか分かっていないのだろう。痕がつくということを通り越して、食い破られて血が流れていた。
「っ、っ、ぅ、っぁ……う……」
泣いているのか、啼いているのか。
紫だって泣いていた。私の声がか細くなるごとに、紫の肩の震えがひどくなった。やがてずるずると二人して冷たい床の上に崩れ落ちた。脱力した身体と身体が重なり合って、動かなくなった。ぜえぜえと息ばかりが二人きりの空間を埋めていた。
ほんの一瞬だけ意識が落ちていた。
「あ……!」
声がして、紫の目が一瞬見開かれた。そして、すぐに沈んだ色になる。
自分に言い聞かせるような独り言が彼女の唇からこぼれ落ちた。
「ええ。そう。そうよね。分かっては、いたのよ」
何度もなんどもかぶりをふる。
どうしたのだろう、と思った。
眼の前に落ちてきた邪魔な髪の毛をかき上げようとして、手を、自分の頭にやった。
「あ、」
ふわりとした感触。
耳が。
獣の耳が、出ていた。
自分が、最後の最後にしくじったということを思い知る。唇を噛みしめるが、もう遅い。
本当に、何もかもが、今更だ。遅すぎるのだ、何もかも。
種がばれてしまっては、もう手品は続かない。
魔法の、幻想の時間は終わりだ。
後に残るのは現実だけ。
「……ありがとう。ごめんなさい」
主は、かすれそうな声でそれだけを言って、唇をどうにか微笑の形にゆがめ、それから目を閉じてひとり、シーツの中へ戻った。そして二度と動こうとはしなかった。
私は乱暴に自分の服をかき集めると、早足で逃げた。
もうこれ以上、取り繕うことはできない。夢はさめてしまった。
博麗霊夢が死んでから、今日でおよそ半年になる。
彼女が生きている間に、主が想いを告げることはなかった。二人が肌を触れ合わせることはなかった。
何もかもが手遅れで食い違っていた。
青空はまぶしく、それなのにはらはらと雨が降りはじめた。
馬鹿げた仮装を全てはぎ取って、縁側に座る。
「らんしゃま?」
黒猫が膝の上にのる。頬をすりよせて、口元をぺろぺろと舐めてくる。
「うん」
「げんきだしてください」
「ありがとう」
水滴がぽたぽたと落ちて、猫の毛皮の上に染みをつくった。
「ごめんなさい」
鬱の基本は上げて落とす。嫌な予感がしたら回れ右。
拙作「博麗霊夢と幸福論」http://i0-0i.sakura.ne.jp/glueck/ のサブエピソード的な何か? PDF無料公開してます。
姿見で自分の全身を確認する。
黒髪を結わえる赤い大きなリボン、耳の横の房飾り、白い肌に映える紅白の巫女装束。
鏡に向かって小さく笑ってみせる。あどけなさと純朴さ、それにどこか暢気さが混じる。
大丈夫。これで大丈夫。
私は完璧に博麗の巫女だ。
自分に言い聞かせて、きびすを返す。
もう確認は十分。
マヨイガの廊下を歩く。少しだけ木の板がきしむ。しばらくこのあたりは手入れをしなかった。紫がそれを望まなかった。だれもそばに寄ることが出来なかった。
近づこうと歩み寄れば、隙間を通じていつのまにか家の反対側に出てしまうのだ。
このところ、この家の主は誰にも会いたがらなかった。ふさぎこんでいた。
気持ちは分からないでもない。けれど、いつまでもこうしているわけにもいかない。
今日ばかりは妨げられなかった。そう、博麗の巫女を妨げることが出来る者などいやしない。
紫の部屋の前の障子で足を止める。息を一つした。緊張する。
硝子戸の向こう側は青空が見えていた。ただ風は強く、ちぎれ雲を速いスピードで押し流していて、時折かたかたと音を立てて戸を揺らした。
受け入れてもらえるだろうか。はたして、このようなことが。
小さくかぶりをふる。馬鹿げているのだとしても、ここまで来てしまったのだ。
逡巡を振り払うように、障子を開けた。博麗の巫女の流儀なら、こうする。ノックや声かけなどしない。傍若無人、唯我独尊。自分は、そういう人間なのだ。
