2人の関係がこじれた決定的な契機は昨年9月の「チョ・グク問題」だった。尹総長が青瓦台によるチョ・グク前法務部長官任命に反対したという説が流れ、検察はその後、チョ前長官の子女の入試不正、私募ファンド疑惑などの捜査を始めた。文大統領はチョ前長官の後任として、秋美愛氏を任命し、尹総長のけん制を始めた。その後、検察では蔚山市長選工作、オプティマス・ライム詐欺、月城原発1号機早期閉鎖など政権に致命的な影響を与えるような捜査が相次いだ。尹総長は今年10月の国政監査で、「文大統領が適切なメッセンジャーを通じ、任期を守るようにと伝えた」と主張したが、青瓦台幹部は「聞いていない」と言い、秋長官は尹総長の懲戒を押し通した。
政界では尹総長の懲戒が決まった16日以降、「秋美愛VS尹錫悦」という対立の構図が「文大統領VS尹総長」という構図に変わったのではないかとささやかれている。文大統領が懲戒を執行し、尹総長が法的対応に出ることになるからだ。文大統領の任期末の政局運営で「尹錫悦変数」は台風の目になる可能性がある。
文大統領は尹錫悦検察総長という「禍根」を取り除く過程で打撃を受けた。尹総長任命当時、韓国ギャラップの世論調査で48%(19年7月第4週)あった支持率は38%(20年12月第2週)と10ポイント低下した。その間に尹総長は李洛淵(イ・ナギョン)、李在明(イ・ジェミョン)の各氏など与党の大統領候補を脅かす野党の有力大統領候補に名を連ねた。民主党のある議員は「『尹錫悦外し』で検察改革という念願は解決した面があるが、むしろ政治的には文大統領がレームダックに陥るシグナルとなりそうで心配だ」と語った。