――――注意―――――
「紅紫―母と呼ばれた日」の続きです。
美鈴が紫の義理の娘の八雲紅という設定です。
藍視点です。
―――――――――――
私はかつて大陸を支配していたこともあった大妖怪、九尾の妖狐。
今は贅を尽くすことにも飽き、隠居生活をして穏やかな日々を送っていた。
そんな私の前にある日、隣の島国から妖怪が現れた。
そいつは私に向かってこう言った。
「ふむ、貴女となら上手くやっていけそうな気がするわ。どう? 私の式にならない?」
相手がかなりの実力を持つ者であることは分かっていたが、私にも負けない自信がある。
従えと言われて、はいそうですかという訳もなく、私達は戦闘になった。
結果、私は敗北し約束通り私は彼女の式になった。
強い者に負け従うのは世の常だ。
それに私は彼女の強さに心惹かれていた。
大陸では絶世の美女と言われていた私でさえ彼女の優雅な戦い方には敵わないと思った。
こうして私は紫様の式になった。
そんな私に与えられた仕事は紫様が娘として扱っている見た目十代半ばと言ったところの妖怪、紅の教師をすることだった。
当然最初は驚いた。
紫様はこの取り立てて優秀な能力を持つわけでもなく、特別な血筋や家柄があるわけでもない少女のために私と戦いに来たのか、と。
少女の容姿は悪くない。むしろ良い方ではある。
だが、寿命の短い人間ならともかく数千年の時を生きる妖怪である我々にとっては彼女のような容姿を持った者など数多くであってきたはずだ。
少女をただの愛玩動物として扱っているようにも見えず、まさしく人の親子のように接していた。
なのに彼女をなぜそれほどまでに特別扱いするのか、その理由が最初私には分からなかった。
しかし式は所詮主人に仕える道具だと聞いている。
そうである以上私が紫様の考えに対し思考を差し挟む必要はないと考えていた。
ところが、どうやら紫様は周りに対し式を人質に取っても意味がないと思わせるために表向きそうしているだけで、式に対しては家族や友人の様に思っているらしい。
紫様が私に紅のことを姉のように思って欲しいと仰ったのもそういった気持ちから出た言葉だったのかもしれない。
私は紅の妹弟子でもあるので、妹として扱われることを快く了承した。
ただ、紅が自身より年上である私に姉と呼ばれるのを恥ずかしがったため呼び捨てで呼ばさせてもらっている。
一方の彼女が私に対してさん付けなのが気になったが、共に暮らしていく内に彼女はどうやら呼び捨てをしないだけだとわかった。
結局私は紫様と紅が具体的にどういった経緯で今の関係になったのかは聞くことが出来なかったが、それはいずれ機会があれば聞くことにしようと思う。
とにもかくにも私は紅の教師として、紫様の外出時の代わりや紫様だけでは十分には教えることが出来ない大陸やその向こうの歴史や知識を教えることになった。
実を言うとこう見えて子供好きな私はこの仕事を気に入っていた。
宮中にいたときは立場上子供と接する機会などあまりなかったし、隠居してからは尚のことだったので子供と触れあえるというだけで喜ばしいものだ。
相手が妖怪だけあって何かしら手こずるところがあるかと思ったがそんなこともなく、実に素直で聞き分けの良い優しい子だった。
こう言っては何だが紫様は些か捻くれているところがあるので、その娘として育てられた彼女がここまで真っ直ぐ育っているのは意外なことだった。
術を扱う才能はあまり無いように見えるのに、簡単な術なら扱える所を見ると相当努力したのだろう。
本来、妖怪にとっては生まれ持った才と能力がほぼ全てと言ったところがある分、ここまで努力できることがとても美しく尊く思えた。
紫様が彼女を寵愛している理由が少しだけ分かった気がした。
未だか弱き妖怪である彼女を一人前にしたいと、そう思うようになっていた。
――――――――――――――――――――――
そんな私の平穏な日々はそう長くは続かなかった。
ある日の夜、私が厠に行った帰りのことだった。
普通の妖怪の何倍も良い私の聴覚が紫様と紅の声を捕らえた。
もう既に眠っているであろう時間だ。
それにどこか苦しそうな声だった。
もしや敵襲かと思い、気取られないように気配を完全に消して声のする方向、紅の寝室へと向かった。
辿り着いた私はそっと襖の隙間から中を覗いた。
そこにいたのは美しい白肌を露わにし、交じり合う二人の女だった。
私が聞きつけた声は嬌声だったのだ。
その様子を見て私は紫様の紅への愛情は親愛ではなく、肉欲であったのかと落ち込んでしまいそうになった。
しかし、その光景を眺めていく内にその考えは変わっていった。
紅の呼吸が乱れれば、紫様は腰の動きを緩め、紫様が疲れ始めたら、今度は紅が代わりに腰を振っていた。
二人の動きは実に息の合ったもので、ただ肉欲による物ではないように思えた。
何より私が気になったのは二人が行為の間中、常に手を握り合っていたことだった。
絡み合う手が二人の深い信頼関係を表しているようで、その間に入っていけない自分がもどかしかった。
行為も終わりに近付くと、二人は互いに抑えた声で名前を呼び合った。
私に気を遣ってのことだろうが、残念ながら私は襖一枚隔てた先にいるので聞こえてしまう。
紫様は絶頂を迎えた喘ぎ声をあげ、少し荒くなった息を整えながら紅に抱きついた。
その後、紫様は心底申し訳なさそうに、
「ごめんなさい……また手を出してしまったわね」
と紅に謝っていた。
そんな紫様を紅は
「ふふ、かまいませんよ」
と艶がかった微笑みを浮かべながら許した。
いや、最初から謝るようなことではないとでも言いたげだった。
今の二人の姿は普段の母親然とした紫様とそれを慕っている紅とは真逆の立場に思えた。
それを見届けた私は急いでその場を離れた。
このままでは気配を消しきれなくなり、覗いていたことがばれそうだったからだ。
しかしそれも致し方ないと思う。
あんな背徳的でいて、美しい二人の情事を見せられては体が火照り意識が乱れてしまうというものだ。
何よりあの大人しく清純そうな紅の淫靡な顔が脳にこびりついて離れなかった。
部屋に戻った私は早く眠りに着こうと布団に入ったが、当然眠れるはずもなく、昂ぶる体を抑えられないでいた。
