2017年2月10日金曜日

和訳 They Don't Care About Us




この曲は、マイケルにはめずらしいプロテストソングとして知られていて、2015年から立て続きに起きた、武器をもたない黒人の射殺事件への抗議運動(BlackLivesMatter)の中でも多く歌われるなど、MJファン以外の人にとっては、発売当時よりも有名になっている曲のようです。


ただ、「私たちのことをまったく気にしていない」のは、権力者や為政者といった「彼ら」で、自分とは違う「他者」のことだと感じている人が多いようですが、この曲は、

スキンヘッズも、頭が死んでる奴も、誰もが悪くなってて、家の中も、ニュースも、みんな酷い・・・みんなが「私たち」のことを考えていない。

というように、どの立場の人間も「彼ら」のことを考えていないということが重要なんですよね。アイデンティティの悪い部分に毒された現代のインフルエンサーには理解出来ないようですが、マイケルは常に他者を理解しようとする姿勢を忘れなかった。歌詞をよく読めば「彼ら」が白人至上主義者でないことは明らかで、「黒人が、黒人を脅して・・」という部分もあったり、マイケルは(黒人に対する)人種差別についてだけ歌っているわけではありません。

これまでもずっと、時代を超える曲だと思っていましたが、今聴くとより一層そんな気がして驚いてしまいます。



最初に創られたSF「Prison Version」



They Don't Care About Us

Written by Michael Jackson

Skin head, dead head
Everybody gone bad
Situation, aggravation
Everybody allegation
In the suite, on the news
Everybody dog food
Bang bang, shot dead
Everybody's gone mad

スキンヘッズも、頭が死んでる奴も
みんな悪くなってる
状況は深刻化していると
誰もが主張する
家の中でも、ニュースでも
みんな酷いものさ
バンバン、射殺される
誰もが狂ってる

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

Beat me, hate me
You can never break me
Will me, thrill me
You can never kill me
Jew me, Sue me
Everybody do me
Kick me, kike me
Don't you black or white me

僕を叩いたり、憎んでも
君が僕を壊すことは絶対に出来ない
僕を脅せるか、やってみればいい
君が僕を殺すことは絶対に出来ない
誰もが、僕にするように
騙したり、訴えたりすればいい
僕を黒人だとか、白人とか
ユダヤだとか差別して、蹴ったりすればいい(*1)

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

Tell me what has become of my life
I have a wife and two children who love me
I am the victim of police brutality, now
I'm tired of being the victim of hate
You're ripping me off my pride
Oh, for God's sake
I look to heaven to fulfill its prophecy…
Set me free

教えてくれ、僕の生活はどうなってしまうのか
僕には妻と愛するふたりの子供がいるのに
今は、野蛮な警察の犠牲者さ
憎しみの犠牲になるのは、うんざりだ
君たちは、僕からプライドを奪い取った
ああ、僕は神に
預言を果たしてくださいと天を仰ぐ
僕を自由にしてください、と

Skin head, dead head
Everybody gone bad
Trepidation, speculation
Everybody allegation
In the suite, on the news
Everybody dog food
Black man, black mail
Throw your brother in jail

スキンヘッズも、頭が死んでる奴も
誰もが悪くなってる
恐怖や、憶測で
誰もが主張する
部屋の中でも、ニュースでも
みんな酷いものさ
黒人が、黒人を脅して
仲間を刑務所へぶち込む

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

Tell me what has become of my rights
Am I invisible because you ignore me?
Your proclamation promised me free liberty, now
I'm tired of being the victim of shame
They're throwing me in a class with a bad name
I can't believe this is the land from which I came
You know I really do hate to say it
The government don't want to see
But if Roosevelt was living
He wouldn't let this be, no, no

教えて欲しい、僕の人権はどうなってるの?
無視されている僕は、見えない存在なのか?
宣言書によれば、僕の自由は約束されたはずだろう
恥辱にまみれた犠牲者でいるなんて、うんざりだよ
彼らは、僕に汚名を着せようととしている
ここが、僕が生まれた国だなんて信じられない
こんなことを言うのは、本当は嫌だってわかるよね
政府は、僕を見ようともしないけど
もし、ルーズベルトが生きていたら
こんなことはしない、ありえないよ(*2)

Skin head, dead head
Everybody gone bad
Situation, speculation
Everybody litigation
Beat me, bash me
You can never trash me
Hit me, kick me
You can never get me

スキンヘッズも、頭が死んでる奴も
誰もが悪くなってる
状況は相場次第で
誰もが訴える
僕を殴っても、非難しても
僕をクズ扱いには絶対に出来ない
僕を叩いても、蹴り飛ばしても
僕は絶対にやられない

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

Some things in life they just don't want to see
But if Martin Luther was living
He wouldn't let this be, no, no

彼らは見たくないものは見たくないんだ
でも、もし、キング牧師が生きていたら
こんなことはしない、ありえないよ

Skin head, dead head
Everybody gone bad
Situation, segregation
Everybody allegation
In the suite, on the news
Everybody dog food
Kick me, kick me
Don't you wrong or right me