晴れた昼下がりだというのに、部屋の中は暗い。大きな和室の中に不釣り合いな天蓋付きの寝台。古びた風合いの重い布地がゆったりとしたドレープを作っている。明かりのないせいで、その暗い色の布地が紺なのか紫なのか黒なのか、判別もつかなかった。
僅かに色味の違う別珍の上掛けの下で、ごくわずかな金糸がうごめくのが垣間見えた。主が眠っていた。
主は目を開けずにいる。反応を待った。
やがて声だけがかかる。か細い、長いこと話していない少女の声。
「そこにいるのは、だれ?」
「……まだ寝ぼけてるの?」
苦笑を交える。そうするだろうと思うからだ。
主は目を見開いて、こちらを見た。
「ああ、れいむ。霊夢……」
息を飲み、声は震え、ほとんど過呼吸のようにして息を荒げて、そして身を起こす。はらりと色あせた金髪が寝台の上に広がった。
自分の両手に顔を埋めて、小さくかぶりをふる。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ずっと、夢を見ていて」
「何よ」
言葉を慎重に選びながら、大股で近づく。寝台のそばに寄った。
「ずっと寝込んでるって聞いて……うわっ」
いきなり抱き寄せられて、寝台に引きずり込まれた。腕の力はひどく強い。息が止まりそうなほど。
「ああ、霊夢。愛してる。あいして……」
声はひどく涙ぐんでいた。
「ちょっと、紫、ぐる、じぃ……」
「もう離さないわ。ぜったいに、離すものですか」
感極まった紫の顔が押し当てられる。そしてそのまま首筋や鎖骨に口づけが落とされる。それから、紫のすぐ隣にごろりと身体を転がされた。
腕の力がやっと緩まって、少し咳き込んだ。
申し訳なさそうに、紫は布団の中に顔を半分だけ埋めていた。おずおずと横目でこちらを見る。
「あ、あの……ごめんなさいね。ちょっと突然だったから、つい嬉しくて」
「もう。力の加減ぐらいしてよ。妖怪はみんな馬鹿力なんだから」
そう言うと、ますますしゅんとした。頭まで布団をかぶる。
「だって、急に来るから……寝ぼけてて。つい……だって……霊夢がかわいいから……」
布地ごしでぶつぶつとつぶやいているのが丸聞こえだった。苦笑して、その頭とおぼしきところを撫でてやった。
「かわいいのはあんたのほうよ。まったく」
そう言ってやると、ますます身体を縮こませて、うーとかあーとか言うだけの丸い繭みたいになった。
しばらくの間、寝かしつけるみたいにぽんぽんと撫でてやると、やがてちらちらとこちらを布の隙間から見てきた。わざと気づかないふりをしていると、シーツの隙間から指先だけを出して、こちらの黒髪をくるくると巻き付けた。
「何?」
「さわって、確認しようかと思って」
「いるわよ。ちゃんと」
そう答えると、また瞳を潤ませて、がばりと抱きついてきた。そうして身体の重みをこちらにあずけて、いろいろなところに口づけを落とした。頬、鼻先、額、まぶた。音を立てて、何度も何度も。
「ああ、霊夢、れいむ……」
口づけの合間、息継ぎをするように名前を呼ぶ。
そして仕上げのように、唇へキスが落ちた。唾液で濡れた唇がふれあい、滑る。舌先がおずおずと伸ばされ、ほんの少しだけこちらの唇に触れたかと思うと、すぐに引っ込む。
それだけで分かる。紫は迷っている。味わって良いのか。本当に、お互いの内側までふれあって良いのか。
吐息だけで、苦笑した。
あれだけ全身でうれしさを表現しておいて、どうして今更迷うことがある。
許しを示すように、こちらからも彼女を抱きしめた。背中に手を伸ばす。背骨と肩胛骨と肋骨の間に指先を這わせる。
少しやせたな、と思う。ちゃんと食べていない感じがして、胸が痛んだ。
「ん……」