火照りを冷まそうと着衣を乱した所までは良く覚えている。
そのあとどうしたのかはよく覚えていないが、気がつけば朝だった。
利き手の人差し指から薬指に掛けてがやけに湿っていたことから何をしたかは想像に難くない。
一先ずこの様をばれないように、乱れた服を正し急いで流しに向かい手を洗う。
渇いた喉を水で潤していると紅が起きてきた。
「おはようございます藍さん」
挨拶をする彼女はいつも通りの様子だが、よくよく鼻を凝らすと女の匂いが鼻をくすぐった。
たじろぐ私を見て、紅が心配して近付いてくる。
今これ以上近付かれると何をしてしまうかわからないと思い、体裁を繕いつつ、寝起きでふらついただけだと説明した。
「そうですか、でも調子が悪いんだったら早く言ってくださいね。私も一応藍さんのお姉さんですから。なんてね」
などと満面の笑顔で言うのだ。
実に危ないところだった。
もう少し近くでこれをやられては辛抱溜まらず押し倒しているところだ。
紫様が我慢できないのも頷ける。
彼女は恐らく無意識なのだろうが、その仕草表情は男女を問わず惑わしてしまう。
何をしても許されそうな、受け入れてくれそうな、そんな過ちを犯してしまいそうになる雰囲気を漂わせている。
淫気とでも言うべき物を彼女は全身に纏っていた。
もしも彼女の性格が若かりし頃の私のようであったなら、彼女に自身の身を守れるほどの力があったのなら、今頃国の一つや二つ手に入れていたかもしれない。
とにかく彼女はその見た目に反し、恐ろしい才能を持っていたことを私は知ってしまった。
――――――――――――――――――――――
一度意識してしまったのが駄目だった。
いけないとは思っていても紫様と紅が行為をしているのに気付くとそれを覗き見てしまう。
それからというもの、日常生活にも少しずつ支障が出始めた。
自然と彼女の仕草を目で追ってしまう。
その何気ない仕草や彼女の匂いにケダモノのように発情してしまう。
少しでも体が触れ合えば、牙を剥いた私が起きそうになってしまう。
彼女に教鞭を振るっている間も、その純粋無垢な顔の裏にある淫乱な笑顔を思い出しては襲いたくなってしまう。
隠居してからというもの人妖との接触など碌になかった私は言わば腹を空かせた野獣であり、その私にとって彼女は久方ぶりに見つけた最上級の獲物であった。
しかし私は手を出すことはしなかった。
そもそも彼女は紫様のものであり、私にとっても義姉なのだ。
ましてや私には紫様と彼女との間にあるような絆も、今の私が行為の最中相手を思いやっていられる余裕を持てる自信もなかった。
きっと私は彼女を傷つけてしまうだろう。
そんな確信にも近い予想が胸の内に燻る情欲に身を任せることを許さなかった。
昂ぶる気持ちを慰めようと、一人自らを慰めてみても脳裏に蘇るあの光景が更に体を昂ぶらせるだけだった。
当然紫様に二人の情事を覗いていた等と言えるはずもなく、私は悩みを口外できないまま悶々として生活を続けた。
――――――――――――――――――――――
そうして最悪なことに私は発情期を迎えてしまった。
妖獣とて獣、どうしても発情期は来てしまう。それは仕方ない。
しかし普段の私なら紫様に許しを得て部屋に籠もり、自慰を数回してこの気持ちを治めるのに、今日の私は異常なほど冷静に身支度を調えると平静を装っていた。
全身は激しい熱を持ち、頭は茹だっているはずなのに、それを言おうとはしなかった。
紫様が外に出かけ、紅と二人きりになりいつものように勉強を教える。
いつもとは違い、彼女の傍に行き、体を不必要なほどに接近させる。
それは徐々にエスカレートして、私は彼女の背後から腕を回して抱きしめていた。
私はとっくに正常ではなくなっていた。
「あの、藍さん、少し近すぎませんか」
私は何も言い返さなかった。
紅はいつもと違う私の行動を不思議に思ってはいても、拒みはしない。
彼女の背に胸を押し当てた。背中越しに伝わる彼女の心臓音が私をさらに狂わせていく。
「あ、藍さん出来ましたよ」
私の出した問題を解き、彼女が嬉しそうに振り返った瞬間だった。
私の中の最後の糸がちぎれ、私は彼女の唇を奪っていた。
「え……?」
驚きの余り目を点にしている紅を、問答無用で押し倒し、再びその唇に自身の唇を重ねた。
少し俯き気味な彼女を見下ろしながら、私の喉はグルルルルと唸り声をあげていた。
九本の尾は逆立ち、体は人型から獣へと戻り掛けていた。
このような最悪の形で私は彼女へその情欲を向けてしまうのかと悲しい気持ちになるが、熱に浮かされた私の身体はもはや言うことを聞いてくれない。
弁解の言葉を頭に思い浮かべても、それはすぐに消えていく。
代わりに言葉にならないああっだのううっだのいう呻き声を出すだけだった。
誘われるように彼女の両肩を手で押さえながら、私は顔を彼女の首筋に近づける。
その容姿に似合わぬ濃厚なメスの匂いが首筋から漂ってきた。
首筋を舐め汗を舌の上にぬぐい取ると、するりと喉を流れていく。
興奮は益々高まり、よく見れば自身の手は人のそれではなく、化け狐のそれになっていた。
組み敷いている紅の体に、だらりと私の寸法の合わなくなった服が垂れ下がっていた。
もう我慢の限界と彼女の服を引き裂こうとした時、私の頭に心地よい感触が訪れた。
目線を上に向けてみれば、紅が私の頭を撫でていた。
毛並みに沿って撫でる彼女の手つきは気持ちよく、少しだけ心が落ち着く。
「ああ……そういうことだったんですね」
優しい顔のまま、彼女は呟くように言った。
「最近紫様と夜伽をしているとき、なんだかおかしな気を感じていましたが……藍さんにも性欲はあるんですね」
彼女は私の頭を撫でながら、もう片方の手で自身の服をはだけさせていく。
「いいですよ。私なんかの身体でよければ……我慢は体に悪いですから」
今やケダモノと化した私を見ながらその言葉を口に出来る彼女は一体何者なのだろうか。
そんな疑問も、目の前の青い果実の前に霧散していく。
「……すまない」
最後の理性を振り絞ってその言葉を紡ぎ出すと私の意識は野生へと帰って行った。
私は彼女のはだけた服を鼻先で除けた。