スキンヘッズも、頭が死んでる奴も
誰もが悪くなってる
状況は分断しているというのが
みんなの主張
部屋の中でも、ニュースでも
みんな酷いものさ
僕を蹴ったり、軽蔑して
僕が間違ってるとか正しいとか、決めたいんだろう

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

All I want to say is that
They don't really care about us
All I want to say is that
They don't really care about us

僕が言いたいのは
彼らは、僕たちのことなんか気にしてないってこと
僕が言いたいのは
みんな、僕たちのことなんか考えてないってこと

(訳:yomodalite)


2番目に創られた「Brazil Version」


(*1)
Jew me, Sue me
Everybody do me
Kick me, kike me
Don't you black or white me

Jew、kike にはともに「騙す」という意味がありますが、どちらも、ユダヤ人への蔑称で、特に「kike」は、黒人を「nigger」と言うのと同じような侮蔑的表現。

当時、ニューヨークタイムス紙は、この曲の発売前に「反ユダヤ主義の噴出である」と記事にし、ADL(ユダヤ名誉毀損防止同盟)をはじめ、メディアはこぞって、マイケルを批判し、放送中止にもなりました。

マイケルは誤解だと弁明し、苦痛を受けた人への謝罪を表明し、また、スタッフや友人のユダヤ人に、自分が反ユダヤではないことを説明してほしいと頼んだようですが、スピルバーグを始め、ユダヤ人の知人全員から断られたそうです。(『MICHAR JACKSON, INC』p257)

これは、あくまで推測ですが、

ニューヨークタイムスの記者は、その記事の中で「マイケルは存命中のアーティストの中で最も才能のあるひとり」とも書いていて、曲の発売前ということも考えれば、ある意味「宣伝」の範囲内と言えるのかもしれませんし、マイケルも抗議されることを想定していなかったとは言えないと思います。

なぜなら、ADLは常にこういった行動をしてきたからです。

もちろん、この曲のテーマを考えれば、マイケルが話題作りのためだけにそうした言葉を使ったのではないことは確かでしょう。実際、マイケルの曲を訴えたことで、ADLは、人々を思う気持ちを踏みにじっても「差別語」を取り締まるのだということが、世界中に知れ渡りました。

米国大統領の選挙中、ヒラリーが、トランプ支持者たちを蔑んだときの言葉、「人種差別主義者、女性蔑視、同性愛者嫌い、外国人恐怖症、イスラム恐怖症・・」といった差別は、ユダヤの名誉を守るADLと同じように、すでに強力な圧力団体として存在し、政治家や、議会の決定を動かしています。

米国では、寄付には税金がかからないという制度があり、高額納税者は税金を軽くするために、こういった非営利団体に多額の寄付をするため、都市生活者にとっては、魅力的な就職先であり、クライアントでもあり、自らのアイデンティティと帰属を確認する場でもあり、何より「反・・」と批判されないためにも、彼らを批判することは不可能になっています。

黒人が入れない場所も、ユダヤ人や、女性がなれない職業もなくなり、政治で撤廃すべき「差別」がなくなっても、「差別撤廃を訴える」団体は、より政治との関わりを強め、誰もが、被害者や、マイノリティになるチャンスをうかがい、起訴を起こそうとする状況は、マイケルがこの曲を発表した1995年よりもずっと拡大しているようです。

死後に発売されたユダヤ教のラビとの録音会話を納めた本の中で、マイケルは、このときのことをこう語っています。

MJ:僕が言いたかったのは、誰からも見捨てられていて、不当な扱いを受けている人々、結婚していない両親から生まれたり、「ニガー」(黒人への差別用語)なんて言われたり、これは、僕が言ったことで、誤解を受けた言葉だけど「カイク」(ユダヤ人への差別用語)もね。

少年の頃、ユダヤ人の弁護士と会計士が、僕が寝ているベッドの隣で、お互いに “カイク” と呼び合ってた。僕が「それはどういう意味?」と聞くと、彼らは「ユダヤ人に対する悪い意味の言葉だよ。黒人に対して “ニガー” というのと同じさ」って、僕は「ああ、そうなんだ」と答えた。だから、“ニガー” も “カイク” も、人々が不当に扱われるときの言葉だって知っていて、そう言ったんだ。大勢の人に誤解されたけど、僕は決して… わかるだろう?

SB:君は声なき人たちのために、立ち上がろうとしたんだね?

MJ:そう。声なき人のためにね。僕は憎むことは決して教えない。それは僕が言いたいことじゃない。(『MJTapes』より)

マイケルが一貫して守ってきた子供たちは、その「声なき声」の代表ですが、マスメディアは永年マイケルを、常に「変人」として扱い、その証拠を突きつけるかのように、子供を守るという「正義」を装って、マイケルに「性的幼児虐待」の罪を着せ、全メディアがそれを後押ししました。

「FAKE NEWS」は、ネットから生まれたのではなく、マスメディアの手法を誰もがカンタンに真似できるようになったからにすぎません。

(*2)こちらの「註」もぜひお読みくださいませ。


Munich 1997- Live


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