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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第一章: 初めましてとご挨拶

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1話: プロローグ 〜ベタな転入生イベント〜

拙い文章ですが、広い心で楽しんでいただけると幸いです!


※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、法律などとは関係ありません。

 どうしてこうなったかなぁ……。


 8月中旬。


 外ではギラギラと太陽が照りつける中、冒涜的にもその光をカーテンで遮り、エアコンで快適な温度に保たれた教室。

 その窓際最後尾のベストポジションで、俺は心の中で盛大なため息をついた。


 今、クラスの全員が注目している先は、お馴染みの黒板が設置された教壇………に立つ、可憐な美少女。

 高校2年の二学期4日目、それも水曜日という中途半端なタイミングに訪れたビッグでビックリなイベントに、皆が心ぴょ………踊らせている最中だった。


「クリスティーナ・クルニコワ……です。ロシアから、きました。よろしく……おね……がいします」


 教壇に立ち、片言の日本語で自己紹介する少女。

 そう、今日このクラスに転入生、それも外国人のとびきりの美少女が来たのだ。

 透き通るような栗色の長髪。

 白色人種特有の薄い色の肌。

 涼し気なエメラルドグリーンの瞳。

 大人びた中にもあどけなさが残る、日本人好みの可憐な容姿。

 控えめな胸。

 絶世の美少女の転入に、クラスのメンバー(主に男子)は有頂天である。


詩織しおりちゃんも可愛いけど、クリスティーナちゃんも超可愛いな!」

「ねぇねぇ! クリスって呼んでいい?」

「俺のことはお兄ちゃんって呼んでくれぇ!」


 まだ自己紹介の最中だと言うのに、辛抱たまらんといった様子で男子生徒が騒ぎ出す。立ち上がっている奴もちらほらいる程だ。


 ん?誰か変なのいた?


 そんな中、ただ1人極めてブルーな気持ちを踏みしめているのは、俺。もちろんそれには理由がある。

 別にアンチ美少女だとか、平穏主義者だとか、黒髪大和撫子しか許さねえよマザファッカー!って訳じゃない。


 クリスティーナの事を可愛いとは普通に思う、思うのだが………。

 "絶対に面倒なことになる"と分かっている俺は、手放しに喜べなかった。


「ほらほらみんな!クルニコワさんはまだ日本語がほとんど話せないの。あまりまくし立てたら、困ってしまうでしょう?」


 20代半ばの女性担任教師が、暴れ馬共を優しくなだめにかかった。

 ショートヘアから覗くうなじが今日も眩しい。


「皆さんクルニコワさんに用事がある時は、ロシア語の話せるかが………あぁ、もう!静かにしてください!クルニコワさん。あなたの席は窓際の後ろから1つ隣……あそこの、かがみ君の隣ね」


 先生が、暴徒を御しきれないと判断し、半ば強引に切り上げ、クリスティーナにも分かるように指を指して席を示す。

 面倒な自己紹介から解放され、ホッとした表情で指定された席に向かうクリスティーナ。


 その先は……………


 そう。

 俺、かがみ 伊織いおりの隣の席。

 そして、俺とクリスティーナは既に知り合いである。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 俺は、クラスの中で浮いている。

 いや、クラスどころか学年レベルだろう。

 そして、人によっては俺の事を嫌っている。


 その理由は、かなり理不尽なもの。


 先程のホームルームが終わって、トイレからの帰り道に、その原因となった女生徒と廊下ですれ違った。

 茶髪のボブヘア。可愛らしい顔立ち。まさにアイドルといった美少女。


 その女………俺の双子の姉である、鏡 詩織しおりは、すれ違いざま俺を一瞥するだけに留めた。

 が、親衛隊の女子共は一様に侮蔑の視線を送ってくる。


 よくもまあ1年と少しでそんなに印象操作できるもんだと、我が姉ながら感心する。

 まあだからといって、呆れて許すと言ったことも出来ないのだが。


 そんなことを考えているうちに教室についた。

 後ろ側の引き戸を開けて、エアコンの冷気をその身に受ける。


 教室に入ってまず目に飛び込んだのは、俺の席の周りに形成された人だかり……否、俺の隣の席のクリスティーナを囲む集団だった。


「ねえねえ、クリスちゃんって今どこらへんに住んでるの?」

「どうして日本に来たんだ?」

「たぁ………たぁこい、みゅう?」


 目を血走らせて群がる男子生徒や、面白そうだとたかる女子生徒達からの質問攻めを受けているクリスティーナ。

 中には、翻訳アプリ片手でロシア語もどきの言語を披露する輩までいる。


 理解できない言語(似非ロシア語含む)を浴びせられているクリスティーナは、表情豊かな方ではないにもかかわらず、今にも泣きそうといった様相だ。


 手をあたふたさせながら、


「にほんご……まだ、わからない。ごめんなさい」


 を必死に連呼している。その姿は、狼の前で必死に助けを乞う小鹿のよう。

 しかし野次馬たちは、彼女が本当に困っている事に気づいていないのか、矢継ぎ早にまくし立てる。


 そんな中、俺は席に戻ることも出来ず、教室の後ろにぼーっと立って眺めていたら、ふと横を向いたクリスティーナと目が合った。


 俺を認識した彼女は、泣きそうな様相から一転、心底ホッとしたような顔をして必死に俺に訴えかけてきた。


 ロシア語で。


『ヨリ!ヨリ!この人たち……怖い』


 イア!イア!みたいなノリで急に訳分からんことを言い出したクリスティーナに、驚く野次馬一同。

 まあ、さすがにこの状況を見過ごす訳にもいかない。

 はあぁ……っと一つため息を漏らして、とりあえずクリスティーナを安心させるために声をかける。


 ロシア語で。


『おいおいチーナ。どうせこいつらロシア語分かんないだろうけど、ひどい言いようだなぁ』


 その瞬間、全方位から殺意の波動が俺に襲いかかった。





第1話、読んで頂きありがとうございます!


宜しければ、ブックマークや評価☆よろしくお願いします!


後に本編でも書きますが、"チーナ"というのはロシアでのクリスティーナの愛称だそうです。

ちなみに、アメリカ等では"クリス"です。

こちらの方が一般的なので、クラスの面々が間違えるのは無理ないですね。



それと、繰り返しになりますが、本日9時に第2話、同12時に第3話、18時に第4話を投稿予定です!


明日も計3話更新する予定です。

ぜひぜひ!

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