まだ大きくはないが、これから成長しそうな乳房が眼の前にあった。
それを長い舌で一舐めする。
「んっ……」
紅がその刺激に、私を撫でていた指をぴくりと反応させた。
それに気をよくした私は、その小さな突起にむしゃぶりついた。
母乳を吸い出すように、歯と歯の間に乳頭を挟んで吸い込む。
「んああっ……!」
背筋を少しだけ仰け反らせて紅が気持ちよさげに喘いだ。
その音色に私は一層快感を得、口の端から涎をあふれ出す。
すると知らず知らずのうちに自身の股間に黒々とした雌を蹂躙するための性器を創造していた。
ケダモノと化した私に紅を愛撫しようなどと言う考えが浮かぶはずもなく、私はそれを性欲のままに紅の膣へと差し込んだ。
「えっ、んひいいっ!!」
紅は苦しそうに叫ぶと両足を拡げてつま先まで伸ばした。
しかし、幸い彼女の膣内は十分に濡れていたため、痛みは少なかっただろう。
紫様が彼女の肉体を開発した結果なのだろうかなどということはこの時の私にはどうでも良かった。
「ら、藍さん……どうですか私の中は……」
紅の質問に、私は腰を振って応えていた。
紅の膣は、 射精の際膣から抜けないようにいくつものイボが付き、カリ首の出たこのグロテスクな私のモノにさえぴったりと合わせるように余すことなく膣肉で覆っていた。
これほど他人に合わせられる膣は私も初めてだった。
腰を振れば必死に形に合わせようと膣肉が動き、それを私のイボとカリ首が引っ掻いていく。
「んんひぐうううっ……!!」
その刺激に震える紅を私の尻尾が絡め取り、動きを封じた。
内二本は紅の乳房に纏わり付き、乳頭を縛って引っ張る。
「あぎぎぎいいいいっ!!」
痛みにも近い快感を味わった紅は膣を更に力強く締め上げた。
私はただ自分が快感を得たいがために、彼女の自由を奪い、彼女の膣内を傷つける浅ましいケダモノに成り果てていた。
そんな私の性行為にでも、紅は顔を赤く染め、時折快感の声を上げてくれていた。
その声が私の気分を昂揚させ、もっと聞きたいがために熱を帯びた肉棒で何度も何度も紅の子宮口を叩いた。
相手を孕ませようと力強く腰を振っていた。
不幸中の幸いだったのは私の精液が妖力を固めたモノでしかないことだった。
それでも妖怪同士では心の持ちよう次第で命を宿してしまう危険はあるが、滅多に起こることではない。
「んあっ、藍さんの、大きくなって……」
紅の言う通り、私のそれは一段と大きくなっていた。
射精が近いのだろう。
自然と私の腰つきは速さを増し、息は荒くなっていく。
そしてついに、自身の肉棒に蓄えられていた情欲が爆発するときが来た。
私は腰を引き、膣の入り口まで肉棒を押し下げた。
それは紅を想ってのことなどではなく、奥で射精しては多すぎる精液を膣外に漏らしてしまうからでしかなかった。
私は歯を食いしばり、隙間から大量の涎を垂れ流しながら、紅の膣内で果てた。
「ひゃっ、あ、あついっ、んんんひいっ……!!」
水を勢いよく蒔いているのかと言うほどぶしゅっと大きい音と共に、止めどない精液が放出された。
固体に近いほど粘性を持ったそれは水のような勢いでありながら溶岩のように紅の膣内を犯していった。
入り口は私のカリ首で隙間なく押さえられているので逃げ場もなくそれは中に溜まっていく。
私はそんなことなど気にも止めず、膣内射精の快感に打ち震え破顔していた。
「ああ……紅……」
「はあはあ……ん……はあはあ……」
紅は膣内で精液が波打つ度に、小さく声を漏らしていた。
射精は同じ勢いのまま五分ほど続いた。
紅の腹部はお腹いっぱいご飯を食べた後のように膨れ上がっていた。
満足した私が肉棒を引き抜くと、どろりとした精液がゆっくりと溢れ出てきた。
私はその場に倒れ込み、体の熱を冷ました。
徐々に正気を取り戻してきた私の体はやがて人の形を取り戻し、肉棒は消えはせずとも人の物に戻った。
自分の顔面が青白くなっていくのがわかった。
自身のしてしまったことを考えるとこの後どう彼女と接して良いか分からない。
彼女の淫気にあてられ、自身が発情期であったことを考えても、かつての私からは考えられないほどの大失態だ。
そんなことを考えていると、ごぼごぼと何かが流れ出る音が聞こえてきた。
その方向を見てみると、紅が自信の腹部を押して精液を外に出していた。
「紅……すまない。その、体は大丈夫か」
「へ? ああ、大丈夫ですよこれくらい。紫様と初めてしたときはもっと激しかったですから」
平気そうな紅に少し安堵すると同時に、ケダモノと化した私よりも激しかった紫様は一体どんなことをしたんだと気になった。
しかし、いくら彼女が平気と思っていても、それでは私の気は収まらない。
どうやって彼女に償えば良いのだろうかと考えていると、股間に刺激が加わり変な声を出してしまう。
「んひっ!? ほ、紅、何をしているんだ!?」
紅は私の愚息を握り上下に扱いていた。
しかも無意識なのだろうが手を通して淫気が注ぎ込まれ目一杯勃起してしまっている。
「いえ、藍さんのここまだ出し足りなそうなので」
「それはそうだが……私はもう落ち着いたしこれ以上は」
「遠慮しないでいいんですよ。お姉ちゃんに任せてください」
もしかすると彼女はただお姉ちゃんぶりたいだけなのかもしれない。
それにしてもどうしてこれほどまでに積極的に体を重ねようとするのだろうか。
「紅、どうしてそんなに、その、行為に積極的なんだ」
「そうですね……私にとっては会話のようなものですから。藍さんともっと仲良くなりたい、というのもあるかもしれません」
仲良くなりたいというのは分かるがその結果がなぜこの行為へと至るのかは私にはよく分からなかった。
ただ今はそんなことよりも……会話の間中もずっと休むことなく動いている手によって破裂寸前の愚息の方が気になって仕方がない。
「紅、もうでそうなんだが……」
「手の平とお口、どっちに出しますか?」
そんな当たり前のように聞かれても困るんだが……回りを見渡せばちり紙が置いてあったので射精感を我慢しながらそれを指さした。
すると紅はそれを数枚取って空いている方の手の平にそれを広げ、満面の笑みで言う。
「はい、どうぞ」
私は少し固まった。
