からだの仕組み考えて 滿園良一氏
◆スポーツ医学
スポーツ医学というものをご存じだろうか。スポーツに関連した人体の生理、疾病、傷害について研究し、アスリートの身体能力の強化、好成績を出すための「からだ」の使い方、故障の予防、治療などを扱う総合的な専門医学分野だ。スポーツ医、トレーナーらメディカルスタッフの背景となる学問であり、けがの1次処置や疲労回復を促すアイシング、「からだ」を守り機能的に使うテーピングなどさまざまな取り組みに成果を見ることができる。
スポーツ医学の基本は「からだ」を知ること、そのための「からだ」の測定・評価である。それを踏まえて、「からだ」の故障(とりわけけが)予防、体調を整えるための身体各部位の使い方、望ましい歩きや走りの動作、正しい姿勢などが研究の対象領域となっている。
現在、その領域はスポーツ現場以外にも広がっている。21世紀になって急速に進む高齢化によってフレイル(要介護につながる心身の活力低下)が現れるとともにロコモティブシンドローム(骨や関節など体を支えたり動かしたりする運動器の機能低下)、メタボリック症候群などに起因する生活習慣病の増加を著しくしている。その予防の鍵を握るのは運動なのだ。
高齢者だけではない。遊びを忘れた就学前の幼児、運動不足が指摘される児童生徒など、子どもたちも生活習慣面でさまざまな問題を抱えている。「からだ」を知り、運動をすることが体調管理、健康維持にいかに大切かを分かってもらう。スポーツ医学の出番である。
久留米大(福岡県久留米市)は昨年4月、新たに「カラダごと まるごと」を掲げて人間健康学部を開設した。アスリートの支援者やスポーツ指導者、幼児や児童生徒の健全育成のための保育者、教育者を養成することで、社会の求めに備えている。
これから2020年の東京オリンピック・パラリンピックを挟んで、19年は福岡市、熊本市、大分市も試合会場となるラグビーワールドカップ日本大会、熊本県での女子ハンドボール世界選手権、21年の福岡市での世界水泳選手権と世界レベルのスポーツイベントがめじろ押しである。人々の競技への関心がスポーツを身近にし、その正しい実践が健康づくりにつながることを期待している。
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滿園 良一(みつぞのりょういち)久留米大人間健康学部教授 1958年生まれ、鹿児島市出身。筑波大大学院修了。医学博士。2000年から久留米大健康スポーツ科学センター教授。17年から現職。
=2018/05/20付 西日本新聞朝刊=