つ、と指で触れるだけなのに、紫の息が少し荒くなり、そして舌先がおずおずと腔内へ入り込んできた。流れ込んでくる唾液が甘い。唇の裏側、そして歯列の中、奥まで確かめるように触れられる。その愛撫は蹂躙するようなものではなく、それでも押しとどめていられない情熱が熱い肉の塊の形をして内側に入り込んでくる。
それを受け止めて、自分からも舌を絡める。ざらざらとした触感で粘膜どうしが触れ合う。恥ずかしいところを触れさせている。頬が自然と熱くなり、目をぎゅっと閉じる。触れ合った唇がぬるぬるとこぼれた唾液で滑る。
彼女の身体の柔らかな感触。重み。二つの柔らかな乳房が自分の上に載り、心地よい弾力が押しつけられている。その事実に頭の中がぐるぐると回る。しがみつくように、背中に爪を立てた。
「ぷ、ふぁ……」
やっと息をついた。酸欠になりそうで、息を荒げた。
紫は私の着物のひもに手を掛けた。しゅっと引っ張って解いてしまってから、いたずらを見つかった子供のように、おずおずと訊いた。
「……いいかしら?」
「いまさらよ」
本当に、何もかもが遅い。苦笑まじりで、紫のワンピースにこちらから手をかけた。後ろのボタンを一つずつ外す。
お互いに服を取り去ってしまって、下着姿になる。
「大きいわね」
ほんの少しの嫉妬を込めて、紫に言う。
「ふふ。吸ってみる? 減らないわよ」
そう言ってたっぷりとした乳房を私の顔に向けて押しつけてくる。そっと指先で触れる。柔らかい。手の平で覆おうとしても、あふれてしまうほどに大きい。
もてあそぶように、くにくにと捏ねる。少し指を食い込ませるだけで形を自由に変える。たっぷりとした肉感が指の間に残る。もっと間近で見たくて、胸の谷間に顔を近づけた。きめ細やかな肌の滑らかな感触。雪のように白い。
唇で触れ、舌先で舐め、そしてそっと歯を立ててみる。痕がつかないように、唾液で濡れた固い歯を滑らせる。そうしているうちに、頂点の桜色が少しずつ色を濃くし、屹立してくる。
ふと顔を上げると、紫は顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。こくりと生唾を飲み込んだのが分かる。
「?」
目が合ったまま首をかしげると、彼女は声にならないうめき声を出して、両手で自分の顔を覆った。大きく何度も息をつく。
「どうしたの?」
「なんだか、信じられなくて……今でも、まだ夢を見てるみたい」
肩をふるわせて、紫は言う。
「夢じゃなくて、私を見て」
私はそう答えた。
「ちゃんと、こっちを見て」
彼女の指先のひとつひとつに口づけを落とす。咲き初めの桜がほころびるように少しずつ力が緩んで解けていく。
間から彼女の不安げに揺れる瞳がのぞく。安心させるように微笑んだ。
「やっと会えた、ね」
そう言うと、彼女の顔がみるみるうちに歪んで、また子供のようにぽろぽろと涙を流した。それを舌先で舐め取っていく。苦いような塩辛いような味がした。
長い金髪を指で梳いてやる。首筋に腕をまわして抱きしめてやる。子供をあやすようにその頭を撫でてやる。
「よく我慢したね。偉かったね。もういいよ。もう大丈夫なのよ」
そっとささやく。自分の吐く息が彼女の肌にぶつかって跳ね返って、その熱さを増した。
深い深い口づけを交わした。その間も、紫の指先は私の身体をゆっくりと撫でていた。そのこそばゆいような迷いが、身体の熱をたかぶらせた。
それでも背中や肩口や腰に指を伝わせるぐらいで、あくまでも乳房や尻のような性的なところにはけして触れなかった。紫は何かを恐れているようだった。
本当に、この期に及んでまだ躊躇うつもりなのか。
あきれを通り越して憐憫すら覚えるほどの臆病者だと思った。
ぐっと力を込めて、紫の腕を掴み、押し倒す。抵抗はなかった。涙で潤んだ瞳が熱っぽく、触れられるのを切望していて、かすかにほころんだ唇は何もかもを受け入れる準備のために艶めいて薄く光っていた。
「あのね、紫。私、怒ってるのよ」