これでは手の平に出すのと大差ないではないかと。
しかし、さすがにもう我慢の限界であったので仕方なくそれの上にぶちまけることにした。
「くっ……!」
「別に声を我慢しなくても良いんですよ?」
今更かもしれないが私にも面子があるわけで、その方が気持ちいいのは分かっていても無様に声を上げるわけにはいかなかった。
それにしてもさっきあれほど出したというのに、どうしてまだこんなにも出るのか。
昔はちょっとばかり自慢だった自身の絶倫具合が今は恨めしい。
射精が終わるとちり紙の上に先ほどより少し水っぽくなった精液がこんもりと乗っかっていた。
「すごいですね。ぷるぷるしてますよ」
紅は楽しそうに笑ったあとに、それを包むと近くのゴミ箱に捨てた。
そして当然大量の精液によってちり紙は貫通され、紅の手のひらには幾らか精液が付着していた。
それを紅は何の戸惑いもなくぺろりと舐めて綺麗にした。
「ッ……」
「ん……? 藍さんまた勃ったんですか?」
反則だ。
あんなあどけない顔であんな仕草をされれば今の私ではこうなってしまうのも仕方のないことだろう。
「安心してください。藍さんの性欲が完全に収まるまで私が付き合ってあげますから」
いや、私としてはもう早々に切り上げたいのだが。
しかし、私が逃げようとするとがっちり手を掴んで大丈夫任せてくださいと言わんばかりにきらきらした目でこっちを見るのだ。
しかもこの怪力、恐らく紫様の式の力を解放しているのだろう。ヤる気満々である。
「私、頑張ってみます。だってお姉ちゃんですから」
いや、普通の姉はそんなことをしないと思う。そう言えれば良かったのだが。
彼女から発せられる淫気が私のその言葉を紡いでしまった。
――――――――――――――――――――――
目が覚めたとき、隣で疲れ果てた紅が眠っていた。
この寝顔を見るとあれほど艶やかな彼女と同一人物とは思えないくらい幼く見える。
股間が痛い……結局あの後空っぽになるまでずっと扱かれ続けた。
途中からちり紙がなくなったせいで周囲に精液がまき散らされている。
「はあ、どうしようこの部屋……」
「本当にね」
背筋がぞっとした。
自身の頭の上に目をやると、スキマの中から紫様がこっちを見ていた。
「ゆ、紫様……ええと、これは……」
「別に言わなくても良いわ。最初からずっと見ていたから」
終わった。そう思った。
途中からはともかくきっかけは私が紅を無理矢理襲ったことにあることは明白だ。
あれほど寵愛していた紅に手を出されて黙っているはずがない。
「勘違いをしているようだけど、怒ってはいないわよ。今の紅と一緒にいたらこうなるのは分かっていたもの。それに私は最初から貴方に紅の淫気を抑える修行をさせるために呼んだわけだしね」
悪戯っぽく笑いながら紫様はそう言った。
つまり私は紫様の掌の上で転がされていただけだというわけか。
だがそうだとしたらそれはそれで疑問が出来る。
「それではなぜ止めなかったのですか……いえ、どうして最初からそう仰ってくださらなかったのですか」
そう、最初からこのことを説明されていれば私も何かしら対処できたはず。
そこまで紅のことを考えているのならばどうして説明することも止めることもしなかったのだろうか。
「具体的にどの程度のモノか自分の身で知っておいてもらいたかったのと、紅が貴方を受け入れられるか見てみたかったからかしら」
「受け入れるとはどういう……」
「あの子の世界には私と紅しかいなかったから……新しく入ってきた貴女を素直に受け入れてくれるか心配だったのよ。杞憂に終わったようだけど」
どうやら紫様は過保護で心配性なようだ。
こうして私と話している間も衣服をはだけさせている紅が風邪を引かないか心配しているように見える。
しかしこれだけ想われているのを見ると少し妬けてしまう。
思えば私にはこんな風に心配してくれる人はいなかった。
羨ましいと共にその輪の中に入っていければいいなと今の私は思う。
「なるほど……事情は分かりました。紅に淫気の制御の仕方を教えればいいのですね」
「ええ、このままだとあの子のために良くないから……それに私もつい何度も必要以上にあの子を求めてしまって」
心では分かっているのに義娘を求めてしまうのはとてもつらいことなのだろう。
母になったことのない私でもそれくらいは分かるつもりだ。
「確かに夜の紫様と紅の乱れ方は中々に凄まじいものですからね」
「そうそう……えっ」
空気が変わった気がする。
何か不味いことを言ってしまっただろうか。
まさか……
「えと、気付いてませんでしたか? 紅は気付いていたのでてっきりそうだと……」
「えっ……も、もちろん気付いていたわよ。うん、当たり前じゃない」
紫様、顔を真っ赤にして言ってもバレバレですよ。
見られていたことを知った恥ずかしさと紅ですら気付けたことに気付かないほど性行為に没頭していたことを恥ずかしがっているようだ。
意外とかわいらしいところもあるのですね。
なんだか大変そうだが、紫様の式になってよかったとそう思った。
――――――――――――――――――――――
数年後、私と紅の努力の甲斐あって紅の淫気を抑えることに成功した。
というよりかは気全般に対して扱えるようになった。
まあ、紫様の式あってのことなので式なしでも扱えるようにするにはまだ時間がかかりそうだがそれでもかなりの進歩だ。
にもかかわらず、紫様と紅の性行為回数が少ししか減っていない。
これは一体どうしたことかと思い、訪ねてみたところ。
「親子の愛を確かめ合うってすばらしいことだと思わない?」
あまりにも悪びれもせずに言うので、この時私は初めて紫様の顔面を殴った。
すると紫様は真っ赤になった鼻を押さえながら弁明をしてきた。
「藍、貴女の気持ちもよく分かるわ。私だって親子でだなんていけないなって思うのよ。でも強すぎる愛情が爆発してしまうのも仕方ないと思わない?」
一先ず手刀をお見舞いしておいた。
普段は聡明なお方だけにより一層残念さが際立つ。
今後は紅の淫気だけでなく紫様の自制心も鍛えることになりそうだ。
「紅紫―母と呼ばれた日」の続きです。
美鈴が紫の義理の娘の八雲紅という設定です。
藍視点です。
