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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第一章: 初めましてとご挨拶

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6話: 来てもいいぞ

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、法律などとは関係ありません。

 状況を整理しよう。


 まずここは俺の部屋。


 俺のベッドで横を向いて寝ているチーナ。

 その手元に1冊の漫画…………これは俺の本棚から取ってきたものだろう。




 なるほど、謎は解けた!




 俺の部屋にきたチーナが、暇すぎて俺の漫画本を手に取って見たものの、当然日本語が読めないわけで、つまんなくなった辺りでそのまま寝落ちしてしまったのだ!


 なるほど、納得納得……………



 できるかああああああぃ!



 なああぁんで俺の部屋にいるんだいガール!?


 ここは間違いなく俺の部屋。

 そして今朝はちゃんと鍵を掛けて出た記憶がある。

 つまり、チーナは俺の家の鍵を持っていてそれで……………


 ええいもう分からん!

 起こして直接問いただそう!


 そう思って肩をゆすろうとした刹那、逡巡。

 今俺の目の前にいるのは絶世の美少女。

 その姫は、俺のベッドで無防備にもすやりんこ。



 あれ、これって………チャンス?



 それに気づいた瞬間、俺の脳内で天使と悪魔が争い出した。


"だめよ伊織!いくら行けそうだからって、手を出した瞬間あなたは自分を許せなくなるわ!"

"ヒヒヒ、気にす…………"

"さあ伊織!起こすのよ!あなたは紳士!"

"すえぜ………"

"お、こ、せ!! い、お、り!!!"


『おい、起きろチーナ』


 ゆっさゆっさ。


 …………………俺の理性つっよ!



 本能さん発言出来てませんやん。


 きっと俺は、据え膳を鼻先に押し付けられても耐えられるのだろう。


 Tシャツ越しに華奢な肩に触れている今でも、変な所触りたくて手が震えるとか一切無いし。


『うう………ん。あ、ごめん、ヨリ。扇風機勝手に使っちゃって』

『大丈夫。些細なこと過ぎて気付か無かったわ』


 確かに天井に設置してある扇風機が回っている。

 8月中旬に何もなしじゃあ、確かに暑いもんなぁ。


『じゃなくて!どうしてチーナが俺の部屋にいんの?』


 俺は近くの椅子を引き寄せて座りながら、寝起きでぽけ〜っとしながら身を起こすチーナに問いかける。


『どうしてって……鍵使って』

『俺の投げた質問をバントで流すな』


 答えてるようで答えきれてない微妙な返答。

 方法は分かったが動機が未だ不明である。


 いや、鍵の入手方法も一応分かっていない。

 予想は着くけど。


 するとチーナは、少しずつ目が覚めてきたのか、あっ!っと気づいたような素振りを見せ説明を再開した。


『えっと、鍵はアンジーが持ってたのを渡されたんだよ。ヨリの部屋の合鍵だ………って』

『緊急時の為に俺が預けといたやつだな』

『それで………』


 チーナは続ける。


『用事がなくても、いつでも遊びに行っていいって、アンジーに言われた』

『あーー。うん。なるほどね。すげぇ言いそう。言いそうだけど、本当に来るかね……』


 ついつい呆れた声が出てしまった。

 まあ事実呆れているのだが。


『あの、ごめん。勝手に入って。でも……』


 俺の反応を見て、元々罪悪感はあったのか、素直に謝るチーナ。

 そしてそれには続きがあった。


『でも、怖かったんだ。昨日まではアンジーがいたけど、今日からはそうじゃない。そしたら、もう帰って来なくなるんじゃないかって、また独りになっちゃうんじゃないかって、怖くなって…………』



 なるほど。

 今日からアンジーはまたしばらく海外。

 アンジーが帰って来ないことが、両親が亡くなった時の事とダブって不安になってしまった、という事だろう。


 それは確かに、心細い。

 誰かにそばにいて欲しいのも、分かる。

 そして今頼れるのは俺だけ。

 だからこんな暴挙に出たのだろう。


 父が亡くなった時は、俺もぶっ倒れるまで走ってた記憶がある。

 色々いっぱいいっぱいだったんだ。

 今思えば。


『ごめん。ちょっと勘違いしてたよ』


 チーナが割とホイホイ騙される天然さん何じゃないかと…………とまでは言えない。


 そうじゃないと分かった今、もう呆れる事は無い。

 だが、ここは……………、ここは、叱らにゃならんとこだろうな。


『でもなぁ、男ってのはみんな、漏れなく獣なんだ。そんな奴の家で勝手に寝てたら、襲われても文句言えなかったんだぞ。俺がたまたまメンタルお化けだっただけだ』

『うん………。ごめんなさい』


 チーナが膝に顔を埋めて、目だけを出して謝る。

 反省しているんだろう。

 チーナは基本表情豊かな方ではないが、ここ数日の付き合いで、細かな仕草や表情の変化から何となく考えていることが分かるようになってきた。


 よし、お説教はこれでいいだろ。


『分かったならいいさ。だから………』


 ここまで言ってから、俺は天井を仰いだ。

 ここからは、恥ずかしすぎて顔を見せられない。


『だから、許可……するからさ。これからは、いつでも勝手に来ていいぞ』

『え、いいの?』


 驚きに顔を上げて、口を半開きにするチーナ。

 そんな間抜け顔も、美少女なら加点になる不思議。


『まぁ、見られて困るような物は置いてないし、その、なんだ………』


 あぁ、恥っずぃ。


『俺もまぁ、家に独りなのは、気が滅入らないでもないから』


 かあああぁ。

 今俺絶対顔真っ赤だわ。

 間違いなく過去一でやばいこと言ってる。


『そっか………』


 上を向いているから、チーナの事は見えないが、何となく声音で嬉しそうなのが分かった。


 俺はなんとか普段の真顔に戻しつつ、顔を下げて彼女を見る………………




 そこには、笑顔を浮かべた美少女がいた。




 と言っても、少し口角を上げている程度の微笑。

 それだけ、それだけなのに……………


 可愛い。


『じゃあ、いつでも来るね』


 笑顔とその言葉の破壊力に、俺はもう………心中めちゃくちゃだった。



宜しければ、ブックマークや評価☆よろしくお願いします!


アメリカ等諸外国にも扇風機はありますが、基本天井設置型で、床置きの日本は珍しいらしいですね。

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