鼻と鼻がくっつきそうな距離で、わざとそんなことを言った。
紫はびくりと身体を震わせて、それから泣きそうな顔をして、視線をそらした。
「……そうね。当然だわ」
「そうじゃない。そうじゃないの。ああもう。どうしようもない妖怪ね」
ふざけるように、鼻をぎゅっとつまんでやった。
「目を見てちゃんと好きだと言って。まだ私、言われてないわ」
「あ、う……」
みるみるうちに、紫の顔がかあっと赤くなっていった。それを見ているうちにこっちまで恥ずかしくなってきた。まったく何を言っているんだろう。
紫は深くため息をして、それからこぼれ落ちる椿の花のように一息で言った。
「好きよ、霊夢。愛してる。どうしようもないくらいに。食べてしまいたいくらいに」
その言葉の語尾は悲しげにかすれていた。それを埋めるように口づけをした。浅く。
そして私ははにかみを込めて笑う。
「いいよ。紫になら」
そう言って、彼女の手と指先に口づけをする。そのまま舌先でちろちろと舐め、吸い付く。口の中に右手の中指の先を含むと、紫が小さくうめいた。
「っ、れい、む……」
紫が切なげな声を上げる。耐えきれなくなった左手が私の胸に触れる。紫に比べれば小さな乳房がおずおずと、それから次第に大胆に揺らされる。
「ん……」
甘く鼻を鳴らす。とくとくと心臓が鳴る。胸の上、指先でつままれてぴりりと痺れるような感覚が走る。けれど、その快感よりは安堵感の方が大きかった。
溺れてくれるなら、その方が良い。沈み込んでいるよりは、ずっと。
私の唾液で濡れた右手中指が乳首の上をぬるりと滑る。ふうくらと屹立させられて、親指と共になぶるようにこねられる。こらえた私の吐息より、興奮した彼女のあえぎの方がずっと大きく聞こえた。熱にうかされたみたいに、私の首筋や鎖骨に唇を落とし、吸い付き、痕を残す。ちくりとした痛みと快楽の間にあるものが私の腰の下をとろかしていく。
もう大丈夫。たぶん。
「……っ、ゆか、り」
名前を呼ぶ。手を握ってくれる。そのまま紫は身体を下にずらした。乳房から下、腹、腰、へそ、そして太ももの付け根まで唇でわざと音を立てて吸い付いていく。そして私の足の間へ手を入れた。少しだけ羞恥が勝って、膝の間を閉じようとしたが、抵抗はむなしく、こじ開けられてしまう。
「きれい」
熱にうかされたように、紫はつぶやいた。息がかかりそうなぐらいの間近で見つめられる。自分のそこがすっかりとろけてしまっていて、少しずつ揮発しているのが分かるぐらいに。
「あん、まり……その、」
顔を背ける。本当に耳まで熱くなってしまっている。
「ん。ごめんなさい」
いいざま、その場所に口づけされた。そして、水音が立つほどに激しく舐められる。指先で茂みをかき分けられて、そのぬるりとした様子で、恥ずかしく濡れてしまっていることが自分でも分かる。
「っ、う、ぁっ……」
演技ではないあえぎ声が出て、思わず口を自分でふさぐ。紫の指先がその花弁を焦らして、ゆっくりと入り口をなぞる。舌先で周りにこぼれた蜜をなめられる。太ももの内側にまで唇が這う。そこまで垂れてしまっているということか。
「んっ、ぅ……ゃ……」
完全に主導権は握られて、焦らされている。円を描くように花弁とその周りを撫でられて、高い声が漏れそうになる。顔が熱い。自分の手の平に感じる息の温度に火傷しそうだ。さっきまでの余裕なんてもうどこにもない。ただ、無様に声を上げないために、親指をぎゅっと噛む。でもそんなことでごまかせるわけがなかった。
「ふゃぁ……」
紫の指先が陰核に触れた時に、あからさまな声が漏れた。紫が感嘆する息を感じて、もう耐えきれなくなった。足を閉じて丸くなる。両手で自分の顔を覆う。
「ちょっと、」
紫の慌てた声が聞こえる。でも振り返らない。
後ろから肩に触れられる。吐息が背中にかかる。
「いやだった?」