―――――――――――
私はかつて大陸を支配していたこともあった大妖怪、九尾の妖狐。
今は贅を尽くすことにも飽き、隠居生活をして穏やかな日々を送っていた。
そんな私の前にある日、隣の島国から妖怪が現れた。
そいつは私に向かってこう言った。
「ふむ、貴女となら上手くやっていけそうな気がするわ。どう? 私の式にならない?」
相手がかなりの実力を持つ者であることは分かっていたが、私にも負けない自信がある。
従えと言われて、はいそうですかという訳もなく、私達は戦闘になった。
結果、私は敗北し約束通り私は彼女の式になった。
強い者に負け従うのは世の常だ。
それに私は彼女の強さに心惹かれていた。
大陸では絶世の美女と言われていた私でさえ彼女の優雅な戦い方には敵わないと思った。
こうして私は紫様の式になった。
そんな私に与えられた仕事は紫様が娘として扱っている見た目十代半ばと言ったところの妖怪、紅の教師をすることだった。
当然最初は驚いた。
紫様はこの取り立てて優秀な能力を持つわけでもなく、特別な血筋や家柄があるわけでもない少女のために私と戦いに来たのか、と。
少女の容姿は悪くない。むしろ良い方ではある。
だが、寿命の短い人間ならともかく数千年の時を生きる妖怪である我々にとっては彼女のような容姿を持った者など数多くであってきたはずだ。
少女をただの愛玩動物として扱っているようにも見えず、まさしく人の親子のように接していた。
なのに彼女をなぜそれほどまでに特別扱いするのか、その理由が最初私には分からなかった。
しかし式は所詮主人に仕える道具だと聞いている。
そうである以上私が紫様の考えに対し思考を差し挟む必要はないと考えていた。
ところが、どうやら紫様は周りに対し式を人質に取っても意味がないと思わせるために表向きそうしているだけで、式に対しては家族や友人の様に思っているらしい。
紫様が私に紅のことを姉のように思って欲しいと仰ったのもそういった気持ちから出た言葉だったのかもしれない。
私は紅の妹弟子でもあるので、妹として扱われることを快く了承した。
ただ、紅が自身より年上である私に姉と呼ばれるのを恥ずかしがったため呼び捨てで呼ばさせてもらっている。
一方の彼女が私に対してさん付けなのが気になったが、共に暮らしていく内に彼女はどうやら呼び捨てをしないだけだとわかった。
結局私は紫様と紅が具体的にどういった経緯で今の関係になったのかは聞くことが出来なかったが、それはいずれ機会があれば聞くことにしようと思う。
とにもかくにも私は紅の教師として、紫様の外出時の代わりや紫様だけでは十分には教えることが出来ない大陸やその向こうの歴史や知識を教えることになった。
実を言うとこう見えて子供好きな私はこの仕事を気に入っていた。
宮中にいたときは立場上子供と接する機会などあまりなかったし、隠居してからは尚のことだったので子供と触れあえるというだけで喜ばしいものだ。
相手が妖怪だけあって何かしら手こずるところがあるかと思ったがそんなこともなく、実に素直で聞き分けの良い優しい子だった。
こう言っては何だが紫様は些か捻くれているところがあるので、その娘として育てられた彼女がここまで真っ直ぐ育っているのは意外なことだった。
術を扱う才能はあまり無いように見えるのに、簡単な術なら扱える所を見ると相当努力したのだろう。
本来、妖怪にとっては生まれ持った才と能力がほぼ全てと言ったところがある分、ここまで努力できることがとても美しく尊く思えた。
紫様が彼女を寵愛している理由が少しだけ分かった気がした。
未だか弱き妖怪である彼女を一人前にしたいと、そう思うようになっていた。
――――――――――――――――――――――
そんな私の平穏な日々はそう長くは続かなかった。
ある日の夜、私が厠に行った帰りのことだった。
普通の妖怪の何倍も良い私の聴覚が紫様と紅の声を捕らえた。
もう既に眠っているであろう時間だ。
それにどこか苦しそうな声だった。
もしや敵襲かと思い、気取られないように気配を完全に消して声のする方向、紅の寝室へと向かった。
辿り着いた私はそっと襖の隙間から中を覗いた。
そこにいたのは美しい白肌を露わにし、交じり合う二人の女だった。
私が聞きつけた声は嬌声だったのだ。
その様子を見て私は紫様の紅への愛情は親愛ではなく、肉欲であったのかと落ち込んでしまいそうになった。
しかし、その光景を眺めていく内にその考えは変わっていった。
紅の呼吸が乱れれば、紫様は腰の動きを緩め、紫様が疲れ始めたら、今度は紅が代わりに腰を振っていた。
二人の動きは実に息の合ったもので、ただ肉欲による物ではないように思えた。
何より私が気になったのは二人が行為の間中、常に手を握り合っていたことだった。
絡み合う手が二人の深い信頼関係を表しているようで、その間に入っていけない自分がもどかしかった。
行為も終わりに近付くと、二人は互いに抑えた声で名前を呼び合った。
私に気を遣ってのことだろうが、残念ながら私は襖一枚隔てた先にいるので聞こえてしまう。
紫様は絶頂を迎えた喘ぎ声をあげ、少し荒くなった息を整えながら紅に抱きついた。
その後、紫様は心底申し訳なさそうに、
「ごめんなさい……また手を出してしまったわね」
と紅に謝っていた。
そんな紫様を紅は
「ふふ、かまいませんよ」
と艶がかった微笑みを浮かべながら許した。
いや、最初から謝るようなことではないとでも言いたげだった。
今の二人の姿は普段の母親然とした紫様とそれを慕っている紅とは真逆の立場に思えた。
それを見届けた私は急いでその場を離れた。
このままでは気配を消しきれなくなり、覗いていたことがばれそうだったからだ。
しかしそれも致し方ないと思う。
あんな背徳的でいて、美しい二人の情事を見せられては体が火照り意識が乱れてしまうというものだ。
何よりあの大人しく清純そうな紅の淫靡な顔が脳にこびりついて離れなかった。
部屋に戻った私は早く眠りに着こうと布団に入ったが、当然眠れるはずもなく、昂ぶる体を抑えられないでいた。
火照りを冷まそうと着衣を乱した所までは良く覚えている。
そのあとどうしたのかはよく覚えていないが、気がつけば朝だった。
