( 12/18 付 )

 「して見せて、言って聞かせて、させてみる」。江戸中期の米沢藩主で名君と呼ばれる上杉鷹山(ようざん)の言葉である。倹約の励行をはじめ、率先垂範して藩政改革を推し進めた。

 連合艦隊司令長官の山本五十六も鷹山と似た言葉の後ろに「ほめてやらねば、人は動かじ」と続く名言を残している。民衆や部下に苦労させるなら、自ら手本を示し、成果を一緒に喜ぶ-。リーダーの心得だろう。

 菅義偉首相は先人たちの忠言を心得ていなかったとみえる。新型コロナの感染拡大を食い止めようと「会食は4人以下」と呼び掛けていながら8人の会食に参加した。悪い手本を示したようなものだ。

 東京・銀座のステーキ店に著名人や自民党の二階俊博幹事長らと集い、マスクも着けず野球談議に花を咲かせたという。情報を広く集めることも大事だが、「Go To トラベル」の全国一時停止を表明したその夜である。

 泣く泣く忘年会を諦めたり、高齢者との接触を控えたりする国民の姿は頭をよぎらなかったのだろうか。「勝負の3週間」は目立った成果もなく過ぎ去った。国民の多くが感染防止に努めたが、新規感染者数は高止まりし、きのうは東京で800人を超えた。

 菅政権の発足から100日足らずなのに、支持率は急落している。まずは「して見せて」危機感を示さなければ、いくら号令をかけても思うように「人は動かじ」である。