不安げなその声に、かぶりをふる。けっして嫌じゃなかった。ただひたすらに恥ずかしいだけで、それを説明するのさえ恥ずかしい。
「ん。いやじゃないなら、いいわ」
笑みを含んだ声で、紫は言った。丸まった背中をつ、となぞられて、思わずぴんと背筋が伸びた。その隙に尻の間に手を差し入れられる。
「ひゃっ……」
尻の穴までびっしょりと垂れてきていることに今更気がついて焦る。
「や、そこ、だめ。きた……っ、ぁう……」
うつぶせにさせられて、後ろから責められる。すぼまった後ろの穴の上をぬるぬると指で愛撫されて、独りでにお腹に力が入った。
「ほ、ほんとにそこは……だめ……ばかっ」
思わず罵倒の言葉が口から出た。それなのに紫はくすくす笑いをやめない。
「じゃあ、どちらか選びなさいな」
「い、いじわる……」
恥ずかしさのせいで本当に泣きそうになっていた。ごろんと寝返りをうって、紫をにらみつけた。
「ん。ごめんなさいね。ちゃんと優しくするわ」
お詫びのように、優しい口づけが降りた。乳房と乳房が重なり、柔らかな肌どうしがくっついた。そのまま一体になってしまいそうなぐらいに同じ体温をしていた。
唇と唇を合わせたままで、足の間へ触れられる。身体がかすかにこわばる。
「だいじょうぶだから。ね、力ぬいて」
愛おしげに声を掛けられて、出来るだけそうしようと思う。
たっぷりと濡れそぼったそこに指先が押し当てられる。
「挿れる、ね」
こくりとうなずいた。つるりとあっけなく入ってしまった。細い指先だというのに、確かに紫を感じて、胸のときめきが止まらなかった。
「んん……っ」
紫の方が、ずっと感極まっていた。はあはあと息を荒げて、私の腰に回した左手で強く抱いた。もう離れていかないように、と。
ゆっくりと出し入れをされる。自分の膣内が独りでに指を欲しがって締め付けているのが分かった。
「っ……ふぁ、ん、やぁ……」
動くごとに甲高い声が出てしまう。ぐじゅぐじゅといやらしい音が立つ。足を思い切り広げさせられて、奥の子宮口を突かれるごとに、快楽が脳天を白く染める。もう声を止めることも出来はしない。ただされるがままになって嬌声を上げる。
指の角度を巧みに変えられて、どこを突けばよりいっそうよがるのか、確かめられてはその通りになる。貫かれるごとに、もっと欲しいと欲望がこみ上げてくる。
「ふゃ、ゆかり……や、ぁ……」
息もたえだえに、彼女の名前を呼ぶ。一度軽く達して、びくりびくりと腰が震えた。
でも紫はそれだけで許してはくれなかった。
興奮してぷっくりと勃ちあがった陰核の皮を左手で剥かれ、口づけされるだけでこの上ない快楽が走る。それと共にまた中指で膣の中、手前側のざらざらしたところを何度も擦られて、変な衝動がこみ上げてくる。排泄欲にも似た何か。耐えなくちゃと思うのに、執拗に責められてこれ以上はもう無理だというところまで来る。
「あっ、ぁ、ああ、だ、め……ふあ……っっ!」
押さえきれない気持ちが決壊したとき、ぷし、と霧が噴くように自分の下腹部が紫の顔を汚してしまった。やってしまったという気持ちとは裏腹に、もう耐えきれなくなった尿道から透明な液体がこぼれた。
「ぅ、ぁ……」
ごめんなさい、そう言いたかった。けれどその言葉が安易に口に出せないぐらいの圧倒的な迫力で、紫はこの上なく恍惚とした笑みを浮かべていた。
「いいのよ」
これが貴女だから。貴女がそこにいるから。
胸の奥がじくりとした。
そのまま再びうつぶせにされ、今度はよつばいの恰好になる。ほとんど身体に力が入らないのに、尻を高く持ち上げられて、また内側の角度を変えられて、さっきは届かなかった新しい場所を開拓させられる。
「やあぁ……ふゃあぁ……」
声がもう抑えられなかった。自制心はさっき一緒に壊してしまったみたいだった。私に出来るのはただ腕の中の枕を抱きしめて、気絶しないようにしているだけだった。獣のように恥じらいもなく泣き叫んだ。