利き手の人差し指から薬指に掛けてがやけに湿っていたことから何をしたかは想像に難くない。
一先ずこの様をばれないように、乱れた服を正し急いで流しに向かい手を洗う。
渇いた喉を水で潤していると紅が起きてきた。
「おはようございます藍さん」
挨拶をする彼女はいつも通りの様子だが、よくよく鼻を凝らすと女の匂いが鼻をくすぐった。
たじろぐ私を見て、紅が心配して近付いてくる。
今これ以上近付かれると何をしてしまうかわからないと思い、体裁を繕いつつ、寝起きでふらついただけだと説明した。
「そうですか、でも調子が悪いんだったら早く言ってくださいね。私も一応藍さんのお姉さんですから。なんてね」
などと満面の笑顔で言うのだ。
実に危ないところだった。
もう少し近くでこれをやられては辛抱溜まらず押し倒しているところだ。
紫様が我慢できないのも頷ける。
彼女は恐らく無意識なのだろうが、その仕草表情は男女を問わず惑わしてしまう。
何をしても許されそうな、受け入れてくれそうな、そんな過ちを犯してしまいそうになる雰囲気を漂わせている。
淫気とでも言うべき物を彼女は全身に纏っていた。
もしも彼女の性格が若かりし頃の私のようであったなら、彼女に自身の身を守れるほどの力があったのなら、今頃国の一つや二つ手に入れていたかもしれない。
とにかく彼女はその見た目に反し、恐ろしい才能を持っていたことを私は知ってしまった。
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一度意識してしまったのが駄目だった。
いけないとは思っていても紫様と紅が行為をしているのに気付くとそれを覗き見てしまう。
それからというもの、日常生活にも少しずつ支障が出始めた。
自然と彼女の仕草を目で追ってしまう。
その何気ない仕草や彼女の匂いにケダモノのように発情してしまう。
少しでも体が触れ合えば、牙を剥いた私が起きそうになってしまう。
彼女に教鞭を振るっている間も、その純粋無垢な顔の裏にある淫乱な笑顔を思い出しては襲いたくなってしまう。
隠居してからというもの人妖との接触など碌になかった私は言わば腹を空かせた野獣であり、その私にとって彼女は久方ぶりに見つけた最上級の獲物であった。
しかし私は手を出すことはしなかった。
そもそも彼女は紫様のものであり、私にとっても義姉なのだ。
ましてや私には紫様と彼女との間にあるような絆も、今の私が行為の最中相手を思いやっていられる余裕を持てる自信もなかった。
きっと私は彼女を傷つけてしまうだろう。
そんな確信にも近い予想が胸の内に燻る情欲に身を任せることを許さなかった。
昂ぶる気持ちを慰めようと、一人自らを慰めてみても脳裏に蘇るあの光景が更に体を昂ぶらせるだけだった。
当然紫様に二人の情事を覗いていた等と言えるはずもなく、私は悩みを口外できないまま悶々として生活を続けた。
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そうして最悪なことに私は発情期を迎えてしまった。
妖獣とて獣、どうしても発情期は来てしまう。それは仕方ない。
しかし普段の私なら紫様に許しを得て部屋に籠もり、自慰を数回してこの気持ちを治めるのに、今日の私は異常なほど冷静に身支度を調えると平静を装っていた。
全身は激しい熱を持ち、頭は茹だっているはずなのに、それを言おうとはしなかった。
紫様が外に出かけ、紅と二人きりになりいつものように勉強を教える。
いつもとは違い、彼女の傍に行き、体を不必要なほどに接近させる。
それは徐々にエスカレートして、私は彼女の背後から腕を回して抱きしめていた。
私はとっくに正常ではなくなっていた。
「あの、藍さん、少し近すぎませんか」
私は何も言い返さなかった。
紅はいつもと違う私の行動を不思議に思ってはいても、拒みはしない。
彼女の背に胸を押し当てた。背中越しに伝わる彼女の心臓音が私をさらに狂わせていく。
「あ、藍さん出来ましたよ」
私の出した問題を解き、彼女が嬉しそうに振り返った瞬間だった。
私の中の最後の糸がちぎれ、私は彼女の唇を奪っていた。
「え……?」
驚きの余り目を点にしている紅を、問答無用で押し倒し、再びその唇に自身の唇を重ねた。
少し俯き気味な彼女を見下ろしながら、私の喉はグルルルルと唸り声をあげていた。
九本の尾は逆立ち、体は人型から獣へと戻り掛けていた。
このような最悪の形で私は彼女へその情欲を向けてしまうのかと悲しい気持ちになるが、熱に浮かされた私の身体はもはや言うことを聞いてくれない。
弁解の言葉を頭に思い浮かべても、それはすぐに消えていく。
代わりに言葉にならないああっだのううっだのいう呻き声を出すだけだった。
誘われるように彼女の両肩を手で押さえながら、私は顔を彼女の首筋に近づける。
その容姿に似合わぬ濃厚なメスの匂いが首筋から漂ってきた。
首筋を舐め汗を舌の上にぬぐい取ると、するりと喉を流れていく。
興奮は益々高まり、よく見れば自身の手は人のそれではなく、化け狐のそれになっていた。
組み敷いている紅の体に、だらりと私の寸法の合わなくなった服が垂れ下がっていた。
もう我慢の限界と彼女の服を引き裂こうとした時、私の頭に心地よい感触が訪れた。
目線を上に向けてみれば、紅が私の頭を撫でていた。
毛並みに沿って撫でる彼女の手つきは気持ちよく、少しだけ心が落ち着く。
「ああ……そういうことだったんですね」
優しい顔のまま、彼女は呟くように言った。
「最近紫様と夜伽をしているとき、なんだかおかしな気を感じていましたが……藍さんにも性欲はあるんですね」
彼女は私の頭を撫でながら、もう片方の手で自身の服をはだけさせていく。
「いいですよ。私なんかの身体でよければ……我慢は体に悪いですから」
今やケダモノと化した私を見ながらその言葉を口に出来る彼女は一体何者なのだろうか。
そんな疑問も、目の前の青い果実の前に霧散していく。
「……すまない」
最後の理性を振り絞ってその言葉を紡ぎ出すと私の意識は野生へと帰って行った。
私は彼女のはだけた服を鼻先で除けた。
