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 昭和・平成の音楽シーンを駆け抜けた広島市出身の歌手、西城秀樹さん。63歳で亡くなって2年半がたつが、そごう広島店(広島市中区)で開催中の展覧会には客足が絶えない。死してなお人を引きつける魅力とは――。

 「ルックス、歌唱力、もう全部がかっこいい。もう一度会いたい」。島根県から訪れた中井美和さん(60)は、会場で流れるライブ映像に合わせて口ずさみながら、目元をハンカチでぬぐった。小学6年生からのファン。会場には数々のステージ衣装も展示されており、「こんなに細かったんだ」と驚いていた。

 独特のハスキーボイスに、激しいマイクアクション。西城さんの華麗なパフォーマンスは当時の子どもを魅了した。

 「学校でほうきを使ってマイクを振り回すまねもした。私たちの自慢のお兄さんでした」

 広島市西区の襟田由香里さん(61)はそう語る。西城さんが登場する「セブンティーン」などの雑誌を紹介するコーナーで立ち止まると、「ヒデキの写真を切り抜いてスクラップしていた。青春でしたね」。

 西城さんは高校時代にジャズ喫茶でスカウトされて上京したが、被爆地「ヒロシマ」への思いも持ち続けた。川崎市での原爆展の賛同人に名を連ね、亡くなる前年の17年にはこんなメッセージを寄せていた。「ヒロシマ・ナガサキの悲劇を繰り返さないために、広島出身者として私も微力を尽くし、平和を願いながら歌い続けたい」

 原爆を題材にしたアニメ映画黒い雨にうたれて」(1984年公開)でも主要人物の声優を務めた。被爆2世の襟田さんも見たといい、「どれだけスターになっても『ヒロシマ』を忘れなかった。その遺志もしっかり心に刻み続けたい」と話す。

 今年5月には、歌謡番組「夜のヒットスタジオ」での西城さんの出演シーンをまとめたDVDボックスが発売されるなど、今なおその人気は健在だ。来場者には、亡くなった後にファンになったという人も少なくない。

 「歌のうまさにびっくりして、聴き始めたらはまっちゃって」。広島県廿日市市の松木理恵さん(65)は、16歳でデビューした西城さんと同い年。でも、家では親がテレビの「チャンネル権」を握り、出演番組はほとんど見られなかった。

 「出会い」は西城さんの悲報後に何度もテレビで流れた生前の姿。「最近聴かない色気のある歌声で、一瞬でしびれました」。その日からユーチューブで次々に楽曲を聴き始め、CDやDVDも買い集めた。

 開会4日目にして来場は2回目。「本物のヒデキには会えなかったけど、ここに来たら片鱗(へんりん)に触れられる気がして。目と心にしっかり焼き付けます」

 「Forever Pop 永遠のヤングマン 西城秀樹展」は20日まで。中学生以上800円、小学生以下無料。問い合わせは同店(082・225・2111)へ。(東郷隆