挿入される指が増えて、より大きく膣内をかき混ぜられる。ごぽりと空気が入るぐらいの緩さになって、紫の指を受け入れている。自分の中の気持ちいいところが下がってきているのが分かる。もっと紫に気持ちよくしてほしくて、子宮が降りてきている。
「れいむ……ああ、れいむ、が、いる……ここに」
私の腰を抱いて、自分の腰を前後に動かして、指を奥に押し込んで、紫は夢を見ているような声でつぶやく。
「んんっっ……ふやぁ……ゆか、り……」
紫が名前を呼ぶごとに胸の中の切なさが増した。背中をそらせて何度目かの絶頂に達する。もうこれ以上は無理だと想うのに、紫の欲望は止まるところを知らない。
ぐったりと力の抜けた私の身体を軽々持ち上げる。そして左手で身体を抱いたまま、壁に押し当てて、右手を膣の中に入れる。指の数はもう三本に達した。
「っ、きゅぅ……や……ぁ」
声はもう枯れていて、ほとんど息ぐらいしか出なかった。死体か人形のようになってされるがままになる。性的な快感はもうほとんど心の器をあふれさせてしまって、膣の中は感じすぎて痺れたようになっていた。
壁のごつごつした感触が裸の背中に当たる。無我夢中になった紫が私の肩に歯を立てる。もう自分で何をしているのか分かっていないのだろう。痕がつくということを通り越して、食い破られて血が流れていた。
「っ、っ、ぅ、っぁ……う……」
泣いているのか、啼いているのか。
紫だって泣いていた。私の声がか細くなるごとに、紫の肩の震えがひどくなった。やがてずるずると二人して冷たい床の上に崩れ落ちた。脱力した身体と身体が重なり合って、動かなくなった。ぜえぜえと息ばかりが二人きりの空間を埋めていた。
ほんの一瞬だけ意識が落ちていた。
「あ……!」
声がして、紫の目が一瞬見開かれた。そして、すぐに沈んだ色になる。
自分に言い聞かせるような独り言が彼女の唇からこぼれ落ちた。
「ええ。そう。そうよね。分かっては、いたのよ」
何度もなんどもかぶりをふる。
どうしたのだろう、と思った。
眼の前に落ちてきた邪魔な髪の毛をかき上げようとして、手を、自分の頭にやった。
「あ、」
ふわりとした感触。
耳が。
獣の耳が、出ていた。
自分が、最後の最後にしくじったということを思い知る。唇を噛みしめるが、もう遅い。
本当に、何もかもが、今更だ。遅すぎるのだ、何もかも。
種がばれてしまっては、もう手品は続かない。
魔法の、幻想の時間は終わりだ。
後に残るのは現実だけ。
「……ありがとう。ごめんなさい」
主は、かすれそうな声でそれだけを言って、唇をどうにか微笑の形にゆがめ、それから目を閉じてひとり、シーツの中へ戻った。そして二度と動こうとはしなかった。
私は乱暴に自分の服をかき集めると、早足で逃げた。
もうこれ以上、取り繕うことはできない。夢はさめてしまった。
博麗霊夢が死んでから、今日でおよそ半年になる。
彼女が生きている間に、主が想いを告げることはなかった。二人が肌を触れ合わせることはなかった。
何もかもが手遅れで食い違っていた。
青空はまぶしく、それなのにはらはらと雨が降りはじめた。
馬鹿げた仮装を全てはぎ取って、縁側に座る。
「らんしゃま?」
黒猫が膝の上にのる。頬をすりよせて、口元をぺろぺろと舐めてくる。
「うん」
「げんきだしてください」
「ありがとう」
水滴がぽたぽたと落ちて、猫の毛皮の上に染みをつくった。
「ごめんなさい」
しかしあとがきの没台詞が台無しだw
ハラショー!
今度は幸福論を読み返してきます。
こころの整理がついてあとがきの展開になるまで、この有様を綿々と繰り返す泥沼が待ってると思うとぞくぞくしますw
ラスト数文字の登場の橙が意外に存在感大
魂がご奉仕属性なんですよあいつら
面白かったです。
なるほど、その子だったのか。 切ない。