まだ大きくはないが、これから成長しそうな乳房が眼の前にあった。
それを長い舌で一舐めする。
「んっ……」
紅がその刺激に、私を撫でていた指をぴくりと反応させた。
それに気をよくした私は、その小さな突起にむしゃぶりついた。
母乳を吸い出すように、歯と歯の間に乳頭を挟んで吸い込む。
「んああっ……!」
背筋を少しだけ仰け反らせて紅が気持ちよさげに喘いだ。
その音色に私は一層快感を得、口の端から涎をあふれ出す。
すると知らず知らずのうちに自身の股間に黒々とした雌を蹂躙するための性器を創造していた。
ケダモノと化した私に紅を愛撫しようなどと言う考えが浮かぶはずもなく、私はそれを性欲のままに紅の膣へと差し込んだ。
「えっ、んひいいっ!!」
紅は苦しそうに叫ぶと両足を拡げてつま先まで伸ばした。
しかし、幸い彼女の膣内は十分に濡れていたため、痛みは少なかっただろう。
紫様が彼女の肉体を開発した結果なのだろうかなどということはこの時の私にはどうでも良かった。
「ら、藍さん……どうですか私の中は……」
紅の質問に、私は腰を振って応えていた。
紅の膣は、 射精の際膣から抜けないようにいくつものイボが付き、カリ首の出たこのグロテスクな私のモノにさえぴったりと合わせるように余すことなく膣肉で覆っていた。
これほど他人に合わせられる膣は私も初めてだった。
腰を振れば必死に形に合わせようと膣肉が動き、それを私のイボとカリ首が引っ掻いていく。
「んんひぐうううっ……!!」
その刺激に震える紅を私の尻尾が絡め取り、動きを封じた。
内二本は紅の乳房に纏わり付き、乳頭を縛って引っ張る。
「あぎぎぎいいいいっ!!」
痛みにも近い快感を味わった紅は膣を更に力強く締め上げた。
私はただ自分が快感を得たいがために、彼女の自由を奪い、彼女の膣内を傷つける浅ましいケダモノに成り果てていた。
そんな私の性行為にでも、紅は顔を赤く染め、時折快感の声を上げてくれていた。
その声が私の気分を昂揚させ、もっと聞きたいがために熱を帯びた肉棒で何度も何度も紅の子宮口を叩いた。
相手を孕ませようと力強く腰を振っていた。
不幸中の幸いだったのは私の精液が妖力を固めたモノでしかないことだった。
それでも妖怪同士では心の持ちよう次第で命を宿してしまう危険はあるが、滅多に起こることではない。
「んあっ、藍さんの、大きくなって……」
紅の言う通り、私のそれは一段と大きくなっていた。
射精が近いのだろう。
自然と私の腰つきは速さを増し、息は荒くなっていく。
そしてついに、自身の肉棒に蓄えられていた情欲が爆発するときが来た。
私は腰を引き、膣の入り口まで肉棒を押し下げた。
それは紅を想ってのことなどではなく、奥で射精しては多すぎる精液を膣外に漏らしてしまうからでしかなかった。
私は歯を食いしばり、隙間から大量の涎を垂れ流しながら、紅の膣内で果てた。
「ひゃっ、あ、あついっ、んんんひいっ……!!」
水を勢いよく蒔いているのかと言うほどぶしゅっと大きい音と共に、止めどない精液が放出された。
固体に近いほど粘性を持ったそれは水のような勢いでありながら溶岩のように紅の膣内を犯していった。
入り口は私のカリ首で隙間なく押さえられているので逃げ場もなくそれは中に溜まっていく。
私はそんなことなど気にも止めず、膣内射精の快感に打ち震え破顔していた。
「ああ……紅……」
「はあはあ……ん……はあはあ……」
紅は膣内で精液が波打つ度に、小さく声を漏らしていた。
射精は同じ勢いのまま五分ほど続いた。
紅の腹部はお腹いっぱいご飯を食べた後のように膨れ上がっていた。
満足した私が肉棒を引き抜くと、どろりとした精液がゆっくりと溢れ出てきた。
私はその場に倒れ込み、体の熱を冷ました。
徐々に正気を取り戻してきた私の体はやがて人の形を取り戻し、肉棒は消えはせずとも人の物に戻った。
自分の顔面が青白くなっていくのがわかった。
自身のしてしまったことを考えるとこの後どう彼女と接して良いか分からない。
彼女の淫気にあてられ、自身が発情期であったことを考えても、かつての私からは考えられないほどの大失態だ。
そんなことを考えていると、ごぼごぼと何かが流れ出る音が聞こえてきた。
その方向を見てみると、紅が自信の腹部を押して精液を外に出していた。
「紅……すまない。その、体は大丈夫か」
「へ? ああ、大丈夫ですよこれくらい。紫様と初めてしたときはもっと激しかったですから」
平気そうな紅に少し安堵すると同時に、ケダモノと化した私よりも激しかった紫様は一体どんなことをしたんだと気になった。
しかし、いくら彼女が平気と思っていても、それでは私の気は収まらない。
どうやって彼女に償えば良いのだろうかと考えていると、股間に刺激が加わり変な声を出してしまう。
「んひっ!? ほ、紅、何をしているんだ!?」
紅は私の愚息を握り上下に扱いていた。
しかも無意識なのだろうが手を通して淫気が注ぎ込まれ目一杯勃起してしまっている。
「いえ、藍さんのここまだ出し足りなそうなので」
「それはそうだが……私はもう落ち着いたしこれ以上は」
「遠慮しないでいいんですよ。お姉ちゃんに任せてください」
もしかすると彼女はただお姉ちゃんぶりたいだけなのかもしれない。
それにしてもどうしてこれほどまでに積極的に体を重ねようとするのだろうか。
「紅、どうしてそんなに、その、行為に積極的なんだ」
「そうですね……私にとっては会話のようなものですから。藍さんともっと仲良くなりたい、というのもあるかもしれません」
仲良くなりたいというのは分かるがその結果がなぜこの行為へと至るのかは私にはよく分からなかった。
ただ今はそんなことよりも……会話の間中もずっと休むことなく動いている手によって破裂寸前の愚息の方が気になって仕方がない。
「紅、もうでそうなんだが……」
「手の平とお口、どっちに出しますか?」
そんな当たり前のように聞かれても困るんだが……回りを見渡せばちり紙が置いてあったので射精感を我慢しながらそれを指さした。
すると紅はそれを数枚取って空いている方の手の平にそれを広げ、満面の笑みで言う。
「はい、どうぞ」
私は少し固まった。
これでは手の平に出すのと大差ないではないかと。
しかし、さすがにもう我慢の限界であったので仕方なくそれの上にぶちまけることにした。
「くっ……!」
「別に声を我慢しなくても良いんですよ?」
今更かもしれないが私にも面子があるわけで、その方が気持ちいいのは分かっていても無様に声を上げるわけにはいかなかった。
それにしてもさっきあれほど出したというのに、どうしてまだこんなにも出るのか。
昔はちょっとばかり自慢だった自身の絶倫具合が今は恨めしい。
射精が終わるとちり紙の上に先ほどより少し水っぽくなった精液がこんもりと乗っかっていた。
「すごいですね。ぷるぷるしてますよ」
紅は楽しそうに笑ったあとに、それを包むと近くのゴミ箱に捨てた。
そして当然大量の精液によってちり紙は貫通され、紅の手のひらには幾らか精液が付着していた。
それを紅は何の戸惑いもなくぺろりと舐めて綺麗にした。
「ッ……」
「ん……? 藍さんまた勃ったんですか?」
反則だ。
あんなあどけない顔であんな仕草をされれば今の私ではこうなってしまうのも仕方のないことだろう。
「安心してください。藍さんの性欲が完全に収まるまで私が付き合ってあげますから」
いや、私としてはもう早々に切り上げたいのだが。
しかし、私が逃げようとするとがっちり手を掴んで大丈夫任せてくださいと言わんばかりにきらきらした目でこっちを見るのだ。
しかもこの怪力、恐らく紫様の式の力を解放しているのだろう。ヤる気満々である。
「私、頑張ってみます。だってお姉ちゃんですから」
いや、普通の姉はそんなことをしないと思う。そう言えれば良かったのだが。
彼女から発せられる淫気が私のその言葉を紡いでしまった。
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目が覚めたとき、隣で疲れ果てた紅が眠っていた。
この寝顔を見るとあれほど艶やかな彼女と同一人物とは思えないくらい幼く見える。
股間が痛い……結局あの後空っぽになるまでずっと扱かれ続けた。
途中からちり紙がなくなったせいで周囲に精液がまき散らされている。
「はあ、どうしようこの部屋……」
「本当にね」
背筋がぞっとした。
自身の頭の上に目をやると、スキマの中から紫様がこっちを見ていた。
「ゆ、紫様……ええと、これは……」
「別に言わなくても良いわ。最初からずっと見ていたから」
終わった。そう思った。
途中からはともかくきっかけは私が紅を無理矢理襲ったことにあることは明白だ。
あれほど寵愛していた紅に手を出されて黙っているはずがない。
「勘違いをしているようだけど、怒ってはいないわよ。今の紅と一緒にいたらこうなるのは分かっていたもの。それに私は最初から貴方に紅の淫気を抑える修行をさせるために呼んだわけだしね」
悪戯っぽく笑いながら紫様はそう言った。
つまり私は紫様の掌の上で転がされていただけだというわけか。
だがそうだとしたらそれはそれで疑問が出来る。
「それではなぜ止めなかったのですか……いえ、どうして最初からそう仰ってくださらなかったのですか」
そう、最初からこのことを説明されていれば私も何かしら対処できたはず。
そこまで紅のことを考えているのならばどうして説明することも止めることもしなかったのだろうか。
「具体的にどの程度のモノか自分の身で知っておいてもらいたかったのと、紅が貴方を受け入れられるか見てみたかったからかしら」
「受け入れるとはどういう……」
「あの子の世界には私と紅しかいなかったから……新しく入ってきた貴女を素直に受け入れてくれるか心配だったのよ。杞憂に終わったようだけど」
どうやら紫様は過保護で心配性なようだ。
こうして私と話している間も衣服をはだけさせている紅が風邪を引かないか心配しているように見える。
しかしこれだけ想われているのを見ると少し妬けてしまう。
思えば私にはこんな風に心配してくれる人はいなかった。
羨ましいと共にその輪の中に入っていければいいなと今の私は思う。
「なるほど……事情は分かりました。紅に淫気の制御の仕方を教えればいいのですね」
「ええ、このままだとあの子のために良くないから……それに私もつい何度も必要以上にあの子を求めてしまって」
心では分かっているのに義娘を求めてしまうのはとてもつらいことなのだろう。
母になったことのない私でもそれくらいは分かるつもりだ。
「確かに夜の紫様と紅の乱れ方は中々に凄まじいものですからね」
「そうそう……えっ」
空気が変わった気がする。
何か不味いことを言ってしまっただろうか。
まさか……
「えと、気付いてませんでしたか? 紅は気付いていたのでてっきりそうだと……」
「えっ……も、もちろん気付いていたわよ。うん、当たり前じゃない」
紫様、顔を真っ赤にして言ってもバレバレですよ。
見られていたことを知った恥ずかしさと紅ですら気付けたことに気付かないほど性行為に没頭していたことを恥ずかしがっているようだ。
意外とかわいらしいところもあるのですね。
なんだか大変そうだが、紫様の式になってよかったとそう思った。
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数年後、私と紅の努力の甲斐あって紅の淫気を抑えることに成功した。
というよりかは気全般に対して扱えるようになった。
まあ、紫様の式あってのことなので式なしでも扱えるようにするにはまだ時間がかかりそうだがそれでもかなりの進歩だ。
にもかかわらず、紫様と紅の性行為回数が少ししか減っていない。
これは一体どうしたことかと思い、訪ねてみたところ。
「親子の愛を確かめ合うってすばらしいことだと思わない?」
あまりにも悪びれもせずに言うので、この時私は初めて紫様の顔面を殴った。
すると紫様は真っ赤になった鼻を押さえながら弁明をしてきた。
「藍、貴女の気持ちもよく分かるわ。私だって親子でだなんていけないなって思うのよ。でも強すぎる愛情が爆発してしまうのも仕方ないと思わない?」
一先ず手刀をお見舞いしておいた。
普段は聡明なお方だけにより一層残念さが際立つ。
今後は紅の淫気だけでなく紫様の自制心も鍛えることになりそうだ。